第7学区、第34警備員出張所の活動記録   作:あきとし

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 皆さんこんにちは。前回「プロローグ」では、突如として出張所内の電源が落ちてしまったところでお話が終わりました。今回から主要なメンバーが続々と明らかになっていくことでしょう。
 それではお待たせしました。ごゆるりとお楽しみください。


記録1「能力値が上がらないことを悩む生徒を前に、一人の教師として何ができるのか」
第1話「信号トラブルと電撃使い」


 閃光、そして、学区内のすべての信号が消えるという事からすべては始まった。すぐに非常用電源に切り替わり、各種電子機器が再立ち上げを始めた途端に鳴り始めたのは出張所内の固定電話だった。そしてそのどれもが主に「信号が消えた」という旨の通報であり、至る場所で交通事故も発生しているというものだった。その中に、エリアBの路地裏付近で電撃のようなものが見えたという通報もあった。

 

 「よし!みんな落ち着け!まずはこの分隊を3つのチームに分ける!まず俺(芝浦(しばうら))と古賀(こが)(さっき隣に座っていた男性教師だ。)をAチーム、(はやし)鈴木(すずき)をBチーム、中山(なかやま)神田(かんだ)をCチームに分け、A、Bチームは現場及び交通整理に向かい、Cチームは出張所に残り情報収集及び各隊、各組織との連絡を頼む。以上!」

 

 その場にいた全員がすぐに動き出した。ちなみにこういった大規模な事案が発生した際には、最寄りの風紀委員支部と協力体制をとることになっている。

 

 「古賀!行くぞ!」

 

 警備員に支給されている出動服の上から水色の特殊ベストを身にまとい、古賀とともにパトロールカーに乗り込む。そして青色灯を回し、サイレンを鳴らして出張所から飛び出した。

 

 「Bチームは最寄りの交差点に向かい交通整理を行いつつ他部隊と連携して事態の収拾にあたれ!Cチーム!風紀委員支部との連絡はどうだ?」

 

 急行する車内で無線機を掴み各種指示を飛ばす。すぐにCチームからの返答が返ってきた。

 

 「こちらCチーム!すでに風紀委員177支部も事態を把握し、白井黒子(しらいくろこ)という生徒が現場に向かっているとのことです!なお、現場近辺には犯人と思しき男性が複数人いる模様!接触する際は武装している可能性を考慮されたし!また、その男性らに囲まれていた女学生が一名いた旨の情報もあるため、慎重な対応を求む!現場の位置情報転送します!」

 

 「こちらAチーム、了解した!」

 

 第1報はすでに風紀委員の第177支部に伝わっており、そこに所属する風紀委員の白井黒子という生徒が現場に向かっているという。とにかく、早く現場に向かわねば。パトロールカーのナビ上にGPS衛星から転送されてきた現場の位置情報が表示された。それを基に現場へと急行する。

 

 「こちらCチーム!どうやら風紀委員が犯人の一人を拘束した模様!位置情報転送します!」

 

 即座にナビに位置情報が表示される。

 

 「へぇ、なかなかやりますねこの生徒。まさか犯人の一人を拘束してのけるとは。我々も負けてられないですよ!」

 

 古賀が興奮気味にそう言うが、それに対して俺は「いや、これ風紀委員としては権限逸脱しすぎだろ。こりゃ始末書書かされるなこの生徒。ともかく急ぐぞ。」と答えた。

 

 

 しばらくして現場に到着。先ずはすでに拘束されているであろう犯人のもとへと向かう。

 

 「よし、気をつけろよ。テーザーガンの用意はしておけ。」と古賀に伝える。

 

 「了解。」

 

 静かに古賀が答える。そして小走りで向かい、犯人のもとへ着くと片腕のみが拘束されている状態だったため、犯人は最後の抵抗と言わんばかりにナイフを振り回してきた。

 

 「動くな!警備員だ!そのナイフを置き、手を頭の後ろに回せ!さもなくば撃つ!」

 

 俺がそういうと犯人は「へっ、撃てるもんなら撃ってみやがれってんだ。俺が無能力者だと思ったら大間違いだぜ!お前らなんか一瞬で叩き潰してややyyyyyyyy」

 

 すでにテーザーガンは犯人に命中し、犯人はその電撃を受けて気絶していた。

 

 「ったく・・・。だから言ったのに。よし古賀、こいつの手錠をしっかり両腕に着け直してやれ。俺は現場のほうを見に行ってくる。」

 

 テーザーガンのカートリッジを交換しながら古賀にそう言うと、俺は小走りで現場へと向かった。すると、なにやら焦げ臭いにおいが鼻先をかすめる。そして現場に着くと、そこには倒れている男性が5人と、常盤台中学の制服に身を包む二人の少女の姿があった。

 

 「これは・・・いったい何が・・・?」

 

 状況が読めない俺はバツの悪そうにしている二人の少女と、そして倒れている男性らを見てはたと気づいた。

 

 「これ、もしかして君たちが・・・?」

 

