FGO二部二章・改「狂焔之巨人王と三人のセイバー」   作:hR2

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最終話 狂焔之巨人王と三人のセイバー

 

 

「やめろ」

 

 

 魔眼をくり抜こうとするオフェリアの右手を、村正が止めた。

 

 

「おめぇみてぇな先も華もある娘っ子が、自害なんざ選んじゃいけねぇ。

 

 いいか、死ぬのはなぁ————、

 (オレ)やなぽれおんみてぇな、もう人生終わっちまってる奴の仕事なンだよ。

 

 第一、おめぇ()()()()()()()だろうが?

 

 あの野郎、勝手に逝っちまいやがった。

 (オレ)らを残して、指揮官が先にくたばってどうすンだよ、なぁ?

 

 これぁな、()()()()なンだ、あいつのな。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、あぁン?」

 

 

 

 

 現界したスルトの炎剣の一撃が下された。

 

 

 牢屋に拘束されていたが自由となったシトナイ、その彼女を守る巨人が受け止め、スカサハ=スカディが神鉄の守護を施すも————、

 

 マシュが決死の覚悟でその盾でスルトの炎を防ごうとする寸前、

 

 ナポレオンがその宝具でスルトを砲撃した。

 限界を超えることで消滅という代償を支払いながらも、スルトに深い傷を与えることに成功。

 

 

 この世界に虹がかかり、

 

 彼の声と思いを知り、何よりもその虹を見たオフェリアは、一歩、足を踏み出した。

 

 

 

 

「なら、どうするっていうの?

 ごめんなさい、策があるのなら聞かせてくれないかしら?

 ()()()()()()()()()()

 

 

『スルトの在り方は、神霊というよりはサーヴァントだ。

 例え令呪がなくなろうとも、サーヴァンには現界するために楔が必要だ。

 楔、いや、要石か、その存在をこの世に留めるためには。

 その要であるミス・オフェリア、いや失敬、ミセス・オフェリアの魔眼を破壊すれば、奴の戦力は大幅に低下する。

 我々でも————、十分勝てる程度に』

 

 

「ふざけたこと抜かしてっと、おめぇから先にぶっ飛ばすぞ、ほーむず」

 

 

「ええ。

 私はミス・オフェリアよ、ミス。

 ミセスじゃないわ。

 まがり間違ってでも、ミセスなんて呼ばないでくれる?」

 

 

 

(オレ)はなぁ————もう、オレは、誰にも、死んでほしくない。

 

 そんなことは、もうごめんだ。

 

 誰かの犠牲がなきゃ成り立たないものに、もうオレは、乗りたくない。

 

 このみんなで、誰一人欠けることなく、スルトを倒す」

 

 

 

「だから理想論じゃなくて、現実を、」

 

 

 

「————策ならある。

 

 あの()()()()()をぶっ倒すための策ならな」

 

 

 

 

 そうして、

 

 千子村正は、

 

 ——————その、とんでもなく馬鹿らしい、()()()を語った。

 

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』

 

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 

『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』

 

 

 

  □ 「流石に、」     □ 

▷ □ 「二人とも笑いすぎ」 □ ◁

 

 

「バカじゃないの?

 バカじゃないの?

 バカでしょう、貴方?

 バカすぎるわよ、貴方。

 一秒でも貴方の話に耳を傾けた私がバカじゃない。

 ここでスルトを止められなければ、あらゆる世界が死滅するのよ。

 悪いけどバカは黙っててくれないかしら、時間の無駄よ」

 

 

『そうだ、そうだぞぅ!

 その女と同じ意見なのは癪に触るが、

 第一その女は、自分の意思で、自分から魔眼を摘出する気だったろうに!

 死にたい奴には死なせとけ!

 何もせず黙って死なすんだ、そそそ、そうでなければあんな化け物、勝てるはずなかろう!!』

 

 

『コペルニクス的転回とはお世辞にも言えまい!

 夢想家がその夢想を垂れ流しているか、妄想病患者の鬱的な妄想が重なったものだろう。

 論理性の欠片も無い主張ではあるが、ハハハハハハハハ!

 だからこそ面白い話ではないのかね、諸君!?』

 

 

「…………先、輩?」

 

 

▷ □ 「行けるような気がする、」       □ ◁ 

  □ 「気のせいじゃないと思うけど…………」 □ 

 

 

「やっぱり…………!」

 

 

「確認せねばの、」

 

 

「、の前に…………、

 …………できんのか?」

 

 

「残念ながら、可能という他ない。

 それがルーンというものの在り方なのだから。

 ちと、渡る橋が心許ないが、できる。

 

 二つほど、話しておかねばならぬことがある。

 一つ、オフェリア、お主はスルトと繋がっておるな?」

 

 

「…………はい。

 それに、スルトに侵食されている状態です。

 私という自我を保っていますし、問題はありません。

 ですが…………

 スルトの、炎だと思いますが、が、私の中に、少しですが、入っています」

 

 

「し、侵食!?」

 

 

「であろうな、諦めの悪いあやつならそれぐらいの芸当はしよう。

 ————が、()()()()()()()()()

 

 

「…………え?」

 

 

「お言葉ですが、スカサハ=スカディさん、スルトの、炎ですよ?

 そんなものが体内にあったら、オフェリアさんは…………」

 

 

「あやつを殺せばよい。

 そして奴の本体の中にある核を粉々に壊せし、消滅させればよい。

 炎の通り道があるなら核をおぬしへ移すことは理論上は可能だが、そんなことをされれば人間としての肉体と精神と心魂が保たぬ、すぐさま崩壊し灰燼と消える。

 オフェリアへ流し込まれた炎から新たなスルトが生まれるということはない。

 あやつを殺し、おぬしは()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それだけのこと」 

 

 

「そんなこと、私には…………」

 

 

「できぬか?

 これなる場は、何をしている場か?

 スルトを殺し、この世界を、そして遍く世界を救うための場である。

 本来ならば刃交えなければならぬ我らが、共にあるとはそういうこと。

 全世界の救済と比べれば、()()()()()()()()()()()()()、泣き言を言うでない」

 

 

「………………」

 

 

「二つ、これが一番大切なのだが……………。

 シトナイ?」

 

 

「ふふふ。

 ええ、そうよ。

 同意するわ。

 とんでもないデタラメよね。

 でもそれこそが人という種がもつ可能性」

 

 

「オフェリア、スルトは()()()()()な?

 それも、()()()

 致命傷とはいかぬかもしれぬが、()()()()()()()()()()()()()()()、違うか?」

 

 

「ナポレオンさんの宝具が、クリティカルに決まってたってことですか?」

 

 

「…………いえ、違うわ。

 あの人じゃない、武蔵よ」

 

 

▷ □ 「————!?」   □ ◁ 

  □ 「流石武蔵ちゃん!」 □ 

 

 

『————! そうだったのか! ミス・宮本!!

 神代を終わらせるには、あの炎では熱量が足りていないと思っていたが、ミス・宮本のあの一撃!

 その刃、合理的疑いの余地が入る隙間がないほどに、シグルドの中のスルト、スルトの中の核、それだけに留まらず、核の中にあるべき()()()()()()()へ届いていたのだろう。

 ()()()()————そう、あの一撃はスルト本来の力からすれば、()()()()()()()()()()()()()()()!』

 

 

「とんでもない使い手ね。

 武蔵がスルトに負わせた傷は、()()()()()()()()

 自分という存在の大元への傷、()()()()()()()()()()()()()()よ」

 

 

  □ 「ということは、」  □ 

▷ □ 「できるってこと?」 □ ◁

 

 

「…………できるんですか!?

 オフェリアさんが死なずに、スルトを倒すのは、できるんですか!!」

 

 

「ゼロではない、という程度にな。

 第一、()()()()()()()()()()

 ナポレオンの砲、シグルドの魔剣、そして、あるならばブリュンヒルデのルーン、か。

 どれか一つでもあれば、であるが…………」

 

 

「それは…………なくはない、手ならある、と言っておくわ、ふふふ」

 

 

『みんな、みんなー。

 もしかしたら気付いてないのかも知れないから確認するけどさー。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()————これが一番勝率高い作戦なんじゃない?

 言いたくないけどさ、こんなことー。

 でも、誰かが言わなきゃいけないから言うけど…………、

 オフェリアには気の毒だけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 救わなきゃいけないのは、スルトが滅ぼす()()()()()()()()()()()()()()、これを忘れないで』

 

 

「私は、村正さんの作戦にかけてみたいです!!

 もし、成功すれば、もし、できるのなら、オフェリアさんが死ぬ必要はないんですよね?

 だったら…………私は、かけてみたいです、その可能性に!」

 

 

「でも、それはね、マシュ、」

 

 

「私は、私達は、カルデアは! もっと絶望的なピンチを何度も切り抜けてきました!

 それでも勝ってきた、守ってきたんです!!

 そうしなければ、ならなかったから!

 そうするのが正しいことだと信じていたからです!!

 

 でもこれは、オフェリアさんに犠牲になってもらうのは、私は、私は、絶対納得できません!

 道はあるんですよね、道が、あるのなら、私がそれを切り開きます、私がスルトの炎を全て防いでみせます!

 

 だからお願いです、お願いします、私は、あるんです、オフェリアさんにお聞きしたいこと、お話したいこと、たくさんたくさん、いっぱいあるんです!

 

 オフェリアさんと同じ時間を一緒に過ごすチャンスを、私にください!!

 

 やらせてください、行かせてください、その道を!!」

 

 

 

 

「私もシロウの案に賛成!

 ふふふ、本当にいっつもバカなこと考えつくんだから」

 

 

「勝てるんだったら、バカでいい。

 これでも勝算は十分あると思うけどな」

 

 

「だーかーらー、それが無謀だっていうの。

 もうちょっと大人になりなさいっていつも言ってあげてるでしょ?」

 

 

「イリヤには言われたくないな。

 イリヤこそ、牛乳飲まないといつまでたっても大きくなれないぞ?」

 

 

「それは迷信。

 ミルク飲んだぐらいで大きくなれたら世話ないわ」

 

 

「そうか?

 桜がそんなこと言ってたとか聞いたけど?」

 

 

「————!?

 スケべ! バカ! 変態!!

 私をそんな目で見るとかあり得ないんだから!

 去勢するわよ、このペドフェリアロリコン変態シロウ!!」

 

 

 

 

 

 

「ほほほ、何やらお盛んじゃの。

 じゃが時間がない。

 決めるか」

 

 

 

 

 

 この場にいる者は、

 

 決断しなければならない。

 

 確率の高い道を行くか、夢物語を追い求めるか、それとも————?

 

 

 

 マシュ・キリエライトは盾を握り、

 

 千子村正は刀を執る。

 

 スカサハ=スカディはただ静かに皆を見つめ、

 

 シトナイは嬉しそうに村正の側にいる。

 

 オルトリンデ、ヒルド、スルーズは残る戦乙女達と一緒に女神の決定を待ち、

 

 オフェリアはただ力無く首を垂れる。

 

 ナポレオン、シグルド、ブリュンヒルデは、この場にはいない。

 

 そして、

 

 

  □ 「みんな、」   □ 

▷ □ 「あの虹を見て」 □ ◁

 

 

「?」

 

 

「虹ですか?」

 

 

『ムッシュ・ナポレオンの宝具か。

 対象物となったスルトが弱っていたせいか、未だ残っている。

 だが…………』

 

 

「薄い。

 あちら側が透けすぎておる。

 もう限界ぞな。

 例えスルトが触れなくとも、すぐにでも塵と消えようか」

 

 

「よく保ってるじゃない、褒めてあげなきゃ。

 消滅してなきゃおかしいのに、まだ残ってる。

 よっぽど、この世界が気になるのね。

 ふふふ、この世界じゃなくて、この世界にいる誰かよね、きっと」

 

 

  □ 「オフェリアさん、」 □ 

▷ □ 「何が見えますか?」 □ ◁

 

 

「……………………………………………………」

 

 

  □ 「僕には、」   □ 

  □ 「私には、」   □ 

  □ 「俺には、」   □ 

  □ 「あたしには、」 □

 

 

  □ 「スルトを倒した、」 □ 

▷ □ 「みんなが見えます」 □ ◁

 

 

  □ 「オフェリアさんも、」     □ 

  □ 「マシュも、」         □

  □ 「村正さんも、」        □

  □ 「シトナイも、」        □

  □ 「スカサハ=スカディさんも、」 □

  □ 「ワルキューレのみんなも、」  □ 

▷ □ 「全員一緒です」        □ ◁

 

 

「……………………………………………………」

 

 

  □ 「だからみんなで、」 □ 

▷ □ 「行こう」      □ ◁

 

 

  □ 「終焉を越えて、」 □ 

▷ □ 「明日へ——!」  □ ◁

 

 

 

 

 

[最終話 狂焔之巨人王と三人のセイバー]

 

 

 

 

 

  □ 「でかーーーーーーー!!」 □ 

▷ □ 「メラメラだーーーー!!」 □ ◁

 

 

 近くに行けば行くほど実感せねばならない。

 生物としての違い、内包する力の桁が違いすぎてどうにもならないのだと。

 

 だが、そんなことで諦めてしまっては、

 カルデアの者だとはとてもとても言えない。

 

 

「この戦、()()()()()となる、心せよ!

