FGO二部二章・改「狂焔之巨人王と三人のセイバー」   作:hR2

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第六話 彼という剣

 

 

 雨降って、地固まる。

 

 

 

「————だから、村にジイさン、バアさンの姿がなかったのか。

 胸糞悪りぃ姥捨山だな」

 

 

「あっちにも言い分はあるんだろうな。

 村で生産できる食料を考えれば、今の人数でぎりぎりだ。

 大人は()()、子供よりな。

 大勢の大人を恒久的に養えるだけの食料を作るとなると、中だけじゃ全然足りん。

 それじゃ外はどうかといえば、」

 

 

「デカブツの天下、か。

 そもそもあの童らは村から外に出るってことをまるで考えてねぇ」

 

 

「元の世界じゃ、食物連鎖のピラミッドの一番上だろ、人間が。

 ここじゃ違う。

 最底辺だ。

 その上に巨人がいて、次がワルキューレ達だ」

 

 

「…………」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 外に出ることを考えてないのは、確かにそうだが、()()()()()()()()()、だろ?

 子供達が互いに争わないってのだけが救いだ。

 みんなで仲良く、助け合う。

 逆を言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 巨人を倒して生活圏を広げるなんて、絶対に有り得ない。

 

 仮に、だ、あくまで仮にだぞ、

 俺やお前が最大限手を貸したところで、無理だ。

 戦乙女達に潰されるからじゃない、()()()()()()()()()からだ。

 武器を渡したところで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その発想は、ある意味、見習わなきゃいけんのかもしれんが…………。

 子供達を戦いに連れ出そうってんじゃない、あくまで仮定の話だ」

 

 

「……………………」 

 

 

「この世界にとっちゃ俺達は異分子だ。

 だからおかしく見えるんだな————、

 

 この世界で、この世界の人間が生きるには、あの子供達がやってる方法しかない、

 

 そういうシステムなんだな、ここは。

 動かそうにも、歯車が大きすぎるし、噛み合いすぎてる。

 誰が考えたか、」

 

 

 

「ナポレオン、」

 

 

 

「ん————ん???」

 

 

 

「あんた、知ってるんだよな?

 このふざけた世界に君臨している、神様気取りのクソッタレの居場所を」

 

 

 

「——————————!!??

 ……………………落ち着け、気持ちは分かるが、まず落ち着け。

 俺とお前、正面から行っても、裏口から奇襲かけても、勝てるような相手じゃねえ。

 玉砕覚悟の特攻なら、いつだって誰だってできる。

 やるからには勝つ、勝利以外は認められん。

 俺が道筋をちゃんと作り出してやる、だから、その思いはとっておけ。

 そうとも————、

 俺の辞書に、不可能という文字はないからな」

 

 

「………………」

 

 

 ———…………—何、だったんだ、さっきのあの凄みは…………!?

 

 

 止まった。

 サーヴァントである自分には心臓があるかないか定かではないが、

 

 それでも止まった、止められた。

 

 

 ————あの時と同じ…………いや、それ以上だったかもしれん…………!!

 

 

 

『…………私は、ルイ十六世を処刑しました』

 

 

 

 そう答えた瞳にあったのは————、虚無。

 

 それは老いたムッシュ・ド・パリ、現役を引退していた元死刑執行役人。

 狂った民衆達がギロチンへ人々を送り続け、その首を落とし続けた人物。

 

 当時皇帝であり人生の絶頂期にあったナポレオン。

 老いた元執行役人と偶然出会い、皇帝の俺の首でも落とせるのか、とからかい半分に問いかけ、

 

 返答したのは、四代目シャルル・アンリ・サンソン。

 ルイ十六世やマリー・アントワネット、他、フランス革命の名だたる犠牲者達を処刑した男。

 カルデアがアサシンとしての召喚されていることを確認している英霊。

 

 誰であろうと、何者であろうと、必要あれば刑を執行する————その凄み。

 

 

 ————それを超えちまうか!! くぅ〜ーー! 頼もしいぜ、切り込み隊長!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩いていた足が、止まった。

 

 

 

 

「————誰かが、戦ってンな…………」

 

 

「どこでだ?」

 

 

「この先だ」

 

 

「………………見えん。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 ここでも俺の前に立ちはだかるか…………っ!!」

 

 

「今の(オレ)()()()()

 (オレ)達みてぇなのが、三人————いや、二人とおまけか?

 デカブツが————…………二十二、だな。

 羽っ()が、………………十九、いや十七になった。

 オルトリンデは、いねぇな」

 

 

「おい!? その戦力差は何だ!?

 何がどうなってる!?」

 

 

「三人対残り全部だ。

 羽っ娘達がうめぇこと立ち回ってんな、けど、

 …………何だぁ、あの傾奇者…………」

 

 

「加勢するぞ、ムラァマサ!

 この世界で戦乙女達とやり合うってことは、間違いなく俺達の味方だ!」

 

 

「いや…………余計なお節介かもしンねぇぞ…………?

