ROCKMAN CROSSLINE   作:じゃすてぃすり~ぐ

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 ウェルロッド先導の元、飛行場へとたどり着いたロックマン達。
 だが、飛行場は厳重な警備体制が敷いてあった。
 相手は大軍、こちらは少数な上に、負傷者あり。
 そんな圧倒的不利な状況を、どう攻める?


EP2-6「地域奪還 #3」

―占領区域にある鉄血基地

 

―バシャン!

 

「ッッ!?」

 

 水音と共にAR-15の意識は覚醒した。両手を動かしてみるも、動かない。今いる場所が牢屋であることから、自分は鉄血に捕まったのだと理解する。

 

「お目覚めかな?AR-15」

「・・・」

 

 両手を鎖で縛られたまま、AR-15は目の前の鉄血のハイエンドモデルであろう女性の自律人形を睨みつける。

 

「そう怖い顔をするなよ。何もしやしないさ。このハンター、神に誓ってもいい」

「貴方達鉄血のクズの言う事を信じると思う?」

 

 その自律人形、ハンターの言葉にAR-15は無愛想に言い放つ。

 内心では、鉄血に捕まり何をされるのだろうか?そんな恐怖に怯えてはいるものの、敵にそれを悟られる訳には行かないと気丈に振舞う。

 

「何をされようと、私は何も喋るつもりはないわ。

例え、辱められようともね」

「安心しろ、お前は何も話す必要は無いさ。お前もAR小隊の一員、そう簡単に口を割らんだろう。

 それと、お前のようなまな板女を甚振ったり辱めたりするのは趣味じゃあないしな」

「胸の話は止めて頂戴、気にしてるんだから」

 

 人の気にしている事を平然と話すハンターにジト目でAR-15は睨みながら言った。 

 ふと、何も話す必要はない。とはどう言うことなのか?疑問に思い、問いかける。

 

「ところで、『何も話す必要はない』とはどういう事なのかしら?」

「貴様が今、『生きて我々の手にある』それだけでいいのさ。M4A1を捕らえる為にはな」

(そう言う・・・事か・・・)

 

 この人形、ハンターは私を人質にしてM4を捕えるつもりなのだ。とAR-15はそう悟った。

 

「私がはい、そうですか。と大人しくすると思う?」

 

 そう言って、舌を出し噛み切ろうと両顎に力を込める。だが、

 

―ドゴッ!

 

「あ・・・がっ・・・」

「おっと、自害などさせるものか」

 

 AR-15が舌を噛み切るよりも早く、ハンターの拳がAR-15の鳩尾にめり込む。

 咳き込むAR-15の口に猿轡をはめながらハンターは言った。

 

「これで、舌を噛み切れんだろう。

お前は貴重な交渉材料だ、しばらくこのままでいてもらうぞ」

「ぐ・・・(M4・・・ごめんなさい・・・)」

 

 悔しそうに睨むAR-15を尻目にハンターは牢屋から出た。

 ガシャン!と牢屋の扉が閉まる音が、無常に響いていた。

 

―話は変わり鉄血支配区域、飛行場近く。

 

「案内ありがとう、ウェルロッド」

「恐縮です、ロックマンさん」

 

 物影に隠れ、飛行場の様子を伺いながらロックマンはウェルロッドにお礼を言う。

 

「だけれど、場所が場所だけに警備が厳重ですね・・・」

機械人形(メカニロイド)タイプの放浪者(ブラウラー)斥候(スカウト)働き蟻(ダイナゲート) が結構いるねぇ・・・」

「それに加えて、ヴェズビット、リッパー、イェーガーの構成か。

自律人形タイプはともかく、機械人形タイプは骨が折れるな・・・」

 

 双眼鏡で、飛行場を警備している鉄血兵を見ながら、M4、スコーピオン、リングマンは口々にそう溢す。

 一筋縄ではいかない厳重な警備をどう攻略するか?策を練る一同。

 

「いい事思いついたんだけど、いいかな?」

 

 そこへ97式が切り出した。全員の視線が97式に集まる。

 みんなが注目する中、97式は咳払いをして自分の案を出した。

 

 

「まず、ロックマンが警備をしている鉄血の奴らを特殊武器とかを使って混乱させて、その隙に私達が奇襲をかけてやっつけるってのはどうかな?

