その一方で、影に潜みながら鉄血に抵抗するものもいた。
―鉄血占領区域市街地。
ところどころが崩れ廃墟と化した街並みを、鉄血兵の小隊が徘徊している。
ヴェズビットとリッパーで構成された小隊だ。
辺りを見回しながら歩いていることから何かを探しているようだ。
「ちっ、ここでもうろついてやがる・・・」
そんな鉄血兵たちを物影から、見ながらそう吐き捨てるのは潜水艦を模したアーマーを着た男。みた所、ヒューマノイドタイプの自律人形のようだ。
彼の名は『ダイブマン』。かつて、ワイリーの4回目の世界征服作戦にて、訳あってロックマンと戦った『コサックナンバーズ』の自律人形である。
「もうこうなりゃ、強行突破で・・・!」
「やめろダイブ!」
そう言って、己の武装を展開し鉄血兵を攻撃しようとしたその時、怒鳴り声が聞こえた。
ダイブマンが振り返ると、わっかのついたヘルメットを被った赤を強調するアーマーを着た自律人形がいた。
彼の名はリングマン。ダイブマンと同じ、コサックナンバーズの一員でリーダー的存在である。
「リング・・・」
「この街にはもう鉄血の連中が大勢いるんだぞ。それに、怪我をした人形もいる。彼女を守りながらの強行突破は無理だ」
リングマンはそう言って、傍らに視線を向けると紅いメッシュの入った長い銀髪の少女が、頭に電球をつけた人形、同じコサックナンバーズである『ブライトマン』に治療を受けていた。
「だけどよ、どうすんだ?このまま隠れていても見つかるのは時間の問題だぜ?・・・ん?」
リングマンにそう返して、鉄血兵の方を見やるダイブマン。ふと、何かが来るのに気がつく。
「おーい」
「ん、どうした?『例の奴ら』を見つけたのか?」
そこへイェーガーとガードで構成された別働隊がやって来る。隊長格であるヴェズビットの問いかけに、いや。と別働隊の隊長格のイェーガーが首を横に振る。
「だが、良いのは見つけたぞ。おい」
「はっ。おい、こっちに来い!」
「・・・うぅ・・・」
そう言って、部下にあるものを連れてこさせる。それは、歳若い男性であった。
まだ、あどけなさの残る、10代前半の少年である。
「ほお、これは中々いいものだな。喰い甲斐がある」
舌なめずりをしながら、隊長格のヴェズビットが言う。ひっと怯えた様子で後ずさる少年。逃げようと思えど、部下の鉄血兵に拘束されているため、逃げられない。
「そう怯えるな、殺しはしない」
そんな少年に妖しく微笑み、彼の股間辺りを撫で始めた。
「だが、『愉しませて』貰うぞ」
「や、やだ!やだぁ!!!」
『何』をされるのかを顔を真っ青にさせて、ありったけの力で振りほどこうとするも、逆に組み伏せられてしまう。
「おっと、暴れんなよ。暴れんなよ」
「殺されないだけマシだと思いな、ボウヤ。それにいい事じゃない、これから私たちで童貞卒業すんだからさ」
「隊長、次はあたし達にもやらせてよね~」
組み伏せられもがく少年を見ながら下卑た笑い声を上げる鉄血人形たち。鉄血人形だけでなく自律人形にも、男女問わず『そういう機能』は存在する。ただ、人間とは違いあくまで形式的なものであるため、『妊娠』、『出産』などは出来ない・・・が、彼女達が少年にやろうとしていることはそう言う事だ。
「ッ!あいつら!!絶対に許さねぇ!」
「待て!ダイブ!!!」
鉄血兵達のやろうとしていることに激昂し、リングマンの制止も聞かずにダイブマンは鉄血兵へと向かっていく。
「その子から離れやがれ!ダイブアタック!!!」
「なっ!?ぐわああっ!!?」
「きゃあああああっ!?」
そのまま錐揉み回転しながらの体当たり『ダイブアタック』で少年を抑えていた鉄血兵を弾き飛ばし、少年を抱える。そして、安全な場所に降り立つと少年を下ろし言った。
「ボウズ、無事か!?今の内に逃げろ!」
「逃がすわけないだろ!」
鉄血兵がダイブマンと少年を捉えようと迫って来る。ダイブマンは鉄血兵の方へ振り返り、武装を起動させる。
「ダイブミサイル!」
ダイブマンの持つ特殊武器『ダイブミサイル』が火を噴く。そして、迫る鉄血兵達に着弾、爆発。だが、防御力の硬いガードを前衛においてある為、あまり決定打にはなっていない。
「早く行け!」
それでも、ダイブミサイルを撃ちながら少年に言う。少年は一瞬ためらったが、眼を瞑り一目散に走り去っていった。
だが、それを逃す鉄血兵ではない。イェーガーの一体が少年の足に狙いをつける。足を撃って、動けなくした後捕獲する算段なのだろう。
捕獲した後はどうしてやろうかと想像し、舌なめずりをしながら引き金を-
「リングブーメラン!」
「がっ!?」
引こうとした瞬間、輪っか状のブーメランがイェーガーの胴体に深々と突き刺さる。何が起こったか理解できぬまま口から人工血液を吐き出しイェーガーは絶命する。
