【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜   作:夜無鷹

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新年一発目の投稿です。
今年もよろしくお願いします。


第十話 立場と距離

『鉄塔の森』に来て早三日。

エリックは俺にいつ死亡フラグをへし折らせてくれるのだろう。

 

それとも、既に手遅れだったり?

いかんいかん、それはいかん。

エリックには家族がいるんだよ!?あんな事で死ぬんじゃねぇ!なあ、エリック!

 

……で、現在。太陽が頂点に差し掛かる時間帯に、戦闘フィールドの上空を旋回しながら様子見中である。

 

白アバドン(チョロイン)は、俺が手に持っている。

いざという時の逃げ足は一人前な白アバドンには、仮拠点の方で待っていろと身振り手振りで言ったのだが、伝わっていないのか必死に後を追って来ようとする。

しかし、俺の羽ばたきによる風圧で吹っ飛ばされてコロコロと転がる。

ならばと策を講じる白アバドン。噛み付ける箇所に噛み付いて、振り落とされまいと頑張る。

結果、風圧で吹っ飛ぶ。

その行動は、俺が折れるまで続いた。

 

泣けてくるくらい健気だったわ。

なにこの子、彼女候補なの?ねぇ?

心配だからっていつも主人公にベッタリついてくる隣家の幼馴染なの?ねぇ?

嫌だよ俺。約束されたフォーリンラブ的な展開は。

末永くお幸せにアラガミ喰ってる未来しか想像出来ないんだけど。

 

まあ、それよりもだ。

眼下に広がる『鉄塔の森』の戦闘フィールドに、二人の神機使いが小さく見えた。

誰なのか確認するために何度も何度も旋回して観察していたのだが、今になって極東の誰が来ているのかわかった。

 

エリックがいる。

エリックが、いる!

待ちに待ったエリックが、いる!

一緒にいるのはソーマ。

そして、仕事しろ俺の語彙力。

 

プレイヤーにあたる人物はまだいないようで、二人が一定の場所から動く様子はない。

 

「ピギッ!ピィギッ!」

 

突然、手の中にいる白アバドンが暴れだした。

眼下のゴッドイーター達の気配に気付いて、問答無用で追っかけられるトラウマが(よみがえ)ったのだろうか。

白アバドンは外を見たいらしく、握った指の隙間に胴体ごと捩じ込ませている。

 

落ち着け。

万が一、何かの拍子に落ちたら……。

 

「ピギッ!?」

 

勢い余ってスポッと、指の隙間から下方へ滑り落ちていく白アバドン。

あ、ごめん、俺がフラグ建築士だったわ。

 

白アバドンを追って急降下。

前足では距離が足りず、首を伸ばして口を開け、どうにか拾い(くわ)えることに成功した。

 

────が、古龍は急には止まれない。

誰か突貫工事でブレーキ機能をつけてください。

 

落下速度を上げるために半分畳んだ翼を全開にしたが、まあ間に合わないのなんの。

咄嗟に身体を捻り、頭部からの落下は回避する。

 

肩から地面に接触、横っ腹、後ろ足と、倒れ込むような形で盛大に不時着。

崩壊した建物の瓦礫が四方八方に飛び散り、地面は陥没。ちょっとしたクレーターが出来てしまった。

 

この一連の状況、モンハン世界の化け物ハンター様が見たら、腹抱えて大爆笑だな……。

あーもう、そーですよ間抜けですよ。スキルとして持ってますよ。それが何か?

 

倒れたまま「グルルル」と喉を鳴らし不貞腐れていると、口の中に入れっぱなしだった白アバドンが「ピギ、ピギッ」と、鳴きながらじたばたし始めた。

 

俺は身体を起こして立ち上がり、顎の力を緩め開く。

白アバドンはいつも通り、ふわふわと地面に降り立つ。

 

「ピギッ!ピギッ!」

 

何かを確認するように俺の周りを一周すると、その風船フグの身体で何度も何度も前足に体当たりしてきた。

 

な、なんだよ……ヨダレまみれで汚いって怒ってんのか?それは、まあ……悪かった。

けどほら、緊急だったし?情状酌量の余地があると思うんだが……。

 

明確な意思疎通が出来ないため胸中で一人弁解していると、白アバドンは急に体当たりをやめ、左右に揺れながらゆっくり近寄ってくる。

なんだよ今度は………腹いせに噛み付こうって魂胆じゃなかろうな………?別に、大したダメージにはなんねぇけどさ。

 

