第7学区、第34警備員出張所の活動記録   作:あきとし

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 皆さんこんにちは。前回「守るべきものと護りたいもの」では銀行強盗が発生し、そして涙子を励まし、銀行強盗を絞り上げて最後はみんなが笑顔になったような、そんなお話でした。今回はアニメ第1話~第2話の間のストーリー、より事件の真相に近い部分の情報に芝浦と古賀が触れるお話となります。
 それではお待たせしました。ごゆるりとお楽しみください。


第5話「音楽プレーヤーとスキルアウト」

 翌日、朝礼を済ませた俺たち日勤組は、各々シフトに入り昨日の銀行強盗の報告書やら書類やらをまとめたり、その他の雑務をこなしていた。俺と古賀はというと第7学区警備員本部へと昨日のひったくり犯の持っていたナイフと携帯電話、そして音楽プレーヤーを証拠品として届けることになっていた。

 

 「それじゃあ本部に行ってきます。帰りはお昼前くらいになると思うので、何かあればすぐに連絡してください。」と出張所の皆に言い残し、古賀と共にパトロールカーへと乗り込んだ。

 

 清々しい朝の空気の中、通学している学生たちを横目にパトロールカーを走らせていく。古賀も朝の気持ちいい空気を楽しんでいるのか、今日は珍しく静かだった。

 

 

 第7学区警備員本部はその名の通り、第7学区の中心部にある警備員の本部であり、第7学区内では最大の人員数、車両数、装備数を誇る施設だ。新たに開発された新装備も優先的に配備されており、この建物の中には証拠品解析を専門に行う部署とその設備もあり、そこには最新鋭の解析機器と科学に秀でた警備員の隊員達がいて、昼夜を問わず事件解明の為に証拠品解析にあたっている。

 また、「先進状況救助隊(MAR)」と言われる警備員傘下の救助部隊の部署もあり、様々な救助任務を請け負ったりもしているという。しかしその一方で学園都市統括理事会による影響も大きいらしく、上からの命令によっては隊員一人として現場に行かせられなくなってしまうという噂もあるが、その辺りは本当のところはよく分からないというのが実情である。

 

 

 しばらくして本部の入り口に差し掛かった。本部の周りは高さ5mほどの鉄筋コンクリートで出来た塀で覆われており、その外周は自律型警備ドローンが常にパトロールしている。出入り口はこの正面ゲートと、普段はシャッターで閉じられている出動用の車庫出入口のみである。そして正面ゲートは高さ2mくらいの鋼鉄製のゲートで閉じられており、その上部には2つの監視カメラがある。正面は常に5体の自律型警備ロボットと、2体の自律人型武装警備ロボットが目を光らせており、何とも近付き難い雰囲気を醸し出している。

 

 「いつ来てもものすごい威圧感だよなぁここ・・・。」と俺は毎日ここに出勤している警備員たちの気が知れないといった風に古賀に話しかける。

 

 古賀は「まぁでも、それも仕方ないんじゃないですか?高位能力者からの襲撃も視野に入れたらこうなりますって。」と肩をすくめる。

 

 すると2体の自律型警備ロボットが左右に近づいてきて、機械音声で話しかけてくる。その他の警備ロボットが1mmも動かないあたりが実に不気味である。

 

 「オツカレサマデス。セキュリティカードノテイジヲオネガイシマス。」

 

 俺はそう言われ、セキュリティカードを警備ロボットのセンサー部にかざす。古賀も同様にかざしていた。

 

 「セキュリティカードヲスキャンチュウ・・・ジョウホウショウゴウ・・・ジョウホウノガッチヲカクニンシマシタ。ツヅイテモウマクニンショウヲオコナイマス。センサーブニメヲチカヅケテクダサイ。」

 

 そして俺は言われた通り目をセンサー部に近づける。

 

 「モウマクスキャンヲジッコウチュウ・・・スキャンカンリョウ。ジョウホウショウゴウ・・・ジョウホウノガッチヲカクニンシマシタ。」

 

 古賀も網膜スキャンが終わったようだ。ようやく「俺たち」のスキャンは終わったわけだが、さて次は・・・。

 

 「コレヨリバクハツブツナドノスキャンをオコナイマス。」と警備ロボは言い、パトロールカーの前後、対角線上に広がるとスキャンを開始した。

 