 あいつ、桁が違い過ぎる、余裕で全員ぶった切りそうだ」

 

 

「ん??

 どっちにしても、だ、ここで手助けした方が後々の交渉に有利だ。

 だろ?」

 

 

「ああ、だな。

 ンじゃ終わっちまう前に気合い入れて走っか!」

 

 

「フッ、ムラァマサ。

 俺が誰だか忘れたのか?」

 

 

「あン?

 なぽれおん・ぼなぱっちょだろ?

 ふろーれんつの皇帝の」

 

 

「…………俺は、今、とても悲しい…………。

 砲兵のアーチャーだ! 今の俺はな!

 任せろ、見えなくともキロ先のミカンにだって百発百中だ。

 距離、方位、風向き、あと大まかな布陣も頼む」

 

 

「あっちだ。

 敵じゃねぇが、()()()がそこにいる、立ちっぱで一番動きがすくねぇ。

 距離は…………っと…………二十六町、と————十間、そンで、」

 

 

「…………お前、メートルって知ってるか?」

 

 

「夏場の食いもンか? ここぁ冬だぞ!

 ンなこと喋ってる場合かよ、なぽれおん!?

 下手うちゃあっちに当たって大変なことになンだぞ!?

 しゃんとしてくれよな、大将」

 

 

「…………これがジャポンか…………。

 ん…………? ————っっ!!

 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

 そうだ、そうだった!

 ()()()()()、か!!

 礼を言うぜ、ムラァマサ!

 今の俺は、アーチャーのサーヴァント! 人理の英霊だ!!

 こいつを出すのはもうちょい後かと思ってたが、よ」

 

 

「ン? 被れってか?」

 

 

「切り込み隊長ムラァマサ!

 その()()を被り、観測手を兼任してもらう!!

 今の俺達は英霊だ、なら英霊らしく行こうじゃねぇか!!」

 

 

「————ん…………ああ、なるほどな、なンか()()()()ンな。

 正直こンなもンするのは、生まれて初めてだが…………」

 

 

 

「——————お、お、お、おおおおお!?

 距離が分かるだけかと思いきや、見える、見える、お前さんの視界が俺にもそのま、

 

 ——————…………………………は!!!???

 

 な、な、な、な、何だこのサムゥライお嬢さん(マドモアゼル)は!!!!

 人間か!? いや、サーヴァントか!?

 段違い、いや別次元すぎるぞ!!」

 

 

「あれがほンまもンの、侍、ってやつだ」

 

 

「あのセイバーより…………上、それも、相当な上。

 

 …………信じ、…………らんねえ…………、いるのかよ、こんな剣士が…………!

 

 …………()()()()()()()()…………ッッッ!!

 

 ——————。

 いける…………な。

 例え正面からの力押しでも、あの二人、いや、あの三人と俺達なら…………、

 女神は間違いなく手を出さない、なら、あっち側の全戦力が集まったとして…………、

 地の利は圧倒的に不利だとしても、それは————…………。

 

 よし! 見惚れるのは後だ、まずは助太刀と洒落込もう!

 ぐずぐずしてたらサムゥライお嬢さん(マドモアゼル)に全員倒されちまう」

 

 

「頼むぜ、なぽれおん?」

 

 

 

「任せろ————その期待、百倍にして答えよう!!」

 

 

 

 

 

[第六話 彼という剣]

 

 

 

 

 

▷ □ 「はかどってますか?」 □ ◁  

 

 

「…………おめぇか」

 

 

 決戦を翌日に控えたこの日————

 シャドウ・ボーダーの屋根の上に二人の姿があった。

 

 

 沢山のことがあった。

 

 

 再び巡り会えたことを喜ぶも————

 サーヴァントとしてこの地に呼び出された村正に、二人の記憶はなかった。

 

 

 それなのに、

 武蔵の差し料を見る間、腰が寂しいだろうからと差し出したのが、

 あの時の刀と同じ銘を持つ、『明神切村正・(あらため)』。

 

 

『気付いたら、いつの間にか出来ちまってた。

 おめぇさんの面見たらピンときたぜ。

 ほら、抜いてみな————な、おめぇさんに使われたがってるだろ?』

 

 

『凄すぎて私なんかが持っていいか分からない』、そう話す武蔵の手は刀を握りながら震えていた。

 

 

 

 どうして、そうなったのか————

 ナポレオンへ、ストーカーとはなんぞや、という講義が開催された。

 

 場は紛糾する、意見が割れに割れたのだ。

 犯罪(アウト)なのか純愛(セーフ)なのか、どっちなのかと。

 五人で話していたはずが、ダヴィンチらカルデアスタッフも加わる大論争に。

 

 名探偵曰く、

 

 

『セーフだ、無論だとも。

 何故なら、この世界には二十一世紀のストーカー規制法はそもそも存在しないはずだ。

 法律そのものが存在しないのであれば、違法行為と認定することはできない。

 つまり、ムッシュ・ナポレオンがオフェリア嬢にどんなに醜く言い寄ったとしても————

 遺憾ながら、この国、すなわちこの世界では、それを犯罪行為と糾弾することはできない』

 

