東京喰種:re cinderella   作:瀬本製作所 小説部

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僕が彼女達と仲良くしているのは偶然に出会ったから



それは本当だろうか?





彼女達は僕のことをどう思っているのだろうか?




琲世Side

 

 

 

夜中 都内 某クラブ

 

 

 

 

 

僕たちクインクスはナッツクラッカーが出没すると思われるクラブに潜入していた。

 

 

 

 

 

 

 

ナッツクラッカーは20代ほどの女性をバイトと称し、誘った女性をオークションの商品にさせる調達役だと考えられていた

 

 

 

 

 

それで六月くんがナッツクラッカーに話しかけ、そのバイトという人間が取引されているオークションに行くことができた。

 

 

 

 

 

 

 

これで捜査が進むことができたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はあることを考えていた

 

 

 

 

 

 

 

不知くんと話していた時に感じたことだ

 

 

 

 

 

 

 

 

『もしサッサンの記憶が戻ったら、俺たちのことを忘れるのか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は20年間の記憶を失っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしその記憶を思い出したら

 

 

 

 

 

 

今まで2年間のことが消えるのではないかと考えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

今の僕は辛いこともあるが

 

 

 

 

 

 

クインクスの子達やアキラさん、有馬さんなどいろんな人たちと出会えてとても嬉しく感じている

 

 

 

 

 

 

 

 

もし記憶が戻ってしまったらーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ハイセ)は死ぬのかなーーー

 

 

 

 

ナッツクラッカーの誘いに乗ることができ、嬉しくクラブで踊っていた不知くん達を見守っていた、僕。

しばらく不知くんたちを見ていると...

 

(...ん?)

 

踊る不知くんたちの近くに見覚えのある女性がこっそりと現れた。

 

(あの子、どこかで見たような...?)

 

僕は目を細め、その人をじっと見ていると....

 

「....!」

 

その女性と目が合った瞬間、僕は思わずハッと驚き、目をそらしてしまった。

その目が合ってしまった人は卯月ちゃんと同じ所属事務所にいるアイドルでもあり、僕の知り合いだ。

特徴はショートカットの白髪で黒の目の子。

今ここで彼女と会うだなんて予想外だ。

 

「ちょっと、そこのお姉さん?」

 

彼女はは何か企んでいるような笑いをしながら僕に近づいてきた。

 

「うちと話さん?」

 

「い、いや..わ、私には....少し用事が...」

 

彼女は僕の耳元に小さく「まぁまぁ、少しでもええから」と囁き、僕の手を取り、クラブの奥にある誰もいない廊下に連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「---なんだ、それで佐々木は女装してるんだね」

 

「うん...まさかここで周子ちゃんに会うだなんて...」

 

事情を話すと周子ちゃんは納得してくれた。

彼女の名前は塩見周子(しおみしゅうこ)

346プロでアイドル活動をしており、僕より1つ年下の子だ。

 

「そうだねー、最近佐々木と会ってなかったけど、久しぶりに会った姿が女装ってなんなの?」

 

「いやぁ...仕事だからね」

 

「仕事って、佐々木が働いているとこは喰種を倒すところやろ」

 

周子ちゃんはそう言うと目を細めて笑った。

僕は周子ちゃんの連絡先は知らないが、奏ちゃんと同じくよくばったりと会うことがある。例えば街中で歩いていたら周子ちゃんに見つかってしまって、昼食を奢らされたりとか...

 

「佐々木のそのメイク、明らかに楓さんを意識したでしょ?」

 

「これは...楓さんに手伝ってもらったんだ」

 

「楓さんに?それってまじ?」

 

「うん、一応僕一人でもできるけど、あの人は僕を女装させるのが嫌いじゃないらしい」

 

楓さんの自宅に上がってコーヒーを頂いたあと、楓さんは僕の女装を手伝ってくれた。

やはり女性だからかなのかメイクの手入れはうまく、僕を女性らしく仕上げてくれた。

 

「もし僕が一人で女装を仕上げたら、多分楓さんぽくなるよ」

 

「楓さんぽくなるかー。あーでも佐々木は楓さんとは1センチ負けてるし、今の佐々木は似非楓さんやな」

 

「こらこら、周子ちゃん...」

 

周子ちゃんの言っていることは確かに事実なのだが、少々からかっているように聞こえる。

 

「それで...周子ちゃんはどうしてここのクラブに?」

 

「今日暇だったから久しぶりにクラブでぶらりとしていたんだ。まさか佐々木が女装していて思わず笑っちゃったよ」

 

赤の他人なら僕を女性と見てくれるだろうが、周子ちゃんのように僕を知っている人が見たら驚くか笑うか、それとも引かれるかもしれない。

 

「....それで佐々木がここにいる理由が、確か喰種がいるからでいいんだよね?」

 

