第7学区、第34警備員出張所の活動記録   作:あきとし

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 皆さんこんにちは。前回「信号トラブルと電撃使い」では、美琴が引き起こした信号トラブルへの対応と、それが元となって芝浦と古賀が美琴、黒子とたまたま知り合ったところでお話が終わりました。今回は芝浦と古賀の職場でもある柵川中学校が登場します。
 それではお待たせしました。ごゆるりとお楽しみください。


第2話「身体測定と無能力者」

 翌日、朝礼が終わり、シフトに入って間もなく出張所内に警報が響き渡った。次いで自動音声アナウンスが流れる。

 

 「セキュリティアラートレベル3、自動販売機、登録番号7116号にて不具合発生、器物損壊の可能性あり。警備ロボット出動済み、直ちに現場へ急行し、事態の収拾にあたってください。」

 

 俺は飲んでいたヤシの実サイダーの空き缶をゴミ箱に投げ入れつつ、「うおっ、マジかよ。まったく今日は朝からサービスデイってか?おい古賀!行くぞ!」と、事務室に声をかける。

 

 すると古賀が参ったというような顔で急いで出てきた。

 

 「ちょっと隊長、今日は朝から一体何なんですか?」

 

 「わからん、とにかく行くぞ。」

 

 そしてパトロールカーに飛び乗り、出張所を飛び出していったのだった。サイレンを鳴らし、急行する車内で無線機を手に取り出張所にいる神田に連絡を取る。

 

 「神田、こちら芝浦だ。現場近辺の監視カメラはどうだ?」

 

 「こちら神田。いやぁ、それが犯人はどうやら昨日の『超電磁砲』のようで・・・。ツインテの子が空間移動で一緒に連れてっちゃいましたよ。」と返答する。

 

 「はぁ・・・。わかった。引き続き監視カメラの映像の確認を頼む。」

 

 無線機を切り、俺は大きなため息をもう一度ついた。

 

 「まったく、おてんば娘の電撃使いも困ったものですね。」と古賀。

 

 「まったくだよ。ただ、どうにもここの自販機は不具合が多い気がするんだよなぁ・・・。まさか毎回・・・?」と俺は予想する。

 

 「いやぁ、さすがにそれはないと思いたいですけどね。」

 

 苦笑しながら古賀が答えを返してきた。

 

 

 しばらくして現場に到着。事前情報にあった通り、警備ロボットが3体、自販機の周りを取り囲むようにして警戒態勢に入っていた。そのうちの一体に近づき、警備ロボットのセンサー部に警備員のIDと認証番号が入力されているICチップ入りのセキュリティカードをかざし、警備ロボットの接近許可を得て現場検証を始める。

 

 「古賀、お前は警備ロボットの記録を調べてみてくれ。俺は自販機とその周辺を調べてみる。」と古賀に指示を出し、俺は自販機を注意深く観察する。

 

 「ん・・・?この自販機、小さいけど側面に凹みが・・・。まさか蹴ったのか・・・?いやでも、そんなので飲み物出てくるかなぁ・・・?」と頭をひねらせていると、古賀が近づいてきた。

 

 「隊長、警備ロボットの映像には有力情報はなかったんですけど、多目的センサーの記録に能力使用後と思われるAIM拡散力場の残滓(ざんし)が認められました。種類としては断定はできませんが、空間移動と電撃使いのようです。」

 

 「はぁ・・・。分かった。他に警備ロボットから何か情報は出てこなかったのか?」と本日3回目のため息をつきながら古賀に確認をとるが、「いえ、これ以上は何も。強いて言うなら出てきた飲み物は『黒豆サイダー』って事くらいしか。」と言ってきた。

 

 「てことは、やっぱり発電系の能力を使って自販機の制御機能を一時的に奪い、飲み物を出したもののセンサーに感知されたために空間転移を使って警備ロボットから逃げた・・・おおむねこんなところかな。つーかそれならなんで蹴ったんだよ・・・。超能力者級なら自販機のセキュリティくらい簡単に封じ込めるはずなのに・・・。」と頭を抱える。

 