 

 名探偵の言は勿論続き、特異点や異聞帯を旅する我々が指針とするべき法とは何か、秩序とは何か、そして正義とは、という大演説に続き、マシュが感動の余り涙ぐみ、村正が大いに頷くというシーンがあった。

 

 が、

 

 純愛(セーフ)派筆頭ナポレオン、

 

 

『ハハハハハハ! お前ら全員、俺達の結婚式へご招待だ! 最前列は、早い者勝ちだぜ?』

 

 

 と、犯罪(アウト)派を意図せず挑発。

 

 

 犯罪(アウト)派武蔵、これにプッツン。

 

 

『ならそのおち○ち○、私がぶった切ります!!』

 

 

 剣轟抜刀! と叫ぶ武蔵を、ダヴィンチを除く全員、死ぬ気で止める。

 

 

『ティアマトより怖かったです…………』、とはマシュ。

『頼むから(オレ)の刀でンな汚ねぇもン斬らねぇでくれ…………』、これは村正。

『あのさ…………俺、普通の人間…………』、しかし、誰よりも早くナポレオンを庇ったムニエル。

『ん? サーヴァントだよ? どうせ再生できるから問題ないんじゃないかなー?

 いや、性欲という因果を斬ればワンチャン再生しないか』、万能の天才は発想が違った。

 

 

 他にも、

 まだまだ沢山のことがあった。

 

 楽しいことも、辛いことも、苦しいことも、悲しいことも————。

 

 沢山の子供達と出会い、そして、別れた————。

 

 

 

 それも今日までの話。

 

 明日こそは、決戦。

 

 勝たなければ、いけない。

 

 

 

 

 

「おう、暇つぶしがてらにちぃと聞かせろ。

 おめぇ、前に決めたなぽれおんの策、どう思う?

 戦の経験じゃ、なぽれおんや武蔵が上だが、世界を救った経験じゃ、おめぇとマシュだ。

 言いたいことは全部言ったと思うが、まっ!

 確認の意味も込めて、その道の玄人の意見ってのを、頭の悪ぃ偏屈爺にビシィっと頼まぁ」

 

 

 鉄を打つ動作とタイミング、生じる音と火花。

 

 何度も何度も叩いているはずなのに、毎回全く同じ現象が繰り返されているように映る。

 

 

▷ □ 「別にプロとかでは、」  □ ◁  

  □ 「ないのですが…………」 □  

 

 

 作戦はいたってシンプル。

 

 自他の戦力差、戦場となる城の特異性、

 

 その城主である女王でありこの世界の神、

 

 ナポレオンが提示した策の中から選択したのは————、

 

 

 

『速攻だ。

 玉座の間、それとも謁見の間と呼ぶべきか、とにかく広間が広い城だ。

 裏道を使ってそこへ抜ける。

 攻められることを全く考えていない、行ける。

 そこを戦場にする』

 

 

『広さはどれくらいでしょうか?』

 

 

『巨人が押しかけて暴れ回ってもなんとかなる程度の広さだ。

 でかい、には、でかいんだか、()()()

 我が麗しのヴェルサイユにはちょいと劣るが、ヒュぅ、見ものではある』

 

 

『うーん、五人で攻めるなら狭い所もありだけど…………、

 ナポレオンさんの火砲の範囲制圧力を重視?』

 

 

その通りだ(c’est vrai )、サムゥライお嬢さん(マドモアゼル)

 大軍に囲まれても、少女の盾、俺の砲、そして我らの切り込み隊長がいりゃなんとかなる。

 十人に囲まれるのも、百人に囲まれるのも、まっ! 大して違いはない!!

 とはいうものの、あまりに囲まれすぎると、()()()()()()()()()()()()の確率が上がる。

 なら俺の砲を有効活用しつつ————、っと何かな、サムゥライお嬢さん(マドモアゼル)?』

  

 

『……………………。

 ……………………。

 ……………………さっきのやつの最初、も一回お願いします』

 

 

その通りだ(c’est vrai )、サムゥライお嬢さん(マドモアゼル)!!』

 

 

『……………………、メルシー・ボクー(ありがとうございます)!!

 

 きゃ〜、言っちゃった言っちゃった。

 ハイカラなお仏蘭西言っちゃった〜〜。

 

 はっ!? いけないわ、心に決めた人がいる人にうつつをぬかしては…………ごめんね?』

 

 

『ど、どど、どうして私に振るのですか…………ええと、そのぅ…………』

 

 

 

()()()()は一丸となって戦う。

 残るサムゥライお嬢さん(マドモアゼル)、あんたは遊兵だ、そしてあんたが俺の作戦の鍵だ。

 最優先で、最高速度で、最短ルートで、一秒でも早く、シグルドを撃破してくれ』

 

 

『早ぇ話、武蔵に丸投げってか?』

 

 

『そうだ。

 最も高い敵殲滅力を持ち、最も高い機動力を持ち、最も高い継続戦闘力を持つ————俺達の中の最強戦力、それがあんただ、宮本武蔵。

 

 俺達と一緒に戦うと、()()()()()()()()()()()

 俺達が()()()()()()()()()んだな、あんたのレベルで戦える奴は誰もいない。

 

 だから、一人だ。

 

 無論俺達四人、援護はするが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 正直、あんたなら戦乙女千人に囲まれても無傷で全滅させちまうだろ?

