迷宮再走:もしくはTS幼女化■■■RTA   作:wind

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 初投稿イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)

(言うほどRTA要素は)ないです…。


迷宮再走

 

 

 

 

 

 

 

”便利屋”ヒューゴはその日も、いつもと同じ酒場で飲んでいた。

 

 

 

いつもの席。

いつもの面子。

いつものつまみ。

 

 

俺はいつもこの鴉の止まり木亭で酒を飲み、情報を集めている。

酒場は冒険者たちの吹き溜まり。

今日も皆飽きもせず、迷宮の話題を話し続けている。

 

 

新しい迷宮が出来ただの。

面倒な敵が出て来るようになっただの。

迷宮のボスが誰かに仕留められただの。

あるいは、話題の冒険者が死んだだの。

 

 

「聞いたか?例の宝剣使い、死んだってよ。」

「おう、聞いたぜ。パーティ全員、行方不明なんだろ?」

「全滅したんなら宝剣が遺されてるかもしれねぇ、ってパッチの野郎が張り切ってたぜ。」

「んだよ、もうみんな知ってんのかよ…。」

 

 

宝剣使い。

来歴不明、出身地不明の冒険者。

最近売り出し中だった、鴉の止まり木亭期待のホープ。

 

 

だが期待の新星がそのまま消えるなど、珍しくもないことだ。

ただ新人が死んだだけ。

これも所詮は、珍しくもない普段の話題に過ぎない。

ありふれた話題、良くあることだ。

同じ酒場を使う仲であっても、こんなことで気を落とすなぞ馬鹿らしい。

 

 

「…っち。」

 

 

酒が切れた。

さっきエールを注文しているにも関わらず、まだ届かない。

 

 

「おい、メイファ!酒はまだか!」

「おいおい、今日は随分とペースが早いなヒューゴ。」

「…ザック。ちょうどいいとこに来たな。」

 

 

絡んできた飲み仲間から木のコップを奪い、一息に飲み干す。

マズい。

 

 

「…相変わらず、むやみに度数高いもん飲みやがって。」

「人の酒奪うだけじゃなく、趣味にまでケチつけんのか?」

「ふん、ナクタの火酒なんざ飲んでるのはお前ぐらいじゃねえか。」

「おうおう、さてはもう酔ってんな?…例の新人か?」

「…そんなんじゃねぇよ。」

 

 

実際、そう深い関わりがあったわけでもないのだ。

新人の頃、ちょっと関わったことがあっただけだ。

あとはこっちが勝手に目を掛けていただけのこと。

向こうからすりゃ、ただの酔っぱらいだったろう。

 

 

「…っち。酒取ってくる!」

「おう、そういうことなら飲め飲め。ついでに俺の火酒も持ってこい!」

「わあったよ!」

 

 

 

注文が二重に来ても嫌なので、注文を承った給仕のメイファを探す。

いつまで経っても酒が来ないので、こっちから取りに行くのだ。

今は酒場も、併設の探索者ギルドも暇な時間帯のはずだ。

アイツは何処でサボっているのやら。

 

 

「あん?」

 

 

酒場に居なかったのでギルドの方を見やると、カウンターで諍いの気配。

メイファの緑髪が見える。カウンター越しに子供と言い合いをしている。

 

 

「おい、メイ…」

 

「ですから!探索者は危険な職業なんです!あなたみたいな子供をギルドに迎えることは出来ません!」

「そこをなんとか!ギルドに入れないと迷宮に行けないでしょう?どうしても、迷宮に行きたいんだ!」

 

「登録希望?こんな子供がか?」

「ん?」

 

 

声に気づき、勢い良く振り返った子供が、俺にぶつかる。

身長は俺の胸程度しかない。

腕も細っこく、掌にも豆や修練の跡はなし。

…見るからにただの子供だ。髪はここじゃあ珍しい黒だが、目立つ点はそれぐらい。

鍛えてるようにも見えないし、探索者に向いているとはとても思えない。

 

 

「嬢ちゃん。探索者は遊びじゃねーんだ。ここに来るとしても、もっと大きくなってからにしな。」

「ヒューゴさん!」

「よう、メイファ。酒をくれ。」

 

「俺の頭越しに会話するの止めてくれ!それに、子供扱いもだ。俺は探索者だよ!迷宮に行ったことだってある。」

「もう、またそんなを…!この前は拾ったギルドカードまで持ってきてたし、流石に怒るよ!」

「あれは拾ったもんじゃない…!」

 

 

子供とメイファの言い合いは続く。

だが拾ったギルドカードだと?