 「まぁ、この自販機は別に壊れてるわけでも無いみたいですし、とりあえずセキュリティをリセットして引き揚げましょう。」と古賀が言ってくる。

 

 「そうだな、念のために今日1日は自販機の横に警備ロボット置いとくか。」

 

 また蹴られて出動するのはごめんだし。

 

 そんなことは微塵も知らない古賀は「そうですね、そうしましょう。」と言い、自販機のセキュリティをリセットする作業を始めた。

 

 俺も1体の警備ロボットを自販機の横での警戒待機モードに設定し、そして残りの2体を所定の位置に戻させ古賀とともにパトロールカーに戻り、出張所へと帰った。昨日の今日ということもあり、常盤台中学と風紀委員第177支部への連絡をするかどうか、帰途の間ずっと悩んだ末に言わないと決めて、報告書だけに留めたのはここだけの話である。

 

 

 そして出張所に着き、しばらく雑務をこなしていたがふと時計を見ると、時刻は午前8:40ごろを指していた。

 

 「うおっ、時間やべえ!古賀、早く学校に行くぞ!」と古賀に声をかける。

 

 しかし古賀は「どうしたんですそんなに慌てて?今日何かありましたっけ?」と不思議そうな顔をしている。

 

 「お前忘れたのか?今日は身体測定の日だろうが!」というと、古賀はしまったという顔になり、「えっ、時間やばいじゃないですか!早くいきましょう!」と我先にと事務室を飛び出していった。

 

 事務室を出ていく直前、俺は振り返り事務室に残る皆に「じゃあちょっと行ってきます!帰りは昼過ぎくらいになると思うので、何かあればすぐに連絡してください!」と言い残して飛び出した。

 

 背中から「行ってらっしゃーい!」と声が聞こえてくる。いつもの出動並みに――いや、それ以上に焦りながらパトロールカーに飛び乗り、自分たちの勤めている学校「公立(第7学区立)柵川中学校」へと急ぐ。

 

 しかし、こういう時に限って様々な不運が重なるものである。

 

 古賀がハンドルを握りながら、「ああくそっ、なんでこんな時に限って道路工事なんか・・・、緊急走行すればすぐなのに・・・!」と言いつつ、時計と前とを交互に見ている。

 

 俺も内心焦りつつも「いや、それはさすがに駄目だし、それにまだ5分ある、このまま行けば・・・!」と言う。

 

 今日の身体測定はうちの学校では午前9時から行われることになっていて、俺はそれに伴う安全管理の監督をしなきゃならないし、古賀に至っては諸々の記録の保管、管理をしなければいけなかった。

 

 「ちくしょー、校長に叱られる未来しか見えないぞ・・・、古賀、もっと飛ばせ!」と古賀に言うと、「いやいや、この道路は40km制限ですよ?警備員たるもの速度違反は駄目ですよ。」と顔を引きつらせながら言ってきたので、「お前は変なところでまじめだな!?」と盛大にツッコんでしまった。

 

 

 しばらくして学校に到着。時計は午前9:12を指していた。確実に遅刻。急いで職員室に向かう。そして職員室のドアを勢いよく開けて、「おはようございます!」と二人同時に入った。そして待ちかねたと言わんばかりに古賀は各担当教員に連れていかれたし、俺はというと安全管理用のタブレット端末を取りに行き―。

 

 「あれ?端末がない?」

 

 端末は忽然と消えていた。

 

 それを見ていた女性教師が「ああ、芝浦センセ、タブレットなら初春(ういはる)ちゃんが持っていきましたよ?」と教えてくれた。

 

 それを聞いた俺はお礼を言いつつ職員室を飛び出し、次に風紀委員室に急いで向かった。

 

 しかし初春飾利(ういはるかざり)はそこにもおらず、どこに行ったものかと探すこと数分。廊下を歩いている初春を見つけた俺は駆け寄り声をかける。

 

 「初春!遅れてすまない!」とまずは謝り頭を下げる。

 

 すると、まるで飴玉を転がすような甘ったるい声が「芝浦先生!もう、遅いですよ!」と、まったくもうと言った感じで、しかしそのあとに「朝から警備員のお仕事があったんですか?」と俺の服装を見ながら聞いてくる。

