第7学区、第34警備員出張所の活動記録   作:あきとし

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 皆さんこんにちは。前回「優先順位と自分の想い」では、突如としてセブンスミストにいたナタ男との戦闘に巻き込まれ、そして芝浦先生と男の子は重傷を負ってしまいました。果たして彼らは助かるのでしょうか。
 それではお待たせしました。ごゆるりとお楽しみください。


第10話「大切にしたいものと大切にするべきもの」

 俺は暗い闇の中にいた。深い、深い闇の中に。

 俺は一人で歩いていた。冷たい、冷たい空気の中を。

 どこからか声が聞こえる。ああ、この声は誰だったかな。思い出せないや。

 俺が俺でなくなっていく。「芝浦先生」という存在が崩れ落ちていく感覚がする。

 あの3人・・・ええと・・・、名前はなんだっけ。駄目だ、思い出せない。

 まぁいいか。なんだか暖かい光が見える。そこに行こう。そこに行けば暖かいから、少しは楽になれるかな。

 あとちょっと・・・、あと数十歩、あと少し歩けば・・・―。

 

 

 

 ――ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・。

 

 「――――あれ?」

 

 俺は目を開けた。目に入ってきたのは白い壁。いや・・・、これは天井か?

 

 「俺は・・・一体・・・?」

 

 だんだんと頭が働き始める。口元には酸素マスク。頭を右に動かすと、心電図が目に入った。それによりここが病院だと理解する。そして一気に記憶が蘇ってきた。

 

 「佐天・・・初春・・・新橋・・・!」

 

 俺は体を動かそうとする。しかし叶わなかった。何故か力が入らないのだ。訳が分からず混乱する。

 

 「クソッ・・・!なんで動かないんだ!動けっ!動けっつってんだろ!」

 

 「まったく、目が覚めたと思ったら騒がしいねぇ君は?」

 

 俺がもがいていると、初老の男性医師が病室に入ってきた。俺はその医師の顔を見て、カエ・・・とある両生類を思い浮かべるが失礼にあたると思い、それを振り払う。俺は男性医師に質問する。

 

 「お、おいっ!どうなってんだ!体が動かないぞ!」

 

 男性医師はやれやれといった風に答える。

 

 「ちょっとは落ち着いたらどうなんだい。今の君の体は麻酔から覚めたばかりだ。それに、『能力による治療の余波』であと1時間くらいはそのまま動けないよ。だが命に別状はない。あの子のおかげでね。あの子が無理をしてでも君に治療を施さなかったら、今頃死んでいただろう。」

 

 

 そう言うと男性医師は、病室の中のカーテンで仕切られている一角を開ける。そのベッドに寝ていたのは―。

 

 「し、新橋!?おい!新橋!聞こえてるか!?」

 

 「だからちょっとは落ち着いたらどうなんだい?まったく。彼女も命に別状はないよ。能力の使い過ぎで寝ているだけで、特に治療の必要もない。今夜一晩寝れば明日にでも退院できるだろう。」

 

 俺はそれを聞き、胸をなでおろす。そしてどうやら、俺を治してくれたのは新橋らしいと分かり、男性医師に問う。

 

 「先生、俺はどうなったんですか?あの後に俺は意識を失って、それから・・・。」

 

 男性医師は答える。

 

 「いや、ここに運ばれてきたときは既に完治していたよ。意識はまだ戻っていなかったがね。だから念のためレントゲン撮影とMRI検査を行ったが、負傷の痕跡はきれいさっぱり無くなっていた。私も驚いたがね、君の生徒の、初春くんだったかな。その子が説明をしてくれたんだよ。」

 

 それを聞き、俺は新橋に感謝する。彼女の目が覚めたらきちんとお礼を言おう。俺の命の恩人だ。そういえば、ともう一つ気にかかっていることを質問する。

 

 「先生、現場にいた男の子はどうなりました?助かったんですか?」

 

 それを聞くと男性医師は顔を緩め、質問に答える。

 

 「ああ、あの男の子なら今はICUだよ。まだ意識は戻っていないし、これから辛いリハビリが待っているだろうが、彼女のおかげであの子は左腕を失わずに済んだ。順調に回復すれば、また学校にも通えるようになるだろう。」