「うん、今ここに僕が追っている喰種が潜んでいるからね」

 

僕たちクインクス班と同じく捜査している鈴屋班はナッツクラッカーを追っている。ただその喰種を追いかけるのではなく、囮捜査という形で女装をし、その喰種に近づこういうことだ。最初はナッツクラッカーに近づけれるかと心の隅に不安が少しあったのだが、お酒を飲んだ六月くんが酔った勢いでナッツクラッカーに話しかけ、ついにはお誘いに乗ることができたのだ。

 

「その喰種の特徴はフードをかぶっていて、マスクをしている女性なんだけど....」

 

「あーその人ならあたしも誘われたよ」

 

「....え?」

 

僕は周子ちゃんの言葉に耳を疑った。

 

「ほ、本当なの!?」

 

「うん、少し話しかけられたけど、あたしはアイドルだしお金は間に合ってるから断ったよ」

 

「そ、それは良かった...」

 

周子ちゃんがナッツクラッカーの誘いを断ったことに僕は胸をなでおろした。

 

「もし誘いに乗ったら喰われるの?」

 

「いや、あくまで推測だけどおそらくオークションで商品をして売られる」

 

「商品?それって人身売買?」

 

「まぁ、そうなるね」

 

「ふーん、喰種ってよくわからん生き物やな」

 

現在、ナッツクラッカーは喰種達による人間の売買を目的としたオークションの商品の調達を担当しているのではないかと上層部の見方でもあり、もしそのオークションの場所が特定できれば、高レートの喰種を駆逐することができる。

 

(....それにしても本当に良かった)

 

ナッツクラッカーに誘われるのが僕たちクインクスの役目なのだが、まさかナッツクラッカーが周子ちゃんを誘うなんて思わなかった。周子ちゃんがそのオークションの商品にならなかったことに僕は安心をした。

 

「あの....周子ちゃん?」

 

「んー?」

 

「僕が今こうして女装をしていることは内緒ね?」

 

「そんなこと言われると、シューコちゃんは広めたくなるなー」

 

周子ちゃんはヘヘヘッと悪巧みを抱いている顔で僕を見た。

 

「そ、それだけはやめてほしいよ...!」

 

「冗談冗談、流石に広めはしないよ」

 

周子ちゃんはフレデリカさんや志希ちゃんのように自由奔放な人を扱うのは疲れないが、だからと言って本当に疲れないかと言われると疲れる。

 

「そういや、この前に奏とまた言い合ってたんだよね?」

 

「え?どうして?」

 

「女の勘というやつだよ。あの時の奏を見ていたらすぐにわかった。いつも佐々木と奏は仲悪いんもんね」

 

「...本は譲れないからね」

 

前にも話したが周子ちゃんは本のことで険悪な空気を作る僕と奏ちゃんをなだめる役でもある。

 

「それと、凛もなぜか苛立ちを見せたよ」

 

「え?凛ちゃんも?」

 

「おそらく佐々木が来たという情報を耳にして会えなくてイライラしたと思うよ。あの感じだったら間違いなく次会ったら殴られるわ」

 

「あ....そうなんだね....」

 

周子ちゃんの話を耳にした僕は少し肩を落としてしまった。

凛ちゃんは優しい子なのだが、怒ると怖い子でもある。

凛ちゃんの攻撃は体の芯にまでくるほど痛い。

 

「まったく、佐々木は女たらしやん」

 

「女たらしって...!それはないよ!」

 

気分を落としていた僕は周子ちゃんの言葉を耳にした瞬間、

そんな僕を姿を見た周子ちゃんは「冗談、冗談」とハハっと笑った。

 

「もう、あたしは佐々木のことは女たらしとか考えてへんから安心してよ」

 

「だ、だといいんけど...」

 

僕をからかって言っていると思うが、周子ちゃんの言葉に妙に安心ができない。

 

「そういえば佐々木」

 

「ん?」

 

「髪染めへんの?」

 

「髪?」

 

「そう、前までは髪は真っ白だったじゃん?今はだんだんと黒くなってるよね」

 

周子ちゃんの言う通り、僕の髪はだんだんと上から黒く染まりつつある。

 

「あー、染めるのってお金がかかるからやらないよ...」

 

「お金かかる?そんなことないよ。薬局とかスーパーで安く買ってできるし、佐々木なら簡単にできるはずだけど...」

 

周子ちゃんはそういうと、どこか納得がいかない顔をした。彼女がそう答えるには僕はわかっていた。

僕はわざと口を濁してしまったのだからだ。

たしかに周子ちゃんの言う通り、そのまま髪を染めればいいのだが、そもそもどうして髪が白くなったのかはわからない。

 

 

 

 

 

 

 

おそらく消えてしまった20年間の記憶のどこかに何かあったとはずだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐々木、あたし前から思ったことやけど....」

