【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜   作:夜無鷹

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はい、ちょっとお伝えしたい事があって、ババッと書きました。

先日、誤字報告をいただきまして、「投稿前に目を通しているのに」と落胆しつつ、ありがたいと思ってました。
その内のひとつで、「あ、これ説明せにゃならん」事について指摘されたので、この場を借りて説明をば。

前回の金ピカ英雄王を真似た文面にて、一人称の字について報告を受けました。
実際は「我」を使うとの事ですが……知ってます。
「英雄王本人じゃない」「真似」という二点で「俺」を使いました。
言い訳染みていると思うかもしれませんが、事実です(迫真)。

あーあ、後書きに書いときゃ良かった!
以上!


第十二話 青天の霹靂

「おー、速いなぁ。これで風除けがあれば、完璧なんだがなぁ」

 

俺の背中でリンドウが、そう呑気に呟いていた。

龍に風除け機能とか期待しないでほしいんだけど。つか、それ容認した上で俺の提案に乗ったんじゃねェの?

しかし、そこは極東一の神機使いクオリティ。神機片手に背中の棘に掴まって立ち乗り。

 

これぞ竜騎兵(ドラゴンライダー)。握力と脚力がおかしい。

 

それはこの際、追求しないとして。

俺がリンドウに提案を持ち掛けてから現在、上空約二百メートルのあたりを飛行して五分が経過した。

普段ならこの倍くらいの高度で空を飛んでいるのだが、交戦地へ到着した時リンドウが飛び降りるとのことで予め低空飛行しておき、彼からの合図でさらに高度を低くする算段となっている。

 

癒し系チョロイン、アモルちゃんは俺の手の中で大人しくしてもらっている。

言っちゃ悪いが、出る幕がない。すまん。

 

 

───五分後。

遠方に小さく、しかし一目(ひとめ)でそこが目的地であると分かった。

巨大な壁。極東支部を外界のアラガミから護る外壁。

 

眼下には、アラガミが群れを成して一直線に進行していた。

目測でヴァジュラが七体、その他小型とコンゴウ種がメインの中型を合わせて全数三十前後。

 

文字通り移動中の高みの見物を決めていると、重い金属音と共に神機で背中を二度突かれた。

リンドウからの、高度を下げろという合図。

速度を保ったまま徐々に地面が近付き、ギリギリの高度で飛行を続ける。

 

進行するアラガミに対抗する、見ず知らずの神機使いと防衛班の面々。

しかし人手が足らず、神機使い達の張った防衛ラインから取りこぼしが溢れ出ている。

 

道中、気になるものを見たが、まずは後回しだ。

 

外壁まで三、二、一………間際で重心をずらし、左へ旋回。

一番地面へ接近するタイミングを見計らい、リンドウは飛び降りた。

 

「助かった。ありがとさん」

 

瞬間、そんな優しい声が届いた。

俺はすぐさま飛び上がり、様子見がてら交戦地の上空に円を描く。

 

予想外なバケモノの登場に緊迫した表情で空を仰ぐのは、雑魚狩りに余裕のある防衛班メンバー。

口をあんぐりとさせ呆けている間抜け顔を晒すのは、俺の知識に無い低戦力の神機使い達。

 

そして、取りこぼしを掃討し微笑を浮かべるリンドウ。

 

真っ当に感謝されたのは、久し振りだ。

心の底からの、歯に衣着せない言葉を、(じか)に聞いた。

今まで聞いた雑多な敵意より、深く、()みる。

 

ああ……俺は、人助けが出来た。あの兄妹を助けて以降、誰にも助力出来なかった俺が……。

 

人助けだと思える人助けを───。

 

 

ならもうひとつ、サービスしてやろう。

アイツらの仕事は取らない。

ただ、助力するだけだ。

 

アラガミとゴッドイーターが火花を散らす真上で滞空し、大きく、空気を吸い込む。

目一杯、腹一杯。

 

異常に(たくま)しい猿公(えてこう)共の聴覚を、潰してやる。

 

吸い込んだ息を、牙を剥き、顎を限界まで広げ、喉を震わせて全て吐き出す。

一秒を待たずして天地に轟く高低二重の大音声(だいおんじょう)