 数秒でスキャンは終わり、1体の警備ロボが近づいてきて「スベテノスキャンヲカンリョウシマシタ。セイシキニシンニュウヲキョカシマス。」と言うと、先ほどまでピクリとも動かなかった他の警備ロボと共に右側に整列し、その直後に鋼鉄製の分厚いゲートがゆっくりと横に開いていく。

 

 

 こうして警備ロボの手厚い歓迎を受けた俺たちは、正式に侵入許可をもらい本部の敷地へと入っていく。敷地内に入って来客用の大型駐車場にパトロールカーを停め、スーツケースを持って本部へと入った。正面入り口から中に入ると、いかにも「お役所」といった雰囲気が漂っており、事務所では警備員の面々がPCに向かったり、書類を広げたりして仕事していた。俺と古賀はそれを横目に、迷うことなく証拠品解析を専門に行う部署に向かう。そして目的地である「証拠品解析室」と書いてある部屋へと向かい、ドアを開け中に入る。

 

 「失礼します。第34出張所の芝浦と古賀です。昨日のひったくり犯から押収した証拠品を届けに来ました。」

 

 

 すると、聞き覚えのある声が俺と古賀の名前を呼んだ。

 

 「あれ、芝浦と古賀じゃん。お前たちも昨日の銀行強盗の関係じゃん?」と特徴的な言い方。

 

 俺はその人の姿を認め、「お疲れ様です、黄泉川(よみかわ)教官。俺たちはその件とはまた別件ですよ。」と見知った女性警備員の名前を呼ぶ。

 

 「もう芝浦、『教官』はやめるじゃん。『先生』って呼ばないと、今度一杯付き合わせるじゃん?」とニヤニヤしながら黄泉川先生。

 

 俺は顔を引きつらせながら「え、遠慮しときます。黄泉川先生・・・。」と答えた。

 

 

 この人の名前は黄泉川愛穂(よみかわあいほ)。第7学区第73活動支部に所属している。とある高校の体育教師で、とても生徒想いな警備員である。ただしかなりの大酒飲み。格闘技能がとても高く、チンピラはおろか強能力者くらいの能力者でさえも「武器」を使わずに制圧してしまうという。(盾などを使ってどつき回して制圧する様子を何人もの警備員が見ているが、ある日一人の警備員が「黄泉川先生、それって完全に武器の扱いでは?」と聞いたら黄泉川先生曰く、「あくまでこれは防具じゃん。だから武器じゃないじゃん?」と言われたらしい。)しかしどんなに凶悪な犯罪者だろうと、子供に対しては絶対に銃を向けないという誇りを持っており、詳細は分からないがどうやら過去に何かあったらしいことが伺える。

 逆に子供のためなら武器を使うことはためらわず、何が何でも相手を制圧し確保してしまう。ちなみにさっき俺が黄泉川先生のことを「教官」と呼んでしまったのは、警備員訓練生時代に1週間だけ特別講師として黄泉川先生に鍛えてもらったことが原因だ。しかしその当時に黄泉川先生の「子供に絶対銃を向けない」という講義を聞いてからは、俺も黄泉川先生に影響されてそのスタイルを取るようになった。それ以来は同じ警備員ということもあり、現場で顔を合わせたりしているうちに仲良くなり、今ではプライベートでも友人同士として交流がある。

 

 

 黄泉川先生は笑顔で「冗談じゃんよ芝浦~、だってお前、前に一緒に呑みに行ったらすぐに顔を真っ赤にして倒れちゃったじゃんよ。」と言ってくる。

 

 俺は若干気まずくなりつつも、さっきから気になっていたことを尋ねてみる。

 

 「そういえば、今日は鉄装(てっそう)先生は一緒じゃないんですか?」

 

 俺がそう聞くと、黄泉川先生は呆れた顔で「鉄装も今日は一緒なんだけど、今はちょっとトイレに籠ってるじゃん。あいつここの雰囲気でお腹痛くなったとか言って、トイレに入ってもう30分も経つじゃん。」と答えた。

 

 なるほど鉄装先生だったらそれも在り得るかもしれないと思いつつ、俺は一人で納得する。

 

 

 鉄装先生こと、鉄装綴里(てっそうつづり)は、黄泉川先生と同じく第73活動支部に所属する警備員である。俺と古賀よりも1年先輩の警備員ではあるが、しかしかなりおっちょこちょいな性格の人で、よく黄泉川先生に怒られているのを見かける。警備員として学生を守る気概と使命感は強いものの、格闘技能や射撃技術などはお世辞にも高いとは言い難く、また修羅場に弱いなど警備員としてはあまり頼りがいが無いとは思う。