 

 俺はそれを聞き、本当に安心した。良かった、彼女が倒れてまで助けようとした命は無事つながった。それを聞いたら新橋はどんな顔をするだろうか。俺はそれを思うと、自然と笑みが零れた。そして最後に、恐らく無事であろう二人の安否を確かめる。

 

 「先生、俺の生徒・・・柵川中学の初春飾利と佐天涙子は無事ですよね?」

 

 男性医師は目を細めて答える。

 

 「ああ、二人とも無事だとも。君のことをずいぶんと心配していたよ。それと、佐天くんから伝言なんだが、『先生が倒れちゃって、仕方なく服は私たちのお金で買いましたけど、先生が元気になったらレシート持ってくのでお金はその時にくださいね!だから早く元気になってください!』だそうだ。君は本当に生徒から好かれているねぇ。」

 

 その可愛らしい文字で書かれた小さなメモを見せてもらい、俺はそれを見て笑顔になる。更には気力も沸いてきた。今なら何だって出来そうな気分だ。俺は起き上がろうとする。しかし力は入らない。それを見ていた男性医師はやれやれといった感じの視線を俺に向け、酸素マスクと心電図を外すと病室を後にした。俺は一人で苦笑すると、今日の事件を思い返す。窓の外はすでに、暗闇に包まれていた。

 

 

 今日のナタ男、あいつはどうやら能力者だったらしい。警棒がひしゃげるなんて予想外だった。しかし奴の眼には攻撃が効いた。つまり、あの男の能力は恐らく「筋肉を硬化・強化できる能力」と推測できるだろう。だから筋肉が少ない眼球には攻撃が通用した。しかしあの感触・・・、もう二度としたくない攻撃であることは確かだ。そして初春の対応してくれた高級服売り場でのアラーム・・・、あの男との関連性は不明だが、何かしらの関連性はあると見るべきだろう。しかし解せないのは、なぜあのナタ男が男の子を切りつけたのかだ。全くもってメリットがない。まるで切るのを楽んでいたとしか・・・。

 俺ははたと思い至る。今日Joseph’sで聞いた男子高校生たちの会話と、黄泉川先生から聞いた話、そして例のひったくり犯・・・。圧倒的な犯罪性と狂暴性、能力レベルの異常な上昇・・・。彼も「幻想御手」の使用者だった・・・?しかし「幻想御手」そのものがよく分からないというのが現状である今は、結論を出すのは性急すぎる。少なくとも、『何かしらの音楽ファイルを用いた可能性のある容疑者』程度に留めておくべきだろう。俺は一つ、小さなため息をついた。

 

 

  少し落ち着くと、俺はJoseph’sにバイクと、その装備を預けているのを思い出す。しかし体が動かないために、確認の電話をすることもできない。それに外はもう暗い。やはり明日の朝いちばんに謝罪の電話をするべきだろうと思い直す。それにしても本当に良かった。大きな事件だった割に死傷者の被害が少なかったのは、やはり新橋の力によるところが大きいだろう。何より死者は0人というのが、それを如実に表している。

 

 

 

 そんな感じであれこれ考え事をしているうちに、だんだんと体が動くようになってきた。あの男性医師の話だと、細胞というものはある一定以上のダメージが蓄積されたりすると、生命本能による防御機構が働いて休眠状態になるらしく、今回俺は、体幹部の細胞がその状態になったために、しばらく動けなかったというのだ。まぁ半分くらいは何を言っているのかよく分からなかったが。とにかく細胞が自分で休むらしく、それを俺は「体が動かせない」という形で体験したという話だ。なんとも不思議な話である。

 とりあえず動かせるようになっては来たので、ベッドの下にあった私物入れ用のタッパーから携帯を取り出し、今の時刻を確認する。時刻は00:43。既に日付は変わり、深夜になっていた。それを見て俺は新橋を起こさないように気を付けつつ、病院内にある自販機に飲み物を買いに行く。