コンゴウのみならず、ヴァジュラと小型アラガミさえその場で地に伏せ、身動き一つ取れない程の、超咆哮。

大気すら波打つ咆哮の余波で、砂や砂利が舞う。

 

さぁ、ここは神機使い達の持ち場だ。

咆哮に耳を塞ぎ、少しでも軽減できたアイツらに利がある。

アラガミは長めのダウン状態。

 

バケモノなりに御膳立てはしてやった。

あとは、好きにやるがいいさ。

 

俺は別の場所で、アラガミを喰ってこよう。

極東支部を正面に左へ方向転換。

この先にも、二十体に満たないアラガミの群れを確認した。

リンドウを送る途中で目についた、あの件である。

 

後回しにしてしまった為、少々急がねばならない。

一向に外壁付近へ姿を現さないのだ。

それは、進行ルート上に奴らの気を引くものがあるから。

こんな殺風景な場所で気を引くものといえば……無防備な人間に他ならない。

 

飛行一分強。

寄り合わせで(こしら)えた、継ぎ接ぎのみすぼらしい平屋。何棟かの小屋を後々繋ぎ合わせたようにも見える。

複数の人の気配があるのは明らか。

その入り口を、サリエル一体を中心としたオウガテイルの群れが取り囲む。

 

まずサリエルの斜め上に陣取り、滑空を開始。

勢いのままに人の女性を模した胴へ喰らい付き、慣性に従って地面に打ち付け引き摺る。

これだけでは、決定打にならない。

仕上げに胴を何度も、噛んで、噛んで、噛んで、噛み千切る。

 

口内に収めたサリエルの胴体を咀嚼、飲み込む。

んー………微妙。残ったスカート込みの下半身部分は、アモルに処理してもらおう。

 

握っていた手を開いてアモルを解放する。

 

「ピ……ピ、ギィィ………」

 

俺の手から降りたアモルはフラフラとしており、平衡感覚が麻痺しているようだった。

えぇっと、俺の咆哮を間近で聞いたせい、だろうな………あ゙あ゙あ゙あ゙ごめんよォォォ!その場のノリに乗ってしまったんだよォ!

 

目を回しているアモルを鼻先で小突いてサリエルの残骸へ寄せると、華美なスカート部分にゆらゆらと噛み付いて、しゃぶるように顎を動かし始めた。

そうそう、それ喰ってちょっと待ってておくれ。

 

さて、と。

俺の正面には、難民キャンプを背に態勢を低くして唸るオウガテイル十数体。

一瞬にして統率者を失ったことにより、奴等の優先事項が人を喰うことから、統率者を瞬殺した強敵の排除へと移行した。

 

喰うとは言ったが、俺はアレら全てを喰い散らかそうとは思っていない。何でかって、味が……味がね………。

だから、形を残さず片付けてしまって問題ないんだなァ、これが。

それに食事中のアモルから、離れるわけにいかないしな。

 

俺は後ろ脚で直立し、全身に巡るエネルギーを喉のあたりへ集中させる。

立ち上がったことで平時よりも視点が高くなり、威嚇してくるオウガテイルの群れを完全に見下す巨龍の絵面となっている。

 

十秒ほどの間を置き、意を決したオウガテイル一体が突撃を開始した。

その個体を筆頭に、他の個体も続々と俺を排除せんと地面を蹴る。

走る速度はお世辞にも速いとは言えない。鈍足よりはマシ程度のもの。

 

エネルギー蓄積の影響で胸部が赤く熱を帯び、両頬と両前足のヒレが一層肥大化、放つ白光がさらに明るさを増す。

 

 

 

その心臓(コア)………貰い受けるッ!!