 

 こっちの最強の駒を最強の状態にして、敵の急所を破壊————すなわちオフェリア確保の絶対条件であるシグルドの撃破を遂行する、

 

 これが俺の作戦の基幹だ』

 

 

 

『————————、斬れっか、武蔵?』

 

 

 

『ええ、無論』

 

 

 

『待ってください。

 それでは、武蔵さんはシグルドだけでなく、マスターのオフェリアさんとも同時に一人で戦うことになります。

 彼女は、ノウブルカラーの魔眼の持ち主です』

 

 

『…………』

『…………』

『…………』

 

 

  □ 「もしかしなくても、」      □   

▷ □ 「魔術の話、分かる人がいない?」 □ ◁  

 

 

『あっ————! 通信は今だめでした…………。

 ざっくりですが、他者への強烈な干渉力を持つ魔眼はノウブルカラーとされます。

 オフェリアさんの魔眼は、そのランクが宝石、大魔術クラスの魔術でも再現できない神秘を一工程(シングル・アクション)で実行します。

 ランク宝石の魔眼といえば、代表的なものはライダー・メデューサの石化の魔眼でしょうか。

 相手を見ただけで石にするというものです』

 

 

『形のない島のゴルゴーン三姉妹末妹の石化か。

 英雄ペルセウスは鏡の盾で頑張ったって話だが、』

 

 

『ん?

 見られたら石になるぐらいのことをされるってことよね?

 なら()()()()()()わ。

 シグルドを斬り、オフェリアさんを気絶させて魔術を使えなくし確保、

 その任務、承りました』

 

 

『えれぇでかくでるじゃねぇか、武蔵』

 

 

『…………ほ、本当、ですか?』

 

 

『言い出しっぺの俺が言うのもなんだが…………、ハードル高いぞ?』

 

 

 

『お任せあれ。

 ()()()()()()()()()()()から、()()()()()()()()()()()()()()ね」

 

 

 

 

 

 

 

▷ □ 「流石は武蔵ちゃん、」 □ ◁  

  □ 「正直、痺れました」  □ 

 

 

「はははっ、そりゃな!

 (オレ)やなぽれおんが言ったところで、馬鹿抜かせド阿呆で終わるだけだしな!

 あそこまで言って、誰にも何も言わせずに全員全部納得させるのは————、」

 

 

▷ □ 「宮本武蔵、」    □ ◁      

  □ 「————ですね!」 □  

 

 

「はははっ!」

 

 

 朗らかな笑い声が、鉄が鍛えられる音に乗る。

 

 

▷ □ 「村正さん、」 □ ◁      

 

 

  □ 「武蔵ちゃんより、」       □ 

▷ □ 「村正さんこそ、大丈夫ですか?」 □ ◁      

 

 

「…………。

 おめさんには、正直に言っとく。

 ()()()、悪りぃ、迷惑かける」

 

 

 

 

『女王は、手を出さない、と?』

 

 

『ああ、間違いなく。

 愛するか、殺すか————その二者択一だ。

 戦乙女を十人殺そうが何しようが、()()()()()()()()()()、だから()()()

 愛する基準が広すぎて大きすぎて、俺の感性じゃ理解できねえ、紛れなりにも神だな。

 故に、()()()

 ただし、気をつけろよ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 指鳴らされたら死ぬとかいうレベルじゃねえ、指一本ちぃっと動かされただけで、俺達全員アウトだ』

 

 

『んー〜、でも、説得できるのかなぁ?

 キミの最終目的は、結局のとこ、空想樹の破壊でしょ?

 それはこの異聞帯の全てを殺してしまう行為。

 口先三寸でだまくらかせるような相手じゃないでしょ、間違いなく』

 

 

その通りだ(c’est vrai )、サムゥライお嬢さん(マドモアゼル)

 

 

『————!?

 も一回お願いしまっす!』

 

 

『何度でも言おうとも、

 その通りだ(c’est vrai )、サムゥライお嬢さん(マドモアゼル)!!!』

 

 

メルシー・ボクー(ありがとうございます)!!

 はい!! 一緒に!!』

 

 

『メ、Merci beaucoup(ありがとうございます)…………』

 

 

『あーん、綺麗な発音!

 負けたー、くぅ〜悔し〜〜い!!

 私の完敗だーーーーーーー!!

 

 …………ん?

 ……………………負けた?

 …………………………………………負けた??