何事か!?と一斉に振り返る鉄血兵、そこには両手に自身の武器『リングブーメラン』を持ったリングマンが立っていた。
「おお!来てくれるって信じてたぜ、リング!」
「丁度、『ウェル』の奴が偵察から戻ってきてな。ブライトとあの子の護衛と見張りを任せて来たんだ」
ダイブミサイルや自慢の身体を生かした体術で迫り来るガードたちを抑えながら、言うダイブマンにリングマンはそう答える。
ちなみに『ウェル』と言うのはリングマンの部下であるハンドガンの戦術人形『ウェルロッド』のことだ。
「それはそうと、後で説教だからな」
「うげ、勘弁してくれよ」
苦虫を噛み潰したような顔で、リングマンに言うダイブマン。そう言いながらも、ダイブミサイルやダイブアタックで迫ってきたガードやリッパーを蹴散らしていく。
リングマンも、ヴェズビットやイェーガーの銃撃を避けながら、リングブーメランで無力化していく。
「くっ、おのれ・・・!調子付いていられるのも今のうちだ・・・」
そんな光景に歯がみしながら、隊長格のイェーガーは近くにいるであろう別の部隊に通信を開く。
「こちら、J09部隊!聞こえるか、応答してくれ!」
『こちらD13部隊、J09部隊何があった?』
「敵の攻撃を受けている、今すぐ応援に・・・」
「させるかっ!」
通信をしていることを知ったリングマンはリングブーメランを隊長格のイェーガーに放つ。狙い違わず、ブーメランはイェーガーの首を刎ねた。首から噴水のように人工血液を噴出し、隊長格のイェーガーは倒れ伏す。
「・・・まずいな」
隊長格のイェーガーを倒してもリングマンの表情は晴れない。応援を呼ばれたかも知れなかったからだ。今の敵部隊なら何とかなるが、増援が来たら流石に自分とダイブマンでは分が悪いかも知れない。
「ダイブ、退却するぞ!」
ここは退却するのがベストだと判断し、ダイブマンに指示を飛ばす。
「分かった、あのボウズも完全に逃げたことだしな。そろそろ・・・うおっ!?」
「ダイブ!?うわっ!?」
リングマンにそう頷きながら退却を始めようとしたダイブマン、その隙を突いて鉄血兵達の一斉射撃がダイブマンを襲う。
ダイブマンを助けに行こうとしたリングマンもまた、鉄血兵に足止めを喰らってしまう。
「逃がすと思うか?もうすぐこちらに援軍が来ることはお見通しだ」
勝ち誇った顔で、リングマンとダイブマンに言う隊長格のウェズビット。
「退却なんかさせんぞ。私たちの愉しみを奪った礼だ、これから来るD13部隊と共にお前達をじわりじわりといたぶって殺してやる!」
(拙い・・・な。援軍が来たら、隠れてるブライト達が危ない・・・どうすれば)
足止めしようと襲い来る鉄血兵の反撃できないほどの一斉射撃を物影に隠れて凌ぎつつ思案するリングマン。・・・せめて、ブライトマン達を逃がすことが出来れば、そう思い。ブライトマンに通信を送ろうとする
その時だ。
―BOOOOOOOM!!!
「何だ!?」
凄まじい爆発音。
驚き、爆発のした方を見やると、二足歩行型の機械人形に跨った紫色のロングヘアーにバイザーをつけたボロボロの女性。一般鉄血兵『ドラグーン』が吹っ飛ばされ地面にたたきつけられているのが見えた。
「こ、これはD13部隊の・・・おい!一体何が起こった!」
隊長格のヴェズビットもまたこの出来事は寝耳に水の様で、ドラグーンに駆け寄り問いかける。
「ろ、ロックマン・・・ロックマンがグリフィンの人形共を引き連れて・・・」
「ロックマンだと!?」
ドラグーンの言葉にざわめきだす鉄血兵達。S09地区司令部襲撃でのロックマンの活躍は鉄血兵達に知れ渡っており、その動揺は凄まじいものである。
「ロックマンがグリフィンに入っただって?」
「やべぇよ、やべぇよ・・・」
「もうダメだぁ・・・お終いだぁ・・・」
「う、うろたえるな!それでも、お前ら鉄血の兵士か!」
うろたえる味方を隊長格のヴェズビットが一喝するも、収まる様子は無い。そこへ・・・、
「レーダーに味方の反応があったから来たけど・・・、まさか君達がここに居たなんてね」
声が聞こえた。その声に、鉄血兵もリングマン達も一斉に振り向く。そこには青いヘルメットを被った青と水色で統一されたスーツを着た少年が少女達を引き連れて立っていた。そう、ロックマン。そして彼が率いる部隊とS09一番隊の面々だ。
「リングマンにダイブマン、もう大丈夫。後は僕達に任せて!」
リングマンとダイブマンを交互に見てロックマンは2人にそう言った。
さぁ、ここから反撃開始だ!
Next Ep2-5・・・。
いかがだったでしょうか?
戦闘シーンマシマシと言っておきながら、ほぼ戦ってたのはリングマンとダイブマンの2人でロックマンは最後らへんに登場。と言う展開で申し訳ない・・・(土下座)
次回はロックマン達の戦いっぷりを書いていこうと思います。
お楽しみに!