【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜 作:夜無鷹
お気に入り登録件数が二百件を突破しました。ありがたい限りですね。
一話目投稿の時は百件いけば上々かと思ってたんですが、まさか趣味の産物がここまで伸びるとは………ありがとうございます。
話が浮かぶ限りは、頑張って更新していこうと思います。
『嘆きの平原』を離れて一日が経った。
俺は今、住む人の居なくなった難民キャンプの傍に横たわっている。
ゴッドイーターに見つけてもらおうとアラガミを蹴散らしながら歩いていた時、背中に乗っていたショウが食べる物が無くなったから探したいと言ってきたからだ。
そこで、ちょうど目に付いた難民キャンプで食べ物を探す事になり、現在に至る。
俺みたいに、アラガミが喰えりゃあ苦労はないんだがな。
そもそもアラガミ倒せねェから、どうしようもないんだけど。
それで、今ちょーっと気まずい感じなのよ。
何でかってーと、食べ物探しでキャンプに潜ったのはショウだけでして、妹のリイサは俺の傍が安全だろうという兄の一言に従いお留守番状態。
犬の伏せの格好になっている俺の腕を背もたれにしているが、会話という会話が全くない。
誰かァァァ!打開策をォォォ!汗ダラッダラなんだよォォォ!
表面上は平静を装いつつ内心発狂。
ごめんなさいぁい!子供相手に何話せばいいか分かんないんですぅ!助けてヘルプ!
「………あのね、アラガミさん」
急にリイサが話しかけてきた。
変わらずキャンプの方を向いていて、どんな表情をしているのか分からないが、ただ何と無く怖がられている印象ではなかった。
な、なんだ?おおお重い話か?重い話なんだな?俺にメンタルケアなんて出来るわけねェだろ!逆にメンタルケアして下さいお願いします!緊張で爆死する!
「………たすけてくれて、ありがと」
………はい?えーと……お礼、ですか?おおぅ、このタイミングで……。
出会った当初はショウの背中に隠れて怯えきってたのに、たった一日でどういう心境の変化だろうか。順応が早いのも子供の特徴なのか?
年齢で言えば小学生くらいなのに、しっかりしてんなぁ。兄貴は勇敢で、妹は先を考えられるしっかり者………別れてからもちゃんと生活していけそうだな、安心安心。
「おかあさんとおとうさん死んじゃって、お兄ちゃんが頑張らなきゃってなってたから………大丈夫かなって……」
どんな表情をしているのか見ようと、リイサの横に顔を近づける。
膝を抱えて顔を埋め、微かにすすり泣く声が聞こえてくる。
え、ウソでしょ?泣いてる?泣いてる!?重い方に急カーブしないでェェェ!俺、対処に困っちゃうよォ!
あれか、犬か!犬になれ俺!心頭滅却すれば心まで犬になれる!
いくぞー!いーち、にー、さーん……!
「アウーン……」
ごめんなさい。もう一回、もう一回チャンスをください!ホントは犬みたいに「クゥーン」って鳴きたかったの!
「ふふっ……」
ん?今笑ったの、リイサだよな?やった!なんか良く分かんないけど……やったよ俺!
声には出さず、一種の達成感を得て歓喜していると、リイサが伏せていた顔を上げて俺に笑いかけた。
「おかしなアラガミさんだね。んーと……ゼノ、ちゃん?」
ちゃ、ちゃん呼び………ま、まあ別に?い、良いんだけどさ……。
それにしても、俺のどこが笑うほどおかしかったのだろうか。素朴な疑問をリイサに伝えるため、地面に書く。
“おかしいって、どこが?”
