【旧版】GOD EATER〜神喰いの冥灯龍転生〜 作:夜無鷹
何事にも癒しは必要だと思います。
第八話 変化
沈みゆく太陽の下に、遠くを眺め座る巨体の化け物が一頭。
頭部や前脚、尾の先に揺れる蒼白い灯火のような膜は、夕日に照らされ仄かにオレンジ色を纏っていた。
誰もが畏怖し
大気を震わす荒々しい咆哮が辺り一帯に響き渡り、同時にアラガミの死骸が空へ舞い上がるように霧散する。
すぐそばにあった死骸が完全に消え去った時、巨体の足元に残ったのは四つの神機と同じ個数の赤い腕輪。
この未知のアラガミが発見されて一年と二ヶ月。
ゴッドイーター達の報告により、『ゼノ・ジーヴァ』と名称がつけられた。
観測例はこの一体のみという希有な
圧倒的な力で数の不利をことごとく覆し、その異常とも取れる強大さから別称で呼ばれることもある。
もし戦闘になるようなら死ぬ気で逃げろとまで念を押され部隊の救援に来たが、あったのは大量の死骸と接触禁忌種以上に危険な例のバケモノ。
奴が飛び去るまで待機し様子を窺っている最中に聞いた咆哮は、勝利を喜んでいるというよりも………バケモノには似合わない、嘆くような悲痛な叫びのように聞こえた。
おかしな話だが、救援要請を出した部隊の状況をその咆哮だけで察してしまった。
手遅れだったのだ、と。
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ゴッドイーターの世界に転生して早一年は経ったと思う。色んなアラガミを喰い、着々とゴッドイーター達に接触禁忌種扱いされ始めて久しいこの頃。
俺は元気です。身体は。
アラガミを駆逐したのはいいけど、ゴッドイーターがご臨終なさいまして……なんだろう……心臓に重りが乗っかってる気分。
空飛んでて見かけて、助けに入ったら時すでに遅し。
これまでに何度か同じ状況に遭遇したが、やっぱり慣れないな。
一般的に言うモブの部隊だったとは言え、その瞬間に出くわしておきながら間に合わなかったのは精神的にくるものがある。
俺がこうやって自己満足で人助けをしている間に、他の場所では俺の知らないゴッドイーターや難民がアラガミに襲われ死んでいく。
この世界では規格外な強さを誇るこの身体でも、全てを救えるわけじゃない。
どう頑張ったって、完全無欠のヒーローにはなれない。
これが俺の主人公補正だとほざくなら、ボディプレスした上でゼノビーム食らわせて塵も残さず消し飛ばしてやる。
あーあ……夕陽が目にしみるぞコンチクショー。
さて、と。遠くで双眼鏡を手にしたゴッドイーターが、俺が飛び去るのを今か今かと待っているようだし。潔く撤退といたしましょう。
どこに行くかなぁ………あ、そうだ。せめて、オウガテイルに喰われる資格を持ってる、あの人の運命を捻じ曲げに行こうか。
間に合うかどうかは知らんけども、行って助けられるなら儲けもんだな。
落ちた神機と腕輪はアイツらが回収するだろう。
これって『のこじん』扱いなのか?それとも、新しい適合者に引き継がれんのか?
確か第一部隊の一級フラグ建築士兼フラグクラッシャーの持つ神機が、引き継がれたものだという話を聞いた事がある。
アラガミに対抗するための生体兵器をガラクタ呼ばわりしないと思うが……。
とにかく、喰われたアイツらの魂が浮かばれますように……。
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心機一転、極東のプロハン達に媚びを売るため『鉄塔の森』にやって来た俺。
この巨体ではフィールドに収まらないので、上空を旋回しながら潜伏場所を探していた。
その矢先。ハプニング発生である。
二匹のオウガテイルを追い回すゴッドイーター二人が見えたのだ。
一番の特徴とも言えるブラストの旧型神機を携えた奇跡の誤射率保持者、誤射姫こと台場カノンさんと、真面目の中のクソ真面目にあたるバスター使いブレンダン・バーデル先生。
ずっと飛んでちゃあ、そのうちバレる。だが、鉄塔の森は隠れられる場所がない。
そこで、近場の海に身を潜めることにした。
G地点付近に面している海に降り立ち、身体を沈めてこっそりと鼻先から出して目がフィールド上に覗く程度にする。
正面には高台があり、その奥を一体のオウガテイルを追ってカノンが走り去って行った。
おっほほ〜う、超こえぇ。
だって死神の声が聞こえるもん。「どぉして逃げるのぉ?」とか言ってるもん。マジこえぇよカノンさん。
カノンさんマジ半端ねぇって。誤射率が。
おっと、今度は別のオウガテイルが飯食いに来た。
カノンさんが追ってたオウガテイルは犠牲になられたのかな。ブレンダンと鉢合わせして、カノンさんが誤射ったおかげで逃げられたのかもしれねぇ。
良かったな。一時とはいえこうやって飯食えてんだもんな。
俺は優しく見守ってやるよ。ハントされるまで。
「舐めたマネしてくれるよね……!」
ランチタイム中のオウガテイル越しに、ドスの効いた女性の声が聞こえた。
あ……カ、カノンさんじゃないですかぁ……。
振り向き威嚇するオウガテイルの両足の間から、狂気染みた笑みでブラストを構える誤射姫が見える。
俺に対して何のリアクションも取らないところを見るに、オウガテイル先輩がカノンさんの意識を一身に受け視界を隔ててくれているようだ。
ありがたや〜。
俺が呑気に観察をしていると、カノンさんがオウガテイルの顔面にブラストをぶっ放す。
一瞬怯んだのを狙い、もう一回ぶっ放す。
が、オウガ先輩は左へ跳び退き、標的を失った弾丸は俺の方へ………え?