確かあったでしょ?そう言った武器が」

「ああ。色々あるけど、今の状況からレインフラッシュやトルネードブロウが有効かな?」

 

 他にも広範囲の特殊武器があるが、一番強力である『アストロクラッシュ』は飛行場一帯を更地に変えてしまう危険性があるので却下。

 消去法でアストロクラッシュの次に強力なレインフラッシュとトルネードブロウを上げたのである。

 

「成る程レインフラッシュなら、鉄血の奴らの武器や機械人形達を溶かせる可能性があるかもな」

 

 納得したように、頷くリングマン。

 ここでレインフラッシュってどう言うの?と疑問に思う読者諸君に説明しよう。

 

 レインフラッシュとは、コサックナンバーズの一人である『トードマン』がロックマンと戦っていた時に使用していた特殊武器である。

 元々農業用水撒きカプセルであったが、強力で特殊な酸をカプセルの中に入れ攻撃用にしたもので、そのカプセルを射出、酸性雨にして降らせて攻撃するというものである。

 その威力は絶大で、スナイパージョーのようにガードしている敵にもダメージを与えられる優れものだ。

 

「方針は決まりましたね、それじゃあ今から行動に移しましょう」

「「「「了解!」」」」

 

 一〇〇式の言葉に全員が頷く、一番隊やロックマンチームは物影に隠れ鉄血兵に見つからないように所定の位置につく。そして・・・、

 

「レインフラッシュ」

 

 全員が位置についたと同時に、酸の入ったカプセルを飛ばした。

 カプセルは遥か上空まで飛んで行き、爆ぜた。そして、それが雨となって、飛行場を襲う。

 

「ん?雨か?」

「今日の天気予報は晴れのはずだぞ?」

 

 突然の雨に訝しむ鉄血兵達。次の瞬間・・・、

 

「あれ?何か・・・機械人形タイプの奴らがおかしくないか?」

「まるで錆びて来てるような・・・。いや、機械人形だけじゃないぞ!私達の武器もおかしくなってる!」

 

 初めは機械人形達の異変に、そして自分たちの武器の異常に気づき狼狽する鉄血兵達。

 今がチャンス!そう思った、一〇〇式が雨が止むと同時に声を上げる。

 

「突撃!」

 

 その時である。一番隊、ロックマンチームが鉄血兵に死角から一斉に飛び掛った。

 あまりにも突然の事で、鉄血兵達は面食らうしかない。

 

「スラッシュクロー!」

 

 一番槍はロックマンだ!

 小惑星破壊カッターを小型化した特殊武器『スラッシュクロー』でヴェズビットの首を刈り取る。

 

「ロックマンだ!撃て撃てェ!」

「だ、ダメです!さっきの雨でブラウラーなどの機械人形だけでなく、銃もオシャカになってるみた・・・」

 

 ロックマンの登場に、指示を飛ばすもう一体のヴェズビットにリッパーが反論するも、最後まで言えなかった。

 喉元に刃が突き刺さっていたからだ。そう、一〇〇式の銃剣である。

 

「はひっ!?ひいぃぃぃぃっ!!!?」

 

 さっきまで話していた同志が無残な屍に変わった事に恐怖し、後ずさるヴェズビット。

 そんな事など知った事かと絶命したリッパーから、銃剣を引き抜き一〇〇式は、ヴェズビットに駆け出し、銃剣で袈裟懸けに斬り捨てた。

 

「銃が使えないなら、ナイフだ!ナイフを使え!」

「「「「りょ、了解!」」」」

 

 指揮官格であろうイェーガーの言葉に、一斉にコンバットナイフを引き抜き構える鉄血兵達。

 ロックマンと一〇〇式を迎撃せんと、迫る。だが!

 

「残念ですけど・・・」

「ロックマンと隊長だけじゃないよ!」

 

 鉄血兵達に立ちふさがる影、95式と97式の姉妹だ!

