第7学区、第34警備員出張所の活動記録   作:あきとし

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 皆さんこんにちは。前回「書庫の情報と現場の情報」では芝浦先生が黄泉川先生に「音楽ファイル」についての話を聞き、そして飾利に「佐天を守ってほしい」とお願いしていましたね。今回は一応アニメの方の時間軸では第2話冒頭~美琴と黒子がプール掃除をしているシーンまでのお話となります。果たして「放課後デート」はうまくいくのでしょうか。
 それではお待たせしました。ごゆるりとお楽しみください。


第7話「先生と生徒」

 翌日。シフト終わり直前になってその通報は入ってきた。いつものように自動音声アナウンスが流れる。

 

 「第7学区、エリアH、2198番横断歩道付近の路地裏にて激しい閃光を確認したとの市民からの通報あり。負傷者は居ない模様。被害状況の確認の為に出動してください。」

 

 「だーっ!あとちょっとだったのにー!」時計を睨んでいた鈴木が机に突っ伏す。

 

 シフト終わりまであと15分というところ。本当にあとちょっとのところだったのである。なんてタイミングだとは思ったものの、通報が入った以上は仕方がない。

 

 「はぁ・・・、鈴木、行くぞ!」

 

 重たい腰を気力のみで持ち上げた林と鈴木は、いつものようにパトロールカーに飛び乗り現場に向かっていった。今日は芝浦と古賀は非番のため、代わりに林と鈴木がその分を埋めているのである。今日は特にこれと言って大きな事案もなかったため、残っていた仕事を片付け終えていた出張所の面々にはこの通報は痛かった。

 

 

 ―しばらくして現場に到着した林と鈴木はその路地裏へと入っていく。そして二人して絶句した。それもそのはず、「激しい閃光」の残した爪痕は、それはそれは酷いものだったのである。大きく抉れて焼け焦げたアスファルト、溶けた建物の外壁、立ち込める有機溶剤のような匂い。

 しかし林はそんな中で、一部だけ無事なアスファルトに目を留めた。

 

 「ん?何でここのアスファルトだけ無事なんだ?」

 

 不自然なまでに綺麗な状態のアスファルトを見つめ、腕組みをして考え込む。果たしてこんな能力を使える能力者がいるのだろうか。するとさっきから、現場検証用の小型AIM拡散力場検出器を持ってウロウロしていた鈴木が声をかけてくる。

 

 「林副分隊長、今回もあの『おてんば娘』の仕業みたいですよ・・・。」

 

 検出器の判定結果は「電撃使い」。それも超能力者級の。となるとこの有様を作り出した人物はこの学園都市には一人しかいない。林は頭を抱える。本当に頭が痛くなってきそうだった。

 

 「はぁ・・・、まったくどうしようもないな。それで、もう一人のほうはどうなんだ?」

 

 少なくともここには二人以上いたと仮定して林は鈴木に質問する。

 

 しかし鈴木は、「あれ、おっかしいな。全然測定できないですよ。」と林に言う。

 

 林は鈴木から検出器を受け取り、そして測定するための設定を行う。しかし―。

 

 「あれ、本当だ。なんだこれ?壊れちまってるのか?」

 

 検出器の画面には「unknown」の文字。しかしこの検出器も全ての能力を検出できるわけではないと言うのは訓練で身をもって知っているので、独力での現場検証を諦め、現場の封鎖と確保に切り替えた。警備員に支給されている、「立入禁止区域」と書かれた黄色いテープでまずは現場を封鎖し、次いで警備ロボットをその前に1体配置して林は本部に連絡を取る。

 

 「こちら第34出張所の林です。先ほど通報を受けた2198番横断歩道の路地裏で現場検証をしていたのですが、どうにも妙な反応を検出したので、本部から解析チームをこちらに向かわせてくれませんか?」

 

 本部の隊員は「妙な反応ってなんなんですか?検出器の故障というわけではなく?」と言ってきた。

 

 それもそうだろうな。と思いつつ林は答える。

 