 村正よ、お主の申す大ボラを真と実現させるか!」

 

 

「頼むぜ。

 っても、あんたには張り手の一つでもかまさねぇと収まりつかねぇ、やっぱな。

 終わったら頼む」

 

 

「此の期に及んでもまだ申すか。

 ふふふ、愛い奴、愛い奴」

 

 

「むー! シロウを誘惑しちゃダメー!

 シロウってば綺麗な女の人にはすぐころっといっちゃうんだから」

 

 

「すまねぇな、シトナイ。

 おめぇさんと漫才やりたいのは山々なんだが————今はマジだ、後でな」

 

 

「はいはい、ちゃんとサポートするわよ。

 でもこの霊基だとルーンが上手く使えないのよね」

 

 

 

 顔を見上げなければ、巨人王の表情をうかがい知ることはできない。

 分かるのはそう、肌を刺すような殺意の塊の熱気。

 

 冬の大地と天空が、スルトが発する炎により塗り替えられていく。

 その悪意————頭がおかしくなりそうなほどの量を、世界にぶちまけている。

 

 

 この戦いは、一度始めたら後戻りは決してできない。

 

 たが————、

 進まなければ、戦わなければ、未来は、明日は、決して掴むことはできない。

 

 

 

  □ 「行こう!!」    □ 

▷ □ 「勝とう!!」    □ ◁

  □ 「ぶっ飛ばそう!!」 □ 

 

 

「————はい!」

 

 

「おう!」

 

 

「うむ」

 

 

「うん!」

 

 

「…………」

 

 

「命令を承服」「命令承服!」「命令承服」

 

 

 

 

 村正、空拳に戻り、

 

 目を閉じて、内なる呼び声に集中する。

 

 

 シトナイ、

 

 村正の胸板に両手を押し当て、

 

 

 

「……………………」

「……………………」

 

 

 

 この世界、最大となる戦いが、

 

 ——————始まった。

 

 

 

「体は剣で出来ている」

「I am the bone of my sword」

 

 

 

「守りの要となるは、マシュ!

 吐いた大言、飲み込むでないぞ、己が盾を持ってして真としてみせよ!」

 

 

「————はいっ!!」

 

 

 

「血潮は鉄で、心は硝子」

「Steel is my body, and fire is my blood」

 

 

 

「攻めの要となるは、村正! そして我が娘ワルキューレ達!

 最も激しい消耗が用意される。

 だがあえて命ずる、死ぬことは許されん、一人も欠けることなくスルトを倒せ!」

 

 

「任務了解」「任務了解」「任務了解!」

 

 

 

「幾たびの戦場を越えて不敗」

「I have created over a thousand blades」

 

 

 

「心せよ、()()()()()()()()()()()()()

 そこなカルデアのマスターが倒れても終わるは終わるが、我らの道、()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

「はいっ!」

 

「任務了解」「任務了解」「任務了解!」

 

 

 

「ただ一度の敗走もなく、ただ一度の勝利もなし」

「Unaware of loss, nor aware of gain」

 

 

 

「オフェリアよ、村正らと共に上へ行くとはスルトと直接対峙するということ。

 その覚悟、あろうな?」

 

 

「…………この作戦が失敗すれば、すぐさま私は魔眼を破壊します。

 スルトの存在を弱らせることで、再起に繋ぐための撤退の時間を稼ぐことができるはず。

 そのタイミングは、戦闘を直接見た方が良い、違いますか?」

 

 

「ならば、何もいうまい」

 

 

 

「担い手はここに独り、剣の丘で鉄を鍛つ」

「Withstood pain to create weapons, waiting for one’s arrival」

 

 

 

「勇士達よ、戦乙女達よ!

 お前達が挑まんとするは、神々の黄昏!

 あらゆる神々が死滅し、世界は焔に包まれ、神代の世界が終焉を迎えるもの!

 我らはその終焉を生き残りしもの、歯車が狂ったが故に()()()()()()()()()者!!』

 

 

 

「ならば我が生涯に意味は不要ず」

「I have no regrets. This is the only path」

 

 

 

「我らでは、乗り越えられぬであろう。

 所詮は生きながらえただけの、命ゆえに。

 だが————!

 我ら共にあるは、カルデア、人理の守り手達!

 その守ろうとする人理、我らの人理とは決して相容れられぬものなれど————!!

 この者達と、我らであれば————!!!」

 

 

 

「この体は、『無限の剣で出来ていた』」

「『Unlimited Blade Works』」

 

 

 

「乗り越えて行けるとも、この神々の黄昏を————!!!」

 

 

 

 詠唱が終わり、

 

 世界が展開された。

 

 

 

 シトナイの補助により、完成した詠唱節。

 しかしそれは、固有結界にあらず、宝具にあらず。

 結局のところはそう、鍛治工房という陣地展開。

 

 雪原に、一面の剣が咲き乱れる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「————ほう。

 どれもこれも、惚れ惚れするほどの冴えを見せておるではないか。

 やはりこれならば————足りる。

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 それは、千子村正という刀鍛治が作り出す()()()()

 冬の雪広場に、どこまでもどこまでも刀がある。

 

 千子村正が鍛えた刀剣達だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何故ならこの刀達は、千子派と呼ばれる刀鍛冶の一派が作成した全ての刀剣。

 村正の名とは、()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

 そう、二代村正も村正を名乗り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 斬味鋭い刀でもなく、刃紋美しい刀でもない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()————その刀こそ()()の名を冠する我らが目指す刀。

 

 

 だからこそ、村正ではない村正達が鍛えた刀達が喚ばれている。

 千子村正という英霊は、この村正だけなのだから。

 

 しかし、どの刀も()()

 同じ理想を掲げ、同じ夢を追い求め、同じモノを斬ろうとしている。

 

 

 その刃へ、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 指揮棒のような杖が動き踊るたびに、刀の刀身一本一本に原初のルーンが刻まれていく。

 

 千子村正が鍛える刀とは、魔術的な特性を持たない。

 そんなものに頼らずに、ただ刀を鍛えるところで、()()を斬ることを目指しているのだから。

 

 刀剣に宿った心中、スカサハ=スカディには、非常に心地よい。

 なるほど、もし影の国の魔女がこの場にいたのなら、自分が招く勇者達にこの剣を与えたいから全部くれないか、と無理難題を言い出していただろう。

 

 筆が乗る、杖が走る、ルーンが踊る。

 刃が目指す罪業の清算、そのためにはスルトを撃破する刃が必要なのだ。

 なれば、刀工が鍛えた刀を、魔女にして女神がさらに鍛える————そう、これならば届くはず、スルトの撃破という大将首を討ち取れる刃へと!

 

 

 

「征くがいい、勇士達! 戦乙女達!

 我がルーンが与えた空駆ける翼にて、スルトの首を()って参れ!」

 

 

 戦乙女達が、原初のルーンが刻まれた刀を手に、空へと登っていく。

 

 

「私が上へ、刀を上げるわ。

 貴方達はスルトの撃破にだけ集中して!」

 

 

 その杖が止まることはない。

 描き続け刻み続け、刃を刃を刃を、刃を————神すらも屠る剣へと変貌させんとする!

 

 

 

 勇士が、戦乙女が、英霊が、鍛治匠が、英霊達のマスターが、

 

 己が持つ武器を携えて、ただ真っ直ぐに空をひた走り————、

 

 高く、ただ高く空を超え————!

 

 

 

 

 そして、

 

 ——————対峙する!

 

 

 

 

  クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!

  来たか! 塵芥ども!

  ククク…………! 嗚呼! ()()! ()()!!

  クハハハハハハハハハハハハハハハ!!

  オレは、今、本当の意味で生きているのかも知れん!

  何故ならば、!!                

                           」

 

 

 

 戦意が、炎となって爆裂する。

 空中が何度も何度も爆発する。

 スルトの悪意と戦意が、この世界を終わらせようと爆ぜ狂う。

 

 衝撃と熱量、凄まじいことこの上ない。

 このスルトこそは、スルト=フェンリル。

 終焉の時において、フェンリルを喰らい込み、焔だけでなく氷の権能も有するモノ。

 神霊の域に達している存在は、ただそう思っただけで、外界に破壊の爪痕をばらまいていく。

 

 

 その攻撃の熱波が、

 スカサハ=スカディとシトナイが練り上げたルーンの防壁とぶつかり合う。

 

 

 この威圧感と迫力————!

 かつて対峙したどんな超級の存在よりも、はるかに()()!!

 

 

「くぅぅぅぅ!?

 先輩、オフェリアさん、大丈夫ですか!」

 

 

  □ 「なんとか!」     □ 

▷ □ 「マシュこそ平気!?」 □ ◁

 

 

「この人の心配はしないで、マシュ。

 貴女には遠く及ばないけど、一人ぐらいなら」 

 

 

「はい! 先輩を頼みます、オフェリアさん!」

 

 

「…………っ!!」

 

 

 

  オレは! オレは! オレの意思を持ってして動いている!

  星が押し付けた役割でも! スルトとして定められた事象でもない!

  くだらぬ作り物でオレという存在を歯車とする世界すら不要不要!

  痛みだとも! 痛みだ!

  ムサシ! ナポレオン!

  オレは! オマエを! 殺したい(終わらせたい)!!

  塵芥の分際でオレを傷付けた者共!! 嗚呼! 痛いぞ!!!

  

  オマエ達が存在する証! その全てを灰燼と斬り捨ててやろう!!

  まずはこの世界! だがそれは手始め!! ありとあらゆる世界を滅ぼそう!!

  そして! 全てを成り立たせている世界というふざけたシステムを燼滅させる!!

  そこまでしても! オレのこの昂りはと、

 

  —————————————————グァァァァァァァァァアアアッッッ!!??

                                         」

 

 

 

「悪りぃな、ドサンピン。

 こっちはテメェの次が待ってンだ。

 ————手早くたたませてもらうぜ」

 

 

 

  □ 「一撃が!!」 □ 

▷ □ 「入った!!」 □ ◁

 

 

 村正の一刀、スルトの纏う焔を斬り裂いて————()()()()()()

 それだけに留まらず、()()()()()()

 

 

 スカサハ=スカディの原初のルーンと、『千子村正』が鍛えた剣の冴え。

 何よりも信念、己の信じる道をどこまでも不器用に押し通す鉄心が、焔を裂き氷を割り、

 スルトの体躯に大きな、村正の刀の大きさを考えれば信じられないような、大きな傷をつける!

 

 

 己の何十倍以上も巨大な氷焔の巨人を前にしても、

 この男、千子村正、どこまでも大胆不敵、豪快にして豪胆。

 

 

「スルト=フェンリルへのルーン強化刀による攻撃、入りました!!

 斬り跡、目視で確認!

 焔の体躯にも、氷の体躯にも、どちらにも傷を与えています!」

 

 

 理想とは、口で語るものではない。

 その背中で語ることができなければ、それは理想ではない。

 

 それは生き様であり己の歩いた足跡。

 地面に這いつくばり、悔し涙で前が見えなくなっても追いかけねば、それは理想ではない。

 

 二人の生き様、二人の想い、二人の理想。

 どちらか一つしか現界することができないのだとしたら————、

 

 

「ぷっ、慣れねぇことはするもンじゃねぇが、泣き言言ってる場合じゃねぇ。

 ————チぃぃェストォォォォォォォォォォォォォォォォォォっっっ!!!」

 

 

 ()()

 二つの理想を体現する己こそ、我が望み。

 己の限界など、どこにもない。

 一つしか選べないなら、そんな己を、限界点より突破させる。

 

 

 再度斬線が走り、

 巨人の体躯を斬り裂いていく。

 

 

 そう、これなる千子村正という英霊こそは、

 

 

「やっぱぶった切るなら、薩摩の太刀(やり方)がピカイチだな。

 一太刀、いや二太刀までは保ってくれるか。

 おう、悪りぃがじゃんじゃん下から飛ばしてくれや。

 ————こいつは、オレが仕留める」

 

 

 ——————『あらゆる罪業の天元(根源)を断ち切る刃を鍛える、()()()()()

 

 

 

 

  □ 「速攻だ!!」       □ 

▷ □ 「急速再生が始まる前に!」 □ ◁

 

 

 

  クハァァァァーーーーーーーっっっ!!

  赤髪! やはりオマエはそうあるか!!

  ムサシには劣る、言わざるを得ん!

  ナポレオンにも劣る、宝具でない故か!? だが劣る!!!

 

  だが! ()()!!!

  まるでムサシにつけられた傷のように、疼いてしまうではないかッッ!!

 

  熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!

  この熱、この傷が癒えてしまえば消えゆく定めかっっ!!

  来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い!!

  熱を見せろ! その生を燃やし尽くし熱を見せろ! 熱なくば生に意味なし!!

  オレを超えて! 燃えてみせろォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!

