ROCKMAN CROSSLINE   作:じゃすてぃすり~ぐ

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今回はアイツがやってくる!ロックマンといえば欠かせないアイツが・・・。
色々とやっちまった感はありますが・・・温かい目で見てもらえれば嬉しいです。


第二戦役 狩人のララバイ―lullaby Of Hunter―
Ep2-1「本部からの召集」


-S09地区襲撃から数日後・・・。

 

「―以上が、今回の一部始終ですクルーガーさん」

 

 グリフィン社長室。そこで、一組の男女が話をしていた。

 女性は銀髪を長く伸ばした片眼鏡の女性。

 もう一人は短く刈り込んだ白髪交じりの黒髪に逞しいヒゲを生やした屈強な初老の男性だ。

 グリフィン&クルーガーの社長、『ペレゾウィッチ・クルーガー』その人である。

 

「ふむ、報告ご苦労だったヘリアン」

 

 報告書に目を一通り目を通し、クルーガーは女性、ヘリアンこと『ヘリアントス・バレンタイン』にそう言った。

 

「所で、『企業連』はロックマンの活躍について何て言っている?」

 

-企業連。

 それは第三次世界大戦により力を失った国際連合の代わりに世界中に存在する企業が政治・治安維持のために作った組織である。グリフィンは勿論、グリフィンと業務を提携しているI.O.Pもこれに所属している。鉄血もかつては所属していたが、蝶事件を機に除名されている。

 

 

「・・・『大いに戦力として有効、グリフィンは鉄血との戦争にロックマンを投入すべき』と言っております」

 

 それを聞き、クルーガーはふぅ・・・。とため息をつき天井を仰いだ。

 

企業連(お偉方)も無理難題を言ってくれる・・・、『身内の不祥事』の後始末に我々のみならず友人(ライト)の息子にまで押し付けるとは・・・」

「・・・そう、ですね」

 

 クルーガーの言葉に同意するヘリアン。

 重苦しい空気が辺りに漂う。その時だった。

 

「だが、鉄血(奴ら)は日に日に力をつけつつある。それも、グリフィンだけではどうしようもないくらいにな」

 

 クルーガーともヘリアンとも違う第三者の声、それと共にドアが開かれ、その声の主が現れる。

 白衣を纏った痩せ型で、頭頂部が禿げた老齢の男だ。

 

「だからこそ、鉄血の兵士をたった一人で20体倒し、ハイエンドモデルに1対1で勝利したロックマンは鉄血(奴ら)との戦いの切り札として大いに役に立つ。・・・まぁ、ワシとしては認めたくはないがな」

「む・・・」

「お、お前は・・・」

 

 その男を見てクルーガーは表情を険しくし、ヘリアンは驚愕の表情となる。

 なぜならばその男はライトと友人であるクルーガーは勿論、ヘリアンでさえも知っている男だからだ。

 かつて、世界征服を夢見てはその度に蒼い英雄に阻まれた悪の科学者・・・その名も、

 

「Dr.ワイリー・・・!」

「久しぶりじゃのう、クルーガー。ちょっと見ないうちに偉くなったもんじゃわい」

「貴様・・・、クルーガーさんに近づくなテロリスト!」

 

 小ばかにした笑みを浮かべながら、両手を広げクルーガーに近づくワイリーにヘリアンは拳銃を突きつける。

 その時だ。

 

「そこまでだ」

 

-ぞくっ!

 

 男の声と共にヘリアンの背後に悪寒が走る。少しでも引き金を引けば、死ぬ。と脳が警鐘を鳴らす。

 

「よからぬマネをすれば、女子といえども斬る」

「・・・っ、戦術人形!?何処から・・・」

 

 銃を降ろし、両手を上げながら振り向く。そこにいたのは日本刀を手に持った忍び装束風のアーマーを纏った男の戦術人形だった。

 片目をつぶった渋い感じの男の戦術人形。刀を突きつけられている状況ではなければ合コンで狙いそうなタイプの顔つきである。

 

「よせ、シャドーマン。この小娘の反応は正しい、幾多の世界征服を企んだワシを警戒するなってのが無理ってもんじゃよ」

 

 ワイリーの言葉に、御意。と頷き刀をしまうと戦術人形・・・シャドーマンは影の中に沈んだ。それと同時にいつの間にかワイリーの背後に現れる。

 

「すまんのぅ、シャドーマンがお前の部下に迷惑をかけて」

「・・・何をしに来たワイリー、世界征服の手始めに私の会社を占領でもする気か?」

 