「キャウン!?」
目がァ!目がァァァ!カノンさんの放った弾丸が直撃ィィィ!
高火力ブラストの餌食になった俺は被弾した衝撃で仰け反り、盛大な水飛沫を上げて海中へ倒れ込む。
痛い、クッソ痛い。眼球は防御が無いからクッソ痛い。
悶絶しながら身体を起こしつつ、ゆっくりと視線をゴッドイーターが駆けまわるフィールド上へ向けると、ハイテンションモードのカノンさんがニンマリと悪い笑顔を浮かべてブラストを構えていた。
んー………死んだかもしれない。
「オウガテイル以外にもいたなんてねぇ………アハハッ!痛かったぁ?ねぇ!今の姿、とっても無様だよ!」
助けてオウガテイル先輩!カノンさんの罵倒に俺の精神が耐えられない!
半泣きで先輩が跳び退いた方向を見ると、オウガテイルは振り返ることなく脱兎のように走り去っていった。
あ!待ておいコラ!同じ化物のよしみで助けてくれてもいいんじゃないの!?
しかし、高台の陰に消えたところでグシャッと斬られたような潰されたような音が鳴り、非常に
あ゙ー!オウガテイルさんカムバーック!
ってそうじゃない!カノンさんは未だ俺の真ん前。じゃあ、オウガテイル先輩を仕留めたのはもう一人の方………。
「今日の訓練は終わりだな」
ブレンダン先生が合流してしまいました。
ハイテンションモードが和らいできたカノンさんのもとへ歩み寄る最中、ブレンダン先生は俺を視界に捉えて足が一瞬止まる。
「あ、終わったんですね。ところで、このアラガミどうしましょう?」
「放っておいても大丈夫だろう。今までの報告通りなら他のアラガミと違い、滅多に人間は襲わないはずだ」
……おや?俺の評価が変わってるみたいだな。
絶対ぶっ殺す対象に入ってたのに、人に害を及ぼさないよう気を使ってたのが功を奏したか。
けど、化物なことに変わりないから警戒はされている様子。
ブレンダンもカノンも俺から一切視線を外さない。
「そういえば、博士からサンプルの採取を頼まれていたな」
「じゃあ、肉塊にしてもいいんだよねぇ!ねぇ!アッハハッ!」
ハイテンションモードがぶり返したカノンさん。
待って待って!三分間だけ待って!カップ麺作って待ってて!