 「はい、えっと・・・、画面には「unknown」って表示されてます。AIM拡散力場は微弱ながらに観測されているようですが、種類までは断定できないようです。」

 

 それを聞いた本部の隊員は、無線の向こうで何やら話した後に「わかりました。直ちに解析チームを向かわせます。既に現場を封鎖している場合はそのままお帰りになって結構です。」と何やら慌てた様子で言ってきた。

 

 林は不思議に思いながらも、「了解しました。では我々はこれで引き揚げます。後でそちらに検出器のデータを転送しておきます。」と答え、鈴木と共に出張所に帰るのだった。

 

 

 ―この事について林から相談の電話を受けていた芝浦は、林にアドバイスをしていた。

 

 「うん、確かにあの検出器は利便性は高いけど、全部の能力を判定できるわけじゃないし、それに精度もそんなに高くはないからね。本部の解析チームが来てくれたんなら、あとはデータを本部に転送して任せればいいと思うよ。それから、例の『おてんば娘』には俺の方から注意しておくから。」

 

 「はい、わかりました。お願いします。お休みだったのにすみませんでした。相談に乗っていただいてありがとうございます。」

 

 「大丈夫大丈夫。また何かあればいつでも連絡してくれ。」

 

 「はい。お疲れ様でした。失礼します。」

 

 

 芝浦は電話を切り、そして時計を見る。16:30。初春とは17時に「Joseph’s(ジョセフ)」というファミレスで待ち合わせをしている。俺はその店には行った事があまりないのだが、どうやら初春と佐天はよく、御坂や白井と共に行っている行きつけの店らしい。これなら余裕をもって行けそうだ。そう思っていると再び電話が鳴る。相手は―「古賀」。俺は嫌な予感を感じつつも、電話に出る。

 

 「・・・もしもし?」

 

 「あ、芝浦隊長、今日は初春ちゃんと『放課後デート』の日ですよね?」

 

 やっぱりか。電話の向こうでニヤけた顔をしているのが容易に想像できる。

 

 「それがどうしたってんだ?お前には関係ないことだろう。」

 

 すると古賀が、「いえいえ、ちょっと私から隊長にささやかな『アドバイス』をしてあげようかと思いまして。」

 

 完全に馬鹿にしてるなこれは・・・。とは思いつつも、昨日の今日で忘れろというのもさすがに無理はあるだろう。俺は古賀を適当にあしらいつつ、今日のデートプランについて思考を巡らせていた。

 

 そして10分ほど電話をし、切る直前に古賀が「自分の生徒に手を出したら駄目ですよ~。」とか笑いながら言ってきたが、今はそんなことを気にしている場合ではない。時刻は16:40近く。俺は適当に返事をしてから電話を切る。

 

 「えっと、まずは銀行でお金をおろしてそれから・・・、ああクソッ、古賀の奴きちんと待ち合わせの時間伝えたはずだよな?なんであのタイミングで電話してくるんだよっ!」と俺は準備を急ぐ。

 

 ナビによると俺の家からJoseph’sまではバイクで最短15分、残り20分弱ということを考えると、とても銀行でお金をおろしてる余裕などない。仕方なく俺は、最後の手段を取ることにした。

 

 「・・・あ、もしもし?初春か?すまないが、ちょっと警備員の関係で電話をしててな、待ち合わせの時間に間に合いそうにないんだ。」

 

 俺は携帯で初春に連絡を取る。しかし、次に聞こえたのは意外な返答だった。

 

 「えっと、芝浦先生ごめんなさい。実は今、御坂さんの学校の学生寮に遊びに来てて、私もちょっと間に合いそうにないんですよ。あ、でももう向かいますので、先にジョセフに向かっててください。」と言うのだった。

 

 それを聞いた俺は若干腑抜けた顔になってしまったが、しかしいくら中学生とはいえ女性を待たせるわけにはいけないと思いなおし、準備を急ぎつつ初春に返事をする。

 

 「そうか、分かったよ。それじゃあこっちはこっちで先に向かってるから、道中気を付けて来るんだぞ。」

 