 

 

 

先頭を走るオウガテイルが射程圏内に踏み入った瞬間、顎を全開にし蓄積したエネルギーをビーム状に放出した。

首を左へ右へ、足元から根こそぎ焼き払うように蛇行させながら放つビームを、数体は脳天から被り熔解(ようかい)。残りの大多数は初撃に足を持っていかれ体勢を崩し転倒、そこへ蛇行させたビームの追撃をもろに受け体の大部分を焼失。

 

残数三体。

こいつらは群れの最後尾を走り、俺のビームが直撃する寸前で飛び退いた危機察知能力の少し高い個体。

 

最後に左へと振ったビームのエネルギーを、顎を閉じながら空へと逃がしつつ収縮させ放出終了。

直立を止め前足を地面に付く。

 

触れた土は赤熱。

緩く開いた口からは、息と共に若干の熱を持った白煙が吐き出される。

肥大化した各部位の幽膜は平常時に近い状態まで戻り、全身に帯びた熱は徐々に冷めていく。

 

この沈静化タイムを隙と見た三体のオウガテイルは、ビームで赤熱した地面を避け左から二体、右から一体と回り込んで向かってくる。

 

好都合。

難民達の住居前から離れてくれた。

これで、ブレスが使える。

 

食事中のアモルを腹の下に匿い、まずは右の一体に念の為の三連ブレス。

初撃は足止め、二発目で負傷、三発目は致命傷でトドメ。

 

次、左の二体。アイツらは喰う。

と、オウガテイル達は走るのを止め立ち止まった。

尻尾が上がっているのが見える。

他にいないようだし、離れても大丈夫だろう。

 

土を巻き上げ、駆ける。

 

オウガテイル二体の尻尾から刺が発射され、背中と左前足にそれぞれ一発ずつ当たるが、どうってことはない。

次の行動に移られる前に、向かって右側のオウガテイルの頭部に喰らい付き、同時にもう一体を左前足で(すく)うように掴み上げてから地面に叩き伏せる。

 

咥えたオウガテイルは、持ち上げて頭部を噛み砕いて飲み込む。

ドチャッと落ちた胴体は一旦放置し、叩き伏せたもう一体の頭部も噛み潰す。

 

……やっと片付いた。

オウガテイルは味的に、あんまり好きじゃないんだがなぁ……背に腹は代えられない。

我慢する!

 

気が進まないまま、もちゃもちゃとオウガテイルの胴体を喰っていると、先に食事を済ませたアモルが近寄ってきた。

 

「ピギッ!ピギィッ!」

 

小刻みに跳ねて何か訴えてる………いやこれは、怒ってる、のか?

咆哮の件は悪かったって。興が乗ってしまったというか、何というか……。

 

「おう、これまた派手にやってくれてまぁ」

 

うわっ、ビックリしたぁ……。

背後に顔を向けると、いつものようにタバコを吸っているリンドウがいた。

アモル……怒ってた訳じゃなくて、(しら)せに来たのね。

 

“そっちは片付いたのか?”

 

「ん?ああ、ある程度片付けたあたりで、防衛班の奴らに追い出されてな。別の群れが来たって通信が入って、こっちに来たってわけだ」

 

あー………あの借金がどうの言ってる人と某『嘆きの平原』姉さん、金稼ぎが生き甲斐兄さんあたりに邪魔者扱いされたんだな。分からんでもない。

 

「しっかし緊急だったとは言え、こりゃあもう無理だな………」

 

独り言のようにそう口にしたリンドウは、三百メートル先のキャンプに隠れ覗き見ている難民たちを見やった。

俺も釣られた(てい)で難民たちを見、チラッとリンドウに視線を移す。

彼の表情は喜ばしい言うよりも、顔を(しか)めて何かしらの不都合を匂わせるものだった。

素直には喜べない微妙なリンドウに率直な疑問を書こうと思ったが、この様子だとハッキリ言いそうにない。ここは耳の遠いバケモノを装って、気が付いてないことにした。

 

「………ちょっと待っててくれ」

 

そう言ってリンドウは身軽に赤熱した箇所の地面を飛び越えながら、俺を見て怯えている難民達の方へと向かって行った。

耳を凝らしても何を話しているのか皆目見当つかないが、リンドウが身振り手振りで彼らに何か伝えているのは見て取れた。

それから五分経ち、俺の前に戻ってきた。

 

「ほら、受け取れ」

 

差し出されたのは、透明感のある白いビーズのような石に紐を通した、素朴なネックレスだった。

 

"あんたにこんな趣味が………"

 

「分かった上で言ってるだろ。まーあれだ、助けてくれた礼だとさ。あの嬢ちゃんから、な」

 