 先に動いたのは95式だった。ナイフを持った相手に一直線に走り出し、ナイフを持つ手を弾いた。そして地面を砕かんほど勢いよく踏み込むと同時に肘撃ちを叩き込む。

 

「がびゃ!?」

 

 一人は打ち上げ気味に放たれた95式の肘撃ちが顎に命中。顎を砕かれ絶命。

 

「アバッ!?ゴボボーッ!!?」

 

 もう一人は肘撃ちが胸に直撃、胸骨が複雑骨折。

 運悪く、折れた骨が肺などの人工臓器に突き刺さり、吐血してのた打ち回る。

 

「ハイハイハイハイハイハイハイハイ!!」

「ブべべべべべべべべべべべべべべべ!!?」

 

 対する97式はヴェズビットに目にも止まらぬ速さで顔面に蹴りを叩き込む。

 その速さはマシンガンの如し。たちまち、ヘルメットは砕け、顔は晴れ上がり見るも無残な人相となってヴェズビットは倒れ伏した。

 

「後ろががら空きだ、死ねェ!」

 

 その97式の背後からナイフを持ってイェーガー(指揮官格とは別個体)が迫る。

 

「おっと」

 

 それを飛び上がりアクロバティックな動きで回避する97式。これが戦場ではなく体操の競技であれば高得点間違いなしの動きである。

 

「なっ!?クソ・・・」

「あちょー!」

「ぐばぁ!?」

 

 振り向いたイェーガーの顔面に、某カンフー俳優のような怪鳥音と共に97式の拳が突き刺さる。

 鼻血と、折れた歯を撒き散らしながら後ずさるイェーガーの口に97式の銃がねじ込まれる。

 

晚安(お休み)、永遠にね」

 

 冷酷にそう言い放ち、引き金を引く。銃声と共にイェーガーの頭が爆ぜた。

 

「97式、貴方のカンフー中々のものね」

「お姉ちゃんの八極拳だって、冴えてるじゃん」

 

 イェーガーを倒し、並び立つように構えながら互いを讃え合う95式と97式の姉妹。

 だが、表で暴れているは彼女達だけではない。

 

「クイックブーメラン+ローリングカッター乱れ撃ち!!!」

「「「アバババババーッ!!!」」」

 

 『クイックブーメラン』と『ローリングカッター』を巧みに操り、鉄血兵の首を飛ばす。だが、

 

「舐めるなァ!死ねェ、ロックマン!!!」

 

 その内の1体がそれをかいくぐり、ナイフを突きたてようと迫る!

 

「遅い!エクスブレード!!!」

「アバーッ!」

 

 それよりも早く、ロックマンが展開したエクスブレードの一閃が首と胴を永遠におさらばさせた。

 

「ふっ!はっ!やぁ!」

 

 一〇〇式もロックマンに負けじと、手にした銃剣で鉄血兵を切り裂き、突き刺し、発砲!1体また1体と屍を積み上げていく。

 

「調子にの・・・るびゃ!?」

「・・・大当たりだ(ブルズアイ)

 

 比較的、レインフラッシュの被害が少なかったイェーガーがスナイパーライフルで一〇〇式の狙撃を試みるもダネルの狙撃により、失敗。頭部をネギトロよりひどい状態で破壊され、地に伏せる。

 

「くっ・・・くそぉ!内部!聞こえるか、敵襲だ!今すぐ応援を頼む!」

 

 これではジリ貧と、指揮官格のイェーガーは無線で内部に応援を要請する。

 

『悪いけど、応援は送れないよ。・・・だって、私達が内部に入り込んで全員鉄屑に変えちゃったから』

「なっ!?いつの間に!!?」

 

 だが、内部から聞こえてきたのは味方ではない別の声。

 グリズリーの声だ。

 

『アンタ達がロックマン達に気を取られてる隙に、忍び込ませてもらったんだ。

 さて、どうする?援軍も来ないし、その様子だと表の部隊も全滅間近。言っても無駄だと思うけど、降参したら?悪いようにはしないよ』

「誰が降参などするか!こうなれば、『アレ』を使うぞ!格納庫へ行け」

 

 そう吐き捨てイェーガーは無線を切ると、近くにいた部下のヴェズビットに指示を飛ばした。

 

「ハッ!了解しました!」

「何を出そうとしてるか知らないけれど・・・やらせない!」

 