 ワイリーの謝罪に意を介さず、クルーガーは険しい表情のままワイリーに問いかける。

 

「まさか。ワシはもう世界征服から足を洗ったんじゃ、今はまっとうな一人の科学者じゃワイ。その証拠に、ホレ」

 

 鼻を鳴らしながら、クルーガーに名刺を見せる。

 

『企業連所属:皇神(スメラギ)グループ技術顧問、アルバート・W・ワイリー』

 

「何ッ!皇神だと!?」

 

-皇神グループ

 電力会社を中心とした日本を拠点に運営している巨大企業で世界中のエネルギー供給を担う他、通信報道機関から宇宙開発、軍事産業までも手がけている。

 また、政治手腕にも優れており、数多の企業がその名を連ねている企業連においての地位は高く、実質皇神グループの発言は企業連全体の発言である。と言っても過言ではない。

 

「おう、何でもそこのトップがワシを雇いたいと言いおってな。ようやく、ワシの天才的頭脳を認めてくれる輩が出たという訳じゃ。なーっはっはっはっはっはっは」

 

 面食らうクルーガーにそう言って、高笑いをするワイリー。

 かつてのテロリストがその企業連のトップと言っても過言ではない大企業の技術顧問としてここ、グリフィン&クルーガーに来たのだ。・・・面食らうのも無理はない。

 すぐに表面だけは平静を装い、クルーガーは問いかける。

 

「私の会社を乗っ取るつもりがないなら、一体何しにきたのだ?」

 

 ワイリーは一瞬キョトンとしながらも後から思い出したかのようにニヤリと笑うと、クルーガー自身にとっても、恐らくいずれ聞くであろうライトやリツカにとっても残酷な事を伝えた。

 

「お、そうじゃった。皇神の使者として来たんじゃよ。『ロックマンをグリフィンに所属させ、鉄血との戦線に投入させよ』との言葉を伝えにな」

 

第二戦役(Second Stage)

 

狩人のララバイ―lullaby Of Hunter―

 

-同時刻。S09地区、司令部の医務室。

 

-トンテンカンカンカン。

 

 スケアクロウの襲撃により破壊され、ブルーシートがかけられた医務室からトンカチの叩く音が聞こえる。

 医務室の修理だ。

 

「あ~、いそがしいそがし」

「メトッ、メトッ」

 

 工事用自律人形『ピッケルマン』や『メットール』がせわしなく動き回っている。その中には・・・、

 

「よ・・・っと」

 

 一〇〇式の一番隊の隊員である戦術人形『グリズリー』も居た。左右の腕に見るからに重そうな角材を1本ずつ抱えながらピッケルマンや、メットールと共に修復工事の手伝いをしていた。

 

「手際いいよな、グリズリーって」

「ん?まぁね、グリフィン(ここ)に来る前は、親方の下で仕事してたからこう言うのには慣れてるんだ」

 

 それを関心深げに見ながら言うリツカに、角材を抱えながらグリズリーは言う。そうそう。とピッケルマンの一人が便乗するようにリツカに言う。

 

「『クマちゃん』は俺達のチームじゃあマドンナだったんだよ。グリフィンに行っちまった時は、ショックで寝込む奴もいたんだよな~」

「クマちゃん?ああ、グリフィンに入る前のグリズリーの名前か。・・・まぁ、アイツの怪力を考えれば妥当かな?」

 

 苦笑しながらリツカは角材を抱えたグリズリーを見る。明らかに人間が持つには無理がありすぎる量だ。

 

「むぅ、酷い指揮官。私だってコレでも女の子だよ?」

 

 不満気に口を尖らせるグリズリー。はは、悪い悪い。と謝るリツカ。そこへ、

 

「コラァ!クマコ、ちゃんと小分けして運べって言ってんだろうが!」

 

 怒号と共に、安全ヘルメットを被った黒と黄色、赤で統一されたアーマーを着た巨漢の自律人形が、こちらにやってきた。

 ライトナンバーズ『ガッツマン』。それが彼の名前である。

 

「わっ!ガッツ親方!」

「いくら自分が怪力だからって言っても調子に乗るんじゃねぇ!それで怪我でもされたら、俺の責任になっちまうんだぞ!それにな、お前に万が一の事があればここの指揮官にも申し訳がたたねぇしよ!」

「ひええ~、ごめんなさーい!」

 

 あわててガッツマンに謝罪するグリズリー。だが結局、ガッツマンには許してもらえず角材を置いた後で長々と説教された。ちなみに説教は30分ほど続いたという。・・・哀れなり。

 

-んでもって・・・30分後。

 