再び難民達の方を見ると、親と思しき大人の陰に隠れてこちらを様子を窺っている子供がいた。

その子は俺の視線に気づくと、怯えつつも顔を綻ばせて小さく手を振った。

釣られて他の大人達も軽く頭を下げて感謝の意を示し始める。

 

"なるほど。確かに嬉しい………が、受け取れないな"

 

「へぇ………理由を聞いてもいいか?」

 

"そんな大事そうな物、俺が貰ったらいつ失くすか分からないからだ。それに、そういう光り物に目がない同行者がいるんでな"

 

チラッと俺の喰いかけを喰って満腹状態のアモルを見やる。

 

"だから、そうだな………ショウかリイサにでも渡してくれないか?アイツ等なら大事にしてくれるだろう。ついでに、頑張れって伝えてくれ"

 

「親みたいな………いや、兄弟みたいな目線で物を言うなぁ」

 

"感覚的には、そうだな。否定はしない"

 

最初に人助けをした成功例だし、出会った当初が俺より年下だったからな。情が移っても親の感覚とは遠いと思ってたのも事実だ。

 

"そろそろ、ここから離れる。さすがに神機使い何人も相手にしたくはない"

 

「ハハッ、だろうな。あーそうだ」

 

リンドウはタバコの煙を吐いて一拍置くと、アモルを鷲掴みにして翼を広げようとする俺を真っ直ぐに見据えた。

俺はその見透かされたような目に、何を言うでもなくただ、悪寒に似たものを感じた。

 

「何で人を助けるんだ?」

 

一瞬、思考が凍結する。

しかし、転生した直後を思い出して元が人だったから、一方的な殺人に「抵抗があるだけ」「元同族の手助けをするのは当然」という回答を脳内に薄らと浮かべた。

───だが。

 

「報告では、お前さんは何度も神機使いとぶつかっているが、何で抵抗しなかったんだ?いや、何でやり返さなかった?詳しい状況は知らないんだが、その時々によってはお前さんの正当防衛が成り立つはずだ。なのに何故、頑なに手を出さなかった?」

 

次いで紡がれていくリンドウの疑問と質問に、また数瞬、思考が止まる。

 

何で、何で、何で?

それは、ああ……簡単だ。傷付けるのも殺すのも、抵抗があるからだ。同じになりたくないからだ。

……何と?何と同じになりたくないんだ?

 

 

 

 

何と、同じになりたくないんだっけ。

 

 

 

 

頭が混乱している。

忘れた何かがある。忘れた何かに影響されて、無意識に染み付いてしまった何かがある。

 

あれ?何だっけ。

俺は、何を忘れているんだ?

 

「まあ、答えないならそれでいいんだ。どうせ、信じる奴なんてのは、殆んどいないからな」

 

そう言って、混乱する俺をよそにリンドウはカラカラと笑う。

 

「まぁ、アイツらの為に『死ぬな』ってことで。じゃあな、さっさと飛んで行け」

 

リンドウは俺に背を向け、軽く手を上げて歩き去っていく。

バケモノ相手に「死ぬな」とか……何考えてんだ、あの人。立場を考えろ、立場を。

 

まあ、ともかく。お言葉に甘えるとしよう。

 

ここに居たって、忘れた何かを思い出せる訳じゃない。

忘れたことは忘れたまま。

 

 

ただ無為(むい)に、過ぎていくだけの話──。

 




はい、今回はリクエストにあった「アナグラ付近の集落を助けて、住んでる人に感謝される」というものでした。
まあ、集落より小規模にしてますがね。すみません。
戦闘シーンやら諸々を丁寧に書こうとして、文字数増加……。

場面中には書いてないので補足。あの集落に住んでる人達の裏事情をば。

適性が無く外部居住区に入れなかった。どこに行っても、いずれアラガミに喰われる。
そこで、アナグラから少々離れた位置に居住スペースを自作。ゴッドイーターが即座に駆け付けそうな場所に住み、間接的に守ってもらおうとした───って感じですかね。

それでは、また。

あ、質問があれば答えますよ。ま、設定ガバガバな部分もあるんでね。その時は………ごめんなさい。

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