【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜   作:夜無鷹

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あと数話で、原作前の話は終わる予定です。
その後原作に入りますが、「リザレクションかなぁ」と予定がふわっとしています。
一応ストーリーで言えば完全版っぽいのでなんとなく………。



第四話 微かな光明

転生して一か月が経った。

俺が群れているアラガミを蹴散らして、極東のゴッドイーターに出くわして逃げるというパターンが日常として定着している。

でもね?俺は声を大にして言いたい。

 

パト◯ッシュ………ボクはもう疲れたよ………。

 

だってあいつ等、アラガミ絶対ぶっ殺すっていう思考の塊なわけでしょ?

いくら人を襲わないでアラガミばっか喰っててもさァ、一種の偏食傾向としか捉えてもらえないんだよ。ベテラン勢からは。ホントにベテラン勢は怖い。恐怖を感じる。

 

ただ、神機使いになって日が浅い新人は俺を見ると、全員じゃないが悲鳴を上げて一目散に逃げていく。

ああいう反応だと非常にありがたい。帰ったら上官やらリーダーからこっぴどく叱られるんだろうが、俺として人間相手に戦うなんてことをしなくて済むからな。

逃げても別に追いかけないし、戦っても手は出さないし、逆に俺が脱兎だし………。

 

そんなことを徹底的に心がけていたせいか、俺に対するゴッドイーター達の認識が少しずつ変化してきている気がする。先手射撃に遭遇する回数が減ったからだ。

おそらく、人を怖がるアラガミもしくは、ゴッドイーターを恐れるアラガミというレッテルを貼られているかもしれない。後のアバドン扱いになりそう。いるのか知らんけど。

とは言っても、根本的な部分は変わらない。俺は、倒すべきアラガミという認識のままだ。人によっては、俺を、人を恐れるアラガミとして先手必勝とばかりに撃ったり斬ったりしてくる。

 

逃げるからって弱いと思うなよ!

 

まあ、大抵そういう先走ったことをするのは、俺の噂を聞いた新人神機使いに多い。

そういう時は渾身の斬撃を一発受けてやると、「クッソ(かて)ェ!」と言って怯んでいただける。

あとは俺が逃げるか、ベテランに咎められゴッドイーター達が引き下がるかになる。

絶対に倒されないチュートリアルの敵みたいな立ち位置になりつつある。迷惑極まりない。

 

そんな俺は今、どんよりと暗い平原地域に来ている。

フィールド名で言うなら、『嘆きの平原』。俺はその戦闘区域を見下ろせる場所にいる。

ちょっと一眠りしようかと思い身体を丸めていたのだが、ドーナツ型の戦闘区域を徘徊している小型アラガミが急に一方向へ動き出し、何が起きたのかと気になって様子を見ていた。

 

すると、子供二人が息を切らして走っていた。紺色の髪と薄い水色の瞳を持った十二、三才くらいの少年と少女。

大人は誰一人として見当たらず、少年に手を引かれる少女が幾分年下にも見えることから、兄妹の関係だろう。

 

ま、見たからにはってヤツだな。

 

二人を追うのは、ザイゴート四体。

熱球ぶつけて即殲滅したいが、外して二人に当たったらと考えると、下りて物理攻撃で潰した方がいいか。

 

二人が通り過ぎ、後を追ってザイゴートが俺の前に差し掛かった時、飛び降りと同時に全体重をかけて二体を押し潰す。

急な乱入者にザイゴートは二人を追うのをやめ、その標的を俺へと変える。

軽く焼却処分だな。

俺は残り二体が攻撃行動に移る前に、熱球をお見舞いして燃やしてやった。

 

さあて、と……あの二人はどうしたかな。

 

キョロキョロと見回し、物陰で縮こまっている二人を見つけた。

おー、無事だったか。

で、ここからが問題なんだよねぇ……子供二人をほっとくわけにいかんでしょ?