「えーとね、可愛い声で鳴こうとしてたところ!」
何かが吹っ切れたような、そんな明るく眩しい満面の笑みをリイサは浮かべていた。
か、看破されてる……。マジでか……軽くショックなんだけど……。
「いろいろと食料見つかったよ」
俺が無邪気に笑うリイサの隣で項垂れていると、食料が詰まったバッグを抱えたショウが意気揚々とキャンプから出てきた。
長期保存のきく缶詰などをメインで持ってきたようだ。缶切りはいらないのかと思い缶詰を注視したところ、プルトップに指を引っ掛けて開けるタイプのものらしい。
ショウが抱えている缶詰を見て珍しかったのか、リイサはさらに表情を明るくさせ駆け寄っていった。
あれが年相応の明るさだよなぁ。あと数年経ったら、あの二人だってキャッキャウフフする年頃だろ?華麗なる青春の一ページだよね………羨ましいこと山の如し。
俺いつまでゴッドイーターやアラガミ相手にキャッキャウフフ(戦場鬼ごっこ)してんだろうなぁ………。
缶詰を一つ一つ手に取って一喜一憂する二人を眺めて、微笑ましくなった。
不意に顔を上げて、目で付近を索敵する。
ここは、崩れた瓦礫などがほぼ全てアラガミによって喰い荒らされた平坦な場所。敵は見つけやすいが、逆に見つかりやすくもある。
……いた。約四、五百メートル先にネコ科動物のような頭と黒い四肢、赤いマント……ヴァジュラか。単体ならどうにかなるな。
俺はヴァジュラに気付いていないショウとリイサを隠すように、鼻先でキャンプの中へ無理矢理押しやる。
状況の掴めていない二人は「え?え?」と困惑の声を漏らし、されるがままになっている。
俺が最後に鼻で小突いてキャンプ内へ押し込んだ後、ショウは振り返って声を荒らげた。
「い、いきなり、何すんだよ!ビックリするだろ!」
おおぅ、怒られた……。い、急ぎだったもんで……。
俺は二人にアラガミがいた事を伝えるため、地面を削るように文字を書いた。
“アラガミがいた。隠れててほしい”
二人の表情が一瞬にして強張った。しかし、俺が介入したとは言えアラガミから逃げ
無言で頷いたショウは何をすべきか理解したらしく、不安と恐怖で怖気付いたリイサの手を引き部屋の隅へ移動した。
外へ出るより、ショウ一人で探索が出来た難民キャンプの建物内が、完全ではないものの安全ではある。
さて、ここからは俺の仕事兼食事の時間だ。
他の奴を言えた義理じゃないが、ヴァジュラはあの巨体ながら意外と動きが俊敏だ。
下手に溜めのいる攻撃を仕掛けるより、近接物理で各部位を確実に潰して戦闘不能、瀕死を狙うのが得策だろう。
射程内に入ったら熱球であのクソ堅いマント溶かせるか……?最悪引き千切るか。いや、千切った方が早いな。
ん?遠距離のゼノビームがあるじゃん、だって?食事の時間って言ったでしょーが!ゼノビーム撃ったらアラガミさん、一発昇天しちまうんだよ!
望ましいのは、ヴァジュラに気付かれる前に仕留める討伐方法。
じゃあ、空からの急襲はどうだろうか?地上を走って仕掛けるより、空からの急襲の方が先手を取りやすい。
一回奴にしがみ付いてしまえば、俺の全体重がかかって振り落とされることはないだろう。
そうなると………マントを千切る必要もなさそうだな。
よし、それで行こう。
俺は両翼を羽ばたかせ、空に舞い上がる。
ヴァジュラの索敵可能範囲外であろう高さの上空まで飛び、奴の真上まで飛行して狙いを定める様に滞空する。
妙に動かないなと思ってたが………ヴァジュラも食事の時間だったらしい。赤い外殻の………オウガテイル?いや、確かヴァジュラテイルと言ったか。そいつを無心で貪っている。
俺は気づかれていないのを確信し、猛禽類が急降下する要領で翼を折り畳んでヴァジュラ目掛け突っ込む。
降下中ずっと耳元で、風が重い音を鳴らす。
目前。音に気付いたヴァジュラがこちらを振り向いたが、遅い。
落下の勢いをそのまま両前脚に掛け、ヴァジュラの両肩に掴みかかったと同時、圧殺するように地面へ伏せさせる。
次に、俺の重量と力に耐えきれずガクンッと前脚を折ったヴァジュラの頭部に、首を伸ばして牙を立てる。
何が起こっているのか一瞬の間をおいて把握したらしいヴァジュラは、弱々しくも獣神の名前に相応しい咆哮を上げた。
視界の端で、地上を走るように一瞬何かが光った。直後、電気が走るドーム状の空間が俺とヴァジュラを覆う。
放電か!だが、このチャンスを逃すわけには………!
