【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜   作:夜無鷹

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お、お待たせしました………。
急いで仕上げたので、文章がおかしかったり誤字があるかもしれません。

で、では………ガクッ。

※歴史的知識の観点で指摘があり、人物特定していないものに変更しました。


第十七話 信じるモノ

間近で轟いた巨龍の咆哮。

身体の奥底に響く、なんと重厚感のあるお声なのでしょう。

 

この巨龍こそ、我らが崇めるべき神!

白き大翼を有する最も天に近き淘汰のアラガミ!

 

ああしかし、どうしてなのでしょう。

我らを置いて遥か彼方へ飛び去ってしまわれた。

 

どうか、どうか!我らも、我らの魂も!

連れて行ってくださいませ!

 

 

──ああ、分かりました。そういうこと、なのですね。

貴方は淘汰を担う唯一のアラガミ()

増え過ぎた人の淘汰の役目を担うのは、貴方が食す八百万(やおよろず)のアラガミ……。

 

彼らを通していない我々の魂は、浄化を受けていない……貴方の前に姿を晒すことなど言語道断。

貴方が怒りを(あら)わにする程、穢れているという事なのですね……。

 

次に我々の魂が貴方に相見(あいまみ)えるまでに、この肉体という器が果てるその時までに、神に心身を捧ぐ同士を増やさねば。

 

 

それが、敬虔(けいけん)な信徒の務め───。

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

どうにも、奴等の態度にむしゃくしゃした。

無性に腹が立った。

憎らしいと思うほどに、腹が立った。

 

魂は貴方と共に?魂は不滅?導いてくれだと?

とんだ世迷い言をほざくもんだ。

魂だとかの霊的な事柄はどうとも言えないが、死んだらそれまでだろ。

 

生きたくても死んだ奴がいる。

助かりたくても殺された奴がいる。

 

何を崇めようと知ったこっちゃないが、死にたくなかった奴等を多く見てきた分、アイツらの自殺志願振りはいけすかない。

ああそうすると、思想の否定になるのか?

「生きてても仕方ないから殺してくれ」って聞こえるんだが……あれは「逃げ」じゃないのか?

価値観の違いだろうか……。

 

まあ「逃げる」に関しては……俺も大概だろうがな。

あれだ、人間相手では平和主義なんだよ。

おい誰だ、チキン野郎とか言った奴。好き勝手言いやがって………何を今更なこと言ってるんですかぁ、もぅ。冗談抜きで草生えるんですけどぉー。マジウケるー。

 

誰か俺にチキンランナーの称号をくれ。究極の小心者に昇華してやる。

 

 

 

さて、アラガミ狂信者から逃げて二日が経った。

いつも通り行く当ては無し。悠々自適に、殺伐鬼ごっこな日常で生きております。

 

とりあえず、今日の目標は静かな寝床探し。

俺は安らかな眠りを求む。永眠以外で。

 

そんなわけで現在、アモルを持って青い空を飛行中。

何を探すにしても目線が低かったら視界は狭まり、見つかるものも見つからない。

 

つっても眼下に広がるのは、蛇行するカラッカラの川。

うーん……果てしねぇ。

川の上流付近の山々なんか、ほぼ荒れ地同然。食欲旺盛、学習熱心なアラガミにより、一年ちょっとで緑が随分と減った。

元々身を隠せるほど高い木々じゃなかったが、今は手足すら隠すことができない。

 

俺の安住の地は何処!?

 

なんて叫んだところで解決するはずもなく。

それでも何処かに無いかと左右に首を動かして、住人のいなくなった団地を眺めていると、砂の舞う開けた場所に多数の人影が見えた。

 

同じ服装の連中が円になっており、その中心にはそれぞれ違う見た目の人物が三人。

どの人も性別は判別できないが、中央の三人は大中小と身長が異なり、円陣の奴等よりも固く身を寄せあっていることから深く親密な関係であると思われた。

 

俺は、その集団から少し離れた位置に滞空。

そして───ゼノビームを放つ用意をする。

 

悠長に様子見をしている暇はなかった。

何故なら円陣の外側に、小中のアラガミ十数体が今か今かとその身体を震わせていたからだ。

 

降りれなくもないが、降りたところで自由に動き回れる広さでもない。

察して一目散に逃げてくれれば良いのだが、咄嗟に判断出来ずパニクった奴等を巻き込む可能性がある。

モンハンのような防具が存在しないこの世界で、衣服しか身に付けていない一般人が攻撃の巻き添えになっては、まず即死か瀕死は免れない。

 

だったら、気付かれていない現時点で空から奇襲を仕掛ければ、俺がヘマしない限り人への被弾確率は低くなる、はず。

 

ゼノビームの準備が整った。

喉に集中させたエネルギーを、細心の注意を払いながら地上のアラガミ目掛け放つ。

照準は胴の真ん中ではなく下半身、腰にあたる部分。

人の集団から出来るだけ遠く、尚且つアラガミが行動不能になる部位を狙う。

 