 

 

ギルドカードは探索者にとって命の次に大事な、自身を証明するための魔道具だ。

ギルドへ登録後、見習いを卒業してから交付される高級品。

探索者の魔力とリンクされており、迷宮踏破や魔物討伐の実績もこれで管理される。

どんなに酔っぱらってもこれを手放すバカはいないし、そもそも当人にしか使えない代物だ。盗むヤツもいない。

 

 

「…おい、嬢ちゃん。ギルドカードだと?何処で手に入れた。」

「手に入れたっていうか…元々俺のって言うか…。」

 

 

見せられたギルドカード。

そこに刻まれた名前に、思わずカードをひったくる。

 

 

 

 

 

「おいお前、これ…。このカードは…。」

 

 

子供が持っていたギルドカードは、件の宝剣使いのものだった。

 

迷宮に行った、という本人の弁が本当なら、そこで拾ったものだろう。

迷宮での落とし物は、迷宮の再構築に伴い再配置される。

偶然浅い階層に配置された遺品を、この子供が拾ったのだろう。

迷宮での拾得物ならば、自分のものと主張することに何の問題もない。

 

そして、そのカードは既に探索者とのリンクが切れていた。

それはつまり―――――――その探索者の死亡を意味する。

 

 

「というか嬢ちゃんはないだろ、言って良いことと悪いことがある。俺は…!」

「………そうかい。

 なら、探索者らしく扱ってやるよ。着いてきな。」

「ちょ、ちょっとヒューゴさん!?流石に手荒な真似は…!」

「そんなんじゃねぇ。裏庭、見せてやるだけだ。…酒、持ってくぜ。」

 

 

小銭をカウンターに叩きつけ、積まれた木箱の中から酒瓶を一本取り出す。

普段なら店主にどやされる振る舞いだが、今は無性に酒が飲みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どこまで行く気だよ。それに、俺のカード…。」

「すぐそこだ。ギルドの裏。」

「裏って確か、花畑になってたよな?」

「ああ。そうだよ。」

 

 

ギルドの裏庭。

そこは色とりどりの花が植えられ、年中何かしらの花が咲いてる。

花々の中心部には、石碑。

周囲にはいくつかのベンチがある。

 

俺はその中の一つに座り、酒瓶の王冠を外す。

 

 

「座れよ。」

「座ったら、返してくれんのかよ?」

「おう。考えてやるよ。」

「ほんとかよ…。」

 

 

 

「お前は花畑って呼んだけどよ。あの石碑、何か分かるか?」

「周りに供え物とかあるし、神様でも祀ってるんじゃないのか。」

「違うな、全然違う。

 あれはな、死んだ探索者の墓なんだ。

 探索者ってのは死と隣り合わせの職業だ。いつ死んだっておかしくない。

 そしてパーティの仲間が居ても、死体を持って帰る余裕なんざない。墓には何も入れられねぇ。ましてやパーティが全滅した日には、死亡の確認すら出来ず、ただ粛々と酒場の名簿から消されてそれきりだ。

 ろくなもんじゃねぇ。

 人間の死に方じゃねぇよな…。

 …。

 だからさ、せめて同業の俺たちぐらいは弔ってやろうって、この墓は作られたんだ。

 そんで墓に入れるもんがねぇなら、せめて好物でも供えてやろうって酒やらつまみやら、皆置いていく。」

 

 

酒を煽る。

半分残ったそれを、嬢ちゃんへと渡す。

 

 

「飲め。」

「えっと、俺まだ酒は…。」

「そうかい。

 実はな、つい最近にも若い探索者が死んだんだ。パーティごと行方知れずさ。

 そいつもな、酒はまだ飲めないーっなんて言って、結局酒の味も知らず、逝っちまった。

 ………あいつは、俺よりも若くて実力もあった。ここの期待の新星、なんて呼ばれててよ。

 ドンドンと出世していった。

 強いヤツだったよ。すげぇヤツだった。

 俺は、アイツと一緒に飲める日を楽しみにしていたんだ…。

 きっとその頃にゃあヤツは俺より強くなっててよ、昔の貸しで良い酒でも奢らせてやろう、なんて考えてた。

 だが、ヤツは死んじまった。

 そのギルドカードの持ち主だよ。

 そいつの魔力リンクが切れてるってことは、ヤツはもうこの世にいないってことなんだ。

 …。

 ヤツの代わりに、その酒、飲んでやっちゃあくれねぇか…。」

 

「ヒューゴ…。」

 

 

俺は、石碑を見つめ続ける。

横から、ちゃぽんという水音。

 

 

「…苦い!」

 

 

「だろう?いや、実はその酒、俺も好きじゃないんだよ。」

「なんだよ、それ!」

「なんでも年を取ると美味さが分かる、らしいぜ?死んだ先輩の受け売りだけどよ。

 なぁ、嬢ちゃん。せめてもう少し、待つわけにはいかないのか。

 その酒の味が分かるようになるまで。もっと大きく、強くなるまで。

 冒険に憧れるヤツ、宝を求めるヤツ、名誉に焦がれるヤツ。

 色んなヤツがこの街には来る。でもな…この街から無事帰れるヤツは、驚くほど少ない。

 皆死ぬんだ。

 死体すら残さず。

 なぁ、そう生き急ぐこともないだろう?