                                       」

 

 

 

 スルト、文字通り()()()()

 

 これほどの大きさの生物となると、吸う、吐く、振る、ただ身体を動かすだけで、周囲へ壊滅的な打撃を与えうる。

 

 その巨人が、行動を開始する、反撃を開始する。

 

 ただ見ただけで、熱線が飛び、爆発する。

 ただ呼吸をしただけで、熱風が炸裂し、燃やし吹き飛ばす。

 

 腕を振りまわせば、その軌跡に大量の炎と熱を残し破壊が空を埋め尽くす。

 紅蓮が、雪崩となって押し寄せてくる。

 全てを飲み込む炎に、逃げる場所など存在しない。

 

 

「真名、凍結展開————呼応せよ、『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』っ!!」

 

 

 空に打ち立てられる、尊き城。

 スルトが自然発生させた暴焔の嵐から仲間を守るため、()()()()()()()()()()()

 

 

「ぐぅぅぅぅーーーーーーーーッッ!!」

 

 

 それは生物としての差。

 デカイとは、これほどまでの差となるのだ。

 

 

 だが、マシュが宝具解放という魔力を支払って得た小康状態。

 

 戦乙女達が、進軍を開始する。

 

 

「攻撃態勢を維持」「攻撃態勢を維持」「攻撃態勢を維持」

「状況を」「状況を」「状況を」

「敵戦力、スルト=フェンリル」「スルト=フェンリル確認」「スルト=フェンリル確認」

「スルトの炎と」「フェンリルの氷」「どちらの権能もある」

「近くに行ってはいけない」「至近距離への接近を禁止」「距離を維持」

「あれは神代を終わらす炎」「神殺しの終焉」「神性を殺すもの」

「でも、」「でも、」「でも、」

「攻撃を開始」「攻撃を開始」「攻撃を開始」

「生存優先指令を理解」「生存優先指令を了解」「生存優先命令を承諾」

「でも、」「でも、」「でも、」

「最優先目標スルト=フェンリル」「スルト=フェンリル」「スルト=フェンリル」

「自己の生存を考慮し、「自己の生存考慮!」「自己生存を考慮し、」

 

「スルト=フェンリルを撃破せよ!」「スルト=フェンリルを撃破せよ!」

「スルト=フェンリルを撃破せよ!」「スルト=フェンリルを撃破せよ!」

「スルト=フェンリルを撃破せよ!」「スルト=フェンリルを撃破せよ!」

「スルト=フェンリルを撃破せよ!」「スルト=フェンリルを撃破せよ!」

 

 

 その手にあるものは、大神より授かった槍にあらず。

『千子村正』によって鍛えられた刀を原初のルーンで強化した、スルトを傷つけ得る刃。

 

 戦乙女達は、スルトが発する爆熱暴風をあざ笑うかのように、空を滑空。

 大空を回り、勢いをつけ流星となり————手に持つ刀を、投擲する!

 

 

 

  ————————————————っ!!

                       」

 

 

 

 何十もの刃によって、一瞬にハリネズミと化すスルト。

 

 

「離脱成功」「離脱成功」「離脱成功」

「流血を確認」「流血、確認したよ!」「流血確認」

「敵の損、」「敵の損、」「敵の損、」

 

 

 何本もの刃に貫かれながらも、

 ——————スルトが、()()()

 

 

 

「くぅーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

「ぐォォううう!?」

 

 

「! 回避行、!」「回避、キャァ!!」「!!??」

 

 

 ただそれだけで、マシュを除く全ての戦力が、吹き飛ばされた。

 

 

「うぅぅーーーーー、なんて、バケモノ…………!」

 

 

 

  人形すらもオレを傷つけるか!!

  クハハハハハハハ!!!

  良い! それも良いぞ!

  スカディ! 貴様だな!? ここに顔を出さぬが貴様なのは知れている!

  随分手の込んだルーンを刻んでいるな?

  オーディンより受け継いたものか。

  実に貴様らしい! 無価値なゴミクズだな!!

 

  そうとも! ()()()()()()()()()()()()!!??

  オレの核は! ここだ! ここにあるぞ! 塵芥!!!

 

  オーディンの真似事をすれば! オレがくたばるとでも思っているのか!?

  オレが殺した老いぼれの技で! オレが死んでやるとでも考えるのか!!?

  そんな熱で! このオレがくたばるわけなかろうがァァァァァァァァァ!!

                                     」

 

 

 

 そもそも、スルトは、()()()()()()()

 例えその両眼をくり抜かれたとて、忿怒の核熱をたぎらせながら、

 だからどうしたのだと、終焉を始めるだろう。

 

 

 勝負は劣勢、大幅な劣勢。

 開始わずかで村正の攻撃が綺麗に入ったが、敵対行動を開始したスルトの焔に一つ踏み込めない。

 

 

 スルトが喚ぶ焔は攻防一体。

 敵を焼き尽くすと同時に、敵からの攻撃を燃やし尽くす。

 

 

 確かに、攻撃は入っている。

 

 全身を焼かれながらも村正、さらなる鋭さを以ってしてスルトの体躯を斬り刻む。

 スカサハ=スカディがルーンを施し、シトナイが上空の戦場へ運ぶルーン強化刀。

 斬っては捨て、斬っては捨てを繰り返す

 

 戦乙女達には、もう脱落者が出ている。

 確かにその投擲攻撃は、スルトに通じている。

 決死の特攻で、己の命と引き換えにスルトの体躯を斬り裂くものもいる。

 

 

 だが、

 

 

 だが————!!

 

 

()()()()()()()()…………!

 それを打つための布石の段階とはいえ、私達の布陣、圧倒的に火力が足りない!!

 スルトの急速再生が始まってしまえば、また最初からになる!

 村正の刀も戦乙女達も、数には限りがある! 無限では決してない!!

 もし、ここに————武蔵が入れば…………!)

 

 

 それは思わざるを得ないIf。

 

 シグルドを殺した宝具の一撃。

 あれならば、本当にこのスルトを真っ二つに両断していたはず。

 

 

(もし、シグルドが、私のサーヴァントとしていてくれたなら…………!)

 

 

 その宝具、『壊却の天輪(ベルヴェルク・グラム)』で、スルトの体躯に大穴を開けていただろう。

 

 

「——————くっ!!

 …………ン、…………あンだぁ?」

 

 

(もし、ブリュンヒルデが現界して、私達の

                             え?)

 

 

▷ □ 「わわわわわぁぁぁぁぁぁ!?」 □ ◁

 

 

「————あ………………きゃっ!?」

 

 

  □ 「ど、ど、ど、ど、ど、どこ投げるんですか、村正さん!?」 □ 

▷ □ 「おおおおおお、オフェリアさんに当たるとこでしたよ!?」 □ ◁

 

 

「悪りぃ、外すよう投げたつもりだったが、むずいンだよな、刀を投げるっつーのは。

 どうにもうまくいかねぇ。

 おう、綺羅目娘、目ん玉見開いてよっっく聞け。

 昔々、あるところにだな、()()()()()になりてぇっつー、ど阿呆がいた」

 

 

▷ □ 「村正さん、今、スルトと戦ってます!!!??」 □ ◁

  □ 「三行にまとめるの、お願いして良いですか!?」 □

 

 

「すぐ済む。

 そいつは、まぁ、頑張った。

 頑張って頑張って頑張って…………頑張った。

 どうなったかは————別にどうでもいい。

 いいか、オフェリア」

 

 

「…………えっ?」

 

 

「そいつは、さ、()()()()()()()()()()

 アーサー王のエクスカリバーがあれば、スルトを倒せるのに、とか、

 クーフーリンのゲイボルクがあれば、人を傷つける悪者を倒せるのに、とか、

 ギルガメッシュの蔵があれば、その中のものでたくさんの人が助けられるのに、とか、

 自分の力が足りずに、助けられなくて死んでいった人達を思いながら、すまない、すまないと、何度も何度も心の中で涙をずっと流しながら、

 それでも頑張った、そいつなりに、正義の味方っていうのを、目指し続け、歩き続けた」

 

 

 村正が、刀を構える。

 

 

「大事なのは、()()()()()なんじゃないか?

 一歩踏み出せれば、二歩目が出る。

 二歩歩ければ、三歩、四歩、次々出てくる。

 そうなれば、もう、()()()()()()()、止まらない、もう何が起ころうと。

 目指すものが遠かったって、高みにありすぎて届かなくなって、()()()()()()()()()()()()

 もっと速く走ればいい、もっと高く飛べばいい、できるんだ、できるんだよ、君がそう、諦めないで挑み続けて走り続ければ、きっと手がそこに届くんだ」

 

 

 その刀は、この世界ではないどこかで、

 武蔵に貸し与え、武蔵が振るった刀と同じ銘を持つ明神切村正。

 

 

「君は、もう、()()()()()だろう?

 あいつが、自称君の旦那のナポレオンが、君を引っ張って()()()()()()()じゃないか。

 ()()()()()()、君が目指すべき場所へ。

 一緒に行ってくれるやつだって、いるだろ?

 クリプターの連中は、置いとくとして————、

 そっちの道ではないところへ、歩いて欲しいんだけど————、

 マシュは、君と一緒に行きたいって、言ってくれるんじゃないか?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「はい、オフェリアさん!!

 私達の道は、もう二度と交わらないかもしれません!

 オフェリアさんが、何を思って、汎人類史(私たちの歴史)を抹殺し、空想樹を育てているのか、お聞きしなければならないことは山のようにあります!!

 私達には、戦うか、死か、それ以外の道はもうないのかもしれません!

 ですが! それでも! 私は、あの時! 皆さんと! 私達三銃士が一緒に過ごした時間は!

 絶対嘘なんかじゃなかったって、思いたいんです!!」

 

 

「——————————っっっ——————————!!!」

 

 

「ほらな。

 だからさ、オフェリア、」

 

 

 そして、

 

 

 

「…………投影開始(トレース・オン)

 

 

 

 魔術師の全工程が、始まり終わる。

 本来ならば、できるはずがないその魔術。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()ことで、()()()()()()()()()()()()()()

 

 ならばこれより始まるのは————、

 

 

 

 

「南無天満大自在天神、仁王倶利伽羅…………ッッ!」

 

 

 

 

▷ □ 「そ、そ、そ、その技は————!?」 □ ◁

 

 

 神域へと到達した剣士の最終奥義。

 握るはあらゆる怨恨の源にある業を断つ刃。

 

 そして何よりも!

 人々を傷つける悪を討つ、正義の味方の一刀!

 

 

 

 

 

「剣轟抜刀! ————伊舎那大天象ッッッ!!」

 

 

 

 

 

 大上段より真っ向から振り下されたその一刀!

 例え宮本武蔵に至っていなくとも、それ以上の狂おしいほどの理想への願いが刃へと宿る!

 

 その絶閃、雷光すらも遅いと叫ばんばかりに刹那の内に疾り斬る!!

 

 

 

 

 

  ガッ!? ————グァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーッッッ!!??

                                        」

 

 

 

▷ □ 「き、き、き、き、斬った————!!」 □ ◁

 

 

 文字通りスルトを、()()()()()()

 

 

 頭上から股下まで一文字の剣斬が走った。

 大音声の悲鳴と大量の血液が、世界を汚す。

 

 その一刀の斬撃力に耐えられなかったスルト、血を滴らせながらに後ろへと吹き飛ぶ。

 

 神剣の完璧な投影ができないように、神域に入っている武蔵の技は完璧に投影できない。

 ならばと二人の鍛治匠は己の理想と信念を剣に乗せることで足りない力を補った。

 

 

「————好機!

 戦線を押し上げます!

 ワルキューレの皆さん、例のものを!!」

 

 

「好機到来」「好機到来!」「好機到来」

「畳み掛けるわ」「畳みかけよう」「畳み掛ける」

「あれを」「あれを!」「あれを」

 

 

 村正が切り開いた血路へ、

 

 マシュが走り、戦乙女達が走り、

 地上にいるスカサハ=スカディも、シトナイも、前へ前へと動き出す。

 

 理由は皆それぞれ違う、目指す先だって決して同じではない、

 おそらくそれは、きっと、戦わなければならないことぐらい分かっている。

 

 それでも走る、そう走るのだ。

 

 

 勝利へ、

 その先へ、行きたいから。

 

 

 

 皆を導く一刀を放った村正も、走り出す。

 

 

 

「—————————ついて来れるよな?」

 

 

 

 微笑んだのは彼女へ向けた一瞬だけ。

 戦士は前へ、そう勝利へと、ひた走る。

 

 

 

▷ □ 「オフェリアさん!」 □ ◁

  □ 「さあ、行こう!!」 □

 

 

「………………っっ………………!」

 

 

 二歩目から先は、

 

 もう数えなかった。

 

 

 

 

 

▷ □ 「って何ですかアレーーーーーーーーーーー!!??」 □ ◁

 

 

「あー、アレな。

 (オレ)がなぽれおん張っ倒すのに使ったクズ鉄だ」

 

 

  □ 「あんなので殴られたら、」  □

▷ □ 「死んじゃいますよ、普通!」 □ ◁

 

 

「ま、生きてたからいいだろ」

 

 

「…………凄いルーンの刻み方するわね、流石は神代。

 あなたは近づかないで。

 死んだほうがマシな体験というのをしたいのなら止めないけど」

 

 

「標準決定」「標準決定」「標準決定」

「コース確定」「コース確定」「コース確定」

「推力確保、」「推力確保、」「推力確保、」

 

 

 

  これが、()()か!!