ビームは直線。

人間は米粒大。アラガミは枝豆ほどの大きさ。

狙いを定め………照射。

 

三秒も待たずに、何かに接触した感覚が伝わった。

滞空時の羽ばたきで照準が少々前後し、何体かのアラガミに当たっていると思うが、どうにも不安が拭えない。

何事にも失敗は付き物と言うが、許されないときは許されない。

プレッシャーがエグい。

 

十秒の照射を行った後、現状確認のため一旦閉口しゼノビームを中断。

 

いつも通り地面は赤熱。

囲まれていた人達は……無事なようだが、中心にいる三人は呆然と立ち尽くしている。

 

次に肝心なのは、アラガミだ。

 

口々に何かを叫んでいる人達から視線を逸らし、ビーム照射箇所を注視する。

砂煙が晴れ俺は、見えてきた光景に低く唸り声を漏らす。

 

照準が甘かったか……!

 

地面は赤熱。それは中断直後に分かっている。

だが、人に直撃してしまうことを懸念しすぎて、アラガミには掠り傷程度のダメージしか与えられていなかった。

行動不能を狙っていたことを考え、この奇襲は失敗。

人は無傷だが、これでは状況が以前と変わらない。

 

どうする……?

 

攻撃を仕掛けたことで、アラガミの注意は引けている。

しかし、地上戦に移行するには場所が悪い。

空中で狙い撃ちなら、奴等の攻撃を受けずに殲滅が可能。

 

眼下では俺の奇襲を受け、降りて来いとばかりにアラガミがけたたましく吠えている。

完全な敵対。人へ向いていた意識が全て俺に向いている。

 

俺が移動すれば奴等はついてくるだろう。

だが、ここは住宅地の中心部。近場に降り立てる場所はなく、だからと言って飛んで移動しては奴等の意識が離れるおそれがある。

 

どうする……どうする……?

 

 

 

 

……ああ、そうだ。俺、人じゃなかったな。

何をしたって良いわけじゃないが、あの人等にとって愛着のない過去の建物を壊したところで、罰を求められるわけじゃない。

 

そうだな……言を借りるとしたら、軽率な言動代表のあの言葉だろうか。

 

 

場所が無いのなら、壊せばいいじゃない。

 

 

そうと決まれば話は早い。

着陸地点は広場から約百メートル強。

徐々に高度を下げていき、足先が住宅の屋根に触れる。

俺の重さに耐えきれず、住宅はいとも簡単に瓦解。胴、前足を地に着けて追加で二軒を破壊。

尻尾の薙ぎ払いと連弾ブレスでさらに数軒を大破。

 

「ピギッ、ピィギィ!」

 

手の中にいたアモルが指の隙間から這い出ようと、必死に風船の身体をねじり込んでいた。

 

あ、すまん。忘れてた。

 

握っていた手を開いてやると、アモルはふらふらと出て来て地面に腹をつく。

 

「ピギィ……」

 

なんて、明らかに安堵している様子。苦しかったんだな……。

 

そんな息抜きも束の間、アラガミの群れがご到着なさった。

コンゴウ、シユウ、オウガテイル、ザイゴート……ざっと十五いかないくらいか。

 

奴等に気付いたアモルは短く鳴いて、俊敏に俺の腹の下へ潜り込む。

いや、そこに隠れられると動けないんだけど。

……仕方ない。ブレスとビームで対処しよう。

 

一斉に駆け出すアラガミ。

俺は前足を地面に突き入れ、エネルギーを流す。

手前で三ヶ所が爆発。

それが正面奥へと、爆発が連鎖的に広がっていく。以前にも使った扇状に起こす連鎖爆破。

これで地上を進む奴等の足止めし、同時に余力分でブレスを放ち、扇状爆破を飛び越えるザイゴートを排除する。

 

残り猿、鳥、オウガで十体。

オウガ四体は爆破でダメージを受け怯み状態。猿三体も結合崩壊可能な部位にダメージが入り、一時的にダウンしていた。

 

第二陣は、足が硬くダメージの通りが悪かったシユウ三体が担当するらしい。

火球かめ○め波が一体、滑空が二体。

 

正面特攻なら問題なし。

 

ゼノビームの使用回数を重ねた結果、最大になるまでのエネルギー溜め時間が短縮されつつある。

一秒二秒程度だが、それでも進歩だ。

 

しかし今は最大まで溜めている余裕はない。

集中、一秒。エネルギー量は不十分。放出は短時間。

ただし威力は、絶大。

 

放たれたビームは、最初に火球相殺と、その直線上の一体撃破。次いで滑空二体へ逸らし、翼腕と頭をそれぞれ焼き払われ撃沈。

慣性に従って地面に胴を擦りながら不時着、沈黙。

ビームも一時的に収縮。

 

シユウが消え、残ったアラガミは猿とオウガ。

その二種もゼノビームの巻き添えを食らい、猿が一体減って残り二体。オウガは三体減って、一体が取り残されている。

 

もうちょい……か。

 