しかし、俺はモンスター。何かしらの意思表示が出来ればいいんだが……。

 

「お、おにいちゃん……」

「大丈夫だリイサ。アラガミなんか、オレが追い払ってやる!」

 

そう言って少年が取り出したのは、ボロボロに刃こぼれしたナイフ。その切っ先を犬座りする俺に向けて威嚇している。

つか、やっぱり兄妹だったのか。そんで、少女の名前はリイサ、と……。

んー試しにあれ、やってみるか。

 

俺は地面に、爪で文字を書いてみることにした。伝わるかどうか分かんなかったから試したことなかったけど、この際だから当たって砕けろだ。

威勢のいい少年は俺の行動にキョトンとしている。まあ、わかるよ。アラガミが人を捕食しないで、地面を爪で引っ掻いてんだもんな。そりゃそーなるよ。

まず、俺は人を襲わない旨を伝える。簡潔に一文書いて、一歩下がる。

俺の行動に疑問を抱きつつ、少年は訝しげに文字に視線を落として口を開く。

 

「おれ、ひと、おそわない……?」

 

お、伝わったか。平仮名が読めるなら意思疎通が図れるな。子供相手だから出来る方法だよコレ。極東のアイツらだったら足蹴必至だわ。

違う文を書こうと手を伸ばすと、少年とリイサは肩を震わせた。すぐには信じちゃくれねェか。仕方ない。

手の平でさっきの文を掻き消して、続けて次の文を書く。

 

「なまえ、ゼノ・ジーヴァ、おまえは……?」

 

人に名前を聞くときは、まず自分からってな。まあ、これが本名かと尋ねられたら、俺はさっと目を逸らすけど。

無いよりはマシだろ?無いよりは。

 

「言葉わかるのか………?アラガミなのに………」

 

頷く。文字書いてるからな。見ての通りだよ少年。

信憑性は今のところ皆無だろうけど、襲わないで意思疎通を図っている俺の行動を評価してほしいな。

リイサを庇って立つ少年はナイフを構えたまま、俺の顔を数秒睨んで口を開いた。

 

「………伊澄(いすみ)ショウ。こっちは妹のリイサ」

 

ショウとリイサか。まともに言葉を交わしたのは、この二人が初めてだな。子供はある程度、融通が効くから助かる。

俺はまた地面に文字を書く。

 

"目的地はあるのか?"

 

「………ある」

 

"どこだ?"

 

「………ゴッドイーターになれる場所」

 

ってことは………極東支部か。えぇーマジか………えー………行くぅ?

けどなぁ………向かう道すがらゴッドイーターに会えたなら、そいつに押し付けてとんずらする手もあるな。

ゲーム知識しかないから、極東支部がどこにあるかなんていう詳しい場所は知らないんだよ。ゴッドイーターに押し付け、が無理あるけど一番現実的かなぁ………。

 

"場所は分かるのか?"

 

俺の問いにショウは、構えていたナイフを力無く下ろし(うつむ)いて首を振る。

目的地はあっても行き方がわからないようだ。

 

"親はいないのか?"

 

俺が書いた文を読んだ瞬間、ショウは口をつぐんで肩を震わせた。

あ、ヤバい。地雷踏んだなコレ………。

 

「………みんな喰われた。母さんも父さんも、おじさんもおばさんも………みんな、みんな、お前らに喰われた……!」

 

おっとぉ?まずいぞコレは……。完全に無神経だった俺が悪い。ゼノになってアラガミはほぼ食糧としか見てなかったから、人に対するアラガミの脅威が俺の中で希薄になっていた。俺がベテランゴッドイーターに抱く恐怖と同じなのになぁ……いかんいかん。

外見は人を辞めても、心は人を忘れちゃいけねェな。

 

「お、お兄ちゃん!また、アラガミが……!」

 

ショウの後ろで怯えているリイサが、俺から見て左手側を指差す。

またザイゴートなどの雑魚かと思いそちらを見やる。約六十メートル先に中空を漂うアラガミの姿があった。

………違う、小型じゃない。中型アラガミだ。人間の女性と蝶が融合したようなアラガミ、サリエル。あいつのレーザー面倒なんだよなぁ。

この二人との会話を優先にしたいんだよ。けど、このままじゃ完全に気を許すとまではいかないだろうし………他のアラガミから守るっていう姿勢を見せれば案外いけるか?

 

よし、それでいこう。

 

まず、俺はサリエルと正面から向き合い、奴の視界から二人を遮るため片翼を横に広げる。こんな事をする以上、サリエルを追って移動しようものなら確実に二人は奴に捉えられ最悪、お陀仏。

よって俺は、一歩たりとも動くことは許されない。願わずとも背水の陣だよ!やったね!

