第7学区、第34警備員出張所の活動記録   作:あきとし

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 皆さんこんにちは。前回「音楽プレーヤーとスキルアウト」では本部に証拠品を届けに行った芝浦と古賀が、黄泉川先生と鉄装先生と出会い、そして黄泉川先生から事件の真相に近い話を聞くところでお話が終わりました。今回もアニメ第1話~第2話の間のストーリーになりますが、どうやら黄泉川先生が大きなヒントを教えてくれるようです。
 それではお待たせしました。ごゆるりとお楽しみください。



第6話「書庫の情報と現場の情報」

 「――それが書庫の情報と合致していれば、の話じゃんね。」

 

 黄泉川先生以外の、俺を含めたその場にいる全員が意味が分からないという風に顔を見合わせた。

 

 

 それもそのはず、「書庫」は学園都市が誇る超高性能なデータベースであり、学園都市にいるすべての人が閲覧できる。「書庫」には学園都市にいる大人から学生までを含めた全ての人の氏名や性別、年齢、生年月日、能力名といった情報はもちろん、所属する学校から学生寮の部屋番号に至るまで全てが記録されている。

 また、ある噂によると学園都市で秘密裏に研究・製造されている秘密兵器なんかの情報もあるらしいが、しかしそういった情報が機密事項になればなるほどアクセスするための権限と許可が厳しくなっていく。そして何より、「書庫の情報は絶対正確である」というのが、学園都市にいる人々の共通認識だ。

 

 

 だからこそ、俺たちは黄泉川先生の言わんとしていることがよく分からなかった。「書庫」の情報と食い違いがある?何かの間違いだろう。そう思った俺は、黄泉川先生に疑問をぶつけてみる。

 

 「黄泉川先生、書庫の情報と食い違いがあるって、そんなことあり得るんですか?」

 

 俺がそう聞くと、黄泉川先生は俺の目を見据えて、「少なくとも、あの銀行強盗は私の知る限りでは食い違っているじゃん。」とあっさりと言われてしまった。

 

 それを聞いた俺はあのひったくり犯のことを思い出していた。確かに発電系能力者ではあったが、見た感じいかにも能力レベルが低くて、ついでに言うとスキルアウトによく居そうな出で立ちをしていたことを今になって認識する。

 

 もしかしたら、あのひったくり犯も・・・。と俺は思いつつ、そのひったくり犯で思い出したもう一つのことを黄泉川先生に聞いてみる。

 

 「黄泉川先生、これは私の思い違いかもしれないんですが、例の音楽プレーヤーを使っていた人たちってなんというか・・・、こう、狂暴になったりしてませんでした?」

 

 俺がそう言うと、黄泉川先生は驚いた顔で「よく知ってるじゃん芝浦。そう、どうやらその音楽ファイルを持っていた人たちは大抵、狂暴になったり犯罪行為をしやすくなったりしているらしいじゃん。どういう理屈や原理なのかは分からないが、普通の犯人とはちょっと違う感じの連中も多いらしいじゃん。」と答えた。

 

 それを聞いた俺は、さらに確信を深めていく。

 

 俺が深刻そうな顔で考え込んでいると、黄泉川先生が今度は明るい声で「まぁそうは言っても、非公式の情報じゃんね。今はまだ分からないことも多い。もしかしたら結局はただの音楽ファイルだったって可能性もあるじゃん。」と重く圧し掛かっていた空気を吹き飛ばすように言うのだった。

 

 

 その後は半分冷めかけている昼食を食べ、俺は鉄装先生にスポーツドリンクを渡して、お互いに自分の所属する警備員施設への帰路についた。そして俺は帰っている間、さっきの話で出てきたキーワードを思い返していた。

 音楽ファイル、情報の食い違い、狂暴化、低レベルの能力者、スキルアウト・・・。俺ははたと思い立ち、古賀に声をかける。

 

 「古賀、ちょっと寄って行ってもらいたいところがあるんだけど。」

 

 

 ―公立柵川中学校。その駐車場にパトロールカーを停め、俺は校舎へと向かう。

 

 古賀が後ろから「芝浦隊長、学校に仕事の忘れ物でもしたんですか?」と聞いてきた。

 

 「ああ、ちょっと風紀委員室に忘れ物をな。」俺はそう答える。

 

 そしてまずは職員室に行き、俺は風紀委員室の鍵を取りに行く。古賀はと言うとやり残していた仕事があったのを思い出したらしく、俺が戻ってくるまでその仕事をしているというので、俺は一人で初春のいる1年生の教室へと向かった。時刻は午後2時過ぎ。ちょうど5時限目の授業の途中だろう。教室の中をのぞくと担任の大圄(だいご)先生が公民の授業をしており、給食後ということもあってか、うつらうつらとしている生徒が何人か見られる。

 俺の姿を見つけた大圄先生が、「ちょっと待っててください」と目で伝えてきたので俺は廊下で授業が終わるのを待つことにした。

 