 試しに歩いているときに左わき腹をさすってみたりしたものの、骨折しているような感触はなく、痛みもまた驚くほどに軽減していた。これなら無理をしなければ全くもって問題はなさそうだ。新橋の能力は本当にすごい。改めて俺はそう思った。ただ贅沢を言えば、その能力を使った反動がもう少しだけでも軽減されて、使用者本人の負担が減ればもっといいのだが。あの寝ている新橋の顔を思い出すと、嬉しい反面、とても胸が苦しくなった。

 

 

 そして俺は自販機で西瓜(スイカ)紅茶を買い、また病室に戻る。新橋が目を覚ましているかと期待したが、時間も時間で深夜ということもあり、彼女はぐっすりと眠っていた。俺はその寝顔を見て安心感を覚える。

 先ほど男性医師が置いていった佐天からのメモを改めて見てみると、そこに薄く水滴の跡が見て取れた。これはもしかすると佐天の涙なのか、あるいは単純に水滴なのかははっきりしないが、しかし佐天にもずいぶんと心配をかけてしまったことを心の中で反省する。彼女の想いには元気になった俺の姿で応えよう。

 嬉しい気持ちや暖かい気持ちと、心苦しい気持ちや申し訳ない気持ちがごちゃまぜにブレンドされている胸中に俺は、西瓜紅茶を流し入れる。そしてほっと一息。散らかり放題だった胸中が少しすっきりした気分になった。しかし病院というものは退屈である。携帯もむやみやたらに使えないし、大きな音を出すのは他の患者の迷惑になりかねない。俺はどうしたものかと考えあぐねた結果、新橋のベッドサイドへと椅子を持っていき、彼女の寝顔を眺めることにした。

 決してやましい考えからではない。彼女が目覚めたときに、誰かしら傍にいた方が安心すると思ったからだ。いきなり病院のベッドで目覚めて一人だなんて、寂しいにもほどがある。彼女にそんな思いはさせたくない。命の恩人だとか、そういうのは関係なく、単純に女の子だからそういう思いはしてほしくなかった。

 

 

 俺は残りの西瓜紅茶を飲み終えてから空き缶をゴミ箱に入れると、新橋のベッドサイドへと椅子を持っていき、そこに腰掛ける。今日は大変な一日だった。俺は警備員だからまだいいものの、彼女のような普通の学生には疲労が大きすぎる。まして能力を酷使していたとなれば想像を絶するだろう。すやすやと眠る彼女の寝顔を眺めながら、俺は「お疲れさま。今日はとても良く頑張ったな。ありがとう。」と心の中でつぶやく。

 そして彼女の寝顔を眺めつつ、そういえば、と新橋が俺にお願いしてきたことを思い出す。「私のことを名前で呼んでほしい」。彼女は確か、そんなことを言っていた。俺は命の恩人に対して、せめてものお礼をしたいという気持ちから、彼女を下の名前で呼ぶ練習を軽くしてみることにした。

 

 「め、めぐみ・・・、恵・・・さん?恵・・・ちゃん・・・?」

 

 我ながらとてつもなく呼び慣れていない事を感じ、一人で失笑する。

 

 「はぁ~・・・、これ、結構恥ずかしいんだよなぁ・・・。」

 

 なるべく小さい声で、新橋が起きないように気を付けてはいるものの、本当は聞こえているのでは、起きているのではという考えが頭の中をよぎり、耳たぶが熱くなってくるのを感じる。

 

 「ったく・・・、男として情けなさすぎるぞ・・・俺よ・・・。」

 

 その後もしばらく練習し続けたものの、やはりうまくいかずに断念してしまった。正直言って本人の真横で練習するのは、いくら寝ているからと言っても精神衛生的によろしくない。

 

 

 そして再び新橋の寝顔を眺める。しかし気持ちよさそうに寝ている彼女の寝顔を見ていると、こちらも眠気を誘われて、いつの間にか俺は睡魔の前に撃沈していた―。

 

 

 

 ―翌日。

 新橋恵は目を覚ました。良く晴れた、気持ちのいい朝だ。エアコンの効いている病室内は快適で、ぐっすりと眠れた。

 

 「んっ・・・んん~~~・・・。あふ・・・。眠いなぁ・・・。」

 

 見慣れぬ天井と部屋に、一瞬頭が混乱する。しかし昨日のことをはっきりと覚えていたので、能力を使って倒れた後にここに運ばれたんだと理解する。

 