俺がビクッと身体を震わせ目線をずらしていると、ブレンダンが耳に手を当て何かを話していた。
聞き耳を立ててもインカムの音声は拾えなかったが、何か不測の事態が起こったのは聞こえた。
ただ、その不測の事態というのが強力なアラガミが現れたわけではなく。
「なに?幸運を呼ぶアラガミが出現しただと………?」
その瞬間、目の色を変えるカノンさん。
ご愁傷さまです。
しかし二人は何か葛藤している。俺とアバドンが現れたらしい方角を交互に見て頭を悩ませている。
希少なコア持ちと、サンプル採取………さぁ、どうする。
「幸運のアラガミのコアを優先しよう。逃してしまうには惜しいレアなアラガミだ」
「え、サンプルはいいんですか?」
「もしもの場合、俺達二人では対処しきれないかもしれないからな。万全を期した状態の時にした方がいいだろう」
「そう、ですね。それじゃあ、幸運のアラガミの頭をかち割りに行きましょう!」
撃ち足りなかったご様子のカノンさんは意気揚々と出現地点へ向かい、ブレンダン先生は「訓練の続きだな」と一人呟いて後を追っていった。
よっしゃ!まず、なるだけ海に身体を沈めて、こっそり移動しよう。
対岸にここと同じような工場跡のような場所が見える。そこへ行って身を潜めよう。
体重の関係か思いのほか水中での浮力が働かず、微かに海底を歩いている。徐々に水深が深くなり、時々立ち上がって息継ぎをして、潜って海底を歩いてに繰り返しで対岸に辿り着いた。
陸に上がりたいんだけど……海面からの高さがあって腕力だけじゃ上がれないな。
多少の破壊行動は許されるか?
んー……ゼノビームじゃあ威力が強過ぎるし、熱球連発して溶かすのが妥当か?
よし、そうしよう。ついでに、陸上の建造物も掃除しようか。どうせ使ってねェだろうからな。
俺は岸から少し距離を取って、三方向熱球を放つ。なるべく同じとこに当たるよう狙いながら、絶え間なく熱球を吐き出す。
熱球を当て続けていると赤熱して徐々に溶け出し、海面との接触で蒸気が上がる。
あともうちょいか。
三、四発撃ったところで一旦止める。
集中的に熱球を当てた部分は、海面と同程度の高さまで抉れるように融解してる。溶けて流れ出た分は海中で冷えて固まり、段差状になっているだろう。
まだ赤く熱を持っているようだが、大丈夫。
溶かした場所の前で立ち上がり、岸に両前脚を乗っけてとりあえず踏ん張ってみる。
う〜ん………身体を持ち上げられない。痩せるか?いや、無理か。コレ多分、外殻とかの重さだろうな。
海底に脚は着いてるから跳び箱を跳び越える要領で………よっこいせッ!
海面上に出た後脚を岸のギリギリに掛ける。
それだけでは心許ないから、念のため両翼を羽ばたかせて身体を少しばかり浮かし、両前脚をさらに内陸へ置く。
これでバランスは取れたし落ちる心配はないな。
工場跡だけあってそれなりに面積の広い建物が点在しているが、俺が余裕を持って歩けるほどの道幅はない。
あれだな。歩くため、邪魔なものは、ぶっ壊せ。単純明快。
ここに定住するわけじゃないが、俺が丸くなって寝れる程度のスペースは欲しい。
壊して溶かして整地。
俺は安眠場所を求め、建物を壊しながら歩く。
三十分が経過した。
ここで予想外の事態が発生する。
建物を壊して広いスペースを自作した後、することもないためただ犬座りをして空を眺めていた。
尻尾を左右に揺らしていると、微かな違和感を感じた。痛いとかそういうものじゃなく、
動きはそのままに首だけを回して尻尾の先端を見てみると、ちっさい何かが引っ付いている。
いや、引っ付いてるだと語弊があるか。
ゆらゆらと風に揺れる純白の幽膜に、同じく真っ白な丸く小さいアラガミが食い付いていた。
神機の捕食形態とフグが合わさったような姿形。
レアなコアを持っているあのアラガミ、アバドンと同じ容姿。
だが、色が違う。突然変異か?けどなぁ……見たことあるような無いような……?
白いアバドンは尻尾の振りに着いて行けず一回離れたが、ふわふわと移動してまた噛み付いてくる。
……なんか、可愛いなコイツ。
本気で噛み千切りに来てんだろうけど外殻やら鱗やらが頑丈なせいか、ペットに甘噛みされている気分です。
時々「ピギィ!」って鳴くのがなんとも……。
ん?よく見たらコイツ、傷付いてるな。
………あ、もしかして……ブレンダン達が言ってた幸運のアラガミってコイツのことなのか。
よく逃げ切れたな。……罪悪感がエゲツない。
さて、どうしたもんか。
別に噛み付かれたままでもいいんだけど………ペットにしたい。
殺伐な日常にちょっとした癒しは必要だと思うんだよ。
何を言いたいのかと申しますと……。
アバドンってマスコットだと思うんだよね。
白いアバドン登場。名称はご存知の方もいるかと思いますが、心の内に留めておいてくださいませ。
話の流れは、完全に思い付きで突っ走っております。
活動報告にてリクエストを頂きましたので、今回拝借させてもらいました。
ネタ提供ありがとうございます。
それでは、また次回。