【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜   作:夜無鷹

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今回、後半部分は暗く残酷描写が入ります。
苦手な方はご注意くださいませ。



第二話 泡沫

転生してから一週間が経った。

今のところ神機使いとの直接の接触はなく、飛行している最中にアラガミから追われた難民を見かけるのみだった。

 

俺にとっての食糧であるアラガミには地上空中問わず絡まれたが、物理攻撃で粉砕するなど意外とどうにかなっている。

前脚で殴って潰したり、翼や尻尾で薙ぎ払ったりと、体の動かし方についてはだいぶ慣れてきた。

 

あと、一回だけゼノビームを使ってみた。

………的になったアラガミは食糧の任を果たせなくなってしまったよ。

地面が融解するくらいの熱量を持っているとは、微塵も思わなかったんだ。それでアラガミも溶けてしまうなんて予想もしなかったんだ。

それからだな。アラガミ相手に脳筋プレイを始めたのは。

 

だから、ゼノ技はしばらく練習が必要だ。ビームやら熱球やらあの……爆破?的なやつも、威力制御が出来るに越したことはない。

モンハン世界のハンターが人間を辞めてる次元だから気付きにくいが、常人からしたらあの火竜の火球でさえ災害級だ。

燃えるし熱いし痛いし速いし飛ぶし竜だし。竜だし。何十苦だよコレ。

そん中で古龍種ともなれば、破壊力は別格。ゼノビームで「薙ぎ払えェ!」的な事はしたくないからな、正直。

技習得なら、今のところ熱球だけで十分な気がする。

 

さて、長々とここ一週間を振り返ったが現在、俺は山間部にいる。

人目から隠れるため……とは言ってもこの巨体だ。完全に隠れきれるわけじゃなく、前脚や頰、翼、尻尾の幽膜が青白く光るせいで簡単に居場所が割れる。

つい先日、息を潜めて難民達が過ぎ去るのを待っていたが幽膜を見られ、「彷徨う霊魂だ!」や「アラガミだ!」などと絶叫し脱兎の如く散り散りにさせてしまった前科がある。

 

俺が喰うのはアラガミだけだってのに………アイツら、生きてっかなぁ……。

 

山間の谷を、茂みや木を薙ぎ倒しながら歩く。

なるべくなら助けてやりたいが、俺の姿じゃあ逃げられるだけだしなぁ……。

無事を祈っておくか。

 

何と無く人肌恋しく思っていた時、数メートル先で土を舞い上がらせて地面からアラガミが()えてきた。

昆虫の蛹と拷問器具で有名なアイアン・メイデンを融合させたようなアラガミ、コクーンメイデンが左右に並んで二体現れた。

 

んー……お前らはお呼びじゃねェ。

 

俺は右前脚を右から左へ振り、二体を根本から刈り取るように地面から引き剥がして握り潰した。

コアごと破壊したため喰う暇もなく、二体のコクーンメイデンは霧散する。

 

コイツら、クッソ不味いんだよ。虫みたいな変な体液出るわ、外殻は鉄臭いわ、喰える肉無いわで、今のところ一番食糧に適さないアラガミだった。一口喰って熱球で消し炭にするくらい衝撃的……いや、個性的な味だった。

お前の不味さ、伝えられるなら後世に伝えていきたい。

 

そうそう、ここ一週間の経験で学んだ事がある。

 

ゼノ・ジーヴァ(この身体)、並みの雑魚じゃあ傷一つ付けられないらしい。

さっきのコクーンメイデンの砲撃や棘、オウガテイルの噛み付き、頭突きなどをちょっとした失敗で受けた事がある。しかし、どれも蚊に刺された程度で、素晴らしい強度だと感心したもんだ。

体格差も要因の一つなのだろうが、そもそもの防御力と言うか……そういうのがアラガミと比べて格が違うらしい。

 

攻撃してきたオウガテイルさんもコクーンメイデンさんも、さぞ驚いたことだろう。

「あれ?おかしいぞ!」とか思ってただろうなぁ……声聞けないから、ちょっと惜しい気もするけど。

 

まあ、そんなこんなである程度無理がきく上、雑魚狩りなら何も気にせずやりたい放題できる事がわかった。

 

俺は潰した感触を拭うように前脚を地面に擦り付け、また幽膜を揺らしながら谷を歩く。

頭に冷たい何かが降って弾けた。

その感覚は次第に前脚、背中、翼、尻尾と全身に広がり、踏み締める地面には次々とシミが出来ていた。

 

ザァザァと周囲で鳴り出した音に首をもたげて空を見上げれば、どんよりとした灰色の雲に爽快な青は覆い隠されていた。

土砂降りの雨だ。土砂崩れとか起きなきゃいいんだが。

まあ、丁度いい。身体の汚れは洗い流せるし、なんかで匂い消しにもなると言っていた。匂いを消す必要はない気がするけど。

 