 

 負けた。

 ————()()()()()()()のなんて、いつ以来だろ?』

 

 

『………………』

『………………』

『………………』

 

 

▷ □ 「……………………」 □ ◁ 

 

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

『おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!!?』

『………………流石に嘘だと思いてぇが、まじかぁ??』

 

 

▷ □ 「マーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!??」 □ ◁

 

 

『先ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 輩ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 でーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 かーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 |ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!??』

 

 

 

『ふぅ…………。

 ごめんなさい、貴女を斬らずしてこの世界から去ること、できなくなっちゃった』

 

 

 

『!? あ…………………………!?』

『!? う、ぉ……………………!?』

『…………………………………ぉぅ』

 

 

 

  □ 「武蔵ちゃん! お願い! やめてーーーーーーーー!!」 □  

▷ □ 「なんでもするから、それだけはダメーーーーーーー!!」 □ ◁ 

 

 

 

『もーーー! あっははははははは! 本気にしないでよ、みんなっ!!

 冗談に決まってるでしょ、冗ーー談っ!!

 異国語の発音どっちが綺麗か勝負の決着を、どうして刀で決めますか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そーーーいう反応されちゃうと、私また今みたいな冗談言っちゃうわよー〜!?』

 

 

『……………………』

『……………………』

 

 

▷ □ 『……………………』 □ ◁ 

 

 

『えれぇ情けねぇ顔だな、そこ三人、なんだそりゃぁ、褌締め直してシャキッとしろっ!!

 (オレ)らはな、状況によっちゃ、そのカミサマ女をぶちのめすンだぞ、ああン!? 

 武蔵の殺気浴びたぐれぇで動けなくなってどうする?

 そいつが武蔵より上行ってたらどうすんだ!?

 負けられませンけど、びびっちまってやられました、とでも抜かすつもりかッッッ!!??

 キ○タマ付いてんだろッッ!! 頭の血管ぶっ千切るぐれぇ気合ぶっこんどけッッッ!!』

 

 

▷ □ 『————!? はい!!!』 □ ◁

 

 

『はいっ!!!』

 

 

『おう! ————うっしゃぁ!!

 流石だぜ、切り込み隊長、いい一喝だ』

 

 

 

(…………今のって、突っ込んじゃダメなとこよね、うん…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「両方は同時に相手にできねぇ、確かにだな。

 だから片方だけ叩く、そうだよな。

 なぽれおんやらほーむずの言う通りだ、カミサマ女とはまず話し合い、ってのが正しい。

 …………。

 なぁ、この世界ってのは、おめぇにはどう見える?

 他にも色々見てきたンだろ?」

 

 

  □ 「子供達の純粋さを思うと、やり切れないです」 □  

  □ 「ただひたすらに悲しいです」         □  

▷ □ 「理屈は分かります、けど納得できません」   □ ◁

 

 

 その答えに、鍛治匠は鉄を打つことで答えた。

 

 

「同じだ、(オレ)も、オレも。

 だからだな、はらわた煮え繰り返ってしょうがねぇ。

 そいつを前にしたら、抑えきれるか…………分からねぇンだ」

 

 

  □ 「(オレ)と、」     □  

▷ □ 「オレ、ですか?」 □ ◁ 

 

 

「おう。

 ようやく分かりかけてきたンだがな。

 (オレ)に身体貸してる()()()だよ、コイツ。

 コイツがとにかくブチ切れまくってやがる————って風に、(オレ)には思えンだ。 

 コイツがそう思ってるから(オレ)もそう思う、ンな馬鹿な話じゃねぇ。

 こちとら捻くれ糞爺だ、あーおうおうそうですかい、だ。

 だけどなぁ…………」

 

 

 鉄を鍛える手が、止まった。

 

 

「コイツも、おめぇも、マシュも、同じ目してやがンだよなぁ…………。

 真っ直ぐで、光り輝いて、弱ぇ奴を思いやれる暖かさがあって、

 

 ——————()()()()()()()()()

 

 死線くぐり抜けたら目なんざ据わるもンだが、ンな話じゃねぇ。

 コイツがいつの時分の奴だか見当つかねぇが、少なくともおめぇやマシュは、ンな重い目をしちゃダメなンじゃねぇのか、ってな…………」

 

 

▷  □ 「……………………」 □ ◁ 

 

 

「だがなぁ…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()なンだろ、ここは?

 ンでまだ()()ぐれぇ残ってンだよな?

 ()()()じゃ、ダチもいたンだろ? 助けてくれた恩人も、いたンだろ?