  あの木偶の坊達を殺戮しても味わえない充実感!

  神というやつは! ただの! 穀潰しか!!

  だからよく燃えたか!!

  クハハハハハハハハハハハハハハハ!!

  赤髪! オマエなら! これくらいはするだろう! して当然だとも!!

  ああ! あったまってきたぞ! オレが! オレが! オレになる!!

  おもちゃで遊ぶ気か!?

  ならば! オレも! 燃やしてやるとしよう!!

                                    」

 

 

 

 戦乙女達が、超巨大な脇差を担ぐ。

 

 その刀身、可視化されているだけでも何個のルーンが刻んだか分からないほど、

 多数にして精妙なるルーン文字が刻まれている。

 

 

『それが下にあるものの中では大きさでは最大の代物。

 あてよ、なるべく深くまで。

 ただし、狙いをつけ、そこに当てよ。

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

「命令了解」「命令了解」「命令了解」

「攻撃開始」「攻撃開始」「攻撃開始」

 

 

 しかし、スルト、未だになおも健在。

 傷口が醜く開き、未だその血流が落ち続けているというのに、焔を、更なる焔を喚び出そうとする。

 

 

「チッ。

 随分元気に育ったごぼうだな。

 効いてねぇってのか?」

 

 

「いいえ、効いてるわ。

 あなた達の攻撃は確かにスルトを傷つけている、削っている。

 けど、()()()()()のよ。

 その耐えられる苦痛やダメージの量が、私達人間やあなた達英霊とは次元が違うだけ」

 

 

 

  我が焔の贄となれ…………ッ!!

                  」

 

 

 

 特大の焔を前に、

 マシュが————、

 村正が————、

 

 

「あなた達はまだ()()()()()()()、魔力を温存して!

 戦乙女達、今よ!!」

 

 

 

「同位体顕現開始」「同位体顕現開始」「同位体顕現開始」「同位体顕現開始」

「同期開始照準完了」「同期開始照準完了」「同期開始標準完了」「同期開始照準完了」

 

 

 数多のワルキューレ達が、空に一つの大きな輪を描く。

 狙い定められる、スルトへと。

 大神を灼き尽くし、神々を焼滅した張本人。

 

 

 

  塵と燃えろォォォォォォォォォォ!!

                    」

 

 

 

 大伸より授かりし槍が、一斉に一点へ————!

 

 

 

終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスランシル)!」「終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスランシル)!」「終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスランシル)!」

終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスランシル)!」「終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスランシル)!」「終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスランシル)!」

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 それは何本もの槍でありながら一本の槍!

 スルトの発生させた極紅蓮の焔壁へと注ぎ、その奥にある核を穿ち抜かんとする!

 

 

 

  カカカ! 笑えぬ冗談!!

  ()()()が効くとでも思っているのか!?

  オレは! ()()()! 大神宣言(グングニル)()()()()()()()()()()()()()!!

                                 」

 

 

 

「最優先目標を優先」「最優先目標を優先」「最優先目標を優先」「最優先目標を優先」

「生命転換、限界突破」「生命転換、限界突破」「生命転換、限界突破」「生命転換、限界突破」

「この身を大神の槍とし」「スルト=フェンリルを撃破せよ」「女神へ謝罪を」「しかし勝利を」

 

 

 

「————あれは!?

 自分の全てを注ぎ込んで————!」

 

 

 戦乙女達は、己の残された全てのマナを光へと変換し————特攻。

 スルトが持つ焔の防壁を貫き砕き、勝利のためにその生命を捧げる!!

 

 

 

  ならばよしィィィィ!!!

               」

 

 

 

 その光に負けぬ焔を、いやそれ以上に輝き熱い焔が、

 スルトに喚ばれ作られ、光と化した戦乙女達を飲み込み喰らう。

 

 

「ワルキューレの皆さんが!!

 でも、でも————!!」

 

 

 届かない、ならば!

 戦乙女達が次々と光の槍となり、スルトへと特攻する。

 

 対するスルト、巨大な腕を振り回し、防壁を作り、光に貫かれながらも————!

 

 

 

  何故ないっっっ!?

  我が焔を超えようとする熱量も!!

  我が氷を凍らせようとする殺意も!!

  ()()()()()! 故に!!

  叫んでいるぞ! 我が剣が!! 狂い始めているぞ! 我が剣が!!

  呑み込もうとしているぞ! 我が剣が!! 始めようとしているぞ! 我が剣が!!

  オレの意思こそ我が剣! オレの存在こそ我が剣!! オレこそが我が剣!!!

  オレこそ

 

  ——————————————ガッァァッ!!??

                                         」

 

 

 

▷ □ 「入った————!!」 □ ◁  

 

 

 千子村正が鍛えた中で最大の大きさを誇るその脇差が、スルトの胸へ突き立てられる!

 

 

 が、

 

 

 

  何度言えば分かるのだ!? 塵芥!!??

  足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ足りぬ!!!

 

  分からぬならば! 教えてやろう!!

  ()()()()()()使()()()()!!!

  ()()()!! 枷をかけられていたオレはオマエへ()()()()()()()()()な!?

                                        」

 

 

 

「————っっ!?

 皆さん下がってください!!」

 

 

「やべぇぞ!」

 

 

 

  ()()()()()()!!

           」

 

 

 

 それは宝具。

 かつてその内にいた英霊が扱った、投擲し焔を撒き散らす破滅の剣戟。

 

 シグルドこそ己であったが故に実現される擬似魔剣の投擲。

 本来の魔剣は太陽の力を内包する。

 なれば、スルトによって展開されるそれの太陽とは————!!

 

 

 

  ()()()! ()()()()()()()!!

                 」

 

 

 

 スルト自身であり終焉を始めるもの。

 ありとあらゆる太陽の中で、最も強烈で、最も高熱で、最も危険極まりない最悪の太陽!

 

 

  □ 「マシュ! 宝具で耐えるんだ!」 □  

▷ □ 「ダメだ、今はまだ使っちゃ!!」 □ ◁  

 

 

 

 灼熱地獄の門のように開け放たれたスルトの口から————!

 先の戦乙女達の決死の特攻よりも、遥かに上を行く数の焔弾の超大軍勢が出現・射出、マシュの盾を砕き散らそうとする!

 その数! その速さ! その多さ! その重さ! その圧力! その焔!!

 

 

「ぐぐぐぐーーーーーーーーーっっ!!!」

 

 

 爆発する!! 爆裂する!! 爆轟する!! 爆砕する!!

 

 スルトが吐き出す火炎の大海原。

 英霊シグルドが使う()()()()()よりも、数え切れないほどに危険な焔!!

 打ち出され、射ち出され、撃ち出され!

 リボルバーの回転速度が上昇に次ぐ上昇!

 

 

「がっっっっっっっっ!!!」

 

 

 ()()()()()使()()()()

 シグルドの宝具、短剣の投擲は本番ではない。

 最後に投擲される魔剣の一投こそが最強、その後に魔剣へ叩き込まれる全力の拳こそが最強。

 

 ここで宝具を使ってしまっては、持たない。

 その火炎地獄の雨あられは、()()()使()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そして!

 炎の剣がスルトの右手より離れ宙に浮き、

 超極大の最悪の焔を生じさせながら右腕引き絞られ————!!

 

 

 

  ————————『壊却の天輪(ベルヴェルク・グラム)』ッッッ!!

                       」

 

 

 

 

 

 

「事象、照準固定(シュフェン・アウフ)

 私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen)っっ!!」

 

 

 

 

「——————オフェリアさんっ!?」

 

 

  □ 「つなぎ、」   □ 

▷ □ 「留めたぁ!!」 □ ◁

 

 

 遷延の魔眼!

 その瞳が、スルトの擬似魔剣が放たれるのをつなぎ留める。

 

 その神秘が、何よりもその決意が、スルトの焔に待ったをかけた!

 

 

「私のサーヴァントの分際で、ふざけたことするじゃない…………ッッ!!

 誰の許可を得て、こんなことしてるのかしら…………ッッッ!?

 

 私の! と————、と、とと、と、ととと————………………!!!!

 

 私の! ()()へ!! 誰の許可を得て宝具を放つつもりだったのかと聞いているのよ!!!」

 

 

  □ 「戦友という漢字には、」       □ 

▷ □ 「ともだちという字が含まれます!!」 □ ◁

 

 

「はいっ!!」

 

「————〜〜ーーーーーーーーー!!」

 

 

 

  おお! オフェリア! おお!! オフェリア!! おお!!! オフェリア!!!

  オマエもあがらうか!!

  ならばよし! それもよし!!

  オマエにまずは空の境域を見せるも一興か!!

 

  おお! オフェリアよ! だがなぁァァ!!?

  オマエは()()()()()()()()()()()!!?

                                          」 

 

 

 

「ぐぅぅぅーーーーーーツツツ!!?」

 

 

「そんな、まさか! 一度成立した魔眼を、強引に力でねじり切るなんて!!」

 

 

 

  我が焔こそ終焉!

  我が焔こそ黄昏!

 

  我が焔こそ! 我そのもの! 我自身!!

 

  神ですら! できなかったのだぞ!?

  神々ですら! オーディンですら! トールですら! あらゆる神々ですら!

  ()()()()()()()()()()()()()!!!

  ()()()()()()()()! ()()()()()()()()()()!!

 

  ()()()()()()()()()()()()()()!!!???

                                      」

 

 

 

「う、ぐぐぐぅぅぅぅぅぅーーーーーーーー!!

 

 どいつも…………こいつも…………勝手なこと、人の気も知らないで…………!!

 

 留められるのか、ですって………………、! うっぐぅぅぅーーーー!?

 

 ()()()()()()()()()…………ッッ!!

 

 だって、私は————、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()! ()()()()()()()()()()()!?

 

 カルデアを捨てた私だからこそ! あなたの焔に! 絶対負けるわけにはいかない!!

 

 あなたの焔ごときに! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! ()()()()()()()!!」

 

 

 

 燃え上がる闘志、それは決して朽ちぬ意志。

 走り出した彼女は、もう決して止まることはない。

 

 当然襲来するはずの終焉を、引き延ばす!

 

 

 

「ここまでのようね」「ここまでね」「…………え?」

「あとはお願い、オルトリンデ」「お願いね、オルトリンデ」「なら私も!」

「それはダメよ」「それはダメだよ」「…………!」

「あれを止め、」「()()()()()を完成させる」「…………」

「だから私」「そして私」「…………」

「そんな顔をしないで、」「また再会できるんだから」「うん」

「その時、聞かせて頂戴」「スルトをどうやって倒したのかを」「…………うん!」

 

「機体出力限界突破」「機体出力限界突破」

「最優先目標の撃破に全力を」「最優先目標撃破に全力を」

「全生命活動機能の維持停止」「生命維持機能全停止」

「過剰暴走から超限界暴走へ」「過剰暴走を超え超限界暴走へ」

「全てをかけ、飛翔せよ、攻撃せよ」「全てを乗せて、飛翔せよ、攻撃せよ」

「敗北は認められない、失敗は認められない」「勝利しか認められない、栄光しか認められない」

「我ら大神の娘、ワルキューレ」「我ら、大神の娘、ワルキューレ」

「これより黄昏を終結させる」「これより黄昏を終結させる!」

 

「スルト=フェンリルを撃破する!!」「スルト=フェンリルを撃破する!!」

 

 

 

 

 そして彼女達は、

 

 ————星となった。

 

 

 

 

  グッッ、ガッハァァァァァァァァァァァァァァァっっっっっ!!??

                                  」

 

 

 

 スルトが張り上げる特大の悲鳴が、空を焼く。

 

 光となったスルーズ、スルトの右腕を肩口から穿ち落とす。

 もうひとつの光となったヒルド、スルトの体躯へ()()()()()を刻む。

 

 

 

  この痛みすらも心地よい!

  この熱こそが! 我が焔!!

  クルゥゥゥゥゥゥゥゥゥアアアアアァァァァァァァァァァァァ!!

  しかし、!!

                                 」

 

 

 

 スルト、右肩の傷口から流れ出る血を着火炎上。

 即席の焔の鞭として、残る戦乙女達、カルデアの者達へ叩きつける!

 同時、宝具が中断され擬似魔剣としての機能を失った炎剣をその鞭で確保、

 

 

 

  カルルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥアアアアアアアツツツ!!!

  人形とて命と引き換えにすればこれほどの熱を出せるのだ!!

  さあオマエ達はどこまでゆく!?

                                 」

 

 

 

 そして、焔がさらなる大炎上! その大火炎が瞬時に穿ち落とされた右腕へと変化!!