頭部を噛む顎に、さらに力を加える。
バキバキッと外殻やら骨やらの破砕音と振動が、食い込ませた牙を介して伝わってくる。
俺は、力づくでヴァジュラの頭部を引き千切った。
しかし、放電キャンセルを行うには遅かったらしい。
千切ったと同時、落ちたいくつもの雷が身体の至る所を掠め、強力な電気が瞬時に全身を巡った。
ドーム状の放電空間は解除されたが、ビリビリして上手く動けない。
おー、これが麻痺ってやつか!って、呑気に感心してる場合じゃないな。さっさと喰って二人のところに戻ろう。
カックカクな動きでヴァジュラから降り、脚や胴体を喰っていく。
んー………
俺は、ヴァジュラの半身とコアだけ喰って、二人が隠れているキャンプの方へ顔を向けた。
うん、アラガミの姿は無いな。
キャンプに向かい、軽いランニング程度の速さで走る。
一歩の幅が広いから四、五百メートルでもあっという間だな。
痺れゼノ、ご帰宅でーす。
二人が隠れている建物から二、三歩引いた場所に座り、小さく吠えてみた。
すると、恐る恐る二人が顔を出し、安堵の表情で建物の中から出て来た。
「ゼノちゃん、アラガミ、倒したの?」
俺は頷く。
「ふふっ、ゼノちゃんって強くて、優しいアラガミさんなんだね!」
嬉しそうに笑うリイサの言葉に、俺は首を傾げる。
優しい?自分で言うのもなんだが、俺は自分を奇妙とは思ってるがな。アラガミというか、明らかなモンスターが人助けなんて、物好き通り越しておかしいという自覚がある。「君はおかしなフレンズなんだね」と言われた方がしっくりくる。精神的ダメージがマッハだけど。
「ねぇ、お兄ちゃん!ゼノちゃんって、わたし達が食べるものも食べられるのかな?」
「え?いや、それは分かんねーけど……」
「じゃあ、じゃあ、好き嫌いってあるのかな?」
「いや、あの……」
「わたし達が食べてるもの嫌いだから食べないのかな?」
「えーと……」
あー……リイサの質問攻めでたじたじだなショウ。微笑ましい限りだよまったく。
このまま放っといてても面白そうだが、助けを求めるショウの目が結構切実である。
「ゼ、ゼノに聞いてみればいいんじゃないか?」
「あ、そっか!ゼノちゃん!歯磨きさせて!」
おっとぉ?この子は何を仰っておられるのでしょう。突拍子が無さすぎて顎が外れるわ。
まあ、無下にするわけにも……というよりは、爛々と瞳を輝かせている少女の願いを断る非情さと勇気を持ち合わせていない。
上手いこと逃げおってからに、ショウの奴め……。
俺は仕方無しに、リイサの手が届く高さにまで頭を下げる。
よく見るとリイサは、ボロの布切れを胸のあたりで大事そうに強く握り締めていた。最初からそのつもりだったようだ。侮れないな、ホント。
けど、虫歯は怖いよなぁ。自分では磨けないし。
俺は口を開けた。
その時、今までにない重撃が、油断していた俺の頭部を襲った。
横からの強烈な振り下ろしの斬撃。俺の鱗に傷を付けるには至らなかったが、そのせいで斬撃が打撃に変わり、頭が揺さぶられて足元がふらつく。
頭がぐわんぐわんと頭痛のように痛んで視界が歪み、それは座っているにも関わらずその姿勢を保っていられない程。
いつから………いや、それより………一瞬だが、複雑な心境になるモノが見えたな………。
赤い重厚感のある………チェーンソーの形………。
俺は
「まさか、例のアラガミと遭遇するなんてなぁ。ツイてんだかツイてないんだか………」
突然のことで硬直している二人の前で気怠そうに呟いたその人物は、ゲームで見覚えのあるチェーンソー型の赤い神機を肩に乗せ煙草を吸っていた。
雨宮リンドウ。
あー、あれですねぇ………俺の中でのラスボス登場ですねぇ………。
発狂事案発生だよチクショー。
泣いていいですか?
はい、ということで、やっとこさリンドウさんが出てきました。
少なくて次回、多くてあと二、三話くらいで、原作前は終わると思います。
それから原作突入という流れになります。
それでは、また次回。