【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜 作:夜無鷹
前回のシリアスは宇宙の彼方にぶん投げて来ました。
さようならシリアス、こんにちはコメディ。
なので、頭をカラにして読んでください。
極東支部のアラガミ強襲騒動から四日。
頭の中がぐるぐるしてる。
終わりが見えない。
いつまで続けるんだ?
俺は、いつまでこうしていればいいんだ?
同じ形状のものが延々と目の前を通り過ぎ、錆び付いたそれらは不快に軋む音を鳴らして戻ってくる。
もう腕が疲れた。
だが、やめさせてくれない。
回転する円形の屋根に、昔はカラフルな着色がなされていたであろうブランコが吊り下げられている。
遠心力でブランコは外へ外へと、その高度を上げていく。
直立した俺が屋根を手動で回すたび、ブランコに座るアモルが「ピギ!ピギィ!」と声を弾ませて鳴く。
《
遠心力による
俺は声を大にして言いたい。
お前、浮遊生物だろうがッ!!
■■■■■■■■■■
何故、俺達が廃遊園地にいるのかというと。
いつも通りあっちこっち放浪していた途中で見付け、俺はスルーしようとしたのだがアモルが興味津々。
少しだけなら………と、立ち寄ることになった。
そう妥協したのが間違いだった。
奴の幼心にがっちりハマってしまったのである。
メリーゴーランドとかティーカップのアレなら、子供らしいアモルに合ってて、まだ理解出来るよ。
浮遊生物が浮遊感楽しむってどうよ。
空飛べる奴がスカイダイビングするのと同義だろ。
あ?極東支部ではあんなにシリアスしてたのに、四日ではっちゃけてるって?
……そりゃそうでしょ。
これくらいサバサバしてねェと、気がもたないのよ実際。いや、ホントに。
忘れることの一つや二つザラにあるって、自分に言い聞かせて無理矢理解決した。
明日は明日の風が吹く。つか、吹け。そよ風程度に。
「ピギッ!ピギィッ!」
俺が回転の手を緩めた時、アモルがブランコからふわふわと降りてきた。満足してくれたらしい。
直立を止めて疲労を払うように右前足を振ると、白フグはくるりと回って楽しげに鳴きながら跳ねていた。
おーおー、楽しそうで何よりだな。俺はここにあるアトラクション、一つも楽しめないのだがね。
別に嫌いとかじゃなくて、大きさの問題。
「ピギッ!ピギッ!」
今度はどれにしようかと右往左往した後、アモルは次のアトラクションを目指して移動を開始。
俺も後を追う。
幾ばくか歩いてアモルが興味を示したのは、前後に大きく揺れる海賊船型の絶叫アトラクション。
《
おい、何でまた浮遊系なんだよ。
何基準で選んでるの、この子。
……まあ、いいさ。満足するまで付き合ってやる。
興味はあるものの、どうするのか分からないアモルはまた右往左往。
俺は手を差し出して乗るよう促し、船体の傍まで寄せる。
すると、アモルは船体の
違う、そうじゃない。アモル、それドロップちゃう。船や……。
どう頑張ってもお前には喰えないんやで……。
俺の心情を察して、アモルは口を離し船上へ移ってくれた。
あとは、船尾に行って手動で揺らす。
船体に直立状態で両前足を着き、腕、後ろ足を踏ん張って押す。
あれ……?結構重いな……。
体重掛けてもうちょっとこう……。
ギシッと、船体が揺れ始める。
少しでも動けば、あとはこっちのもんだ。
揺れるテンポに合わせて力を入れたり緩めたりを繰り返しながら、船体の揺れ幅を徐々に上げて行き絶叫ゾーンを目指す。
何だろコレ……赤ちゃんのカゴを揺らしてる気分だな……。
浮遊感を味わえる絶叫ゾーンに突入したところで、俺は船体に突撃されないよう身体を少々
それからほぼ無心で両前足を動かしていると、左の後ろ足をツンツンと突かれている感覚があった。
手は止めずに首を曲げて視線を落とすと。
「ピギィ!ピィギッ!」
足下に、ぴょんぴょん跳ねる白フグがいた。
………何でお前がそこにいんの?つか降りたの?いつ?何で?