 するとショートヘアの少女が「べ、別に先に手を出したわけじゃないわよ!正当防衛よ、正当防衛!こいつらが先に喧嘩売ってきたんだから。」

 

 それに対しツインテールの少女が「お、お姉さま!ここは風紀委員であるわたくしにお任せくださいまし。」と答える。

 

なるほどよく見るとツインテールの少女は風紀委員の腕章をつけている。どうやらこの子が真っ先に現場に向かい、犯人を拘束した白井黒子という生徒のようだ。

 

 「えっと、とりあえず君たち二人はこっちに来て、詳しく話を聞かせてもらえるかな。とりあえず救急車5台と警備員の応援を要請しておくから。」

 

 「こちら第34警備員出張所の芝浦です。ただいま現着し、対応にあたっておりますが負傷者5名を確認、おそらくその負傷者らが犯人かと思われます。なので救急車5台と警備員の応援を要請します。」と警備員の第7学区本部へと連絡を入れる。

 

 「こちら本部、了解した。だが今は交通状況がかなり悪い。到着はおよそ20分強かかると思われる。負傷者の状況はどうか?」

 

 「こちら芝浦。負傷者はいずれも軽症です。ただ、電撃によるショックの可能性があるため警備員附属病院への収容を要請します。」

 

 「こちら本部、了解した。では現場周辺の封鎖及び犯人らの拘束を頼む。」

 

 「こちら芝浦、了解しました。」

 

 そして彼女ら二人を連れて一度パトロールカーに犯人を乗せていた古賀の元へ戻り、古賀を現場近辺の封鎖と気絶している犯人らの拘束へと向かわせた。先ほどテーザーガンによる電撃を受けた犯人はすでに意識を取り戻していたが、既に戦意喪失しておりしょんぼりとしている。

 

 

 「さて、それじゃあ詳しく話を聞かせてもらおうか。」

 

 そう言った途端に「だからそれはあいつらが先に―!」「ここは風紀委員であるわたくしが説明を―!」見事に被った。

 

 「ま、まぁまぁ落ち着いて。別にさっきのを見たからって捕まえるつもりはないから、だから最初から順に話してよ。ね?」

 

 そう二人をなだめると、二人は話し始めてくれた。

 

「-なるほど。そういうことだったのか。それは災難だったね。まぁ犯人も気の毒なのは否めないが・・・。とにかく怪我もないみたいでよかったよ。」

 

 事情を聴き、そう答えると「まぁ確かにあたしもやりすぎたとは思ってるけど・・・。」とショートヘアの少女。

 

 「まったく、犯人もバカですわよね。よりにもよってお姉さまを狙うだなんて。」と白井。

 

 「あはは・・・。あ、そういえば風紀委員の白井黒子さん。今回はお手柄だったね。おかげで助かったよ。」

 

 「へ?あぁ、そういえば犯人を一人拘束してましたわね。もっとも残りの犯人は皆お姉さまによって倒されてしまいましたけど。」とパトロールカーに乗っている犯人を一瞥しながら白井。

 

 犯人はビクッと震え、顔は青ざめている。

 

 「だからあたしは悪くないって!」赤面しながらショートヘアの少女が言う。

 

 「はいはい、分かったから。次からは気を付けるように。」

 

 ショートヘアの少女にそう言うと、またバツが悪そうにしながら「は、はい、以後気を付けます・・・。」と答えた。

 

 そこにちょうど古賀が戻ってきて、「隊長、さっき言われたこと全部終わりましたよ。」と言った。

 

 「うん、お疲れ様。あ、ところで学校と名前を聞いてもいいかな?一応今回の被害者でもあるわけだし。でも白井黒子さんは風紀委員だから大丈夫かな。」というと、ショートヘアの少女は「あたしの名前は御坂美琴(みさかみこと)。学校は常盤台(ときわだい)中学よ。」と答えた。

 

 次いで白井が「わたくしのことはすでに存じ上げているかと思いますが、改めて自己紹介させていただきますわ。わたくしの名前は白井黒子。学校はお姉さまと同じ常盤台中学ですわ。それと、わたくしのことは『白井』と呼んでくださいまし。今回の件は警備員の皆さんもご苦労様でした。」と言った。

 

 「うん、御坂さんに白井さんね。了解。ありがとう。」

 

 すると白井が「あなた方のお名前もお伺いしてもよろしいですの?」と聞いてきた。

 

 「もちろん。俺は芝浦。んでこっちは古賀。俺は柵川(さくがわ)中学の警備担当教員で、古賀は同じ柵川中学の事務員なんだよ。まぁ勉強とかを教える教師とはちょっと違うけど、よろしくね。」と答えた。

 

 「芝浦さんに古賀さん・・・。ありがとうございますですの。」と白井が答える。

 

 すると御坂がこんな質問をしてきた。「芝浦さん、警備担当教員ってなにしてるんですか?古賀さんみたいに事務員だったらまだわかりますけど、あまり想像できなくて・・・。」

 