 ロックマンはロックバスターを構え、格納庫へと向かおうとするヴェズビットを狙い打つ。だが、

 

「ぐぼっ!?」

「た、隊長ォ!」

 

 寸での所で指揮官格のイェーガーがヴェズビットを庇う。致命傷だ。

 

「グフ・・・、ここは私に任せて行けェ!」

「は、はいっ!!」

 

 ヴェズビットを止めるべく、一〇〇式、95式、97式、ダネルもまた一斉に銃撃を開始するも、悉くイェーガーが身代わりとなって受けきる。

 その結果、ヴェズビットが格納庫へと向かうのを許してしまった。

 

「しまった・・・、逃げられた」

「皆、飛行場の占拠完了しました。今、グリズリーさんが援軍要請を・・・どうかしたんですか?」

 

 ヴェズビットをみすみす逃がしてしまい、悔しげに歯噛みするロックマン達。そこへ、占拠完了を知らせにM4がやってきた。ふと、様子がおかしい事に気づき、問いかける。

 

「1体鉄血の兵士が格納庫へ逃げてしまったんです。私のミスです・・・、ごめんなさい」

「頭を挙げてください、一〇〇式さん。しかし、何故その鉄血兵は格納庫に向かったんでしょうか・・・?」

 

 頭を下げ謝罪する一〇〇式にそう言ってM4は、疑問に思った事を口にする。大体、逃げるのならばボスのいる鉄血本拠地へと向かうはず、なのに何故?

 その時だ!

 

―BAGOOOOOM!!!

 

 轟音と共に、何かが姿を現した。鉄血の奴らは格納庫にマンティコアを隠していたのか?・・・違う!

 マンティコアと同じ四脚ではあるが、その上にバイザーをつけた無機質な顔、そして両脇には1対の腕部が生えている。一同はその巨大な機械人形に驚愕する。

 

「これは・・・『第九世代戦車 マンティス』!?何故これがここに!?」

 

 そんな一同の心境を代弁するかのように、ロックマンは叫んだ。

 

 

―所変わって、占領区域の鉄血基地の医務室

 

「な、なぁ・・・ホントに『コイツ』を蘇生させるのか?」

「何?今更、怖気づいた?」

 

 何かが眠ってあるカプセルの傍らで、コンソールを打っているドラグーンに対し、おどおどと怯えた様子でリッパーが問いかけた。

 

「だってさぁ、一度メチャクチャに大暴れしたそうじゃんコイツ。

 もし、鉄血(私たち)の意思に反して暴れだしたらって思うと・・・」

「怖がりねぇ、そうならない為に『例の奴』を試験がてらにインストールしたから暴れる心配はないわよ」

 

 ブルブルと震えるリッパーにドラグーンはため息混じりにそう返した。

 

「それじゃあ、再起動させるわよ」

 

 そう言って、コンソールの『再起動』のボタンをタップする。

 

―ヴゥゥゥゥゥン・・・。

 

 唸るような音と共に、カプセルの中に光が満ちる。暫くした後、光が収まると同時にプシュー・・・。とカプセルが開く。

 そこで寝ていたのは白い、骸骨のようなアーマーを纏った痩せ型の男性タイプの自律人形であった。

 ゆっくりと、その人形の目が開かれた。

 

 この人形は、一体何者なのか?ロックマン達の敵となるのか?それとも・・・?

 

 待て、次回!

 

Next EP2-7・・・




 今回の初期のプロットでは、ハンターからの通信まで入れたかったのですが、そこまで入れるとなると結構な字数となってしまう為、良いところで区切りました。
 次回は、ハンター戦まで行きたいなぁ・・・と思っております。

 ちなみに、中盤辺りに出てきた『第九世代戦車 マンティス』ですが、まんまガンヴォルトから取りました。
 コイツにはちょっとオリ設定が加わっております。どんなのかは次回明かしたいですね。
そして、最後に現れたドクロの自律人形・・・一体何ルマンなんだ・・・?(すっとぼけ)

後リアル司令部での話ですが…、コンデンター欲しい(切実)
コンデンター来たら切嗣小隊編成出来るのに…。

 次回もお楽しみに、それでは~。

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