 再生ではなく、作成に近いその強引さ。

 戦乙女達の決死の特攻はスルトに確実にダメージを与えている! これでもまだ足りないのか!

 

 

 

 だが、

 その体躯に刻まれた文様が()()()()()()()()()()()を形作る!

 それこそ————、

 

 

 

  ヌゥゥゥ!?? これは()だ!?

  ()()()か! オーディンのルーンか!!

  なるほど! 知恵だけは回るな!! スカディ!!

  ()()()()()()()()()()()()()()()()! ()()()()()! ()()()()()()()()()()!!

 

  だが何だこれは!? 恐怖のあまり頭がいかれたか!?

  これは()()()()()()ではないか! ()()()()()()()()()()()()原初のルーン!

 

  ()()()を祝福するがごとく! 誕生! 成長! 繁栄! 斜陽! 終焉!

  それは一つの輪をなす生命のサイクル! それを実現する祝福と呪い!

  強化! 後に劣化へと転ずる呪いの枷!

  斜陽終焉を迎える前に! オレはここだけでなく! 三つは世界を滅ぼしてしまうぞ!

                                          」

 

 

 

「ま、さ、か…………!!」

 

 

「本当に…………!?」

 

 

「、で、だ、」

 

 

▷ □ 「スカサハ=スカディさん!?」 □ ◁

 

 

『まさか…………()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()、スルトの焔や氷に負けず、()()()()()()()()()()()()

 

 

「ってことは、」

 

 

「なら…………!」

 

 

『うむ。

 だが、気をつけよ。

 先に話した通り、スルトの申した通りだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 強化という祝福を得るが、それが終われば弱化という呪いを受ける。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、本来そういったルーン。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 強化の幅は抑えてはいるが、それでも奴の焔が、氷が、強くなっていることに変わりない』

 

 

 

  □ 「村正さん!」 □

▷ □ 「マシュ!!」 □ ◁

 

 

「イエス、マスター!

 必ず、私が村正さんを守り抜きます!!」

 

 

 

 そして、

 

 鍛治匠が、

 

 ()()()を握る。

 

 

 

「不思議なもンだな、世の中ってのは。

 妙なところで繋がってやがる。

 だから(オレ)が呼ばれたンだろうが、ンなことはどうだっていい」

 

 

 残る戦乙女全騎も集結。

 マシュが盾を構える中、村正の刀を握る手に力が入る。

 

 

「ユグドラシルとは世界()と呼ばれる世界、大いなる生命、九つの世界が存在する宇宙の樹。

 

 ユグドラシルを語るには、()()()()()がなくてはならない。

 ()つの根、()つの泉、九つの世界————すなわち()()の世界。

 

 ()()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()方が良い、

 ユグドラシルという存在が、()()()()()()()()()()()()()()()ようにね」

 

 

(オレ)ぁな、()()()()()()()を書いてくれればよかったンだが、

 まさかドンピシャなもン描いてくれるとはな。

 あの城で吐いた御託は撤回しねぇが、やるじゃねぇか、すかさは=すかでぃ」

 

 

 村正が、()()()()()

 

 

「その傷はな、()()なンだよ。

 こんな辺鄙なところでぼっちしてたテメェは知らなくて当然だろうが。

 (オレ)もましゅ達から教えてもらった口だ、でけぇことは言えねえ。

 

 そいつはな、

 

 小さな国の領主の息子に()()()

 

 人質生活で苦難を味わうも()()()

 

 天下をテメェで統一しちまうっつー()()()()()

 

 二百五十年以上も泰平の世を作り()()()

 

 幕末だったか、動乱の時代が来て()()()()()

 

 明治となって、()()()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 

「それは()()()()()()()

 このルーンこそは、世界樹の恵みを象徴する()()()()を表す。

 一つでも効果を発揮するが、一番は()()()()()()()()()()時だそうね。

 それが本来の使い方。

 私には、そのルーンが神代の魔術の印にしか見えないけれど、

 

 ————()()()()()()()()()()()()?」

 

 

「はい、その証こそ————っ!!」

 

 

 

  □ 「()()()()! ()()()()!!」 □ 

▷ □ 「()()()()のシンボル!!」  □ ◁   

 

 

 

「つまりテメェは————、

 

 ————()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「真名、凍結展開!!」

 

 

「同位体、顕現開始!」

 

 

 

「かつて求めた究極の一刀。

 其は、肉を断ち骨を断ち命を絶つ鋼の刃にあらず」

 

 

 

 

  ()()()()()()! 赤髪!!

  オマエは! ()()()()()()()()()()()()()()()()と!!

  ムサシと同じく! ()()()()()()()()()()()()()()()()と!!

  オマエ達の中で! オレを殺し得るのは!! ()()!! ()()()()()だということを!!

  終焉の巨人であるこのオレが! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

  星よ! 終われェェェェェェェ…………!! 灰燼に帰せッッッッッツツツツツツ!!!

                                           」

 

 

 

  □ 「スルトの宝具が!」 □ 

▷ □ 「早すぎる!!」   □ ◁

 

 

「スルトにとって()()()()()()()()()()()()もの!

 宝具の展開が早いんじゃないわ、()()()()()()()()()()()()()のよ!!」

 

 

「これは多くの道、多くの願いを受けた幻想の城!

 呼応せよ————!!」

 

 

「同期開始、照準終了!」

 

 

 

「我が業が求めるは怨恨の清算。

 縁を切り、定めを切り、業を切る。

 ————即ち。宿業からの解放なり」

 

 

 

 

  ————————『太陽を超えて輝け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)』ッッッッッ!!!

                                 」

 

 

 

 

「その炎! 私は、それが輝くさまを視ない(lch will es niemals glǎnzen sehen)っっ!!」

 

 

 

  オレの炎の剣が! たった一種類の斬り(終わらせ)方しかないとは思うまいな!? オフェリア!

  ()()()()()()()()! 炎の剣(宝具)こそが!! これだァァァァァァァァァァァァァァァ!!

                                          」

 

 

 

 その炎剣こそは、ありとあらゆる生命に対する絶対命令権。

 即ち————終焉を迎えその灯火を焼失せよ(死ね)

 

 

 

▷ □ 「二画目の令呪を使う!」       □ ◁

  □ 「二画目の令呪を使うしかない!」   □  

  □ 「二画目・三画目の令呪を同時使用!」 □ 

  □ 「いや、それでも…………!」      □  

 

 

▷ □ 「マシューーーーーーーー        」 □ ◁

  □ 「村正さーーーーーーーー        」 □  

  □ 「ナポレオーーーーーーー        」 □ 

 

 

 

「『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』っ!!!!」

 

「『終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)』っ!!」

  

 

 

 それは遥かな昔、理想掲げる騎士達が辿り築いた城。

 永久久遠の輝きは、人々がその騎士達へと思い願った尊い光。

 

 それは大神の忘れ形見、己が持つ機能を全て攻撃に転じた一投。

 残る全ての戦乙女達の全機能全身全霊をかけた光の槍投。

 

 令呪による強化。

 盾が掲げようとする理想の城、夢想の城が未だ完璧でなくても、

 彼女へ込める思いが、その穴を埋める。

 

 

 スルトの炎の剣、凄まじく。

 熱量、温度、殺意、密度————ありとあらゆる項目で極大。

 星がスルトに神代を終わらせるために与えた神造兵器。

 それを氷炎の巨人王が振るとどんな厄災となるのか————全ては死ぬ。

 

 

 一つ、誤算があるとすれば、

 霊基外骨骼(オルテナウス)による宝具の連続展開。

 令呪を乗せたことによる負荷の上昇。

 クールダウンが必要、しかしそんなことをいっている状況ではない。

 故に、オーバーヒート。

 

 

 

 

  クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

                                       」

 

 

 

 

 炎が、光の槍を飲み込み喰らう。

 炎が、打ち立てられた城壁を泥と溶かしあらゆる防りを灰燼とする。

 

 炎が、その刀を振ろうとする鍛治匠へと襲い掛かり————

 

 

 

『ダメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!』

 

 

 

 炎が、全てを、飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

  ハハハハハハハハハハハ!! 燃えたか!! 燃えたか!! よく燃えた!!!

                                       」

 

 

 

 スルトの高笑いだけが、冬の世界に木霊する。

 

 

 

 

 

 

 

「    、    、    、        、       !!」

 

 

「        !    、         !

        !?    、      、         !!」

 

 

 

「さっさと起きなさいッッッッッ!!!」

 

 

▷ □ 「ぉぐぅぅぅーーーーー!?!?」 □ ◁

 

 

()()()()()()()()()

 まだ終わってないわよ!」

 

 

 オフェリアのビンタ()で、飛んでいた意識を取り戻したカルデアのマスター。

 

 

▷ □ 「みんなは!?」 □ ◁

 

 

「ぐ…………く………………負けない、負けない…………私は、負けちゃ、…………!」

 

 

 彼女が、立つ。

 

 己の意思で、戦場に再び立つ。

 盾を携えながら、苦痛をこらえ、歯を食いしばり、煙を上げる身体を奮い立たせ、

 

 

「まだ…………まだ、戦えます! マスター! オフェリアさん!!

 マシュ・キリエライト! まだ、…………ぐっ! …………戦えますっ!!」

 

 

 決して諦めない!

 絶対に————立ち上がる!!

 

 

 戦乙女達は大部分が炎に飲まれ散っていった。

 残るはもう、両手で数えられるほどしかいない。

 

 

 

「————なンで、だ!?

 なンでだ、オルトリンデ!?」

 

 

 炎に飲み込まれた村正を、一人の戦乙女が救い出した。

 

 だが、村正の両腕と右足の膝から下が燃え尽きた。

 スルトの宝具による炎により存在が停止(焼失)させられた。

 

 だけど、彼を救い出した戦乙女の身体の損傷はそんな比ではなく…………

 

 

「…………だって、」

 

 

 そう言って、彼女は、

 

 

「村正、私を助けてくれた。

 だから、今度は私が、村正を助ける番」

 

 

 その長い生で、最初で最後の、心からの笑顔を彼に見せ、光に包まれ旅立っていった。

 

 

 

 

「スルト…………テメェェェェェェェ……………………!!!」

 

 

 

 

▷ □ 「村正さんの刀は!?」 □ ◁ 

  □ 「刀はどこ!?」    □  

 

 

「あの剣は!?

 下に落ちたのかしら————!?」

 

 

 ここは空中の戦場。

 スカサハ=スカディのルーンで地上と同じように戦えているが、

 その手から離れたものは重力に従い自由落下する。

 

 

「先輩、上です!!」

 

 

  □ 「見つけた!」 □  

▷ □ 「取れる!!」 □ ◁ 

 

 

 諦める者など、どこにもない。

 スルトの体躯には、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ならば、

 まだ残っているはず。

 

 自分達が作り上げたスルト撃破への道は、まだ潰えていない!

 

 

▷ □ 「よし取れた!!」 □ ◁ 

 

 

 回転しながら落下する刀を取るという離れ業。

 本人は無我夢中で気付くよりもなかったが、五指全てが切り落とされても仕方なかった。

 

 

 

  オレは! 今! 実に! 爽快な気分だ!!

  オレの痛みが! 熱を喚んだ!! オレの怒りが! 熱を喚んだ!!

  オマエたち塵芥どもが! 熱を喚んだのだ!!

  まだいける! まだいけるとも!! もっと熱を!! さらなる熱を!!

  炎を!! 炎を寄越せ! 塵芥!! キサマらの生きる意味はオレの薪となること!

  炎を!! 炎よ呼び寄越せ!! 灰燼すらも残さず! 全て燃やし尽くしてやろう!!

                                          」

 

 

 

  □ 「この刀を村正さんに渡せば————!」      □   

▷ □ 「覚えてる、村正さんがあの城を斬った時のこと!」 □ ◁

  □ 「他に手はないか、何か他の手は————!!」   □

 

 

 スルトの宝具で両腕を消失させられた村正。

 口一つでも刀を握りスルトを斬る気だが、そのようなことスルトが許すはずもない。

 

 己で村正の刀を握ったカルデアのマスター、?

 

 

 

▷ □ 「って、あれ…………?」 ■ ◀  

 

 

 

 刀が、? 手の内で脈打つ、? ?

 

 

 

▷ □ 「なんだ…………、これ…………?」 ■ ◀  

 

 

    

「先輩————?

 先輩! 一体どうしたんですか!?」

 

 

 

▷ □ 「、熱い…………!!」 ■ ◀  

 

 

 

 声が聞ける、誰かが話している、自分が話している。

 何かが見える? 景色が見える? 誰かが見える? 何かが見える?