 そいつら全員ぶっ殺しちまったンなら…………、()()()()()()()()()()()

 

 

▷ □ 「…………はい」 □ ◁  

 

 

「なンだが…………、」

 

 

▷ □ 「…………?」 □ ◁  

 

 

(オレ)ぁよ、…………実のところ、諦めてねぇンだ」

 

 

▷ □ 「…………え?」 □ ◁  

 

 

 

「あっちの世界も救って、こっちの世界も救う————それが、()()()()()なンだ」

 

 

 

  □ 「いえ、それは、」   □  

▷ □ 「…………出来ません」 □ ◁  

 

 

「そんなうまい話、転がってるわけがねぇ。

 できるってンなら、()()()()()()()()()()、おめぇらなら。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だろ?」

 

 

▷ □ 「…………はい」 □ ◁  

 

 

()()()()()()

 

 

▷ □ 「————え?」 □ ◁  

 

 

(オレ)が斬りてえ()ってのが、()()()()()なンだよ。

 (オレ)ン認識じゃ、こいつぁ力比べ、なンだろ?

 ここの歴史が正しいのか、元の歴史が正しいのか、勝つのは一つ、負ければ消える。

 元の歴史のおめぇらや(オレ)からすりゃ、勝たなきゃなンねぇ、正さなきゃなンねぇ、元の世界の連中がもう何十億と死んでんだ、だから————殺さなきゃ、なンねぇ。

 もし勝ったとして、他の全部を正したとしても、()()()()()()()()()()()()()()()

 繰り返しじゃねぇか。

 いつまでたっても、おめぇやマシュみてぇな若けぇ真っ直ぐな連中が、背負うべきじゃねぇ重りを引きずりっぱなしじゃねぇか?

 

 ふざけンじゃ、ねぇよ…………!!

 そンなの、あっていいわけねぇだろうがッッ…………!!

 

 ()()()()()()()()()()()————あらゆる罪業の元となる大源の、根っこの根っこにある、()()を斬るために。

 どっちかしか生きられない? ()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()

 ()()を斬ることさえできるなら、()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 鉄が、一つ、強く打たれる。

 

 

▷ □ 「…………本当に、できるんですか?」 □ ◁  

 

 

  □ 「村正さんの、その刀なら、」        □

▷ □ 「()()()()()()()()()を、斬れるはずだから、」 □ ◁

 

 

  □ 「この世界を滅ぼさずに、」 □  

▷ □ 「元の世界を救う————、」 □ ◁  

 

 

▷ □ 「それが、可能…………?」 □ ◁  

 

 

 

 

 

「千子村正————死んだ後も、刀打ってンのはそンためだ。

 

 …………と言いてぇンだがなぁ…………」

 

 

 

▷ □ 「?」 □ ◁  

 

 

「なまくら包丁持った武蔵と、なんでも切れる名刀を持った(オレ)

 よく切れるのは、どっちだ?」

 

 

▷ □ 「…………あ…………!」 □ ◁  

 

 

「そうよ、例え刀が至ったとしても、使う(オレ)が至ってるのか、って話だよ。

 刀が出来ても、()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってことだ」

 

 

  □ 「なら武蔵ちゃんに、」  □   

▷ □ 「…………って、あ」   □ ◁

 

 

「武蔵が斬ろうとしてンのは、()()()()()()()()()()()()()()だ。

 (オレ)の刀が斬る()()と、全く違ぇとは言い切れねぇが————でも、違う。

 こいつを武蔵が振っても、どっちつかずで両方駄目になる、間違えなくな」

 

 

  □ 「村正さんが武蔵ちゃんに剣を習えば、」 □ 

▷ □ 「行けると思います、はい!」      □ ◁  

 

 

「あーーーーーーーーン?

 寝ぼけんな、ぶっ飛ばすぞ、このヤロウっ!

 (オレ)はこれでも刀鍛えンのに忙しいンだよ、クソッタレっ!

 ()()()()()なのに満足できるわけねぇだろうが!!!

 人にぶん投げしやがってこンにゃろうが。

 ()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

  □ 「えええええええ、」 □  

▷ □ 「ぇぇぇぇぇぇ!?」 □ ◁  

 

 

「二刀握って武蔵みてぇに全部が全部出来るようになる必要はねぇ。

 刀一つで、たった一回だけの一振り————それだけでいい。

 まぁ…………()()()()()()()()()()()ンだよな、おめぇさんの戦いってのは。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()————それが、おめぇさんの戦い方、だろ?

 

 でもなぁ、他に頼める奴が誰もいねぇ。

 それに、今回は…………出来なかったとしても、()()()()()()、違うか?」

 

 

  □ 「……………………!!」 □  

▷ □ 「————————!!」 □ ◁  

 

 

「ま、偏屈爺ぃの世迷いごとだ。

 出来るわけなンざねぇのに、見当違いの大ホラ信じてるただのど阿呆なだけかも知ンねぇ。

 ただ、もし、万が一、出来ンだとしたら…………」

 

 

  □ 「挑戦する価値は、」  □  

▷ □ 「…………きっとある」 □ ◁  

 

 

「やって、やろうじゃねぇか、なぁ?

 この世界も、元の世界も————その他の全ての世界も、全部まとめて救うんだ!

 

 なってやろう、

 

 ——————そんな、()()()()()に!」

 

 

  □ 「……………………」 □  

 

 

 

「………………………………………………」

 

 

 

  □ 「……………………は、い?」    □  

▷ □ 「……………………正義の、味方?」 □ ◁  

 

 

 

「かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 何だ何だ何だ何だ!?

