【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜   作:夜無鷹

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ここから本格的に自己解釈・設定を盛っていきます。
矛盾とか出るだろうけど、あくまで自己的要素なのでね。
生暖かい目で見てください。


第十四話 ペイラー・榊の考察

先日、未知の龍型アラガミ『冥灯龍ゼノ・ジーヴァ』の一部を入手した事により、極東支部の研究者ペイラー・榊は昼夜問わず、寝る間も惜しんでそれの研究に没頭していた。

 

ペイラーが研究に自身の時間を全て注ぎ込むのは、彼が根っからの研究者であるからだ。

だが、今回は研究者であることを除いても、目に余る程の注力振りだった。

理由は至極単純。『未知』が『未知』のまま、まんじりとも動かないのである。

そういう時、彼は口角を上げて、大層楽しそうに笑う。

 

実に興味深い、と。

 

十日前に起きたアラガミ強襲騒動。

アナグラにいた神機使いの人数は、強襲してくるアラガミを掃討するには心許無く、任務に出ていた者達を呼び戻して対処しようにも間に合うか、間に合わないかの瀬戸際だった。

その時、かの巨龍が姿を現したのだ。極東の最大戦力を連れて───。

 

「博士。第一部隊、揃いました」

 

機械に囲まれた椅子で、自身のまとめた資料を読むペイラーの耳に、集合を告げるサクヤの声が届く。

集まったのは第一部隊のメンバー。

サクヤ、アリサ、ショウ、コウタの四名。

 

「おや?リンドウ君とソーマがいないようだね」

「リンドウさんなら、デートに誘われたってどっか行ったッスよ。あーあ……オレにも女の子紹介してくれないかなー」

「お前な……ソーマは何も言わずに行ったから、詳しいことはわかりませんよ」

 

コウタとショウから二人がいない理由を聞き、ペイラーは一人納得する。

 

「それで、用件とはなんでしょうか?あのアラガミのことだとは思いますが……」

 

最初に本題を切り出したのはサクヤ。

発せられた言葉には仄かに、確認の意が込められているがサンプル回収後の召集ということもあり、ほぼ断言しているとも思える。

ペイラーは、話が早いと心中で呟き、手に持った資料を置いて、椅子から立ち上がり四人の前に出てくる。

 

「サクヤ君の言う通り、君達を呼んだのはかの巨龍『ゼノ・ジーヴァ』についてだ」

 

ペイラーは慣れた手つきでリモコンを操作し、あらかじめ用意しておいたモニターに電源を入れる。

画面に映し出されたのは、先日のアラガミ強襲時にアナグラ付近へ姿を現した、滞空するゼノ・ジーヴァの静止画像。

 

「先日の件で、彼が取った行動は知っているだろう。彼はアラガミを捕食したが、近くにいたゴッドイーターや他の人間には一切捕食行動を取っていない。これがどういう意味か、分かるかい?」

 

ショウを除く三人は、帰投後に聞いた一連の騒動に関しての情報を踏まえ、静かにペイラーの問いに対する答えを考える。

最初に手を上げたのは、コウタだった。

 

「はい、コウタ君」

「えーと……腹が減ってなかった、から?」

 

言った本人は本気なのだろう。

だが、それはペイラーの求める答えではない。

諸々の事情を知っているショウは、コウタの肩にそっと手を置くと、呆れたように口を開く。

 

「コウタ……大喜利は、もうちょっと頭を使おうな」

「えっ、そんなつもりじゃないんだけど……ヒドくね?」

 

直球で頭が足りないと言われ、目に見えて肩を落とすコウタ。

次に答えたのは、二人に冷めた目線を送っていたアリサだ。

 

「そういう偏食傾向だから、じゃないんですか?」

「お、悪くない答えだ。だが、それではあまり食べないというだけで、全く食べない理由にはならない」

 

他には、とサクヤに目線を送るが、どうやら彼女もアリサと同意見だったようで、何かを発言する様子は見られない。

 