内心身構えたが、どうも違うらしい。

白アバドンは俺の手に、これでもかと言うほどの力で風船の身体を押し付けてきた。

 

「ピギィ………ピギィ………」

 

いつもの無邪気な鳴き声とは真逆の、妙にしんみりとした鳴き声で、甘える猫のようにスリスリしている。

アラガミにしては、感情が豊かだと思う。

表情が変わるなんてことは一切無いし、また、あり得ることではないが、動作によるリアクションやら情緒の滲む鳴き声が何とも生物らしいというか………。

だから、言葉が通じなくてもある程度なら、伝えたいことが読み取れる。

 

だがどうして、白アバドンの行動は「懐いている」と言うより、幾分か距離が近い。

心酔、執着、敬愛などとも取れるが、表現的には近くて遠い。

結果論、「よく分からない」が俺の率直な感想だ。

 

ま、それはさておき。

 

俺の墜落事故で出来た小規模クレーターから脱け出して、どの地点に落ちてしまったのかを、首を伸ばして確認する。

 

端的に言えば、『鉄塔の森』の戦闘フィールド外。

下方には二段になったステージ、その先には『鉄塔の森』中心部の小空間へと繋がる一本道。

戦闘フィールド(アイ)地点付近。フィールド侵入前のアラガミが待機している場所。

 

上空から視認した二人のゴッドイーター、落下の衝突音とくれば、先は言わずもがな。

 

「今、衝撃音の原因を発見した」

「また出会ってしまうとはねぇ。新人君との顔合わせが台無しだよ」

 

左手側からゴッドイーターが二人、真逆に当たる待機地点から走って俺の前に辿り着いた。

ソーマとエリック。

エリック上田がパックンチョされていないところを見るに、プレイヤー枠の人物と合流する前に俺が落ちたことで、その衝突音が警戒を促す合図になったようだ。

現に、ソーマの神機にはアラガミのものと思われる血がこびりついている。

 

「……おや?あれは、『アモル』じゃないかい?」

 

エリックは俺の傍でふよふよと浮かぶ白アバドンに目をやると、意外とばかりに口を開いた。

 

あ、白アバドンの名前『アモル』か。

あーそうか、そうか。ありがとう、エリック上田氏。ここ数日の疑問が解決したよ。

 

「あの化け物がアラガミを引き連れているなんて情報、無かった気がするんだが………?」

 

そんな訝しげな顔をしないでおくんなせぇ、ソーマさん。

だがどうしたものか。

問答無用で攻撃を仕掛けてこないのは、幸運と呼ぶべきか、好都合と言うべきか。

 

しばしの睨み合いで進展がない中、別の声が聞こえた。

 

「ゼノ……?」

「あれが『歴戦王』……!」

 

声の発生源は、俺から見て右手側。

衣服の黄色が映える赤髪の少年と、紺の髪に薄氷色の瞳で凝視してくる少年。

 

藤木コウタと……伊澄ショウ。

 

なるほど。

お前が、プレイヤー枠の登場人物だったか。

ショートブレード、バックラー……銃はどのタイプか分からないな。ほぼ初期装備か。

 

アイツらもアイツらで、アラガミ相手に奮闘した形跡がある。

にしてもショウの奴……随分と背が伸びた気がするんだが、気のせいだろうか。

まあ年齢的に成長期だったんだろうし、コウタと同期なら、俺の知らない間に十五才を迎えていたんだな。

親じゃないが、感慨深いな。

 

「やっと……」

 

声を絞り出したショウは、呆気にとられているというより、予期しない事態に対する放心状態に近い。

考え無しに、ただ再会の喜びのままに、少年は一歩二歩と歩みを進める。

 

「チッ、動くな!!」

 

俺を警戒しながら、ソーマはショウの軽率な行動に怒りを飛ばす。

 

ああ、けどな……嬉しくないわけじゃないんだ。

気紛れか何かで情が移った奴が、こんな世界でちゃんと生きてるってのは、顔を綻ばせて歓喜するべきなんだろう。

 

「何してるんだよショウ!」

「いや、何って……」

 

磁石のように引き寄せられているショウを、コウタがその腕を掴んで制止させる。

端から見たら、ふらふらと死にに行こうとしている異常者予備軍。

 

思考が感情を押さえ付けている。

今するべきは何か。

 

無理をしてまで極東連中に関わろうとは思わない。

人間に肩入れはする。

ああやって、俺を理解してくれる奴がいるのは、嘘つくまでもなく嬉しい。

 

だが。

いつぞや「サンプル回収」がどうのと聞いた。

どっかの研究馬鹿が変な利用価値を見出だした時、俺への認識が『接触禁忌の化け物』からズレていく。

 

適度に敵対意識があったからこそ、俺は逃れるために思考を巡らせることが出来た。

 

俺がゴッドイーターからの信頼を勝ち取るのは良い。

 

 

じゃあ、逆は?