 

 誰かが見える、何かが見える、どこかが見える、ここが見える、

 

 

 

▷ □ 「頭が…………!? 胸が…………!? 手が…………!?」 ■ ◀  

 

 

 

 ()()()()()調()()()

 ()()()()()()()()

 

 

 

 神剣接続 神武降臨 霊基上書 体再構成 英霊剣基 対魔騎乗

 

 武神剣神 神剣一如 白鳥変化 獰猛剛勇 耐毒耐性 無刀無転

 

 武雷合一 現人神在 人理継続 宿業斬断 性別変換 快刀強盗

 

 雷刀喚神 赤心丸橋 天元突破 入水凪面 西征東征 一刀無頼

 

 日本無双 神殺神断 切落合打 万理卍抜 断葵村正 超空草薙

 

 

 

 そして、()()()()()

 

 

 

  □ 「僕は、誰…………?」   ■ 

 

  □ 「私は、誰…………?」   ■   

 

  □ 「俺は、誰…………?」   ■   

 

  □ 「あたしは、誰…………?」 ■   

 

 

 

▶ ■ 「違う…………っ」 ■ ◀

 

 

 

  ■ 「()、…………だ」   ■ 

 

  ■ 「()、…………だ」   ■   

 

  ■ 「()、…………だ」   ■   

 

  ■ 「(あたし)、…………だ」   ■   

 

 

 

 

「…………何よ、これ…………!?」

 

 

 その変貌にいち早く気付いたのは、最も近い場所にいる魔術師のオフェリア。

 変化している、いや、単純な変化という言葉で片付けていいものなのだろうか?

 

 ありえない、ありえない。

 遷延の魔眼が見せる可能性が、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない!

 こんなこと、起こっていいはずがない!

 

 

 けれど、一つ、この事象の変化を説明できる言葉は一つしかない。

 

 

 

 

「貴方…………()()()()()()()()だったの!?」

 

 

 

 

「え…………?」

 

 

 二十に遠く及ばなかった回路本数が今はどうだ。

 三十四十を超え、いや、この数え方は正しいのだろうか?

 

 メビウスの輪のように曲がりくねって回路網が構築され、それが動的に変化している。

 それはまるで三次元空間を通過する四次元超立方体のよう。

 

 現代魔術ではこんなデタラメな回路は存在しないし、数えることすら困難。

 

 こんなものは、神代か超古代、加え、()()()()でなければ説明ができない。

 

 

「先、輩…………?」

 

 

 分かる、オフェリアの言っていることが分かる。

 霊圧が違う、何よりも()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 正真正銘さっきまでただの一般人だった自分のマスターは、人間が持つレベルを超えて、英霊クラスへと至っている————それも、かなり高位の存在!

 

 どうして自分はこの人を先輩と呼んだのか。

 敬意に、値する人だから————果たしてそれだけだったのだろうか?

 もしかしてそれは、()()()()()()宿()()()()()()()ことを無意識に感じ取っていたのではないか?

 

 

「ああ、そうか、なるほどそういうことか」

 

 

 誰も理解できない話が勝手に進んでいる中、

 ()()()()()を知り、()()()()()()であるが故に、村正、全てを悟る。

 どっかりを腰を下ろす————後は全て託したといわんばかりに。

 

 

「おめぇさん、()()()()()()()()()()ンだよな。

 つまり、こう言いてぇんだろ?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そういう話か」

 

 

 カルデアのマスターの剣を握るその姿が、英霊のそれとなる。

 

 

「嬉しいねぇ。

 こう言ってくれてるわけだろ、

 ————()()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()、ってな。

 まさか、日ノ本の武神サマからお墨付きをもらえるなンて思わなかったぜ」

 

 

 

 そして、

 

 ————構える。

 

 

 

「後は頼ンだぜ、()()()()()()!!」

 

 

 

 その者————、

 ()()()()敵の宴に忍び込みその首長達を殺害し乱を平定した。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 旅の最中————、

 ()()()()()()が旅人に危害を加えているのを見つけこれを殺害、水陸の経を開く。

 つまり、()()()()()()()

 

 

 その英雄譚、

 神剣によって九死に一生を得るも、その神剣を手放したことで命を失ってしまう。

『嬢子の、床の辺に、我が置きし、つるきの大刀、その剣はや』と歌い、死してしまう(全て失う)

 

 

 この英霊、

 ()()()()()()()()()が故に、()()()()()()()()()()()()

 

 しかも、

 ()()()()()()()()()()がために、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 力、スキル、記憶、技術、兵装、肉体、何一つない()()()()()()()()()()と同じ。

 

 ところが、

 ()()()()()()()()()()()()()()()が故に、()()()()()()()()()()()()()()()()()は低ランクながらも()()()()()()()()となる。

 つまり、一般人としてでも()()()()()()()は使用可能。

 

 そして、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()————

 ()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()となる。

 

 

 その者、獰猛なる剛勇を誇るだけでない。

 日ノ本最強の武神にして雷神武甕雷(タケミカヅチ)より伝えられた無数の剣技を持つだけにとどまらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その英霊が手にしている刀こそ、千子村正が鍛えに鍛えた秘の一刀、銘を()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()を持つ。

 

 その剣こそ、天叢雲剣。

 この英雄が成し遂げた剣業により、()()()と呼ばれるに至る剣であり、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 ここに、失った神剣と英雄が長い時を経て邂逅を果たす。

 

 

 

 

 その身体が、真白い光に包まれ、

 

 黒の極地用カルデア制服が、

 

 日ノ本最古の剣の英霊が着るべき純白の戦衣へと変貌する。

 

 

 

 最後のセイバー、ヤマトタケル、降臨。

 

 

 

 その圧! その剣気! 雷を纏いながらに立つ威風!

 

 宮本武蔵にも迫ろうかという剣勢! 戦友より借り受けた神剣が闘志に煌く!

 

 

 

 その神剣を掲げ、

 

 ——————言い放つ。

 

 

 

 

 

▶ ■ 「こいよ、スルト」 ■ ◀ 

 

 

 

▶ ■ 「お前に————、」 ■ ◀ 

 

 

 

▶ ■ 「本当の剣の振り方ってやつを教えてやる」 ■ ◀ 

 

 

 

 

 

 

  小癪! 猪口才!! よくほざく!! その熱!! オレが燃やそうか!!

  神の血あれば! 神とでもぬかすつもりか!! その神性ゴミカス未満!!

  オレの前に! 神もどきとして立つ愚劣愚臭!! 燃やせば只のカスか!!

  熱熱熱熱熱!! オレが!! 全て!! 平らげてやろうッッツツツツ!!

 

  星よ終われ! 灰燼と化せ!! ただひたすらに燃えろオオオオオ!!!!

                                     」

 

 

 

 

  ■ 最後の令呪を使う! ■ 

  ■ 最後の令呪を使う! ■  

▶ ■ 最後の令呪を使う! ■ ◀ 

 

 

 

  ■ 「令呪を以って我が身に命ずる! スルトを斬り滅ぼせ!」 ■ 

  ■ 「マシュ! スルトの宝具を今度こそ耐えてくれ!」    ■  

▶ ■ 「もう一度最高の夢を見せてくれ、ナポレオン!」     ■ ◀ 

  ■ 「行くぞ、マシュ! 必殺のツープラトン合体攻撃だ!」  ■  

 

 

 

 

「せ、先輩、一体何を!?」

 

 

「————えっ!?」

 

 

 ナポレオンがかけた虹の橋は未だ消えていない。

 もはや虹なのか色のついた霧なのか、消滅したのか、していないのかという有様。

 

 加え、スルトが暴焔を撒き散らす影響で、虹は刻一刻と色を失っていた。

 

 

 しかし、マスターには、感じられるはず。

 その快男児、未だこの世界を離れていないのだと。

 際の際にかじりついている状況に違いないが、未だ、いる。

 

 仲間の行く末を気にしているのか、惚れた女を一秒でも長く見ていたいのか、

 それは分からずとも、

 

 令呪が輝く!

 もう一度、もう一度だけ、存在が消える直前だった虹が七色を取り戻す。

 

 

 ナポレオン・ボナパルトは、

 人の想いに応える英雄である。

 この世界に来たのは、オフェリア・ファムルソローネの願いを叶えるため。

 

 

 想いを寄せられ、想いを叶える、それがナポレオンをいう英霊の在り方。

 

 

 ならば、()()()()()()にとっては、何だったのか?

 

 

 彼は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 願いに応え、期待に応える。

 そしてどこまでもどこまでも昇っていく。

 彼が叶えてくれる夢を、可能性を、もっともっと見てみたい。

 自分のこの夢を共に叶えてくれないかと願いたいから。

 

 どこまでもどこまでも、戦友たちは集まった。

 

 

 

 だから、見る。

 

 その夢を、見る。

 

 その宝具は人の想いを叶えるものであり、

 人の可能性を見せるものであり————共に戦う仲間に最高の夢を見せるもの。

 

 

 

「——————あ………………」

 

 

 

 それは七色の虹の可能性がほんのわずかに見せた、彼女の可能性の一つ。

 

 人理の守護者としてある自分のマスターと、

 誰よりも近い場所に立ち、盾を携える自分の姿。

 

 しかし、これはほんの一瞬のこと。

 ナポレオンが見せてくれる可能性は、無限に輝いているのだから。

 

 

 

私は、その輝きが失うさまを視ない(Ich will es nie verlieren sehen)っっ!!」 

 

 

 

 彼女が遷延する、彼が見せてくれる彼女の夢の一欠片が消えてしまうのを留める。

 

 

 それは模範解答から途中の計算式を逆算するようなもの、

 いや、未来の英霊化した自分の盾から、己が進むべき未来を決めるようなことか。

 

 

 

「………………そう、だったんだ………………!」

 

 

 

 これは、

 

 彼女が進むかもしれない、未来の可能性の一つ。

 

 

 

 

「悠久の時の中、永遠に輝き続ける夢想の城、理想の白亜。

 

 集まり語らい、戦い歌い、笑いて泣いて、されどここにあるは永久不変の我らの家。

 

 誓いをここに、

 我らカルデア、この光輝なり不壊の壁となり人々を守る城となる。

 

 絆をここに、

 我らカルデア、数多の英霊と共に遍く果てまで人々を護る城となろう!

 

 決意をここに!

 我らカルデア、この誓いと絆を以って人理を守護する城とならん!!」

 

 

 

 

 

 スルトの炎剣と、

 

 その()が————!

 

 

 

 

 

  ————————『太陽を超えて輝け、炎の剣(ロプトル・レーギャルン)』ッッッッッッ!!!!!!!

                                      」

 

 

 

 

 

「————————『人理よ、久遠の城と永遠へいけ(カルデアス・キャメロット)』————————ッッ!!」

 

 

 

 

 

 ぶつかり合う! 熱と城壁、殺意と決意!

 

 霊基外骨骼(オルテナウス)を分離・射出させ、打ち立てるのは理想の城、人理の城。

 

 

 熱が、熱が、熱が、炎が!!

 

 傷はある、武蔵に付けられた傷、ルーン強化刀による無数の傷、右腕の切断及び作成による消耗、村正による武蔵の一刀! スルーズとヒルドの特攻! 大量の血が流れ続けている!

 

 

 だが、スルトの炎こそは!

 もはや太陽すらも超えようかという炎!

 その炎が! 熱が! 生命への絶対命令権を振りかざしながらに襲いかかる!!

 

 

  ウウウウウウウイイイイイイイイイィィィィィィィィィィヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!

                                       」

 

 

 もっとその巨人は炎を要求する!!

 もっともっともっとだもっとと!

 世界の終焉、神代の終わり。

 無味乾燥なそんな目標よりも!

 

 この熱を! この炎を!! もっともっと喰らって燃えたいのだと狂いながらに炎を喚ぶ!

 

 

 

「ぐぐゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーー!!!」

 

 

 その盾が築き上げる城は理想の城、想いの城。

 人理と共にある守護者たる英霊達の憩いの場、再会の地。

 

 ()()()()()()()()()こそが、彼女が辿り着いた、絶対不倒の守り手としての答え!

 

 

 

「負けない————、負けません…………!

 私は————ぐ、ぐ、ぐ、ぐ——————でも、でもっ!!!」

 

 

 

 炎が城を焼く。

 ありとあらゆるところを。

 

 この炎とは、世界を、そして生命を、終わらせる炎。

 

 

 

 

  何故だ!? 何故!? オマエは!? これほどまでに()()()()()!?

                                   」

 

 

 

 

 スルトは知るよりもないが、マシュの掲げる盾こそは人理滅却した炎すらも耐え抜いた。

 

 倒れない、もし倒れても何度でも立ち上がればいい。

 

 諦めない、私が諦めてしまったら全てが終わってしまうのだから。

 

 

 

 

 終わらない、そう、終わらない!

 

 この決意は、どんな宝具でも燃やすことはできない!

 

 

 

 人理は滅びない!

 

 その守り手達が何度でも何度でも修復する。

 

 その気高き在り方こそが、最強の盾。

 

 

 

 そして、滅んではならない。

 

 いつかこの星や太陽が消滅する日が来ようとも、

 

 地球という青い惑星に誕生した人という生物種が、

 

 出会い、笑い、助け、教え、導き、愛し、産み、育て、

 

 憎み、罵り、蔑み、戦い、裏切り、殺し————それでも、

 

 手を取り合って、懸命に生きたことは、永遠に伝えなければいけないのだから!

