いささか戦闘描写が急ぎ足のような気がしますが、温かい目でオナシャス(切実)
―現在、司令室にて。
「FAL、状況は!?どうなってる!」
『今、私の二番隊とスプリングフィールドの三番隊が対処してるけど如何せん数が多いわ。このままでも撃退できない事は無いけど骨が折れるわね』
司令室にてリツカは部下の一人である戦術人形『FAL』と通信を行っていた。
モニター越しに見える煤が所々についたFALの顔。そして、聞こえてくる銃声と爆音、怒号が戦闘の凄まじさを物語る。
『指揮官、他の小隊を応援に寄越せない?』
「それなら物資調達から帰ってきた一〇〇式の一番隊がいるぞ」
『OK、一番隊を応援に回して頂戴』
FALの言葉に、リツカは頷く。
「分かった、それまで持ちこたえてくれ」
『了解よ、指揮官』
ブツン。と音を立て、通信が切れる。
それからすぐに何時の間に来ていた一〇〇式に向かって言った。
「今聞いた通りだ、一〇〇式。物資調達から帰って来てすまないが、至急出撃してFALの応援に回ってくれ」
「分かりました。一〇〇式、一番隊出撃します」
リツカの言葉に一〇〇式は敬礼しながら答えると踵を返し司令室から出ようとした。
「待ってください!」
不意に一〇〇式を呼び止める声が聞こえた。
M4A1だ。
「私も連れてってください!私も戦います!」
「残念だが、それは許可出来ない」
M4の申し出に、ライトが異議を唱える。
「君は修復し終わってすぐの状態、病み上がりだ。最終チェックも完了していない状態で戦闘に出す訳には行かない」
「・・・でも、これは私が蒔いた種なんです。私の所為でこうなったのに・・・」
俯きながら言うM4にリツカは諭すように言った。
「君の気持ちは分かる。・・・だけど、君は俺たちにとっても重要な存在なんだ。ましてや、病み上がりの状態で戦場に出す訳にはいかない。むざむざと捕まりにいくようなものだ」
「・・・」
何も言い返せず、俯いたままのM4。
確かに、その通りだ。M4は修理が終わってすぐの病み上がり。そんな状態で戦場に送り出すのは自殺行為に等しい。
M4とて、分かってはいるのだ。だが、「自分の所為でこうなった」と言う罪悪感が「だからこそ、自分も戦わねばならない」と言う焦燥感を産み出していた。
「とにかく、君の戦闘参加は認められない。今は病室に戻って休んでいてくれ」
「分かり・・・ました・・・」
リツカの指示に消え入りそうな声でM4は答えると、ロールに連れられ医務室へと向かった。
それを見届け、一〇〇式も戦場で戦っているFAL隊の元へと向かう。
「心配ない、一〇〇式達は強いよ」
「えっ?」
一〇〇式を心配そうに見守っていたロックにリツカは声をかける。
何で分かったんだ?と言いたげなロックに訳を話した。
「心配そうに一〇〇式のことを見てたからさ、それで分かったんだ。大丈夫だよ、一〇〇式達は色んな修羅場を潜り抜けてきたんだ。この程度のピンチは心配要らないよ」
「それは分かってます、ライト博士から貴方の活躍は聞いてますし。だけど、ちょっと胸騒ぎがするんです。・・・気のせいであればいいんですが」
リツカの言葉に嫌な予感を感じながら答えるロック。
そんなロックに杞憂に終わるよ。と言いながら、もう到着したであろう一〇〇式達の指示をするべくテーブルに置いてある指揮用のタブレットを手に取ろうとしたその時であった。
「きゃああああああああっ!」
「!?ロールの声、一体何が・・・!?」
不意にロールの叫び声が上がった、司令室の向こう側・・・医務室の方からだ。
ロールの身に一体何が・・・!?そう思うや、ロックは一目散に司令室へと出ようとする。
「ロック!?」
「すいません博士、医務室の方に行って来ます!」
止めようとするライトにそう言うと、ロックは医務室へと向かった。
ロールちゃんとM4の身に何か危険が迫っている。そう直感しながら。
―司令部医務室。
「こちらスケアクロウ、敵基地に潜入成功しました」
『こちらエクスキューショナー、目標はいたか?』
ロックの予感は最悪な形で現実のものとなっていた。
医務室の壁が無残に破壊され、鉄血の一部隊が侵入していた。FALたちが戦っていたのはいわば囮であり、囮に気を取られている隙に、一部隊が死角を突いて潜入。時同じくして医務室に入って来たロールとM4を発見。取り押さえる事に成功したのだ。