「では、私の見解を話すとしよう。恐らく彼にとって人間(われわれ)は、食糧と見なされていない。または、何らかの理由でその範疇に入っていないのだろう」

 

初観測から今まで受けた報告などをまとめ、自分なりの推測を書き記したのが、先ほど彼が読んでいた資料の内容である。

しかしこの時、サクヤだけは顔をしかめていた。

 

「それはないと思います。私が遭遇した時の報告に、目を通した上での見解なのでしょうけど……」

 

直接相対した際、半身しかない遺体の側に奴はいた。

周囲には他のアラガミの気配はなく、現場の様相は捕食したことを決定付けるに十分(じゅうぶん)だった。

 

「そうだね。これはあくまで推測。最悪、私の希望的観測を含んだ戯れ言の一つかもしれない。だが」

 

僅かに開かれたペイラーの目が、自身の見解に異議を唱えるサクヤを見据える。

 

「君は実際に彼が、人間を捕食しているところを目撃したのかい?」

「それは……既に事後だったので見ていませんが、他には……」

「こじつけがましいが、当時のミッションでサクヤ君の討伐対象だったシユウが……なんて言えば、辻褄が合うと思わないかね?現に、人を捕食したという実際の目撃例が、今までにひとつも無いんだ」

 

あり得ない話ではない。

当時の報告には逃亡したシユウが見付からず、ゼノ・ジーヴァに喰われた可能性を示唆した。

逃亡中のシユウが人を喰った……それも否定しきれない。

人喰いの報告が一切無いのも知っている。

それでも、あの状況を見てしまっては、ゼノ・ジーヴァの人喰いを否定出来ない。

見ていないだけで、喰っていない事にはならないからだ。

 

「……気紛れかもしれないけど、本当にゼノが人を喰うなら、オレは今ここにいないだろうな」

 

サクヤとペイラーによる問答で沈黙が降りた中、助け船を出すようにショウが口を開いた。

アナグラ強襲でリンドウがゼノ・ジーヴァに連れて来られた事により、それに至った経緯が彼の口から語られた。

その際、ショウの経歴を含めたゼノ・ジーヴァに関する情報も報告された。

 

「好き嫌いはあっても、喰わないって訳じゃないんだろ?余程空腹の時には共食いするって聞いたしな。まあ、オレの意見が参考になるかは分かんねーけど……」

 

発言に自信を持てないようで、声が段々と尻すぼみになっていく。

 

「そう言えば、何で最初に言わなかったんだよ?あのアラガミに助けられたんだーってさ」

 

思い出したようにそう口にしたコウタに対して、ショウは目を逸らしつつ頬を掻く。

 

「適合試験を受けるときに、リンドウに念入りに口止めされたんだよ。面倒ごとになるからって………まあ結局、その面倒ごとっていうのを経験したけどな」

「あー………うん………」

 

ショウの言う面倒な経験というのは、ペイラー・榊博士による質疑応答である。

リンドウと共に数時間をペイラーの尋問じみた質問攻めに使われ、支部内ですれ違おうものならさらに時間を持っていかれる。それはもう一目見た瞬間、肩がビクッと反応するほどだった。外部居住区に住む妹のリイサも呼ばれ、根掘り葉掘り………。

余談だが、発端はリンドウがゼノ・ジーヴァに連れられアナグラに来たことにある。

緊急時だったのでそれは仕方ないとして、質疑応答に引っ張り出されたのは彼がショウの名前を出し、道連れにしたからである。

その後ショウは仕返しとして、リンドウの持っていた配給ビールを持ち出し、アラガミへぶん投げるという無意味な消費を彼の前でやってみせた。

同行したメンバーによると、その時のショウの表情はとても清々しいものだったという。

 

「そう、彼と妹のリイサ君はゼノ・ジーヴァに助けられた実例だ。かの巨龍は言葉を知り、理解し、会話も成立している。我々と同等の知識を有していると考えていいだろうね」

 

文字を用いて意思の疎通ができることも、リンドウからの報告によって明かされた。

現在は支部の上層部もゴッドイーターも知る、信憑性のある情報として浸透しつつある。

これにはショウの経歴と、リンドウの実体験の話が大きく働いている。

 