 何っつった、何つった、今、(オレ)は一体何っつったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?

 ド畜生! 正義の味方ぁ?? 正義の味方?? 正義の、味方だぁぁぁ?

 何、ケツの穴の青臭ぇガキでもぬかさねぇこと、ほざきやがるッ!

 ()()()か、()()()か! ()()()(オレ)に言わせやがったのかッ!?

 間の抜けた面してるだけじゃ飽き足らず、胡散クセェ香具師でも言わねぇこと喋らせやがって!!」

 

 

  □ 「でもカッコよかったですよ、正義の味方」  □  

▷ □ 「さっきの台詞、なんか決まってましたし!」 □ ◁  

 

 

「てぇぇぇ…………めぇぇぇぇ…………えぇぇぇ…………!

 頭から炉に突っ込んで、刀の材料にしちまうぞ!?

 

 かーーーー!

 

 ったく、ギャーギャー喚く(オレ)がみっともねぇ。

 うし、仕切り直しだ。

 一つ、小話でも頼まぁ。

 おめぇさんが旅した世界の話でもいいし、イカれちまう前の日本の話でもいい」

 

 

 鉄を鍛える音が、また、小気味良いリズムを作る。

 

 

  □ 特異点の話をする   □  

  □ 亜種特異点の話をする □ 

▷ □ 日本の話をする    □ ◁

 

 

▷ □ 「では、日本の話を。日本は————、」 □ ◁  

 

 

  □ 「平和です」              □  

▷ □ 「豊かです」              □ ◁ 

  □ 「エロです」              □  

  □ 「村正さんが登場するゲームがあります」 □  

  □ 「二次元に生きています」        □  

 

 

「いいねぇ! 豊かか。

 あー、言ってたなそいや、このしゃどう・ぼーだーみたいなカラクリ車があンだろ?」

 

 

▷ □ 「車は、大体一家に一台あります」 □ ◁ 

 

 

  □ 「少し物が多すぎるかも知れませんが、」 □ 

▷ □ 「平和ですし、良いところだと思います」 □ ◁ 

 

 

「おぉー、言うじゃねぇか、物が多すぎる!

 ははっ! 腹空かせて泣きじゃくる赤ん坊をあやせなくて困るのはもうねぇってか。

 そんな日本の礎にちぃっとでもなれてたら、文句はねぇなぁ」

 

 

 となれば、畳み掛けるには————、

 

 

  □ 政治かな? 村正さん意外と好きそう                   □ 

  □ 刀剣、剣術、剣道。現代の剣の今を伝えよう                □  

  □ タイガー毒電波を受信! English Only Go My Way、オケー!?      □ 

▷ □ 春画、そう春画一択! 現在までの春画の変遷を語る、いや語らして下さい! □ ◁ 

  □ ゲームとか? スマホゲー、パソゲー、ゲーセン、家庭用、どれにしよう?  □  

 

 

「…………マジか?」

 

 

▷ □ 「マジです」 □ ◁ 

 

 

「大マジか?」

 

 

▷ □ 「大マジです!」 □ ◁ 

 

 

「…………おめぇ、歳いくつだ?

 あンなもんはガキが見ていいもンじゃねぇぞ?」

 

 

▷ □ 「(昔の基準なら)もう成人ですので!」  □ ◁ 

  □ 「こう見えて(精神年齢は)二十歳です!」 □ 

 

 

「その話、ましゅに全部確認取るぞ?」

 

 

▷ □ 「ブッハーーーーーーーーーッ!?」     □ ◁ 

  □ 「お代官様、それはあんまりにございます!」 □ 

 

 

「ばーたれ。

 あンなもンは一人でこっそり楽しむもンであって、誰かと語るような代物じゃねぇ」

 

 

▷ □ 「あたっ」       □ ◁ 

  □ 「肝に命じます…………」 □ 

 

 

 こうなれば————!

 

 

  □ 伝家の宝刀、カルデアあるある小話集、行きます!          □ 

  □ 退かぬ、媚びぬ、省みぬ! 春画を押し通す!!           □  

  □ 基本に帰ろう、よし、政治だ                    □ 

▷ □ 村正さんが宿ってる、()が気になる…………              □ ◁ 

  □ 言うしかないか…………あの最強セイバー決定トーナメントの真の結末! □ 

  □ そういえば、村正さんの他に鍛治匠と呼べる存在を二人知ってる    □ 

 

 

「お」

 

 

「やっほー。

 なーに話してんの?」

 

 

「お二人ともこちらだったんですか」

 

 

「いやな、こいつがとっておきの面白い話をしてくれてるとこだ」

 

 

▷ □ 「………………え?」     □ ◁ 

  □ 「その無茶振りは一体!?」 □ 

 

 

「え…………先輩のとっておき、ですか?