「皆さん、マフィンが焼けましたよ。一息入れませんか?」

 

 スプリングフィールドがトレイに大量のマフィンを持ってガッツマン達の作業場にやってきた。

 

「あったかいコーヒーもあるよ」

「砂糖とミルクもね」

 

 ロックとロールも一緒だ。

 

「お、そうか?そんじゃお言葉に甘えて・・・野郎共休憩だ!スプリングフィールドさんのマフィンがあるぞー!」

 

 ガッツマンが作業中の部下にそう呼びかける。するとどうだろう・・・、

 

「えっ!?マジ、あの春田さんのマフィンだって!?」

「ああ~、いいっすね~」

「なんだっていい!春田さんのマフィンを食うチャンスだ!」

「早く今やってる作業終わらせてマフィンを食べなきゃ」

「サボってる場合じゃねぇ!イクゾォ!」

 

 作業をやめ、ゾロゾロと押し寄せてきた。人気があるとは聞いていたが、ここまでとは・・・。あまりの人気っぷりにロックとロールは驚くしかない。ちなみに『春田さん』とはスプリングフィールドの愛称らしい。

 

「お前ら、順番に並べ。スプリングフィールドさんが困ってんだろうが。後、サボってた奴はマフィン抜きな」

 

 そんな部下達をガッツマンは諌めるように言う。サラッと、マフィン抜きといわれた哀れな部下の一人は『あァァァァァァァァァんまァァァァァァァァりだァァァァァァァァ!!!』と大泣きしていたが気にしてはいけない。

 ガッツマンの諌めもあって、部下達は順番に並んでマフィンを受け取った。

 

「はい、ガッツマンさん」

「おう、ありがとな」

 

 そして、最後にガッツマンが受け取りマフィンは皆にいきわたった。

 

「お疲れ様、ありがとうガッツマン」

 

 コーヒーカップを手に、ガッツマンに労いの言葉をかけるロック。

 

「いいって事よ。しっかし、大変な目にあったなロック」

「うん、戦いなんてもう2年もしてなかったからね」

 

 ガッツマンの言葉に頷きながらコーヒーをすするロック。

 

「その2年のブランクがあるってのに鉄血の連中を20体倒して、さらにはハイエンドモデルってのも倒したんだろ?やっぱすげぇよお前。・・・だけど、気をつけたほうがいいかもな」

「・・・理由を聞いても?」

 

 ロックの問いにマフィンを齧りながらガッツマンは続けた。

 

「そんな活躍をしちまえば遅かれ早かれ、グリフィンだけじゃない、企業連に目を付けられる可能性が高い。・・・そうなりゃ、言わなくても分かるよな?」

 

 ガッツマンの言いたい事は分かっている。自分が、再び戦場に出なければならない。と言うことだ。

 

「うん、分かってるよガッツマン。・・・もし、戦いに出なければならないのなら・・・僕は戦う。僕の力で、戦争が終わるなら・・・僕は喜んで力を貸すよ」

「そうか。・・・だけど、あまり一人で背負い込んじゃダメだぜ?俺も、可能な限り力を貸すからよ」

 

 ロックの決意を聞き、ニカッと笑いながらガッツマンはそう言う。ロックも表情が柔らげ、ありがとう。とガッツマンにお礼を言おうとしたその時だ。

 

「ロック、ここに居たのか?」

「ライト博士?」

 

 Dr.ライトがやってきた。表情はどこか暗い。

 

「何か・・・あったのですか?」

「・・・ロック、恐れていた事が起きてしまったよ」

 

 そんなライトの表情を見て問いかけるロックに、ライトは暗い表情のまま言う。

 

「恐れていたこと?」

「ああ、グリフィンから『今後の事について話しがあるため、ロック・ライトとトーマス・ライト、S09地区指揮官であるリツカ・フジマルはグリフィン本部に出頭せよ』と通達が来た」

 

 ライトの言葉に、ロックとガッツマンは顔を見合わせた。

 

 

Next EP2-2・・・




今回は、早めにワイリーが登場!本来ならもうちょっと遅めに登場させる予定でしたが、色々考えた結果、彼を登場させました。
そして、ワイリーのバックとなった企業『皇神グループ』・・・、これの元ネタはロックマンをてがけた稲船氏が作ったアクションゲーム『蒼き雷霆 ガンヴォルト』に出てくる同名の企業からです。
他作品(主に稲船氏作品から)キャラ、組織登場ありってのもタグに入れておいたほうがいいかしらコレ・・・(汗)
はてさて、グリフィン召集を受けたロック達の運命やいかに!?
次回も楽しみに!

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