 「ああ、確かにあまり聞きなれないかもしれないね。難しい言い方してるけど、要するに風紀委員の顧問ってわけ。まぁ顧問って言っても学校の敷地内だけだから特にこれと言ってすることはないんだけどね。全部うちの風紀委員がやってくれてるし、言うなれば非常時のための切り札ってところかな。」などと大げさな言い方をしてみる。

 

 御坂はすこし引き気味で「なるほど、まぁ確かに警備員でもある芝浦さんなら適任かもしれないですね。」と答えた。

 

 「さてと、それじゃあそろそろ応援も来るだろうし、二人は行っても大丈夫だよ。白井さんは風紀委員として御坂さんをしっかり寮まで送り届けること。こっちから何か渡す資料とかあれば支部のほうに送るから。」と冗談めかして二人に言う。

 

 そして御坂と白井は「あはは・・・じゃあ私たちはこれで。ってか黒子じゃま!くっつくな!」

 

 「あん、もうお姉さまったらまた暴漢どもに襲われたらどうするんですの?わたくしがしっかりと風紀委員としてお姉さまをエスコートいたしますわ。」

 

 「あぁ、もう!暑苦しい!芝浦さんが余計なこと言うから!」と言いつつ帰っていった。

 

 「はは、仲いいなぁあの二人。さてと古賀、応援も来たしこの犯人を護送していくぞ。」

 

 「はいよ、了解です隊長さん。」

 

 俺が御坂美琴は常盤台の超電磁砲だと知るのは騒動も一段落し、出張所に戻ってきて書庫の検索をした後になるというのはまた別の話である。(ちなみに古賀はすでに噂程度には知っていたらしい。)

 

 

 「いやはや、今日は本当にお疲れさまでした。」

 

 古賀が帰ってきて早々、玄関口にある自販機でコーヒーを買いながらおもむろに話しかけてくる。

 

 「ああ、お疲れさん。でもまだ事態が収拾したわけじゃないからな。あともう一息だ。」

 

 俺もコーヒーを買いつつ古賀を労う。

 

 「そういえば、あとエリアCの傷病者の搬送と、3箇所の信号機の点検、修理だけでしたっけ。」

 

 「そう。まぁこの程度なら林と鈴木のいるBチームと、風紀委員で手は足りるだろ。俺たちは今回の騒動の報告書をまとめるぞ。」

 

 そう言うと、古賀は分かりやすく嫌な顔になると、「うへぇ~、報告書を書くくらいなら現場にいたほうがマシですよ・・・。」と言ってきた。

 

 「ほう?ならばエアコンの効いてて涼しい出張所で報告書をまとめるか、或いは暑くて汗がダラダラ出てくる外回りとどっちがいいか今ここで選べ。」と意地悪な感じで言ってみる。

 

 すると古賀は「えっと・・・、報告書まとめてきます・・・。」と言いつつ事務室に入っていくのだった。

 

 「おう、よろしくな。俺も後で行くから。」とコーヒーを口に運びつつ古賀の背中に声をかける。

 

 

 やはり、今回の騒動はあの「超電磁砲」の仕業なんだろうか。しかしどう報告書にまとめたものか・・・。『暴漢が襲ってきたので正当防衛で電撃を放ったら信号トラブルを引き起こしちゃいました』なんて書くわけにはいかないしなぁ・・・。

 結局、悩んだ末に編み出した内容が、『暴漢5人が常盤台中学の生徒1名を囲み、危険な状況であったがその暴漢はすべて風紀委員177支部の学生によってスタンガンにて無力化されたものであり、本件とは一切の関係が無いものである。該当する風紀委員177支部の生徒はすでに始末書を提出済みであることを確認している。なお、今回の信号トラブルその他の事案については当出張所も目下捜査中であり、新規情報等あれば第7学区警備員本部に逐次報告するものとする。以上で本件における第7学区第34警備員出張所からの報告を終わる。』という、(若干の無理はあるかもしれないが)当たり障りのないものに留めたのは決して彼女らの今後の学校生活を案じてだとか、風紀委員の学生がたまたま現場にいたからだとか、そういった諸々は一切ないことを明言しておく。




 まずはここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか。是非皆さんの評価・感想などをお聞かせいただけたら幸いです。また、誤っている点などありましたら遠慮なく教えていただけると助かります。
 さて、今回のお話ではアニメ版「とある科学の超電磁砲」第1話の「見学ツアー」の観光バスが交通事故を起こした直後のシーン、黒子が犯人を拘束、現場に向かい美琴と出会ったところまでと、その後のストーリーを拡張する形で展開してみました。なんというか、美琴がこういったことを起こすたびに警備員の人たちがこんな感じで対応しているのかなぁとか思いながら書いてみました。
 次回、第2話「身体測定と無能力者」また読んでくだされば嬉しいです。ではまたいつか。

2018.11.23追記
より読みやすくするための大幅な修正を行いました。

2018.11.24追記
細かい部分の修正を行いました。

2018.11.25追記
「用語解説」を削除しました。

2018.11.30追記
細かい部分の修正を行いました。
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