その部隊の隊長を務めている。黒ずくめのドレスを着て、口にガスマスクのようなものを装着している黒髪のツインテールの戦術人形、鉄血ハイエンドモデル『スケアクロウ』はエクスキューショナーに通信を取っていた。
「ええ、勿論ですわ。目の前に」
エクスキューショナーの問いにマスクの奥で笑みを浮かべながら、鉄血兵に取り押さえられているM4を見て答えた。
M4は怯えながらも、憎憎しげにスケアクロウを睨みつける。
『そうか、当初の目的通りM4はできるだけ無傷で確保しろ。・・・後の人形共と人間は殺せ、誰一人として生かすな』
「了解。・・・さて」
通信を切り、ロールの方を向く。
「可愛そうなお人形さん。今から手始めに貴方を殺す事にするけど・・・遺言はあるかしら?」
「ッ!その子に手を出すな、鉄血のクズが!」
スケアクロウの言葉に、声を荒げM4が食って掛かるが鉄血兵に平手打ちで黙らせられる。
ロールは恐怖に震えながらも、しっかりとスケアクロウを睨みながら口を開いた。
「私を殺そうとしても、無駄よ。絶対にロックが助けに来てくれるんだから!」
「あら?てっきり命乞いをするかと思えば、強気ですわね。そんなに強いのかしら、そのロックって子は?」
ロールの言葉を鼻で笑いながら言うスケアクロウ。
そんなスケアクロウにロールは以前睨みながら答えた。
「勿論よ、ロックにかかればあんた達なんてこてんぱんなんだから!襲う司令部を間違えたわねあんた達!」
はぁ、と心底呆れたようにスケアクロウはため息をつくと鉄血兵―ヴェズビットを見る。
「戯言もそこまでになると、怒りを通り越して呆れてしまいますわ。・・・始末なさい」
「や、止めて!その子は関係ないでしょう!?やるなら私を・・・グッ!」
「黙れ、M4A1お前にその権利は無い」
スケアクロウの言葉に、顔を青ざめさせ叫ぶM4。
だが、別の鉄血兵(こちらはリッパーと呼ばれる)に腹を殴られうずくまった。
そして、ロールの眉間に銃口が突きつけられる。
恐怖で目を見開くロール。
「さようなら、哀れな人形さん。後でそのロックとやらもそちらに送って差し上げますわ」
スケアクロウの言葉と共に、引き金が引かれ―。
「ロックバスター!」
―ドウッ!
―る事は無かった。
叫び声と共に放たれた金色の光の弾がヴェズビットの胸を貫いた。
吹き飛ばされ、地面に倒れるとそのまま動かなくなる。
「なっ!?」
スケアクロウの顔が驚愕に染まり、光の弾が飛び出した方向を見やる。
そこには青い少年が居た。
青と水色で統一されたアーマーとヘルメットを身に纏った少年だった。
驚いているM4と嬉しさの余り眼を潤ませているロールを見ながら少年は口を開く。
「ロールちゃん、M4さん、大丈夫?・・・でも、安心して」
この青き少年、この少年こそ・・・
「何故なら・・・」
かつて、悪の科学者Dr.ワイリーから11回世界を救った『
「僕が来た!」
「ロック!」
『ロックマン』なのだ。
「その姿・・・、成る程。小娘が言っていた『ロック』に何か引っかかるものがあると思えば・・・この小娘は貴方の身内ですか、『ロックマン』」
「二人を離すんだ、鉄血人形」
スケアクロウを睨みながらロックマンはそう言う。
そんなロックマンの剣幕に怯みもせずスケアクロウは言う。
「あらあら、随分と勇ましいですわね。ですが、こちらの数は私を含めて後20。いくら貴方とは言え分が悪いのでは?」
それと同時に、ヴェズビット、リッパー、イェーガー・・・鉄血の一般兵が一斉にロックマンに向けて銃口を向ける。
その数はスケアクロウの言うとおり20。誰の目から見てもロックマンのほうが不利なのは明らかである。
それでも、ロックマンは怯みもしない。逆に恐れ知らずの笑みでこう言った。
「だったら、試してみるかい?」
「それほど蜂の巣がお望みならばそうしてあげましょう。・・・やれ」
スケアクロウの号令と共に、鉄血兵の持つ銃口からビームが放たれる。ビームは、狙い違わずロックマンに当た・・・―らなかった。
「リーフシールド!」
ロックマンのボディーのカラーが変わると同時に、展開された木の葉型のビットがロックマンを取り囲むように回り始める。