「しかし、言葉が通じてもアラガミです。人類の敵であることに変わりありません」

 

静かに耳を傾け腕を組むアリサが、普段の淡々とした口調で断じる。

人類の敵と発した声は、口調も相まって酷く冷めたものに聞こえ、どのような事情があろうと倒すべき存在だという強固な意思すら感じさせる。

 

「まず、それなんだ」

 

彼女の言葉に引っ掛かるものがあるようで、ペイラーは眼鏡を軽く押し上げる。

 

「それって、何ッスか?」

「彼が、アラガミであるかどうか、だよ」

 

ペイラーが口にした内容に、その場にいる全員が頭上に疑問符を浮かべる。

この研究者のことだから、何かしらあるのだろうという考えが脳内を()ぎる。

しかし、その根拠がひとつも予想すら出来ない。

 

「どういうことです?あの龍型アラガミは現に、他のアラガミを捕食しています。それなのにアラガミかどうかなんて………」

 

困惑の色が滲むサクヤ。

アラガミは通常の兵器が効かない。だから、彼らの持つオラクル細胞を人為的に調整した生体兵器『神機』が作り出された。それを使用し、対抗するためにゴッドイーターがいる。

必然的にアラガミを殺すには、オラクル細胞を持っていることが絶対条件。

よって、アラガミへの捕食行為に関しても、アラガミに片足突っ込んでいるか、アラガミでなければ、オラクル細胞同士の強靭でしなやかな結合を解くことは出来ない。

 

「ショウ君、コウタ君、私が講義中に話したアラガミの定義を覚えているかね?」

「て、定義ッスか?えーと………」

「オラクル細胞っていう単細胞生物が集まって形を成した群体………だっけ?」

 

覚えていない知識を思い出そうとするコウタ同様、聞き入っていたわけではないショウが、薄らと残る知識を探りながら口に出した。

細胞それぞれが意思を持ち、思考力を持ち、生きている。神機でアラガミを斬り倒したとして、それは細胞同士の結合を裂いているだけに過ぎず、細胞自体は相変わらず生き続けまた集合しアラガミとなる。

これが事実上、アラガミを駆逐できないとする所以(ゆえん)である。

 

「それがどうしたって言うんですか。この場でまた講義を開く、とかじゃないですよね?」

 

呆れた声色で変わらずツンケンし、自身の髪を撫でるアリサ。

アラガミの定義についてペイラーが尋ねたことにより、それについてまた話を聞くと考えた彼女は、半ばウンザリしているように見える。

 

「いや、これからアリサ君達が採取してくれたゼノ・ジーヴァのサンプルについて、その前置きを話しておきたくてね」

「何か分かったんですか?」

 

待ちに待った事だけにサクヤは声を上げるが、その期待を裏切るようにペイラーは首を横に振る。

 

「正確に言えば、何も分かっていない。だが、面白いものが見れたよ」

 

ペイラーがモニター下に置いたリモコンを再度操作すると、滞空状態のゼノ・ジーヴァの画像が切り替わり、三人が採取したサンプルのものになった。

青白く発光する布のような膜の一部。

放つ光といい、白炎のような形状といい、未知の存在の一部というのも相まって、大多数の人間に神秘的と言わしめた代物である。

 

「これは、サクヤ君達が持ち帰ってすぐの状態だ。それが昨日……」

 

次にリモコン操作した時、青白い膜の画像が左半分に縮小され、空いた右半分には神秘的な白光が消え失せ、銀とも黒ともとれる色に染まっていた。

 

「すっかり青白い輝きを失ってしまった。私も驚いたよ。あれが常態だと思っていたからね」

 

二つの状態を分かりやすく比較するため、ペイラーはモニターを用意していたようだ。

そして彼は、眼鏡を上げて静かに笑った。

 

 

 

「まるで、死んでいるように見えないかい?」

 

 




博士の考察は次で締める予定です。
そのあとはゼノ視点に戻ります。

それでは、また次回。
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