 後輩であるはずの俺たちにさえ、時々敬語を使ってしまうような真面目な性格で、後輩である俺から見ても中々に先輩らしからぬ先輩だという印象はあるが、だからといって悪い先輩ではなく、むしろ積極的に俺たちのことを心配してくれるような優しい先輩というのが俺の印象だ。それは学生たちに対しても変わることはなく、警備員として見れば頼りないと言えるが、教師としてみるならとても優しくて真面目で、良い先生だと言える。その実、俺の教師としてのビジョンは鉄装先生から学んだ部分も多い。また黄泉川先生とは長い付き合いらしく、よく一緒に呑みに行ったり、銭湯に行ったりしているらしい。俺も黄泉川先生つながりで知り合った仲であり、よく一緒に焼肉なんかを食べに行っている。(しかしよく食べすぎて動けなくなってしまい、俺が家まで送るところまでがワンセットである。)

 

 

 しかし流石に30分もトイレに籠っているというのは心配である。俺は余計なお世話かもしれないと思いつつも黄泉川先生にトイレを見てきたらどうかと提案する。

 

 「ったく、鉄装のやつは後輩にまで心配かけて・・・、ちょっと待ってるじゃん。」と黄泉川先生は言い残し、女子トイレの方に向かっていった。

 

 そういえば、と俺はまだスーツケースを解析チームに預け忘れていたのを思い出し、スーツケースを預け古賀の元へと戻ってきた。それとタイミングを同じくして黄泉川先生が青い顔をしている鉄装先生を連れて帰ってきた。

 

 「ちょ、ちょっと鉄装先生、大丈夫ですか?かなり顔色が悪いですけど・・・。」と俺は心配する。

 

 鉄装先生は相変わらずお腹を押さえており、とてもでは無いが話せる様子ではなかった。

 

 「とりあえず鉄装先生のためにも本部から出てコンビニでも行きましょう。流石にこれはかわいそうですよ。」と古賀が提案し、俺と黄泉川先生で鉄装先生を駐車場まで連れて行き、お互いに乗ってきたパトロールカーに分乗して本部の敷地を出ることにした。

 

 

 帰りは特に警備ロボのスキャン等はないのだが、相変わらずゆっくり開く鋼鉄製のゲートを見るに、恐らく黄泉川先生の乗っているパトロールカーでは鉄装先生がお腹を押さえながら「早く・・・早くぅ・・・!」と言っているのは容易に想像できた。そして警備員のパトロールカー2台は最寄りのコンビニへと入り、駐車場に車を停めた。その時に鉄装先生が停まったかどうかという瀬戸際でパトロールカーを飛び出し、コンビニのトイレへと駆け込んでいくのが見えた。それを見ていた民間人らが何事かというような感じで驚いていた。

 時計は11時あたりを指しており、黄泉川先生が少し早いが昼食にしようと提案してきたので、3人でコンビニで昼食を買うことにした。今日の昼食を物色していた俺だが、ついでに鉄装先生のためにも何か買おうと思い立ち、スポーツドリンクと暖かいお茶と、タオルハンカチをかごに入れた。その後は自分の昼食と飲み物を購入しパトロールカーへと戻った。既に古賀が先に戻ってパトロールカーのエアコンをつけて車内を冷やしてくれていたので、俺はその中へと入る。

 遅れて黄泉川先生が鉄装先生と共に戻ってきた。俺は二人を自分たちの乗っているパトロールカーへと誘う。鉄装先生はいくらか顔色はよくなったが、先ほどまでの腹痛で体力を消耗しているようで生気はあまり無かった。俺は二人のいる後部座席へと振り返り、鉄装先生へと声をかける。

 

 「鉄装先生、大丈夫ですか?さっきよりは良くなりました?」

 

 俺が声をかけると、鉄装先生は申し訳なさそうにしながら「あ、芝浦君と古賀君、心配かけちゃってごめんね。うん、さっきよりは良くなったから、もう大丈夫だよ。」と説得力のない声で答えた。

 

 俺はそれを聞くと、先ほど購入したタオルハンカチと暖かいお茶を差し出す。

 