 

 

 

「だって、そうじゃないですか————!!

 です、よね、先輩————っ!!??」

 

 

 

 護り手とは、常に誰かを庇いながら戦う。

 人理、汎人類史、少女が背負うには重すぎるのかもしれない。

 

 

 だが今は、

 

 己の()()()()()が、自分の後ろにいる。

 

 スルトはオフェリアを殺さないだろうから、という理屈は彼女には通じない。

 

 

 

「私の、大好きな、先輩も…………っ!

 

 私の、大切な、オフェリアさん(友達)も…………っっ!!

 

 傷つけ、させません————、何一つ、何一つッッ! だって、だって私は!!

 

 この炎を全て防いでみせますと!! この盾に誓ったんですっっ!!」

 

 

 

 だから、守る。

 

 だから、護る。

 

 大切な二人を、必ずこの盾で守り抜く!

 

 

 

「——————うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」

 

 

 

 城は、崩れない。

 炎を浴び、巻き起こった暴炎嵐に何度も襲われようとも、崩れない!

 

 

 

「負けちゃ、いけないんです——————!!

 

 今を終わらせることしか考えてないあなたに、

 

 明日をつかもうとする私たちは、絶対負けちゃいけないんですッッ!!」

 

 

 

 だから負けない。

 

 だから倒れない。

 

 だから————————!

 

 

 

「ダメ、()()()()!!

 スルトの宝具を、ここまで耐え切ってるのは奇跡に近いけど、でも、足りない!!」

 

 

 

「ぐぐぐぅぅぅぅぅぅぅぅゥゥゥゥゥゥゥウウウウウッッッ!!!」

 

 

 彼女が選んだのは、カルデアという城。

 

 

 だが、カルデアとは、人理を()()()()()()()()()()()

 

 

 

霊基外骨骼(オルテナウス)、兵装展開! ()()()()!!」

 

 

 

 彼女から弾け飛んだ外骨骼が、変異変形、集結。

 

 右肩から右腕全部にかけて装着され組み上げられたそれは、()()()()()()()

 

 

 

「剣よ、ここに!

 

 其は、岩に刺さりし選定の剣、

 

 最も気高き王に抜かれ、我らが円卓に集いし始まりの剣。

 

 剣よ、ここに!

 

 其は、泉の乙女より授かりし黄金の剣、

 

 最も勇壮なる王の手により、我らに約束された勝利を賜る願いの光。

 

 剣よ、ここに!

 

 其は、人理と共にある守護の剣!

 

 最も久遠なる人々のため、我らの敵へと振り下ろされる理想の刃!!」

 

 

 

 そしてできたのは、一つの()

 

 魔力が収縮する。

 

 城を展開しながらも、その砲口の内へ、尋常ではない量と密度の魔力が集められていく!

 

 

 

 光が、集約し、その真名が紡がれる!!

 

 

 

「————————『剣よ、人理の敵を討ち滅ぼせ(オルテナウス・エクスカリバー)』————————っ!!」

 

 

 

 人理の中で最も高貴なる願いの名を掲げる極太の光条は、一直線にスルトの炎へと直撃!

 

 

 

  ガァッァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアッッッッッッッッッ!!!

                                      」

 

 

 

 ()()

 ()()()()!!

 

 選んだのがカルデアという在り方。

 カルデアとは、()()()()()存在であり、()()()()()()()()()()()()()()存在。

 

 だからこそ、ギャラハッドではない己の戦闘スタイルを追い求めた彼女は、

 守るだけではなく、()()()()()()()()()のだ。

 

 

 この盾の英霊が持つ宝具は、一つではなく二つ!

 その二つの宝具が、スルトの炎界とぶつかり合う!!

 

 

「そうか! あの砲撃はこの城と呼応している!!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のね!

 盾で受け止めた力を、砲で飛ばす!

 スルトの宝具は全方位、一ミリも隙がない。

 だからこそ、()()()の魔力が生成され、砲撃となっている!

 でも、変換にも受け止めるのにも、()()()()()

 それを超えられては————!!」 

 

 

 

 

 だが、

 

 相手は、スルト。

 

 

 

 

              虚無へと燃え尽きろ!!!

                                      」

 

 

 

 

 最大の、超特大の炎が、

 

 砲撃と、城とぶつかって、

 

 あらゆるものを炎へと飲み込んで、

 

 臨界点が、突破され

 

 

 

 

 

「————私は、友の輝きが失うさまを決して許さない(Ich möchte nie meinen Freund Verlust sehen)ッッ!!!」

 

 

 

 

 

「オフェリアさんっ!!」

 

 

「ーーーーーーぅぅううううううううううううううううううう!!!!」

 

 

 崩壊が留まる、留められる。

 焼け落ち始めた城、炎の海へと消えかけた砲。

 

 訪れるはずだった()()()()()()()()が留められ、その未来が到来するのが留められる!

 

 

()()()()()()()()()()()()()()…………ッッッ!!」

 

 

 まだ立ち続ける、人理の敵の攻撃で朽ち果てまいと。

 まだ発射できる、人理の敵を滅ぼすための攻撃を。

 

 

 

 

 その時、

 

 ようやく初めて、

 

 ——————()()()()

 

 

 

 神剣を手に持つ剣の英霊が、

 

 その刃の中へ、己の内へ、奥へ奥へと埋没する。

 

 この刃が断ち斬るべき、あらゆる非業、罪業、宿業、全ての悲哀の、その源へ、

 

 其処を斬る(終わらせる)ためにこそ、我が刀、我が術技、我が存在が、あるのだから。

 

 

 

 

▶ ■ 「かつて求めた究極の一刀  ■ ◀ 

▶ ■  今なお求める究極の一刀」 ■ ◀

 

 

 

 この身は見てきた。

 ありとあらゆる時代の、あらゆる英霊達を、その剣を、見た。

 

 

 

▶ ■ 「其は、肉を断ち骨を断ち命を絶つ鋼の刃にあらず  ■ ◀ 

▶ ■  其は、魂を断ち魄を断ち命を絶つ戦の刃にあらず」 ■ ◀ 

 

 

 

 聖女を見た、そして、魔女を見た。

 己を破滅へと追い込んだ人々を、守る彼女と殺す彼女。

 彼女の勇気と、彼女の憎悪————。

 その腰にある剣の重みを、忘れてはならない。

 

 

 

▶ ■ 「我が業が求めるは怨恨の清算    ■ ◀ 

▶ ■  我らが業が求めるは遥か貴き理想」 ■ ◀

 

 

 

 皇帝を見た。

 我儘で自分勝手、美と芸術が何よりも大好き。

 黄金のように明るく、マグマのように情熱的。

 その帝政がどのようなものであれ、まさにその剣の如く、

 星すらも知り得ないような、希望と共に笑う。

 

 

 

▶ ■ 「縁を切り、定めを切り、業を切る    ■ ◀ 

▶ ■  争いを切り、戦いを切り、修羅を切る」 ■ ◀

 

 

 

 航海士を見た。

 仲間と、冒険と、宴と、強敵と、財宝。

 重責に押し潰されそうな旅の中にあって、

 その船にいる時だけは、その重みを忘れることができた。

 あの強敵の見せた剣技、あの輝きこそが、剣士が目指すべき剣という可能性。

 

 

 

▶ ■ 「————即ち。宿業からの解放なり  ■ ◀ 

▶ ■  ————即ち、戦乱からの解放なり」 ■ ◀

 

 

 

 叛逆の騎士を見た、人々から恐れられし怪物達を見た。

 その友情ははたから見たら不思議かもしれないけれど、とても暖かかった。

 ただしその剣、赤雷を纏う太刀筋は、武の本質の一側面。

 ただ強く、ただ勝利する、その在り方こそが、剛の大剣。

 

 

 

 

  何だ!? これは!!?? 何が!? どうなっている!!??

  ()()()()()()()!? 俺の炎! 俺の宝具! 俺の終焉!! 俺が()()()()だと!?

 

  塵芥! 何をしたァ!? ゴミムシ! 何をしたァァ!? 肉袋! 何をしたァァァ!?

  何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ何だ!!??

 

  我が焔こそは神々を殺すもの!! なぜ!? 神もどきのオマエに御されるのだ!?!?

 

  オレが吸われていくだとォォォォ!? そんな事象は!? 存在しないはず!!!??

                                           」 

 

 

 

 

▶ ■ 「…………其処に至るは数多の研鑽  ■ ◀ 

▶ ■  …………其処に至るは数多の戦火」 ■ ◀

 

 

 

 狂戦士を見た、そして、癒し手を見た。

 対照的な在り方な二人、しかし、その信念は剣のように真っ直ぐ。

 何があっても戦い続けるものと、何があっても癒し続けるもの。

 たった一人で戦争を構築するものと、たった一人で戦争を根絶するもの。

 二人が共にある世界は、果たして存在するのだろうか?

 

 

 

▶ ■ 「千の刀、万の刀を象り、築きに築いた刀塚    ■ ◀ 

▶ ■  千の刀、万の刀を象り、築きに築いた屍山血河」 ■ ◀

 

 

 

 騎士達を見た、そして、その王を見た。

 王の掲げた理想は、やっぱりどこか歪で、賛成できないけど、

 ただ王のため、王の理想のため、王が庇護する民のため、何よりもただ王のため。

 王へと誓う絶対の忠誠、決して崩れることも揺らぐこともない剣、

 彼らこそが、騎士と、呼ばれるに相応しい人達だった。

 

 

 

▶ ■ 「此処に辿るはあらゆる収斂  ■ ◀ 

▶ ■  此処に辿るはあらゆる聚斂」 ■ ◀

 

 

 

 王を見た、その民を見た。

 聡明で傲慢、傍若無人で理路整然、賢いのか暴君なのか。

 どんな窮地にも、常にその思考と判断は正しく的確だった。

 世界を手にした王の一番輝かしい財宝は、その民だった。

 絶望にも下を向かない、明日のために今日を精一杯。

 そんな人々の暮らしと笑顔を守るために、剣は、作られたはず。

 

 

 

▶ ■ 「此処に示すはあらゆる宿願  ■ ◀ 

▶ ■  此処に示すはあらゆる理想」 ■ ◀

 

 

 

 英雄達を見た。

 人々の未来を掴むために、人々が明日を生きるために。

 数多の時代から、この旅を助けてくれた、あらゆる英霊達が集まってくれた。

 かつての怨敵と肩を並べて武器を揃え、己を殺した相手に肩を貸して助け合う、

 みんながいたから勝つことができた、みんなと一緒だったから乗り越えることができた。

 その恩は、まだ、返しきれてない。

 

 

 

▶ ■ 「此処に積もるはあらゆる非業————  ■ ◀ 

▶ ■  此処に積もるはあらゆる悲哀————」 ■ ◀

 

 

 

 あの人を、見た。

 伝えなきゃいけないことなんて、何一つ、伝えられなかった。

 言わなきゃいけないことなんて、全然、言えなかった。

 後に続く者達を信じ、笑って、全てを手放し、あの人は逝ってしまった。

 その心に報いるために、その決断に恥じないために、歩いて、いかなきゃいけない。

 

 

 

▶ ■ 「我が人生の全ては、この一振りに至るために  ■ ◀ 

▶ ■  我らが生の全ては、この一振りを成すために」 ■ ◀

 

 

 

 彼女を見た、そして、彼を見た。

 

 天元を斬るその一刀は、何処までも高く昇っていく。

 彼女の剣は、人として到達できる極点すらも超えて、その花は咲き乱れる。

 

 正義の味方なんて、言っていいのは小学校低学年までだと思ってたけど、

 それなのに、あの人がその言葉を言うと、とてつもなくカッコよく聞こえた。

 彼の剣が断ち斬った後には、あらゆる悲しみから解き放たれた世界が待っている。

 

 

 

 

  コ、カッ、ハ、キュ、プ、ア、ゴ……………………!?

 

  何だ、何が、起きている………………!?

 

  炎剣だけでなく、オレも、オレすら炎も、すオレが、吸われ炎がてくい…………!?

                                         」

 

 

 

「紀に曰く!

 その()()はな、()()()()()()に遭遇した神剣が、するりと抜け出て()()()()()()()()()()()って代物だ。

 だからこそ、()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()()だけ————その()()こそが、()()

 

 テメェがどれだけモノ燃やしてぇか知らねぇが…………、()()()()()()

 

 それ以上に! (ワシ)ら日ノ本の民は! ()()()()()()()()()()()()()()()()()を憎み!

 斬り払われた後の世界! 即ち! ()()()()()()()()()()平和(草薙)がずっと続くようにと! その神剣へ何千年も願いをかけ続けてるンだよッ!

 

 つまり、分るか? ————()()()()()()()、スルト」

 

 

 

 

 

 終わるは神呪、始まるは神楽。

 

 剣の担い手は、一人、内なる二つを重ねて神剣へと宿す。

 

 残すは一つ、成すべきは一つ、その唯一つだけの神行こそ————ッ!!