するとどうだろうか?鉄血兵の放ったビームがそれに弾き返されたではないか。
「なっ!?」
驚愕するスケアクロウ。鉄血兵達も動揺していた。
「それっ!お返しだ!」
「ぎゃあああっ!?」
その隙を狙って、リーフシールドを発射。動揺していた一体のリッパーにそれが当たる。
哀れ、そのリッパーは木の葉に全身を切り刻まれ、人工血液を撒き散らしながら倒れた。
「よくも同胞を!」
「おっと、そんなのが当たるかい!」
仲間をやられ激昂したヴェズビットが銃をロックマンに向け発射。
それを跳んで回避する。そして、再びロックマンのボディーが変わる。
「バウンスボール!」
それと同時にバスターから3つのボールが飛び出す。不規則に跳ね回るボールに鉄血兵達は攻撃に転じる事が出来ず、回避を専念されていた。
その隙にロックマンは着地し、再び武器を変える。
「スクランブルサンダー!」
「「「あばばばばばばばばばばばばば」」」
地面に向けてバスターから電気の球を発射。地面を伝わり複数の鉄血兵を巻き込んでシビレさせる。
「何をやっているのです!相手はたった一人ですよ!」
ロックマン一人に翻弄される部下達に怒鳴るスケアクロウ。だからと言って、状況が改善される訳でもない。むしろ逆効果だった。そうしてるうちにも・・・、
「メタルブレード!」
「ギエッ!?」
「アトミックファイアー!」
「あ、あァァァァァァァァァァ!!?アーツ、アーツィ!」
また一人また一人とロックマンに倒されていく。
「こ、こんな化け物勝てるわけが無い・・・。やってられるか!」
終いには武器を捨てて逃げ出す鉄血兵も現れ、数は段々と減っていく。ついには、スケアクロウ一人だけとなってしまった。
「そ、そんな・・・馬鹿な・・・」
「残るはお前一人だけだ。投降するなら今のうちだぞ」
呆然とするスケアクロウにロックマンは降伏勧告を出す。スケアクロウは、何も言わず憎憎しげにロックマンを睨みつけ、苦し紛れの特攻を開始する。
「!」
突然の特攻に驚きつつも、ロックマンはバスターを発射。だが、スケアクロウはそれを回避する。そしてそのままロックマンを通り過ぎ・・・M4へと向かう。
「えっ・・・」
「しまった!M4さん、逃げて!」
―ドスッ!
「が、はっ・・・」
M4の鳩尾を殴り、気絶させると、肩に担ぐ。
「どうやら、貴方を甘く見すぎてたようですわね。・・・あくまで私の任務はM4A1の確保ですので、この場は退かせて頂きます。貴方を始末するのはM4をエクスキューショナーの元に送り届けてから、ですわ」
「待てッ!」
そう捨て台詞を残しスケアクロウは去って行った。
ロックマンはスケアクロウを止めようと担いでいるM4に当たらないようにバスターを連射するも、逃げられてしまった。
「ロック、ロールは無事か!?」
そこへ、ライト博士がやって来た。
「はい、ロールちゃんは無事です。・・・ですがM4さんが・・・」
「・・・そうか」
ロックマンの表情を見て、ライトは全てを察する。
「鉄血を追うのだろう、ロック」
「・・・はい」
ライトの言葉に、頷くロックマン。
それを見てライトは軽くため息をつき、続けた。
「止めても無駄だろうしな。分かった、リツカ君にはワシが言っておく。ロック、お前は鉄血を追いなさい」
「・・・すいません、博士。・・・ありがとうございます」
「くれぐれも、無茶はするんじゃないぞ」
頷く。
そこへ、ロールが心配そうにロックマンを見て言った。
「ロック、気をつけてね」
「うん、必ずM4さんを連れ戻すよ」
ロールにそう言って笑いかける。
そして、スケアクロウが去っていった方向を見据え、
「来い、ラッシュ!」
共に戦ってきた仲間の名を呼んだ。
それと共に、ラッシュが駆けつけ、飛行形態『ラッシュジェット』へと変形する。
「それじゃあ、博士、ロールちゃん。行ってきます!」
そう言って、ラッシュに乗るとスケアクロウの追跡を開始したのであった。
果たして、ロックマンはスケアクロウからM4を助け出す事が出来るのか・・・?!
次回へと続く。
Next EP1-3・・・。
何気にロックを強くしすぎたような気がする…(汗)
もうちょい特殊武器出すの抑えた方が良いかな…?
次回はスケアクロウ戦(二戦目)からの、エクスキューショナー戦となります。
お楽しみに。