 

 午後2時半。5時限目が終わり休み時間となった学校の中は、あっという間に生徒たちの喧騒で包まれる。教室から大圄先生が出てきて俺にあいさつを交わす。

 

 「こんにちは芝浦先生。今日はどうされたんですか?」

 

 俺も大圄先生に挨拶すると早速本題を切り出す。

 

 「いえ、ちょっと今調べている事件のことで、風紀委員の初春に伝えたいことがありまして。」

 

 俺がそう言うと、大圄先生は快く「そういうことでしたら。では次の授業は初春だけ別行動ということで、担当の先生にお伝えしておきますね。」と言ってくれたのだった。

 

 俺は大圄先生にお礼を言うと、教室の中で何やら佐天と話している初春に声をかける。

 

 「初春、ちょっといいか?」

 

 俺がそう言うと初春は廊下の方まで出てきて、ついでに言うと佐天も一緒についてきた。

 

 初春は不思議そうな顔で「どうしたんですか芝浦先生?今日は警備員のお仕事じゃないんですか?」と俺の服装を見て聞いてくる。

 

 俺は「今も立派に仕事してるぞ。ついでに言うとその仕事の話で初春に用があってきたんだがな。」と答える。

 

 初春は真剣な顔になり、「わかりました。・・・あれ?でも次の授業はどうするんです?」と最後は頭にはてなマークを浮かべた。

 

 それに対し大圄先生が「ああ、初春さんは次の授業は別行動ってことにしておくから、芝浦先生と行っておいで。」と答える。

 

 しかし、そのやり取りを聞いていた佐天が「え~、初春次の授業いないの~?いいなぁあたしもサボりたいなぁ。」とか言ってきたので、それに対し俺は「こらこら、別に初春はサボりに行くわけじゃないんだぞ。」と答える。

 

 それに便乗するように初春も「そうですよ佐天さん。私は風紀委員なんですから。」と言うのだった。

 

 佐天はちょっとふてくされたような顔をして、「ちぇー、まぁ仕方ないか。頑張ってね初春。次の授業のノート、後で貸したげるから。」と最後は笑顔で初春に答える。

 

 「うぅ・・・、ありがとうございますぅ~。」と初春は佐天に対しお礼を言い、そして大圄先生が「そういうことだから、佐天さんは次の授業、寝ないできちんと受けないとだめだよ?」と言うのだった。

 

 

 そしてお互いに別れ、俺と初春は風紀委員室に向かう。少ししてチャイムが鳴り、6時限目の開始を伝えていた。俺と初春は風紀委員室に入り、そして備え付けの椅子にお互いが向き合うように座り、俺は今日ここに来た本題を切り出す。

 

 「初春、昨日の銀行強盗の関係で話があるんだ。」

 

 俺がそう言うと、初春は真剣な顔で耳を傾けてきた。俺はその様子を確認して話を続ける。

 

 「これはまだ噂程度に過ぎない話なんだが、どうやら最近、ある音楽ファイルが出回っているらしい。そしてその音楽ファイルはここ最近逮捕された犯人の大半が所有していたという話だ。」

 

 俺は一息置き、話を続ける。

 

 「そしてその音楽ファイルは、低レベルな能力者かスキルアウトが主に持っていたらしい。そしてどうやら、その音楽ファイルを使っていた犯人の大半が、書庫にある能力レベルとの食い違いがあるという話だ。」

 

 俺がそう言うと、初春は誰もが思うであろう疑問を投げかけてきた。

 

 「それで、その話と私に何か関係があるんですか?」

 

 

 俺は頷き、話を続ける。そして、今日もっとも伝えたかったことを伝える。

 

 「初春。君には風紀委員として、そして佐天の親友として、佐天を守ってほしいんだ。」

 

 初春はそれを聞き、深刻な表情になる。そしてこう切り出した。

 

 「芝浦先生は・・・、芝浦先生は佐天さんがそんなものを使うって本気で思っているんですか?」

 

 俺は初春の目をまっすぐに見据えて答える。

 

 「そんなこと、思っているわけないじゃないか。」

 

 初春はさらに取り乱して続ける。

 

 「じゃあなんで芝浦先生は私にそんなことを言うんですか!?佐天さんのことを信じているなら、なんでそんなことを・・・!」

 

 俺はそれを聞き、優しい声で答える。

 

 「初春、佐天は君のように風紀委員ではないし、無能力者だ。だからこそ君に守ってほしい。いや、君にしか守れない。だからこそこうしてお願いしておきたいんだよ。」

 

 初春は少し落ち着きを取り戻し、そしてさらなる疑問をぶつけてくる。

 

 「じゃあ、じゃあ私にできることって何があるんですか?」と俯いたまま。

 