 命を粗末にするなよ。

 若い奴が死んでくってのはさ、結構堪えるんだよ…。なぁ、頼むよ。」

 

 

「…。俺は…。」

 

 

俺は、相手の声色から説得が失敗したことを悟った。

まぁ、所詮は酔っぱらいの戯言だ。そんなもんだろう。

 

ああ、くそ。雨まで降ってきやがった。踏んだり蹴ったり。

 

 

「お前はさ、探索者になりたいんだろ?」

「ああ。迷宮に行きたい。」

「そうかい…。命知らずめ…。」

 

 

懐から、財布を取り出し投げ渡してやる。

どうせ晩飯代くらいは、酒場で鑑定でも請け負ってやれば稼げる。

 

 

「なんのつもりだよ、この金。」

「くれてやる。」

「突然、どういうこった。」

「良いから黙って受け取っとけよ。可愛くない新人だな。

 嬢ちゃん、装備も何も整えてないじゃねぇか。その金で防具の一つでも買ってきな。

 装備整えてりゃ、メイファも邪険にしないはずだ。

 勝手に迷宮に忍び込むよりゃ、ギルドに入った方がナンボかマシだからよ…。」

「ヒューゴ…!」

「この金は俺からじゃねぇぞ。

 ここに眠る、探索者たちとヤツからの金だ。

 いい加減、この墓も満員だろうからな…。奴らも、これ以上住人が増えて欲しくはないだろ…。」

 

 

 

「ったく。雨に降られるたぁついてねぇ。俺はもう帰るぞ…。」

 

 

 

言って、立ち上がる。

言うべきことは言った。

後はどうするしろ、嬢ちゃんが決めることだ。

ああ、くそ。

これも全部火酒の所為だ。

らしくもないことをしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

鴉の止まり木亭に戻ると、メイファがぎょっとした目でこちら見る。

 

 

「ちょっと、ヒューゴさんどうしたの!?それにあの子は?」

「構うな、俺は泣き上戸なんだよ。嬢ちゃんは…まぁ、言うべきことは言ったさ。

 酔ったから、俺は寝る!」

「まだ夕方だよ?」

 

 

メイファを振り切り、酒場の上の宿屋へと歩を進める。

今はただ、ひたすらに寝たい気分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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翌日。

 

 

防具を外し、倒れるように寝て、目覚めたら朝だった。

頭がガンガンと痛む。

間違いなく、火酒の所為だ。

毎度あんなものを飲むザックの気が知れない。

 

 

「…おーう、メイファ…朝飯…。」

「おはよう、ヒューゴさん。いつもの席どーぞ。あの子ももう来てるよ。」

「あん…?」

 

 

あの子…?

はて、誰の事か…。

ちょくちょく他のパーティに混ざって探索しているため、二日酔いで鈍る頭では候補が絞り切れない。

 

 

いつも座る隅の席を見ると、そこにはザックと昨日の嬢ちゃんが居た。

嬢ちゃんの手には、明らかに身の丈に合っていない両手剣。

 

 

「よう、ヒューゴ。お前も案外、面倒見の良いとこあんじゃねーか。」

「おはよう、ヒューゴさん!おかげさまで、そこそこ良い剣が買えました!」

 

 

 

防具買えっつっただろーがバカ!

 

 

 

 

こうして、嬢ちゃんの探索一日目は、買った剣をどうにか返品することから始まることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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◆次回予告 兼 真面目な方のあらすじ。

 

 

 

「腕力強化!脚力強化!機動加味!」

 

「出た!ヒューゴさんのマジックコンボだ!流石ッすよヒューゴさん!」

 

「(ただの支援(バフ)魔法(マジック)なんだがな…)」

 

"便利屋”ヒューゴはひょんなことから新米幼女冒険者とパーティを組んだ。

そして援護のために支援魔法をかけたところ、幼女の特異体質により効果倍増!

スーパーゴリラ幼女が誕生し、モンスターを一蹴する!

しかも幼女はそれをヒューゴのおかげだと言い、全力でよいしょする!

 

訂正しても聞かない幼女!下がる評判!痛む胃!

そして幼女に隠された恐るべき秘密!迫る魔の手!

 

次回「迷宮探索二人旅~初級編~」はそのうち書きます。

 

 




 


最終的に雌堕ち幼女が一転攻勢に出て逆レになるから。(予言)

まぁ不定期連載なんだがな…。
続きは気長に待っててほしいからよ…エタるんじゃねぇぞ…。(戒め)

◆雑なネタ使用に不快感を覚えられた方には、謹んでお詫び申し上げます。
 またお手数ですが該当箇所についてのご指摘も頂けましたら幸いです。


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