 私、すっごく気になります」

 

 

「おー、こいつは期待できるじゃねぇか。

 ましゅにも隠してた秘蔵話かぁ、さてさて何が飛び出すンだ?」

 

 

「じゃ私、みんな呼んできまーっす!」

 

 

「あ! 私もお伴します、武蔵さん!」

 

 

 

▷ □ 「あわわわわわ…………」          □ ◁ 

  □ 「どうしてこうなった、どうして…………!」 □ 

 

 

 

 

 

 集い集まり、宴は始まる。

 

 

「よし、先陣は俺が切らしてもらう!

 これは————栄光と勝利、逆境と逆転、苦悩と決断、そして…………愛の物語だ」

 

 

 語らい、笑い、共に過ごす。

 

 

「————そうなってしまっては、もう言わざるを得ないではないか、諸君?

『モリアーティー、お前もか!?』、と!!」

 

 

 同じものを目指し、同じ時を過ごす旅人達。

 

 

「一つだけ、どーしても一つだけこれだけはっていうのがあるんだよね。

 あの映画と本は実は意外に楽しめちゃったけど…………これはダメ!

 ダヴィンチ丸秘エピソード集みたいなのに纏められてるんだけどさー、本当は違うんだよなー。

 仕込んだのは違くて————」

 

 

 待っているのは、死闘と決戦、血が流れずして終わるはずもない。

 

 

「私が戦った中で一番強い奴は誰か?

 ————んーーー、選べません! 多すぎて!!

 だけどね、私が戦った中で、一番長い時間戦ったのは、なら一人います。

 もーねー、私よく餓死しなかったなって今でも思うもん」

 

 

 それでも今は、

 

 

「実は…………いつかホームズに聞こうかと思ってたことが一つあんだよ。

 いつにしよ、いつにしよ、って先延ばししちゃっててさ。

 でもなー、これ、ホームズには悪いんだけどさぁ…………、

 この謎、ホームズ(お前)でも絶対解けないから」

 

 

 ただ今だけは、

 

 

「私の番か、うむ、ついに、ついに私の番が来たか!

 ふっふっふっふっふ————————!

 はっはっはっはっは————————!

 これは、事件だぞ、お前達!

 何故ならば、何故ならばだなぁ!

 むふふふふふふふふ!

 この話は、我が、錬金術の大家! いや、現代魔術における錬金術の頂点を極めた! といっても多分過言ではないと日々隠れてこっそりそうなっておくれと私は一人願っておるのだが!

 その我がムジーク家の! 最大! 最強! 至高! 絶品の! 魔術刻印!!!

 その名も! 聞いて驚くなよ、腰を抜かすなよ! 何故なら! その名前すら本来は言うことを禁じられておるのだ! そうとも! 名前を言ってはいけないあの人を真似たんじゃないぞ! ここは絶対に重要だから決して忘れるんじゃない! 名前を言ってはいけないあの人の方が、後だ! きっと!!

 本番はここからだからだぞっ!

 それこそ! 『変成鉄腕・極解、鋼鉄鉄器G(ゲー)ムジーク』!! その全てを————、

 言えるわけないだろ、バカモンがっ!!!

 一族の者でもないお前達に教えてあげると思ったか、バカめが!

 んふふふふふ、しかし、んふふふふふ、私とてTPOを弁えておる大人!

 所長たる私の、人間としての、大人としての! 器と度量の広さをお前達に教えてやろう! んふふふふふふふふ!

 つまりだな、私がこれから! 特別に! 特別に!! 特別に!!! お前達に話してやるのは、その魔術刻印の、」

 

 

 大切な友との、かけがえのない時間を、

 

 

「————それじゃ、長い話を一つ」

 

 

 心から楽しもう。

 

 

「コホン、私の番ですね。

 私は、映画の話をさせてください。

 今まで見た中で、一番面白かった、ある映画の話です。

 その前に…………皆さんに聞かなくてはいけないことが、一つだけあります。

 ————————Wars or Trek(ウォーズ・オア・トレック)?」

 

 

 またいつか、

 こうやってみんなで笑い合える時が来ることを信じて。

 

 

▷ □ 話すのは…………、 □ ◁  

 

 

  □ 聖女の話。自らを魔女と殺した人々を守ろうとした守護者の話          □

  □ 皇帝の話。豪華絢爛にして天真爛漫な我が道を征く少女の話           □

  □ 航海士の話。七つの海を股にかける、強敵と財宝を巡る冒険の話。        □

  □ 反逆の騎士の話。世間から怪物と恐れられた者達の奇妙で優しい友情の話     □

  □ 狂戦士と癒し手の話。たった一人で戦争を成す者とそれを根絶しようとする者の話 □

  □ 騎士達と王の話。騎士達が貫いた忠誠と、それに答えた王が掲げた理想の話    □

  □ 賢き王の話。その庇護の元、どんな窮地でも生きることを諦めなかった人々の話  □

  □ あの人の話。世界を救うため、微笑みながらその命を捧げた勇気ある青年の話   □

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決戦の時、迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(第七話へ続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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