 

 「ああ、まぁ遅れたのは普通に俺が悪いんだが・・・。ところで、今日の身体測定の安全管理チェックはもうやってくれてたのか?」と俺が聞くと、初春は当たり前ですと言わんばかりの口調で「もう全部終わってますよ。今は校内の見回りをしながら先生の到着を待っていたところです。」と言ってきた。

 

 それに対し俺はもう一度謝りながらタブレットを受け取る。

 

 「なあ初春、お詫びと言ってはなんだが今度何か奢るよ。食べ物でも洋服でも、何でも好きなものをな。だから今日はほんとにごめんなさい。」と初春に言うと、初春はちょっと申し訳なさそうにしながら、「分かりました。もう、次は遅れちゃダメですよ?あ、それと奢ってもらうときは私遠慮しないので覚悟してくださいね。」と最後は笑顔で言われてしまった。やっぱり怒っているんだろうか。

 

 

 初春こと、初春飾利は、この柵川中学の風紀委員であり、そして俺の担当している生徒でもある。どうやら巷では彼女は、それこそ指折りの凄腕ハッカー達の間で「守護神」と呼ばれているらしく、どんなハッキングプログラムや経路、暗号化したプロトコルなどでも絶対に彼女に阻止されてしまうことが由来らしい。その恩恵あってかは分からないが、うちの学校ではPCや端末など全て市販のウイルス対策ソフトは導入しておらず、代わりに風紀委員の初春にそう言った部分の管理は任せてあるのだが今までその「防壁」が突破されたことは一度も無い。(ちなみにアクセスは日に数百件を超える時もある。)

 しかし運動神経などはお世辞にも良いとは言い難く、能力も低能力者の「定温保存」であったりと風紀委員向けとは言えないが、しかし情報処理能力は確かにずば抜けて高く、噂ではその一点突破で風紀委員の試験もパスしたとか何とか。警備員の中にもそこまでのレベルにいる者はなかなかおらず、俺から風紀委員の初春に個人的にサイバー関係の事件等を相談することもままあるのである。ちなみに、初春は黒子と同じ風紀委員第177支部に所属している。(ただ、警備員である俺はなかなか風紀委員の内情までは知る機会が無いため、以前の信号トラブルの際に初春と黒子が同じ支部であることを知ったのである。)

 

 

 とりあえず初春を身体測定へと向かわせ、俺は本来の業務に戻る。校内の見回り、監視カメラのチェック、そして身体測定の安全確保などをしていると、向こうからセミロングヘア―の女子生徒が俺の姿を見つけて手を振ってきた。

 

 「芝浦センセー!初春とは無事会えました?」

 

 

 柵川中学の生徒であり初春と同じクラスで、かつ親友の佐天涙子(さてんるいこ)である。彼女は風紀委員ではないものの、よく風紀委員室にいる初春に会いに来るため、実質的に俺の監督している生徒のような形になっている。彼女は初春と違い、無能力者であり成績も普通であるが、友人想いで優しい心を持ち、持ち前の明るさで場を盛り上げてくれるムードメーカー的な存在である。しかも弟がいるらしく、小さい子の扱いにも慣れているらしい。

 それに好奇心旺盛で、噂話や都市伝説といった類の話を追求することが趣味らしく、またさまざまな厄介事にも首を突っ込みたがるのでそのうち重大な事件に巻き込まれたりしないか心配ではある。

 

 

 「佐天、どうしてそれを知ってるんだ・・・?」とやや構え気味になりつつ聞いてみる。

 

 「いやぁー、だってさっき初春が『芝浦先生が遅刻してて本当に困りますよ。でも警備員の仕事だったら心配ですけど・・・。』とかって言ってましたしー。」と佐天。

 

 ん?今さりげなく初春が心配してたって言わなかった?とは思ったものの、考えすぎかと思いつつ「そ、そうか、初春には申し訳ないことをしたなぁ・・・。って、佐天は身体測定に行かなくていいのか?」と聞くと、「だって私たちのクラスは10時からですし。」と佐天が答えた。