 

 

 

 

▶ ■ 「剣の鼓動、此処にあり————!  ■ ◀ 

▶ ■  剣の心魂、此処にあり————!」 ■ ◀

 

 

 

 

 彼女という剣の辿り着いた答えこそ、()()を斬ることができる術技。

 

 彼という剣が追い求める刃こそ、()()を断ち斬ることができる刀剣。

 

 

 

 人域を超えた二つの剣、それを()()()()()にて一つとし!

 

 ()()()()()()()()()終わらせる(斬り捨てる)、ただ一刀の神威を成さん!!

 

 

 

 

▶ ■ 「くらえ、」 ■ ◀ 

 

 

 

 神剣の切先が、天を差し、

 

 

 

▶ ■ 「これが、(オレ)達の、」 ■ ◀ 

 

 

 

 無念無想の更なる先、空の彼方の果てなる上が剣を運ぶ。

 

 

 

 

▶ ■ 「『都牟刈(ツムカリ)村正(ムラマサ)』、重ねて————っ!」 ■ ◀ 

 

 

 

 

 定めるは()()、己が斬らねばならぬ()()へ! 悲しみを永遠(とわ)に終わらせるために!!

 

 

 

 

 

 

▶ ■ 「『都牟刈(ツムカリ)草薙(クサナギ)』だ——————ッッ!!」 ■ ◀ 

 

 

 

 

 

 

 三人の人神が鍛え極めた神武の一閃、

 

 

 天元すらも突破し、森羅万象の因果業源たるその   を断と斬鏖する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで、世界の時が止まっているようだった。

 

 それほどの速さの瞬斬。

 

 ありとあらゆる斬るべきもの全てを、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                    」

 

 

 

 真っ二つに両断されたスルトが、消えていく。

 

 断末魔の呟きすら許さないその一撃は、身動き一つすることすらも拒絶させる。

 

 

 

 光に消え去る氷焔の巨人王は、憤怒の表情を貼り付けたまま————、

 

 しかし、どこか満足げな顔をして、消えていった。

 

 

 

 

 

『…………終わったか。

 終わったか…………』

 

 

 スカサハ=スカディの声が響く。

 

 

『スルトの撃破、よくやってくれた。

 やつに殺された神々、散っていった我が娘達へ、良い報告ができる。

 礼を言う、カルデアのものよ。

 見事な、私ですら見たこともない、見事な一撃であった。

 …………ふむ、シャドウ=ボーダーとの通信はもうしばし戻らぬか』

 

 

「…………報告、ですか?

 それはどういう?」

 

 

『オフェリア、()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「えっ!?

 ど、どうやって!?

 ここからなら距離も、」

 

 

()()()()()()、そして、()()()()()()()()

 つまりは、この世界も、消えゆくということ。

 納得するしかあるまい、認めるしかあるまいて。

 あのような、法外すぎる、神ですら理解に苦しむ一刀を、見せつけられてはの。

 あらゆる災いを斬り捨てる一刀、いや、その元の元の、更なる元を、斬る、か?

 私ですら、その真価、理解できておらぬが、オフェリア、体に相違ないか?』

 

 

「体————?

 ……………………。

 ……………………じょ、冗談でしょう…………?」

 

 

「まさ、か…………」

 

 

『言ったであろう、スルトの撃破、よくやってくれた、と。

 さて、では私は失礼させてもらおう。

 この世界が消え去る最後の時まで、しばしはあろう。

 愛らしい我が子らと過ごすとしよう。

 ワルキューレ達よ、お主達は自由だ。

 これまでよく仕えてくれた、最後の時は各自好きにするが良い』

 

 

「…………」「…………」「…………」「…………」

 

 

『そうか、自由が分からぬか。

 ならば、子供らの元へ向かってくれぬか?

 スルトやら巨人やらで、怖い思いをしておろう。

 最後の時に、そのような恐怖を持たせないように頼むぞ』

 

 

「任務了解」「任務了解」「任務了解」「任務了解」

 

 

 生き残った最後の戦乙女達が、空を駆けていく。

 

 

「そンじゃ、喧嘩の決着は、次回へ持ち越しか」

 

 

『うむ。

 すまぬが、そなたをかまってやれる時間がない。

 次あらば、ふふ、茶の一つでも入れてやろう』

 

 

「————時間、か。

 ()()()()()()()()()()()()()()、な…………」

 

 

『オフェリア、最後に、こちらを向いてくれぬか?』

 

 

「え? ————」

 

 

『ふむ、()()()()()()()()

 もはや何も心配することはない、そのまま、行くがよい。

 では、壮健でな』

 

 

 そして、彼女も去っていく。

 

 

「よお、やるじゃねぇか、正義の味方」

 

 

▶ ■ 「刀、ありがとうございました」 ■ ◀  

  ■ 「刀、壊しちゃってすいません」 ■    

 

 

「ははっ、我ながら見事な壊れっぷりだ。

 おめぇに壊してもらえるなんざ、刀打ちとして最高の報酬だ。

 次はよ、()()()()()()()()()()()を鍛えてやるよ」

 

 

  ■ 「またみんなで一緒に、」   ■  

▶ ■ 「正義の味方、やりましょう」 ■ ◀   

 

 

「言うねぇ。

 …………っと、時間か」

 

 

『シーーーーーーーーーーーーーーローーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

「ごめん、イリヤ、オレもう消える」

 

 

『あーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

 

「小言は全部まとめて後で聞くから。

 じゃあな」

 

 

『うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 シロウのバカ!! もう知らない!!!!』

 

 

「…………え、消滅??」

 

 

「なンで、…………だ??」

 

 

「それは私達に聞かれましても…………」

 

 

「細けぇことは、置いとくか。

 今度こそ、そンじゃ、」

 

 

「ごめんなさい! 最後に一つ、答えて、くれ、ますか?」

 

 

「————ん?」

 

 

「その人は、どう、なったのですか?

 どんな、結末、を迎えたのですか?

 どんな最後、だったのですか…………?」

 

 

「ああ、()()()か。

 

 ——————()()()()()、」

 

 

「えっ、星? ま、まさか…………()、を…………!!?」

 

 

「って、()をどっかで聞いたな。

 

 案外そこらへんでやってるんじゃないか? 正ー義の味方」

 

 

 青年は、一人一人へ笑いかけ、光の中へ消えていった。

 

 

 そして、三人が残る。

 

 

「って先輩ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??

 ()()は一体どういうことかとですかーーーーーー!?」

 

 

  ■ 「自分自身、」      ■  

▶ ■ 「何が何やらさっぱりで」 ■ ◀   

 

 

「ダヴィンチより前に召喚された第一号、恐らくそれが貴方じゃないかしら?

 思うに、」

 

 

「思うに?」

 

 

▶ ■ 「思うに?」 ■ ◀   

 

 

「貴方、ヤマトタケルの子孫なのよ。

 召喚の触媒は、あなた自身の血とあの神剣、その両方でしょうね」

 

 

「? でもあの剣は村正さんのでは?」

 

 

「なんていったかしら、源平合戦、だったわね。

 それで草薙剣が沈んだんでしょう? 壇ノ浦?

 本物じゃなくて、レプリカが。

 でも日本神道だと、レプリカにも()入れる(宿す)から()()()()()()()()()()()()、かしら?

 とにかく、龍神の元へ帰ったとか、星へ還元されたとか、諸説あるけど…………。

 ひきあげたんじゃない? 海か、どっかから」

 

 

「あ! それなら、ヤマトタケルを召喚しても、神剣は、ある…………!?」

 

 

「ええ。

 一石二鳥ね。

 ところが、事故があった。

 きっと、召喚の余波で草薙剣が粉々に砕けたのね」

 

 

「ということは、先輩は、先輩のまま、ですが、

 実は体内にヤマトタケルがきちんと召喚されていた、と?」

 

 

「貴方は、最大の成功例であると同時に最悪の失敗例なのよ。

 草薙剣なんて、二本目を用意できるわけないじゃない?

 だから、記憶を消して元の生活へ戻した、監視付きでね。

 カルデアはマスター候補を探すため、広く人材を募ったでしょう?

 いるじゃない、どう調べても一般人のはずなのに、常時マークされてる凄い人間が一人」

 

 

「神剣がなければ何もない、しかしあれば…………」

 

 

「反則ね。

 スルトの炎とあなたの草薙が、相性が最高に良かったからというのもあるけど、

 一発よ、一発。

 武蔵の一撃が二回入って相当ダメージは入っていたけど、一撃は、ね。

 もしかしたら、無傷全開神霊クラスのスルトでも、あの一発なら殺してた可能性は十分ある」

 

 

「先パーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!

 先パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!

 先パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!!」

 

 

  ■ 「そんな目で見ないで!」      ■    

▶ ■ 「いつものマシュ、カムバーック!」 □ ◁

 

 

  ■ 「それにそろそろ、」 □    

▶ ■ 「時間みたい」    □ ◁

 

 

「戻る、時間ですよね?

 剣がなくなってしまったので。

 大丈夫なんでしょうか?」

 

 

「ええ、元の状態へ戻るだけだから、何も起こらないわ、()()()()()、クスッ。

 聞きたいことがあれば、聞いたら?

 ヤマトタケルとしての知識や記憶、それに能力はこの状態じゃないとないわよ」

 

 

「えええ!?

 先輩に、聞きたいこと、先輩に、言いたいこと、先輩に、教えてもらいたいこと、

 そもそも今の先輩は先輩なのか、ヤマトタケル先輩なのか、先輩ヤマトタケルなのか、

 ヤマトタケル、ヤマトタケル、それとも先ヤマトタケル輩、うぅうぅぅ!」

 

 

「あら、()()()()()()

 ふぅ〜ん、そう。

 

『先輩、抱いてもらってもいいですか!?』

 

 ですって」

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!」

 

 

  ■ 「!?!?!?」 □    

▶ ■ 「?!?!?!」 □ ◁

 

 

「否定しないのね、意外」

 

 

「その、言い方は…………!? まさか、オフェリアさん————!?」

 

 

「ええ、冗談。

 ごめんなさい、貴女達って付き合ってるのかしら、と思ってね。

 期待させてしまったなら、謝っておくわね」

 

 

「オーーーーーフェーーーーリーーーアーーーーさーーーーん!!」

 

 

「フフ、さて、ご一緒していいかしら?

 投降するわ」

 

 

「そうやって話題を逸らすんですか!!」

 

 

「でも悪いわね、私から話すことは何一つないと思うけど…………。

 それでも、受け入れてくれる?」

 

 

▶ ■ 「分かりました」           □ ◁  

  □ 「さっき見えた可能性について是非!」 □ 

 

 

「そんなごまかしに、私は————、ゔっ、ッッ!!??」

 

 

「マシュ!?」

 

 

「へ、平気です…………あたたたた。

 何やらいっぱい無理しすぎていたのが、いたたた、全部いっぺんに来たみたいです…………」

 

 

「大丈夫?

 ほら、肩貸すから」

 

 

「ううう、ありがとうござい————って、オフェリアさーーーーーーーーん!!??」

 

 

「近い、大きい。

 流石の私でもうるさいと言うわよ?」

 

 

「血が! 血が出てます! 魔眼から!!

 

 

「ああ、これ?

 いつものことよ」

 

 

「それでも! 魔眼からそんな大量の血が出るのはまずいのでは!!?

 早くダヴィンチちゃんに見てもらわないと!」

 

 

「だから大丈夫だってば。

 流血なら、貴女が一番危ないでしょう?

 見すぎて、留めすぎると、こうなるの。

 魔眼使いの宿命よ。

 さ、まずは大地へ降りましょう」

 

 

「…………はい」

 

 

「ねえ、」

 

 

「はい?」

 

 

「………………。

 スルト、強かったわね」

 

 

「はい」

 

 

「………………。

 スルト、暑苦しかったわね」

 

 

「はい」

 

 

「………………。

 スルト、大きかったわね」

 

 

「はい」

 

 

「………………。

 私、ね、」

 

 

「はい?」

 

 

 

▷ □ (!? あだだだだだだだだァァァァァァアアア!?) □ ◁   

 

 

  □ (反動だ! 反動!! 完全に元に戻ったから、)   □    

  □ (反動が、いたいいたいたい! や、やば痛い!!)  □  

▷ □ (そりゃ一般人ではスルトは斬れませんですけど!?) □ ◁   

 

 

 

「あなたが…………その、ね…………。

 …………って、言ってくれて、…………」

 

 

「————?」

 

 

 

  □ 人間としての限界を超える痛みなので、誰かに担いでもらう  □   

▷ □ 二人の時間を邪魔したくないので、死ぬ気で堪える!!!!! □ ◁  

 

 

 

「…………私、すっごい嬉しかった…………」

 

 

「私が、何と、ですか?」

 

 

「だ、だからね、…………その、言ってくれたでしょ?

 

 私を、大切、な、と、と、とと———————……………………とも、だ、         

 

 

 

 

                            

                                         ち、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 役目を終えたことを悟った虹が、消えていく。

 

 

 

 ——————日曜日が嫌いだった少女は、もういない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(エピローグへ)

 

 

 

 


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