 「鉄装先生、まずはこれで冷や汗を拭いてください。体が冷えると余計にお腹が痛くなってきますからね。そしたらゆっくりでいいんでお茶を飲んでください。」

 

 俺がそう言うと鉄装先生は申し訳なさそうにして、目尻に涙を浮かべながらそれを受け取った。

 

 そして俺に向かって「芝浦君ありがとね。本当にありがとう。このお礼は必ずするから。」と言うので、俺はそれに対して「はい、でもお礼っていうならそうですね・・・、鉄装先生に元気になってもらうことが、一番のお礼ですかね。」と優しく答える。

 

 それを聞いた鉄装先生は涙を浮かべながら「芝浦君はほんとに優しいね・・・。ありがとね。」と答えた。

 

 その優しさは鉄装先生から学んだんですけどね。とは口に出さず、「どういたしまして」とだけ答えた。それを見ていた黄泉川先生と古賀が俺に「あれあれ~?お二人さんなんだかいい雰囲気じゃん?」とか、「芝浦隊長ってロリコン教師じゃなくてただの女たらしだったんですね。」とか言ってきたので、古賀に対して一発かましつつ黄泉川先生に「いやぁ、だって女性に優しくするのは当然でしょう?」と答えておいた。

 

 そのやり取りを聞いていた鉄装先生は今度は腹痛ではなく発熱してしまっているようだった。

 

 

 ―そして各々昼食をとっていたが、おもむろに口を開いて、黄泉川先生がこんなことを聞いてきた。

 

 「なぁ、芝浦、お前今日の証拠品の中身、なんだったか教えるじゃん?」

 

 俺は不思議に思いつつも、「えっと、確か携帯用の折り畳みナイフと、携帯電話と音楽プレーヤーですね。」と答える。

 

 それを聞いた黄泉川先生は「やっぱりか・・・。」と何やら考え込んだ後に「芝浦、これはまだ非公式の情報なんだが、ここ最近の犯人は大抵、音楽プレーヤーを持ち歩いてるじゃん。」と話し始める。

 

 俺はその意図するところが分からず、黄泉川先生にさらなる説明を求める。古賀と鉄装先生も真剣な顔でその話に耳を傾けている。黄泉川先生は俺の催促を受け、話を続けた。

 

 「実は、昨日の銀行強盗の犯人も音楽プレーヤーを持っていてな、そしてお前たちのひったくり犯、私たちが知っているだけでも2件じゃん。他にもいろんな事件の証拠品があそこに運ばれてくるわけだが、ここ最近は目立って音楽プレーヤーの数が多くなっているらしいじゃんね。」

 

 そして、黄泉川先生はさらに真剣な表情になり―。

 

 「で、その音楽プレーヤーの中には、全て共通の音楽ファイルがインストールされていたらしいじゃん。ただタイトルも制作者も不明で、そんなものがどうして全ての音楽プレーヤーにインストールされていたのかは分からないが、一つ気になるのはその音楽ファイルを持っているのがスキルアウトの連中か、能力レベルの低い学生たちに限られているって事じゃん。」

 

 それを聞いた俺はふと、銀行強盗の事件を思い出す。そして一つ思い当たったことを口にしてみる。

 

 「でも黄泉川先生、昨日の銀行強盗の犯人、発火能力者でしたけど強能力者くらいだったって聞きましたよ?強度が低いって言ってもそれなら平均的か高いくらいじゃないですかね。」

 

 俺がそう言うと黄泉川先生はこんなことを口にした。

 

 

 「―それが書庫の情報と合致していれば、の話じゃんね。」

 

 その場にいた全員が、お互いに顔を見合わせた。




 まずはここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか。是非皆さんの意見・感想などを教えていただけたら幸いです。また、誤っている点などありましたら遠慮なく教えていただけると助かります。
 さて、今回のお話ではアニメ版「とある科学の超電磁砲」第1話~第2話にかけてのお話を書いてみたので、アニメにはない時間軸のお話になりますね。そして警備員の黄泉川先生と鉄装先生が登場しました。果たして警備員である芝浦からの視点では、この事件はどのように映るのか。次回以降に期待です。
 次回、第6話「書庫の情報と現場の情報」また読んでくだされば嬉しいです。ではまたいつか。

2018.12.05追記
細かい部分の修正を行いました。

2018.12.13追記
一部、脱字の修正を行いました。
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