 

 今は9:40を回ったところだった。「そうか、なら教室に戻っていなさい。初春もたぶんいるだろうからな。」と諭す。

 

 しかし佐天は「えー、でも芝浦センセー独りぼっちで寂しいんじゃないんですか~?」とニヤニヤしながら言ってきた。

 

 俺はそれに対し「ほう、確かに一人よりも二人のほうが仕事の効率も上がるよなぁ・・・?」と言いつつ佐天のほうを見ると、とっさに佐天は「あっ、ちょっと用事思い出したんで教室に帰りまぁーす!」と言いつつ小走りで行ってしまった。

 

 

 「まったく・・・、さて、仕事に戻りますかね。」と校内の見回りを再開する。

 

 その後は特に大きなトラブルが起こることもなく、時間通りに身体測定は終わったのだが、警備担当教員もとい、風紀委員顧問の俺と風紀委員の初春はまだ風紀委員室で一通りのセキュリティチェックや雑務を行っていた。時刻は11:30を回ろうとしており、すでに大半の生徒が昇降口前で級友と談笑したりしていた。本来ならば11時には下校できているはずなので、俺は初春に声をかける。

 

 「初春、あとはこっちでやっとくからもう帰って大丈夫だぞ。」と言うと、「え、でも芝浦先生、まだ半分以上は仕事が残ってますけど・・・。」と言ってきたので、それに対し「何言ってんだ。ここは警備員でもある先生に任せて、思いっきり放課後ライフを満喫して来い。これくらい普段の仕事に比べたらなんてことないさ。」と答える。

 

 「じゃ、じゃあお言葉に甘えて・・・。」と初春は席を立ち、「あ、でも今朝の約束はきちんと守ってくださいね?じゃあ後はよろしくお願いします。」と仕事を引き継ぎ部屋を後にしたのだった。

 

 

 「はいはい、分かってますよっと。さて、それじゃあ一気にやっちゃうか。」と腰を据えたときに再び風紀委員室のドアが開き、「お疲れ様です。芝浦先生。」と古賀が入ってきた。

 両手には缶のカフェオレが2本。

 

 「おう、お疲れ。ん、サンキュ。」

 

 俺は返答しつつカフェオレを受け取り、口をつける。

 

 「あれ?隊長もしかして初春ちゃんの分の仕事もやってあげてるんですか?」と古賀はPCの画面をのぞき込みつつ訪ねてくる。

 

 「まぁな。本来なら今日は11時下校なんだ。教師の俺らが残るならまだしも、あくまでも生徒である初春にそれをさせることはできないだろ。ただでさえ30分も残ってくれていたんだし。」とそれに対し答えつつ、なんとなしに視線を窓の外へとむける。

 

 「いやあ、さすが隊長ともなると違いますねぇ。ま、俺も警備員の一員ですし、手伝っていきますよ。って、隊長聞いてます?」

 

 古賀に声をかけられた俺はハッと我に返り、窓から視線を外しながら「あ、あぁ、助かるよ。」と答えたのだった。

 

 

 ―――窓の外には、舞い上がるスカートの裾、そして、初春の悲鳴が木霊(こだま)しているのだった。




 まずはここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか。是非皆さんの評価・感想などをお聞かせいただけたら幸いです。また、誤っている点などありましたら遠慮なく教えていただけると助かります。
 さて、今回のお話ではアニメ版「とある科学の超電磁砲」第1話の美琴の「チェイサー!」のシーンから、身体測定が終わり涙子が飾利のスカートをめく・・・、「挨拶」をしたシーンまでを書いてみました。なんだかんだ仲のいいあの二人。きっと涙子は飾利のいる風紀委員室に入り浸っているに違いない。とか思いながら書いてみました。
 ちなみに芝浦先生は淡いピンクの水玉模様のパンツなんて見ていませんよ。ええ見ていないはずです。
 次回、第3話「日常と非日常」また読んでくだされば嬉しいです。ではまたいつか。

2018.11.24追記
細かい部分の修正を行いました。

2018.11.25追記
「用語解説」を削除しました。
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