手っ取り早く、オウガテイルへトドメのブレス三連。念には念を。

これで残りは……。

 

「おお、神よ!お待ち下さい!」

 

ちゃっちゃとゼノビームで終わらせようと集中しかけた時、そんな覚えのある声が聞こえた。

二体のコンゴウを挟んで向こう側。ボロの外套の下に見え隠れする、黒の神父服。

 

奴等に連れてこられた三人は一般的な服装で表情は怯えきり、中でも一番身長の低い一人は大粒の涙を流し泣き叫んでいた。

大人の男女二人。どことなく、二人に面影が似ている泣き叫ぶ子供……彼等三人は、親子だ。

 

「ぱぱぁ、ままぁ、いやだよぉぉぉ……!」

「この子だけは見逃して!お願いします……!」

「子供だけは逃がしてくれ!頼む!」

 

両親が必死に訴えかけるが、アラガミ狂信者は聞く耳を持たず、仲間を率いて体力を消耗しているコンゴウへ近付いている。

 

「何を恐れることがありましょう。アラガミに遭遇すること、それすなわち、彼等の導きの対象になっているということ。そう、我々は選ばれたのです!」

 

言い切った神父風の男の目には一切の迷いも疑念もなく、ただ「それが正しい」と盲信している敬虔な信徒だった。

 

「さあ!最も天に近き龍の神が、我々を看取ってくださいます!抵抗せず、身を捧げるのです!」

 

横に並んだ同士と共に、神父風の男は三人に振り返って両手を広げる。

コンゴウ二体が俺から目線を外し、身体の向きを反転させていた。

 

衝動的に、足が動いた。間に合うとか、間に合わないとかを考える以前に、足が地面を蹴った。

 

 

奴等が死にたがりだろうが、思想に反するだとか、そんなのは知ったことじゃねぇ。

単純に、そう……単純に……。

 

 

コンゴウの腕が、空に突き上げられる。

 

「我等の器は朽ちようと、魂は死なず。不滅の魂は、新しき器で新しき世界に生まれ落ちるのですッ!!」

 

 

瞬間、神父風の男の頭上に、豪腕が振り下ろされた。

骨も肉も関係無く、入り交じってひしゃげていく無惨な音。

 

聞くに耐えない苦しく悶える音の発端、飛び散る血と肉塊になった神父風の男は、潰される直前その一瞬………心底安らかに笑っていた。

 

男を潰したコンゴウの背中に噛み付き、他の信者三人を潰したもう一体は左手で押さえ付ける。

 

「ぱぱぁぁぁ!ままぁぁぁ!」

「大丈夫よ……大丈夫……一緒よ。パパも、ママも、ずっと、一緒だから……ッ!」

「ああ、一緒だ。今も、これからも、ずっと……死んでも、ずっと一緒だッ……!」

 

信者の血を浴び、身を寄せて涙を流す親子三人。

一方で、残された他の信者十余名は、「死」とはどういうものかをその目で見、青ざめている者が大半だった。

 

俺は、咥えたコンゴウの背中を噛み裂いてコアのみを捕食し、もう一体も同じ様に背中の表皮を引き剥がしてコアを回収する。

 

「ピギ、ピギィ?」

 

いつの間にか、アモルが俺を見上げていた。

肩を震わす親子。青ざめ、膝から崩れる元信者。

そして……。

 

「神よ!どうか私達を導いてください!」

 

アラガミ狂信者が、俺にありもしない救いを求める。

俺は信者の願いに耳を傾けず、その場を離れるように歩けば、子犬のように後を追ってくる。

 

「神よ、どうか!」

「神よ!」

「天に近き神よ!」

「どうか!」

 

『私達をお救いください』

 

俺はアモルを持って、翼を広げて空へと逃げる。

口々に同じ言葉を叫んでいる。

 

知るか。知らねぇよ。

俺は、奴等の望む神じゃない。

だったら、奴等の願いを聞く必要も、願いを叶える必要も、全く無い。

 

俺はただ、単純に……そう、単純に……人が死ぬのを見たくねぇんだよ。

手の届く範囲内で、人が死ぬのを容認したくねぇんだ。

 

人を殺したくない。

人が死ぬのを見たくない。

死にたくない。

ゴッドイーター()と戦いたくない。

 

 

なあ、アモル。俺は───。

 

 

 

 

 

 

傲慢な(オカシイ)のだろうか。

 

 

 

 




リクエスト「カルト教団に拐われた一般家族救出」でした。
リクエストされた方のストーリーイメージとは、ちょっと違うかもしれません。そのときは、申し訳ない。

これの前に一回書いてたんですが、途中で行き詰まってしまい、その要因全て消して書き直してました。
そしたら、リーダーと数人が御臨終展開に……いやぁ、予想外。
最初の構想では、説得成功(実力行使)、円満解決(丸め込み)、犠牲ゼロのお花畑もとい、前向きストーリーだったんですけどね。どこで急カーブしたのやら……。

それでは、また次回。

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