しばらく歩き続け視界が開けた。

崩壊した古民家らしき建物が点在し、雨によって湿り気を帯びた荒れた田畑が視界の大部分を占めている。

山の麓、盆地にある廃村だ。

 

人の住んでいた形跡が残っているとはいえ、村も街も廃れ方に大差がない。

何だろうなぁ………ゲームだったから客観的に見れていたものが、こうも実物を前にすると驚きや落胆というより、人の文明の脆さを痛感する。

感傷に浸るわけじゃないけど元人間として……思うところはある。

 

俺は廃村内の探索を開始した。

 

屋根のない家屋に誰か隠れていないか上から見てみたり、かろうじて形を保っている家に関しては覗き込んだりした。

残った家屋の半数を見たところで、はたと気付いた。

 

コレ……アラガミが餌探しているように見えるんじゃなかろうか。

そうだよ!俺は今ゼノ・ジーヴァ(人外)じゃねェか!怖い以外の何者でもねェよ!

 

なーんて心境を頭抱えながら声にしてみたが、ただの龍の咆哮だよ。

繰り返していくうち「アオーン」とか「キャイン!」とか、情けない犬の鳴き声にも似てきて非常に恥ずかしくなった。

こんな図体しておきながら、こんな鳴き声出すとは思わなかったんだよ。

 

「はっ……は、あうぐっ!はっ…はっ…!」」

 

うわっ、ビックリした。

左手側の廃墟の陰から男一人、息を切らしてもなお走ることをやめず俺の前に飛び出してきた。

おおお俺か?俺のせいなのか?いやあ待て待て。ウェイトだウェーイト、そう早まるな俺。やれば出来る子、それがゼノ・ジーヴァ()

 

その人は気付かず走ってくると泥濘(ぬかる)んだ地面に足を取られ、俺の鼻先ですっ転んだ。

俺に気付いてたらこうはならねェよな。よっしゃ、俺のせいじゃない!

って、おかしいだろ。何でザ・モンスターな俺の方に走って来てんだよ。

 

んー……あれ?この人……先日見かけた難民の一人だな。

 

男は慌てて顔を上げると焦燥の瞳に俺を映し、一瞬で驚愕と落胆……絶望の表情を浮かべた。

 

「はっ…はっ……っ!あ……また…アラガミ……!」

 

泥塗れの顔。

一回俺と出会った以降も、ずっと山中を駆けずり回っていたのだろう。仲間がいないのは気になるが……。

ん?待てよ……?「また、アラガミ」って言ったなこの人。

男は逃げようと立ち上がり元来た方へ向かって走り出したのだが、廃屋の陰から今まで見た雑魚とは違うアラガミと鉢合わせしてしまった。

腕を組んだ人型の胴体に手と翼が一体化した長大な翼手……シユウだなアレ。

あ、アイツから逃げてたのか!

 

いやいや、そんな事より!目の前で人が喰われるなんてグロテスク極まりない光景は見たくねぇぞ!

ゼノ・ジーヴァ、人助けしますッ!

 

「ヒィッ!し、死にたくねーよ……誰かぁ!ゴッドイーター……助けてくれよ……!」

 

翼手を広げるシユウを前にして男は逃げもせず、その場にうずくまって頭を抱えていた。

戦意喪失、逃亡意識の消失。前後に逃亡の隙は無し。放浪の男にとっては挟み撃ちも同然だ。

肩を震わせむせび泣く男に、シユウは翼手を伸ばす。

 

俺は咄嗟に咆哮を上げながら駆け出し、驚き飛び退こうとしたシユウを口に収め牙を立てた。

眼前にいたシユウが消えていることに気付かず、男は俺の身体の下で未だ助けを求める言葉を連ね震えている。

……仕方ないか。人に転生してたなら、何かしら言葉を掛けれたかもしれない。今、俺に出来るのはアラガミを喰うことだけか。

 

口の中で暴れるシユウを持ち上げ後脚だけで立つ。

 

お前は、どんな味だ?

翼手、胴体、コア……顎に込めた力は、俺の感覚では豆腐を噛む程度の強さだったが、シユウの鳴き声とバキバキという砕ける音が鼓膜を突く。

血ともとれるシユウの体液が流れ落ち、音が鳴き止む頃には嚙み()かれた脚や手も雨と混じった体液の水溜りへ落ちた。

食感は……パッサパサの赤身肉って感じだな。まあ……及第点。鉄分豊富そうな味が気になる。

コアを噛み砕いて飲み込むと、落ちたシユウの手脚や体液は黒い煙となって霧散した。

 

「あれ…?死んで、ない………?」

 

いつまでもアラガミが襲ってこないことに気付いた男は、恐る恐る顔を上げて周囲を窺いつつ身体を起こした。

それから後ろを振り返り軽く悲鳴を上げた。

しかし、目を剥いて涙を流しながら後ずさるわりに、立ち上がって走ろうとはしなかった。腰が抜けて立てないらしい。

 

襲う気は無いんだがなぁ……。態度で示そうにも、一挙手一投足が恐怖の対象だからどうにもならない。

 

俺はとりあえず、身体を倒して元の四足歩行の体勢に戻った。

両前脚を付いた瞬間、土砂降りの雨で出来た水溜りを踏み飛沫が舞う。

 

「う、うわァァァ!いやだァァァ!」

 

俺が鼻先を近付けると、男は叫びながら反射的にシユウの来た方へ走り出した。

 

そっちに行ったらまた鉢合わせするんじゃねーのか!?