アトラクションから意識が離れた瞬間、直立してはいられない程の衝撃が上半身全体に広がった。
海賊船が俺に追突したのである。
落下に重量が合わさった結果、その衝撃と突撃力は耐え難いもので俺は背中から地面に倒れてしまった。
お、思ってる以上に痛い……。どこぞのヤンキーに、わざと肩ぶつけられた時並みに痛い……。
何か、アモルに振り回されてる感があるなぁ……俗に言うデートなんかもこんな感じなのだろうか。気移りしやすい女性の気が知れないな。
ま、双方楽しければいいのか。
「ピギィ、ピィギィ!」
アモルに背を向けて倒れ「青い春」が何たるかを考えていたところ、例の如く次のアトラクションに行こうと翼膜を引っ張っている。
ワガママ小僧か貴様!あーもう、はいはい行きますよ!行きゃあいいんだろ!
ったく、
倒れた身体を起こし、また楽しげに浮遊移動するアモルの後を追う。
次にアモルが興味を示し立ち止まったのは、車輪状の枠の周囲に釣鐘型のゴンドラが設置された
《
アラガミがまだ発生していなかった時代。何組もの
彼女の信頼と好感度をMAXにしてその一組となった君は見事、
拍手喝采おめでとう!これで君は勝ち組だ!
ったく……羨ましいこと山の如しだチクショウめ。
あ?
うるせぇ、エビフライぶつけんぞ。
「ピギ……ピギィ?」
遊び方の分からないアモルは、観覧車の下を行ったり来たり。
乗り場は所々錆び付いているもののまだ形を留めているが、俺がいるから関係無いな。
ゴンドラも同様に塗装が剥げ、窓ガラスの殆んどが割れてしまっている。
ま、動けば問題なし。
まずは、両の前足が自由に動かせるよう乗り場の左隣に直立し、ゴンドラのドアにある窓に爪を引っ掛け、勢い余って壊さないよう慎重に開く。
次に、心なしか目を輝かせているアモルを手招きして、一度手に乗せてから再度立ち上がる。
ドアを開いたゴンドラへ移動。
俺とゴンドラを交互に見て一向に乗ろうとしないアモルに対し、顎を使ってゴンドラに移るよう促すと、意を決したようにぴょんと乗り移った。
よーし、あとはドア閉めてっと……確か観覧車は時計回りだったか。
下から上に引き上げる感じで動かせばいいんだな。
車輪の中心部から放射状に伸びる支柱を握り、いざ動かそうと力を込めた……その時、俺の背後でコソコソという物音が……。
恐る恐る振り向くと───。
「ちょっとアリサ、こっちに来てサンプルの回収を手伝ってくれないかしら」
「お言葉ですが、私の職務はアラガミの討伐であって、サンプル回収は含まれていません。それに、もう一人いるのですから問題ないと思いますが」
「チッ……面倒な奴だ。やりたくないなら、やらなくていい」
地面に真っ直ぐ伸ばした尻尾の先、揺らめく幽膜の周囲に見覚えのある三人がいた。
いや、厳密には一人だけ初めましてだが、まあ、ややこしいな。
幽膜を持ち上げるサクヤ、神機で幽膜を斬り離そうとしているソーマ、その二人に背を向け髪を弄るアリサ。
てんでバラバラ。
あの態度のアリサは、異動してきて日が浅い時期だな。
……つか、どうしよう。
これ、動いたら開戦の可能性が………。
そんな穏健派の考えなんぞ露知らず、不意に顔を上げたサクヤと目が合ってしまった。
あ、どうも、こんにち……。
「っ!気付かれたわ!アリサ!ソーマ!」
パッと距離を取り、各々警戒体制に入る三人。
ははっ、ですよねー。うん、知ってた。はははっ、あれ、おかしいな……目から汗が……。
俺は沸き上がるブルーな感情に項垂れる。
だがしかし、お前らの神機が効くとは限らねぇからな!
俺の鱗やら外殻は、そこらのアラガミより硬い。
鉄かそれ以上の硬度を誇ってんだぞ!舐めんなよ!