 「ちょっとトイレ行きたいかも・・・。」

 

 新橋恵はそう独り言をつぶやき、ベッドから起き上がってトイレに行こうと横を向く。すると、何やら黒いものが目に入った。

 

 「んう・・・?髪の毛・・・?」

 

 新橋恵はその頭の主を認識するために顔を見る。そこにいたのは―。

 

 「ひゃわぁっ!?!?ししししししし芝浦先生!?!?!?」

 

 新橋恵はとっさに飛び起きて、僅か数cm目の前にあった男性の顔から遠ざかる。彼女の目は、彼女が尊敬する・・・いや、ちょっと違う。もっと親密な意味合いの感情を持っている男性の顔を認識する。すると、その声を聞いた芝浦先生がモゾモゾと動き始める。

 

 

 「ん~・・・・・?あれ・・・・・?俺、なんで・・・・・・?」

 

 寝ぼけ眼で状況が読み込めていない芝浦先生もカッコい・・・じゃなくて!

 

 「しっ、芝浦先生!おはようございますっ!」

 

 それを聞いた芝浦先生が眠そうにあくびをしながら答える。

 

 「ふわぁ~~~~あ・・・。おはよう新橋~~・・・ぐぅ・・・。」

 

 そしてまた眠りそうになっている芝浦先生。もしかして朝にめちゃくちゃ弱い?

 

 「ちょっ!起きてください芝浦先生!朝ですよ!」

 

 芝浦先生の肩を揺らして目覚めを促す。それを受けた芝浦先生は徐々に意識を覚醒していく。

 

 「ん・・・・・?ん・・・?んん???あれ?なんで俺こっちで寝てんの・・・?」

 

 それはこっちが聞きたいんですけど!?!?

 

 「あ~そっか、そういえば昨日、新橋の寝顔を眺めててそれで寝ちゃったのかぁ・・・。」

 

 寝ぼけてるのか知らないけど、なんか今この人すごく恥ずかしいこと言っていた気がするけど気のせい?私の寝顔を眺めてたって、それって・・・!?

 

 「とりあえず顔でも洗ってくるか・・・。新橋も歯磨きとかしてくるんだぞ~・・・。」

 

 芝浦先生はそう言って、洗面台の方に行っちゃった。なんだったのよもうっ!

 

 私は仕方なくトイレに行くことにした。はぁ・・・。でも寝顔を見られてたって・・・。ああもう恥ずかしいし、朝から心臓止まるかと思った~・・・。

 

 

 ―俺は顔を洗い、冷たい水で目を覚ます。そしてしっかりと意識が覚醒すると、先ほどの自分が言っていたセリフを思い出し、そして一気に冷静になる。まずい。あれを聞かれていたらかなりまずい。俺の教師としての立場が危うく・・・!

 そして急いで新橋のもとへと戻り、確認と弁明をする。

 

 「し、新橋っ!さっき俺が言ってたこと、聞いて・・・たよね?」

 

 新橋は若干、頬を赤らめながらうなずく。俺は人生で最大の過ちを犯したかもしれない。

 

 「せ、説明させてくれっ!あれはだな、その・・・、そう!新橋が目を覚ました時に誰かいた方が寂しくないと思って、それでっ・・・!」

 

 新橋はなぜか笑っていた。俺は訳も分からず唖然とする。すると、新橋がいつもの口調でこう言ってきた。

 

 「も~、芝浦先生って朝に結構弱いんですね。いつもと違う先生が見れたので、私もラッキーでした。でも、ありがとうございます。おかげで芝浦先生の狙い通り、私は目が覚めた時、寂しくありませんでしたよ?」

 

 新橋はにこやかな笑顔で俺にそう言ってくる。俺はそれを聞き、少し救われた気分になる。しかし次に新橋が言ってきたのは、俺が予想だにしなかったことであった。

 

 「芝浦先生・・・、もしかして昨日、私の事を名前で呼ぶ練習とかしてたり・・・しました?」

 

 俺はそれを聞いて心臓発作を起こしそうになる。一気に耳まで赤くなるのが自分でも感じられた。しかし無謀にも俺は、それを否定する。

 