 「はい、ありがとうございます。なるべく早く行きますね。」と初春が答える。

 

 

 そして俺は電話を切り、準備を進めていく。まずは部屋着から私服に着替える。私服と言っても普段はバイクを移動手段としているため、プロテクター入りのジャケットを半袖Tシャツの上から羽織り、下は無難にジーパンという何とも平凡な服装だ。さらにバイク用のレッグポーチを着け、そこに携帯電話と財布、特殊警棒と手錠をしまう。セキュリティカードは警備員として一番なくしたら困るもののため、ジャケットにあるベルクロで留められる胸ポケットに入れておく。そして白いジェットヘル(初春用)をリュックに入れ、同色のフルフェイスヘルメットを手に家を出る。

 そして車庫に駐車してある某ハヤブサのようなスポーツバイクにまたがり、指紋認証を行う。指を触れると、バイクのAI音声が起動する。

 

 「指紋認証・・・照合を確認。おかえりなさい芝浦さん。エンジン正常、タイヤの空気圧は適正値。ガソリン残量は80%。前後ブレーキによるタイヤロックを解除します。Enjoy for you’re Driving!」

 

 そして、「カチンッ」というロック解除の音が鳴るのを確認し、サイドスタンドを蹴り上げてバイクのセルボタンを押し、エンジンを始動する。「ブォンッ」というエンジンの音が鳴ると、再びAIが自己診断を行う。

 

 「エンジン始動。回転数正常。ギアニュートラル。発進準備、完了しました。」

 

 俺はそれを聞き、ギアを入れてまずは銀行へと走り出した。

 

 

 ―財布を潤した俺は、しばらくしてJoseph’sへと到着し、店内へと入る。どうやら初春はまだ来ていないようだ。店員がお冷を持ってきてくれたので、それを飲みながら時間をつぶしていると隣のテーブル席にいる男子高校生らしき3人組の話が聞こえてきた。

 

 「なぁ、お前本当に『幻想御手』使ったのかよ?」

 

 「ああ、あれマジでスゲェぞ。お前も使ってみたらどうだ?」

 

 「うん・・・、ちょっと使ってみようかな。だってそれさえあればもう馬鹿にされなくて済むんでしょ?」

 

 「馬鹿にされないで済むもんじゃねぇよ!チートだぜチート。あれさえあればもうどんな事があってもへっちゃらだぜ!?」

 

 「でもちょっと怖いかな。あまりよく分からないものだし・・・。」

 

 「お前ビビりだなぁ。んなこと言う前にちょっとだけでもいいから試してみろって。」

 

 ―そんな会話を俺はゲームの攻略法か何かだと思って聞き流していたが、しかし次の瞬間、そんなものは吹き飛ばされることとなる。

 

 「―まぁでも、その『音楽を聴いて能力のレベルが上がる』なら楽なもんだよね。」

 

 俺は誤って手に持っていたコップを落としかける。かろうじて落とさなかったものの、しかし今聞いた言葉と黄泉川先生から聞いた話が共通点を作り出す。「その音楽を聴いて能力のレベルが上がる」、「音楽ファイルを使っていた犯人の大半が『書庫』にある能力レベルと食い違いがある」―。俺は席を立ち、その男子高校生たちのもとへと歩みより、そして声をかける。

 

 「君たち、ちょっと今の話、詳しく聞かせてもらえるかな?」

 

 俺がそう言うと、大人であることに加えてこんな話を聞いてくるのは「そういう類」の人間だと勘付いたのだろう。

 

 男子高校生たちは「なんでもないですよ先生。俺たちはこの後予定があるんで、これで。」とそそくさと立ち去ってしまった。

 

 

 確証がない以上は無理やり引き留めるわけにはいかなかった。俺は頭の中に様々な思考を巡らせながら再び席へと戻る。やはりあの音楽ファイルは存在するのだろうか・・・。はたまた、全く別のものなのか・・・。依然として分からない部分は多い。より積極的な捜査が必要なようだ。

 

 

 「いらっしゃいませ。2名様ですか?」

 