 俺は答える。「初春、君には佐天の傍にいてあげて欲しい。もちろん俺もできうる限り警備員として守ってやりたいが、悔しいことにいつだって傍にいてやれるわけじゃない。だからこそ初春にしか頼めないんだよ。」と真剣な声で。

 

 

 初春は顔を上げると、そこには風紀委員としての顔があった。俺はその顔を正面に見据えてさらに続ける。

 

 「佐天は都市伝説だとかそういったものにはかなり鋭い。まぁ、今回のこれが本当に噂なだけで、もしかしたらただの無害な音楽ファイルかもしれない。でも万が一のことも考えると、風紀委員である初春がついていてくれたら俺も安心して事件の捜査に集中できる。一刻も早く事件を解決し、全容を明らかにするためにも協力してほしい。」

 

 そして初春は、凛とした声で「わかりました。だったら私も私にできることを全力でやってみます。」と応える。

 

 それを聞いた俺は次に笑顔で「まぁ、もし助けが必要になったら言ってくれ。俺は警備員である以前に、風紀委員顧問であり、実質的な佐天のもう一人の担任って感じだからな。初春のことは俺が守るよ。」と初春に告げる。

 

 初春は若干顔を緩ませ、「はい、そうなったらとことん頼らせてもらいますね。」と言い返してきた。

 

 そしてその後に、「あ、芝浦先生、『助け』っていうならちょうど今思い出したことがあるんですけど・・・。」と言ってきた。

 

 「ん?何でも言ってみ?」と俺が言うと、初春は「実は、今ものすごく欲しい服があるんですけどお金が無くて・・・。」と答えた。

 

 

 そこで俺はふと思い出した。身体測定の日に遅刻して初春に何でも奢るといったことを。なるほどあの時の約束を今ここで持ち出してきたか。忘れていたなんて口が裂けても言えな―。

 

 「芝浦先生、もしかして忘れてたんじゃないですよね?」と笑顔で初春。鋭い。

 

 「ま、まさか忘れてたわけないじゃないか!あはははは・・・。」と顔を引きつらせながら苦笑い。

 

 「もう・・・、それで芝浦先生、次のお休みっていつですか?」と初春。

 

 俺はシフトを思い出しながら、「んーと、確か明日は非番だったと思う。」と答える。

 

 初春は目を輝かせて「本当ですか!私も明日は風紀委員の仕事がお休みなんですよ!放課後にセブンスミストに一緒に行きましょうそうしましょう!」と言うので、俺はそれを微笑ましく思いながら、「ああ、いいよ。」と答える。

 

 

 かくしてここに、初春との放課後デートの約束が(半ば強引に)取り決められてしまった。古賀が知ったら面倒くさいことになりそうである。

 

 

 そしてその後は初春と音楽ファイルについての意見を交わしたり、風紀委員の資料を見せてもらっているうちに6時限目のチャイムが鳴り、俺と初春は風紀委員室を後にしたのだった。俺は初春を教室まで送り届け、古賀の待っている職員室に向かう。

 

 職員室のドアを開けると、古賀が「あともうちょっとで終わりそうなんで10分くらい待っててもらえますか?」と言ってきたので、俺は廊下に備え付けてある自販機で黒豆サイダーを2本買った。

 

 

 そこで俺は一人で考え込む。昨日のひったくり犯と銀行強盗の共通点と、そして初春や佐天、御坂や白井のことを。―本当に、大丈夫だよな。

 

 

 すると職員室のドアが開き、「すいません芝浦隊長、お待たせしちゃって。」と古賀が声をかけてきた。

 

 俺は「おう、お疲れさん。」と言いつつ黒豆サイダーを手渡す。

 

 「あ、すいません、頂きます。」と古賀は黒豆サイダーを受け取り、そしてそれを飲みながら俺たちは駐車場へと向かった。

 

 

 ちなみにその後の帰路で、俺はうっかり口を滑らせて初春との放課後デートを古賀に聞かれてしまい、それはもうとてつもなくめんどくさいことになったというのはまた別の話である。

 

 

 

 ―総人口230万人の学園都市。科学の粋を集めたこの大都市に産み落とされた、一つの黒い染みが着々と広がっていることに、俺も古賀も気付く由はなかった。




 まずはここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか。是非皆さんの意見・感想などを教えていただけたら幸いです。また、誤っている点などありましたら遠慮なく教えていただけると助かります。
 さて、今回のお話では前回同様、アニメ版「とある科学の超電磁砲」第1話~第2話にかけてのお話となりましたが、芝浦先生と古賀先生はこの事件に今後、どのように立ち向かっていくのでしょうか。警備員といえどもなかなか事件の真相にはたどり着けないのか、それとも・・・?
 次は飾利と芝浦先生が放課後デートするようですよ。放課後デート。ん・・・?デート?果たしてうまくいくのでしょうか。
 次回、第7話「先生と生徒」また読んでくだされば嬉しいです。ではまたいつか。
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