 

………はい、ということで今回(まと)になってもらうのは、うざったいレーザーを使ってくるサリエルさんです。

 

サリエルは浮遊しある程度距離を詰めてくるが、俺の手や首が届かない場所で移動をやめてしまう。近接で戦闘に入るのは不利と判断したらしい。

意外と頭良いなチクショウめ。

サリエルはスカート部分を広げ、自身の周囲に四、五個の光球を発生させる。

 

レーザー対決か。ならばよろしい、戦争だ。

 

俺も喉のあたりにエネルギーを溜めてゼノビームの発射準備が整った時、サリエルの光球がレーザー光線に変化し向かってくる。

交わって一本に収束したサリエルの光線を、俺は渾身のゼノビームをもって真正面から迎え撃つ。

 

俺が放ったゼノビームはサリエルの光線を物ともせず、蝕むように容赦なく呑み込んでスカートを広げたままの奴をも呑み込んだ。

 

溜めたエネルギー分が全て吐き出され、ビームが収縮していく。

ビームが消えたその場には、サリエルの欠片という欠片すら残っていなかった。

我ながら末恐ろしい威力だな、ホント。

 

呆気なかったと一息つくと、俺の真上から囲むように降ってきた複数のレーザーが直撃した。

 

光線撃ったあとに敗北を悟って最期の足掻きをしたようだ。

ま、俺を仕留める決定打には、どう足掻いても成り得ないがな。ゼノ・ジーヴァ万歳だよ。

 

俺は広げた翼を畳んで、背後にいる二人に向き直る。

ショウもリイサも目を丸くして俺を見上げていた。

 

"これで、信じてくれたらありがたい"

 

「信じるって………」

 

俺が書いた文字を読んだショウは、確認する様にリイサと目を合わせる。

んー、もう一押しか?放っておくわけにはいかないからなぁ。

 

"お前らを、ゴッドイーターに引き合わせる"

 

「え………なに言って………」

 

"俺と一緒にいれば、会える確率が高い"

"そうすれば、極東支部に行ける"

 

「………」

 

ショウは黙り込んでしまった。

子供なのに、なかなかどうして警戒心が強い。ま、こんな世界だし、巨体の化物がいきなり敵対相手であるゴッドイーターに会わせてやるなんて言ったら、疑わしいことこの上ないよな。

自分のことだけど、俺アホだ。前世でも偏差値低かったのかなぁ。

 

「お兄ちゃん」

 

ショウの(かたわ)らで俺の文字を読んだリイサが、悩む彼の袖を引っ張って口を開く。

 

「つれていってもらお………?」

 

同意を求めつつ、しかし「それが最善」と訴えるような決意に満ちた瞳をしていた。

この妹………兄より肝が据わってるんじゃなかろうか。

有無を言わせないとばかりにリイサは、上目遣いで説き伏せようとしている。

一方でショウは、唯一残った肉親であるリイサの提案をキッパリ断ることが出来ず、腕を組み眉を寄せて数秒唸ったあとだらんと項垂れた。

 

「………わかったよ。名前長いから、ゼノって呼んでいい?」

 

"(かま)わない"

 

「ゼノが襲ってこない限り、アラガミの中でゼノといっしょにいるのが一番安全だってのは、わかってはいるんだ。でも、アラガミであることは変わらないから、どうしても…………」

 

"分かってる"

 

決意したリイサも、観念したショウも、俺が人外だから不安が拭えない。

二人にとって、これはひとつの賭けに等しい。

俺がいくら本心から「人は喰わない」という言葉を並べ立てても、人間である二人には「アラガミだからいつか」という疑念が自然と湧く。

何となく………もどかしいな。

 

俺は二人を背中に乗せる。並んで歩くより早いし、周囲を囲む壁を越えるには飛んだ方が楽だしな。

 

両翼を広げて羽ばたく。

ここを抜けたら、視界の開けた場所に降り立って、わざとゴッドイーターに見つかるように行動しなければならない。

 

見境なくアラガミを殲滅しまくって、強力なアラガミであることを誇示した方が手っ取り早いか?

今までそういう行動は避けてきたからなぁ………。喰うためか、完全に敵対している奴しか狩らなかったもんなぁ………。

 

んー、まあ頑張ろう。死なない程度に。極東の連中に殺されない程度に。

 

分かり切った前途多難なこれからに頭を悩ませて飛び上がった俺は、『嘆きの平原』を囲む壁を二人の人の子と共に越えた。

 

 

 

目標は『ゴッドイーターに会う事』

 

 

俺は俺なりに、頑張って人助けをするよ。

 




先日から活動報告の方で、読者の皆様からの要望などを募集しております。
気が向いたら、何でもいいので書き込んでやってくださいませ。

それでは、また次回。

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