 「なっ・・・!?そ、そ、そんなわけないじゃぁないですかっ!?」

 

 何故か敬語。それを聞いた新橋はいたずらな笑みを浮かべ、俺に詰め寄ってくる。

 

 「芝浦せ・ん・せ・い?素直に認めた方がいいと思いますよ?」

 

 俺は、もはやこれまでと思い直し、素直に新橋に謝罪する。

 

 「ごめんっ!そんなつもりじゃなかったんだ!ただ、俺のことを助けてくれた新橋に少しでもお礼がしたくて・・・。」

 

 それを聞いた新橋は驚いた表情を見せたが、しかし元の笑みに戻り、そして俺を自分の隣に座るように促してくる。俺はそれを聞き入れ、同じベッドサイドに腰掛ける。まだ顔は熱いままだ。そして新橋は何やらもじもじしていたかと思うと、いきなり腕を絡ませてきた。俺は驚いて新橋にやめてくれと言おうとしたが、できなかった。

 そこにあったのは先ほどまでのいたずらな笑みではなく、一人の恥じらう少女の、ほんのりと赤く染まった可愛らしい顔があったからだ。そして新橋は静かに、ゆっくりと口を開く。

 

 

 「芝浦先生・・・。私ね、とっても嬉しかったんだよ?あの日、私を助けてくれた時と、セブンスミストで会えた時。そして昨日、また私を護ってくれた。芝浦先生の方こそ私の命の恩人なんだよ・・・?」

 

 潤んだ瞳で、新橋は俺に淡々と話しかけてくる。その姿はどこまでも繊細で、軽く触れただけで儚く散ってしまいそうな、そんな雰囲気を放っていた。俺は何も言わずに新橋の言葉を聞き続ける。

 

 「そんな人に何もできないかもって思っちゃってたのは、私の方。昨日なんかは特にね。あのまま先生が死んじゃったらどうしようって、今まで出したことがないくらいの能力を使って、気付いたら私も倒れちゃってて、笑っちゃうでしょ。でも、その甲斐はあったかな。こうして先生とまたお話して、お出かけして、一緒に笑いあって・・・。そんな毎日が戻ってきたんだから。」

 

 そして新橋は、俺に向けて微笑みかけてくる。俺はそれを見て、たまらず新橋を抱きしめる。

 

 「新橋・・・、いや、ここまで来てそれはないな。恵。ありがとう。君には返しきれないほどの恩を受けてしまった。それをいつの日かきちんと返せるように俺も頑張るから、だからもう無茶だけはしないでくれ。これは俺からのお願いだ。俺の体は恵がまた治してくれるけど、恵のことは俺には治せない。だから怖いんだよ。すごくね。護り切れなかった時の代償が大きすぎて、とても怖いんだ。だから俺からのお願い、聞いてくれるかな?」

 

 俺は優しく恵に問いかける。恵は顔は見えないが、どうやら泣いているようだ。俺の言葉を聞き、恵もまた頷き返す。

 

 「うん・・・。うん・・・。もう無茶はしないよ。芝浦先生。ありがとう・・・。私を護ってくれて・・・。」

 

 

 

 俺はその言葉を聞き、優しく恵を抱きしめ続ける。いつか、その涙が枯れる、その時まで―。




 まずはここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか。是非皆さんの意見・感想などを教えていただけたら幸いです。また、誤っている点などありましたら遠慮なく教えていただけると助かります。
 さて、今回はようやく翌日に移りましたので、アニメ版「とある科学の超電磁砲」での時間軸は、美琴と黒子がプール掃除の罰を受けているシーン(昼過ぎ)に入る直前までとなります。そしてどうやら、この一件を通して芝浦先生と恵との間に、特別な信頼関係が生まれたことでしょう。次回以降は大きく事件が進展していくようです。お楽しみに。
 ちなみに恵が芝浦先生に「名前呼び」の練習をしていたかどうかと聞いていたシーンについては、恵があの時に起きていたのか、はたまた単なるハッタリだったのか、そこは読者の皆様のご想像にお任せします。
 次回、第11話「仲間と戦友(なかま)」また読んでくだされば嬉しいです。ではまたいつか。
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