 

ゴッドイーターが、俺の信頼を勝ち取ったらどうなる?

 

俺の思考力が(にぶ)るくらい、疑うことすら忘れてしまうくらい入り浸ってしまったら………どうなる?

 

それこそ、「馬鹿な奴」と嘲笑混じりに罵声を刺すか、「愚の骨頂」と嗤い転げて軽蔑を浴びせるだろう。

 

何事にもちょうど良い距離がある。

 

 

俺は四人を回し見て、(きびす)を返した。

撤退だ。目的は達成した。

長居する必要はない。

 

エリックに見られてから、ずっと背後に隠れていた白アバドン改め『アモル』を掴み、翼を広げる。

 

 

異種族の埋まらない(みぞ)ってのは、こんな感じなんだろうな……。

 

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

『ゼノ・ジーヴァの反応……消失しました』

 

かの巨龍が立ち去って約一分後、インカムからの声がそう告げた。

 

「はあぁぁぁ………すげぇ怖かった……」

 

一番に肩の力を抜いたのはコウタだった。

興味本意で噂の『歴戦王』についての情報を読み、超弩級(ちょうどきゅう)のウロヴォロスと同等かそれ以上の大きさを誇る巨龍とあったが、その情報が真実だと身をもって痛感した。

 

「さすが『歴戦王』って呼ばれるだけはあるよなー。こう、風格っつーか威圧感っつーか……そう思わね?」

「………」

 

ショウは巨龍が飛び去った彼方の空を、無心で眺めていた。

また、置いていかれた。

いや、まだ届いていなかった。

遠い。遠過ぎる。それは、既に知っていた事じゃないか。

 

「さっきからどーしたんだよ。らしくないなぁ」

「あ、いや……ごめん、考え事してたんだ」

 

不審がるコウタに意識を引き戻され空からパッと目を離すと、正面から二人の同業者が歩み寄って来ていた。

今日の任務で合流、同行する予定だったソーマとエリックだ。

不測の事態によりソーマとエリックが先行し索敵討伐、その後到着したショウとコウタが反対側を索敵討伐の流れになってしまった。

両者共々、互いの名前はインカム越しのオペレーターから聞いている。

 

「ようこそ、クソッタレな職場へ」

「君達も世界のため、華麗に戦ってくれたまえ」

 

二人の挨拶は正反対のものだった。

一緒にいるのが不思議に思うほど、二人のゴッドイーターという仕事に対する熱の入り方が違っていた。

 

「ああ、よろしく」

「サッパリした挨拶だな……よろしくっす!」

 

ショウの淡白な挨拶に打って変わって、コウタは右手を額に当て背筋を伸ばし敬礼のポーズをとった。

 

四人が合流したことにより、無事顔合わせが完了した。

 

任務自体は完了しているため、アナグラに戻ることになった。

ヘリの着陸ポイントへ向かおうとした時、ショウの横を通り過ぎようとしたソーマが呟く。

 

「お前、何のために『ここ』へ来た?」

「え……?」

 

戸惑い言葉が詰まる。

だがソーマは、ショウの答えを待つまでもなく、さっさと歩いて行ってしまった。

ショウは頭の中で自問のように反芻(はんすう)する。

 

答えは、ある。

 

先を行くコウタに呼ばれ返事をする。

思い浮かんだ答えを飲み込む。

 

多分これじゃあ、ソーマは納得しないだろう、と。

 

 




制止役としてコウタにも出撃してもらいました。
そして、白アバドンの名前を思い出した(?)主人公。やっとかよ。

もうそろそろ主人公の「人だった時」に関して書いた方がいいかなぁ、と思いました。ついさっき。
ちょこちょこ薄く書いてはいたんですがね。何にしたって、書くに至る話の流れが思い付かなかった。
それが、とあるリクエストによって解決しかかってる状態です。
ついでに、あの人にも主人公を尋問していただきましょうかね。

それでは、また次回。
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