 「あ、違います。待ち合わせです。」

 

 ふと、店員と聞き覚えのある声とのやり取りが耳に入る。俺はそれが誰なのかをすぐに察したが、はて、「2名様」?そして俺の予想通り初春が俺の姿を見つけ、こちらに来る。・・・何故か佐天も一緒についてきているわけだが。

 

 「芝浦先生、お待たせしちゃってごめんなさい。」

 

 「おーっす芝浦センセ―!なんか面白そうだったからついてきちゃった。」

 

 初春は申し訳なさそうに、佐天ははにかみながら各々挨拶をしてくる。

 

 「あ、ああ、俺も今来たとこだから大丈夫だよ。ところで・・・。」と俺は初春に返事をしながら佐天の方を見る。

 

 「あ、えっと、その、実は・・・。」

 

 

 ―初春の話によると、遡ること数十分前。どうやら御坂たちの学生寮に遊びに行っていたのは初春だけではなく、佐天もそこにいたというのだ。まぁ、確かに初春が一人でそういったところに遊びに行くのは考えづらいと今になって思い至る。そしてその後に学生寮を出る前に交わしたあの電話。その話を横で聞いていた佐天が無理やりついてきてしまったらしい。

 

 

 「―で、今のこの状況に至る。と。」

 

 一通りの初春の説明を聞いた俺は、すでに初春との「放課後ほのぼのデート」から、初春と佐天との「放課後ハラハラハーレムデート」に移り行く感触を、どうすることもできないまま大きなため息をついた。それを見ていた佐天が喰いついてくる。

 

 「ちょっと芝浦センセ―、なんでため息なんかつくんですか?こぉーんなに可愛い女子中学生たちとデートできるなんて、素直に喜ばなきゃ損ですよ!」

 

 「ちょ、ちょっと佐天さん、あんまり先生を困らせたら駄目ですよぅ。」

 

 初春がわたわたしながら佐天をなだめる。俺は少しばかり財布の中身が心配にはなったものの、しかしこれも可愛い生徒のためだと踏ん切りをつける。

 

 「ったく・・・、来ちまったものは仕方がない、佐天の分まで何か奢ってやるよ。」と俺が言うと、佐天は目を輝かせて、初春は驚いた表情で「やったー!さっすが芝浦センセ―、分かってますねぇ!ふふ~ん何買おっかなぁ~♪」、「えっ、良いんですか!?本当に良いんですか!?芝浦先生のお財布大丈夫ですか!?」と騒いでいる。

 

 俺はそれを微笑ましく思いつつ、「ああ、男に二言はない。それに、生徒は先生のお財布の心配なんかすることないんだぞ。」と初春に応える。

 

 

 ―こうして、当初予定されていた「放課後ほのぼのデート」は、佐天の乱入によって「放課後ハラハラハーレムデート」へと変貌を遂げたのであった。果たしてどうなることやら・・・。先が思いやられる俺であった。




 まずはここまで読んでくださりありがとうございます。いかがだったでしょうか。是非皆さんの意見・感想を教えていただけたら幸いです。また、誤っている点などありましたら遠慮なく教えていただけると助かります。
 さて、今回のお話ではアニメ版「とある科学の超電磁砲」第2話の冒頭~美琴と黒子がプール掃除をしているシーンまでのお話になりますが、まぁこうなりますよね。芝浦先生ドンマイ。しかし男子高校生たちが何やら気になることも話していましたね。「幻想御手」とは何なのか。芝浦先生はどのように動いていくのか。今後の展開に期待です。
 そして次回、いよいよデート本番です。果たして芝浦先生は「放課後ハラハラハーレムデート」を無事終えることができるのか。芝浦先生のお財布の中身は一体どれだけ残るのか。乱入者は本当にこれだけで済むのか(!?)。
 次回、第8話「ハーレム王と小悪魔彼女」また読んでくだされば嬉しいです。ではまたいつか。

2018.11.30追記
細かい部分の修正を行いました。

2018.12.03追記
細かい部分の修正を行いました。
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