泥に足を取られ(つまず)きながら、形振り構わず男は走る。

お、追い掛けた方が……いや、それじゃあイタチごっこだ。だからと言ってこのまま放っといたら、絶対アラガミに喰われてあの人は死ぬ。

必死に逃げる姿を眺めているのが関の山、か。

………悪趣味なアラガミとして名を残しそうだ。

 

あの人が俺の視界から消えるまで、じっとここで待っていよう。

追わない意思を汲み取ってくれるなら、今はそれだけで十分だ。

 

だが、そうもいかなかった。

 

ただ俺への恐怖のままに森へ入って行ってしまった男。

木々にその姿を覆い隠されて数秒後、人の絶叫が俺の鼓膜を穿った。

 

まさか、まさか……!

 

ひたすら焦りを感じ、男が消えた森へ突っ走る。

木を薙ぎ倒し数歩進んだところ。

そこには、うつ伏せに倒れたさっきの男を貪る、シユウの姿があった。

すぐ様シユウを掴み倒し、全体重をかけて押し潰す。

 

動かなくなったシユウが跡形もなく消え去るのを確認し、血塗れの男へ視線を移す。

 

手遅れか……。

 

生きている気配が感じられない。既に事切れている。

それもそうだ。なんせ……左半身が無くなっているのだから。

 

せめて、埋めてやろう……。

 

死んでまでアラガミに喰われるのはイヤだろう。俺だって、それはゴメンだ。

土の中のものを喰わないと確信は持てないが、地上に放って置かれるよりは幾分マシな筈だ。

俺は近場に、完全に埋められる穴を掘る。こういう時に、デカイ龍の手ってのは悪かないな。

 

ある程度の深さまで土を掘り、男の死体を運んで穴に入れる。

その時、顔の横を一発の光弾が掠めた。

 

「外したッ……!」

 

何処からの射撃だ……?

 

俺は弾が飛んできた方向を見据え、一本の木の陰に隠れている人物を見付けた。

スナイパー型の巨大な武器を携えた黒い短髪の女性。

 

あの容姿……ヤバイ!あのキャラだ!

 

俺は即座に踵を返して廃村へ戻る。

 

だが、そんな俺目掛けて彼女は何発も撃ってくる。一発二発掠ったが、アラガミ対抗武器だけあって俺には決定打にならない。

んー……このままじゃ追っかけ回されっぱなしだ。仕方ない。飛んで逃げるか。

俺に、あの人達と争う意思はないからな。

 

幽膜をなびかせ翼を広げる。数度の羽ばたきによって浮力を得て、雨の空を舞う。

……次は、どこに降り立とうか。

 

飛び立った俺を、彼女は神機を構えて呆然と見上げていた。

言葉が話せたら色々と変わったかもしれない。

 

本当にこの世界は………。

 

 

 

 

 

 

俺は、夢は夢のままがいいと思っている。

いつかそれが叶うなら、妄想だとしても夢を見る価値はあるからだ。

しかし、叶わなくていいものもある。それは、実際に体験しないと分からない。

 

良いも悪いも、自分都合の夢の中じゃあ判断できない。本来出来ないことが、何でも出来るようになるのが妄想のテンプレ。

だから、楽しいんだ。だから、夢のままが良いんだ。

 

それでも、夢が夢で終わる世界ってのは………俺は、望んでねェ。

 

 

 

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 

極東支部アラガミ観測記録

 

・先日初観測されたアラガミの第二の記録

出撃した任務にて取り逃がした討伐対象を捜索中、(くだん)のアラガミに接触。発見した一般人は左半身を捕食され、穴の中に放置された状態で死亡を確認。

咄嗟に撃った結果アラガミは怯んだ末、廃村にて飛び立ち逃亡。一時的な撃退に成功した。

今までに例を見ないその姿形から、新種のアラガミと推測。西洋の竜に酷似しており、翼や身体の各所に見られる膜は蒼い火の様にも見え、霊魂や死者を導く灯火など……俗に言う『あの世』を連想させる。

撃退後、討伐対象だったシユウ四体のうち見失った二体を捜索したが発見出来ず。飛び去った竜型のアラガミによって、捕食された可能性がある。

その巨体から、大型アラガミ以上の強種である可能性を提示する。

 

報告者『第一部隊・橘サクヤ』




一話分書けたらの更新なので、更新速度はまちまちです。

それから、早速お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます。
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