FGO二部二章・改「狂焔之巨人王と三人のセイバー」 作:hR2
女王の城の奥深く、少女は一人想う。
この異聞帯に召喚されるもすぐに捕縛され、行動の自由を大幅に制限されている身ではあるが、激突の時が迫っていることぐらい感じられる。
二つの陣営、二つの在り方、二つの信念、二つの生き方。
それは決して交わらない。
戦わずして終わることはない。
血が流れ、死が訪れずして決着することはない。
「早かったかな。
もうこの異聞帯が成立するか消滅するかの、決着の時を迎えようとしている。
うーん。
本来なら、そうね、竜殺しの英雄に招かれるように、その花嫁が現界するはずだった。
それが英雄の望みであり、彼女の望みでもあるのだから。
どうかな、勝算はあるつもりなのよね。
勝てる、見込みはある。
竜殺しの英雄はその花嫁でなければ普通は倒せないといえるけど、あの剣士はすっごく昔に普通を捨ててしまった強さだから。
でも、
なくはない、勝てるという可能性はゼロじゃないわ。
けれど、花嫁じゃない、ってのは吉と出てくれるのかしら?」
言葉が中断され思考に入る。
感じているのは一つの存在、一つの悪意、一つの終焉。
この異聞帯の状況を鑑みれば現界して当然であるブリュンヒルデ。
大英雄の花嫁がいないことから裏付けられる一つの推察。
何よりも、微かに、いやはっきりと感じられる————炎の熱。
勝てるのか、全てはこの質問に尽きる。
しかし、そう叫ぶ自分がいるが、そんなことよりも重要なことがあるでしょう、と叫ぶ自分がいるのも事実。
「…………。
みんなとお喋りしたかったな…………特に、
今回はそんな機会はないみたい。
失礼しちゃうわよね、私に気付かないでこの世界を終わらせちゃおうとしてるのよ?
こんな可愛いレディをエスコートしないでほったらかしにしておくなんて、男としてありえないんじゃないしら?
むぅーーーーーー、今度会ったらとっちめてやるんだからぁ〜。
…………怒らない怒らない、お姉ちゃんは怒っちゃダメ。
守ってあげないとね?
この牢を維持できなくなるか、維持している場合じゃなくなれば会えるけど、そんな状況っていうのはつまり————」
勝利を、何よりも再会を。
今はまだ祈ることしかできないけれど、巡り会えるという運命の糸はほつれていないはずだから。
「汎用人類史の守り手よ、カルデアの者達よ、あなた達の健闘と勝利を祈っているわ。
あなた達が守ろうとする明日を、私、見てみたいもの」
[第七話 冬の少女は一人想う]
そして、
戦いの時。
(第八話へ続く)