 

「ん?」

 

「佐々木って卯月ちゃんとかシューコちゃんとかめっちゃ有名なアイドルと知り合ってるじゃん?」

 

「うん、そうだけど...?」

 

「それで何か変に思わない?」

 

「変?変って何が?」

 

「ほら、普通なら一度会っただけで仲良くなる?」

 

「....確かにそうだね」

 

普通ならありえない。

本来なら一度出会って急に仲良くなるなんてドラマや漫画の世界みたいなのだが、僕の場合は現実に起きている。

 

「佐々木は別にCCG繋がりで卯月ちゃんや未央ちゃんに会ったわけじゃないし、前から会ってたわけではないじゃん?それでどうして佐々木はうちのアイドルとすぐに仲良くなれるの?」

 

「......」

 

周子ちゃんの言葉に僕は口を閉ざしてしまった。

返す言葉がすぐに思いつかなかった。

しばらく考えた末、僕は「....わからないなぁ」と周子ちゃんに答えを出した。

 

「なんもない?それってほんと?」

 

周子ちゃんは疑うような目つきで僕を見る。

 

「僕にはわからない...どうして卯月ちゃんや凛ちゃんがそこまで僕に積極的に話しかけるのか...周子ちゃんは何かわかるかな?」

 

「あたしは普通に佐々木と話してて楽しいよ。だけど他の子たちについては本人に聞いた方が確実に早いと思うよ」

 

「そうだよね....」

 

以前から卯月ちゃんや未央ちゃんと話しててどこか違和感を感じたことがある。卯月ちゃんは僕と別れる時、どこか悲しそうな顔をしたり、未央ちゃんや凛ちゃんもどこかぎこちない笑顔になることもあった。何度も聞こうとしたけど、全て聞きそびれてしまった。

 

「あたしは別にそんなに深くは考えないけど、卯月ちゃんが佐々木に対して結構好意を抱いてるのは間違いないよ」

 

「....え?」

 

少し気を落としていた僕は周子ちゃんの最後に言った言葉に、気が動転してしまった。

 

「う、卯月ちゃんが好意を抱いてる...?」

 

「あ〜れ?なんだろうね、その態度〜?」

 

周子ちゃんは少々動揺する僕を見て、からかうような目つきでじっと見つける。

 

「い、いや...恥ずかしがっていないって...」

 

「シューコちゃんにはお見通しかなー?」

 

やはり隠しきれなかった。

 

「そんで、文香ちゃんのことはどう思う?」

 

「....え?文香さん?」

 

「そう、佐々木って文香ちゃんとは結構仲良いじゃん」

 

「....まぁ、そうだね」

 

文香さんとは本のことで話が盛り上がるし、どこか共通する話題を持っている。

さすがに奏ちゃんのようにお互い譲り合えない関係ではないけど.....

 

「文香さんは容姿も美しいし、綺麗な人と思うよ?」

 

「容姿?どこがいいの?もしかしておっぱ」

 

「さすがにそんなところじゃないよ...!文香さんの容姿で綺麗なのは目かな......特に前髪で隠れた青い目はとても美しいと思うよ」

 

文香さんは卯月ちゃんと比べると美しさが目に入る。あの静かさと青い瞳がいつも僕の心をハッとさせる。

 

「それで、文香ちゃんのこと好き?」

 

「...え?」

 

周子ちゃんの言葉に少し固まった。

でもそれは卯月ちゃんほど動揺した気持ちではない。

 

「恋愛というか....友達としては好きかな....?」

 

「...ふーん」

 

周子ちゃんはどこか納得がいっていない感じで答えてた。

 

「...どうしたの周子ちゃん?」

 

「いや、別にー。あ、それよりドリンクを一杯おごってくれない?」

 

「え?お、奢る?」

 

先ほどの態度から急にハキハキとした態度となり、がらりと変わったため戸惑ってしまった。何度も拒否するが、周子ちゃんは「喉乾いたーん♪」と僕の肩にくっつくき、離れさせない。結局抵抗して数分後、僕は周子ちゃんに負けてしまい一杯奢ることになった。クラブで飲むドリンクは値段が高く、周子ちゃんが選んだものは明らか意図的選んだと思えないほどほかのやつより高いものだった。

 

 

 

 

 

 

その後僕は周子ちゃんと別れ、不知くん達と合流し、シャトーへと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

シャトーへと戻った僕は、後日上層部に報告するため書類を作成をしていたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

周子ちゃんが話していたことが頭から離れなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が卯月ちゃんたちと出会ったのは偶然なんだろうか?

 

 

 

 

 

 

もしくは初めから仕組まれたことなのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや

 

 

 

 

 

 

あまり考えてはダメだ

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達と出会ったのはただの偶然だ

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かが仕組んだ出来事なんて考えたくもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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