数秒の硬直の後、俺の立ち位置と格好を見て思うところがあったらしいアリサは、溜息を吐いてさらに冷えた視線を送ってきた。
「データは読みましたが、正直期待外れですね。強大で威圧感があると散々聞いていたのに、廃遊園地で遊んでいる場面に出会すなんて……幻滅です」
おっと……心は硝子だぞ。
や、やれば出来る子、YDKだから。俺、やれば出来る子だからァ!
俺の必至な訴えは届かず、黙々と一人動いていたソーマが声を上げる。
「サンプルは入手した。撤退するぞ」
「分かったわ。アリサ!」
「言われなくても分かってます」
そう言うとアリサは何かを取り出し、ずっと観察をきめていた俺の眼前に向かってそれを投げた。
三人は俺に背を向け一斉に走り出す。
直後、視界という視界全てに、目の奥を刺すような鋭い光が走った。
スタングレネードか!うおっ、眩し!
何も見えない……こんな気分だったのか。スタグレ食らったアラガミは……。
視界が戻るまでじっと動かず、ある程度回復したあたりで三人がいた場所を見やるが………まあ、誰もいない。
穏便に済むならいいか、と観覧車に向き直る。
……あれ?何かアイツら、重要なことを言ってたような……?
えーと……あ"!サンプル!幽膜採取された!
どうすっかな……早々に何か起こるとは限らないが、んー……。
まだだ……まだ終わらんよ!
俺には考える頭がある。頭がハッピーセットなのはアモルだけ!
……って、アモルほっといたままだった!
アモルを乗せたゴンドラを覗き見る。
……元気そうに鳴きながら、ぴょんぴょん跳ねていた。
相変わらずだな。
どうやら、俺の身体で影になってスタングレネードから免れたらしい。
運がいいな。さすが幸運のアラガミ。伊達じゃなかったか。
俺が爪を引っ掛けてドアを開けると、高さや距離を考えず、ただ衝動のままに飛び出してきた。
咄嗟に手を出す。
ふわふわと風船のようにゆっくり落下し、俺の手に降りた瞬間、ぽよんと数度弾んで「ピギッ!」と鳴いた。
……風船フグだったな、お前。心配して損したわ。
そう言えば、前にも似たような事あったな。
俺は観覧車から離れるように後退してから、空いている方の前足を地面に着きアモルを降ろしてやる。
あんまり、はしゃぎ過ぎんなよ?俺だってフォロー出来ない時くらいあるんだからな。
注意するつもりでアモルの鼻先を、人差し指の爪先で軽く小突いた。
「ピッ」
お叱りを受けた小さい子供のように、アモルは短く鳴く。
それから、落ち込んでいるのか頭を少し下げた。
反省しているなら、よろしい。ま、俺も慣れてきた節があるからな。
一応アモルもアラガミだ。危機察知能力は有しているはず……きっと、うん……多分……持ってる、よね?
アバドン属の逃げ足を信じよう……。
「ピギ?ピギッ、ピギィ!」
アモルはさっきまでの落ち込みようが一瞬にして消え去り、俺の周囲をぐるぐる回って前足にスリスリしてくる。
コイツ……愛くるしく思う条件ってのを熟知してやがるな?
狙ってないことを前提にすると、天然の「たらし」か。
侮れないな。
まぁ、しかし。
今日は比較的に穏やかだったな。
見覚えのある三人に遭遇したが、戦闘らしい戦闘は避けられた。
こういう日が、続いていけばいいんだがなぁ………。
それは叶わないと思いつつ見上げた空は、仄かに、オレンジ色に染まり始めていた。
リクエスト内容は「遊園地で遊ぶ」というものでした。
リクエストありがたいです。ネタの引き出しが少ないので助かります。
ジェットコースターはレールがゼノの重さに耐えられないと判断し、別のアトラクションに差し替えさせて頂きました。すみません……。
カタカナで色々ルビ振ってましたが、まぁ…目をつむってやってください。理由は、分かりますね?
次の更新は時間が掛かると思います。
それでは、また。