いつも感想ありがとうございます。
ユーモアある感想、いいですねぇ!私も負けてられないなって思います。
それでは、金曜日の夜にお届け!第七話!
今回の話は、悪徳ポケモンブリーダー相手に金の力で戦う話です。(迫真)ポッチャマ…
いつもの酒場。
いつもの朝食。
いつも座る席。
幾年も続く日々のルーチン。
帰るべき平穏。馴染みのある空間。
しかしそれが、一夜で崩れるときもある。
覆水は盆に返らず、時計の針は決して戻らず。
失ったものを嘆いても、物事は決して解決しない。
「おっはようございます!」
「おう、おはよう嬢ちゃん。ザックの奴は今日忙しいらしくてな、飯食べててくれってよ。」
「あ、そうなんすか。
うーん、せっかくなんで肉追加しようと思ってたんすけど、一人じゃ食べきれるか不安っす。
ヒューゴさんも食べてくれるなら追加するんすけど…。」
「好きに頼みな。」
ざわ…。ざわ…。ひそ…。ひそ…。
嬢ちゃんの登場に、少し酒場がざわつく。
「…。」
「どしたんすか、ヒューゴさん。なんか渋い顔になってますけど。」
「いや…むしろ嬢ちゃんは気にならないのか?すごく注目されてるぞ、俺たち。」
「まーそりゃ酒場の壁にデカデカと名前張られてますからね。そりゃそうもなるんじゃないっす?」
「この席、静かにもの食べれるから気に入ってたんだがなぁ…。」
鴉の止まり木亭の掲示板には、先日俺が書き上げた報告書を抜粋したものが張りつけられ、一夜茸迷宮の緊急探索依頼が大々的に告知されている。
特殊分岐ボスの宝物は特異なものが多く、低ランク迷宮産のものであっても十分に有用な事例が多い。
そのため新たな特殊分岐が見つかると、このように情報収集用の緊急探索依頼が発行されるのだ。
一部の宝物は魔法学的に貴重な資料になるらしく、研究者がギルドに収集依頼を出している。
彼らは日々、迷宮宝物を解析しリバースエンジニアリングを行い、社会に還元する。
風の噂では、迷宮の罠を引っぺがして持ってくことすらあるんだとか。
「しかし、嬢ちゃんは本気でアレで通すつもりなのか?」
「アレと言いますと?」
「…名前だよ。「ああああ」って偽名にしてももっとマシなのあるだろ。
普通に公文書とかでも、あの名前で呼ばれることになるんだぞ。
せっかく臨時収入もあったんだ、再発行しようぜ?」
「別にいいっすよ~再発行高いし~。」
「…むぅ。」
無理強いは出来ない。
本名を使えない事情があるのだろうし。
でも、もうちょっとこう、それっぽいのというか…。
ちらりと掲示板を見る。
特殊分岐発見者、「ヒューゴと愉快な仲間たち」所属「ああああ・カッコ・カリ」。
あほみたいな一文。
注目されまくってる原因の半分はこれだろう。
ちなみにパーティ名は俺が昔使っていたものだ。
俺は普段、体調不良やら帰省やらで欠員が出たパーティや、開錠・バフ・魔法攻撃要員を臨時で追加したいパーティの助っ人として活動している。
そのため本所属のパーティは存在していないのだが、時たま他のパーティであぶれた連中と一緒に探索に出ることがあった。あの名前はそうした野良パーティ用。悪ノリの産物とも言う。まさかあの名前で掲示されるとは。
元々はランク査定の実績加算のため、嬢ちゃんの個人名で報告するつもりだったのだが、嬢ちゃん本人の希望によりパーティ名も併記しての掲示となった。
その結果がこれだよ。
思わず、頭を抱える。
「はぁー……。」
「どうしたんすか、急にデカいため息ついて。」
「そういう嬢ちゃんは、悩みとかなさそうな顔だな。」
「失礼な!今この瞬間も、特殊分岐発見報奨金で何買おうか悩んでるくらいっすよ!?」
「へいへい、そりゃ深刻な悩みなこって。中々の額なんだろ?悩まず使っちまえよ。」
「他人事っすね。ヒューゴさんも一緒に考えましょうよ~。
パーティでの成果なんだから、お金はヒューゴさんと半々っすよ?」
「いらんいらん、新人に金を恵まれるほど落ちぶれちゃいない。好きに使え。」
実際、一夜茸迷宮で俺ほぼ仕事してないしな。
応援した後、『治癒促進』かけて連れ帰ったくらいだ。
この上個人名で報告した特殊分岐の報奨金まで貰ったら、パーティメンバーの屑呼ばわりを否定できなくなる。
というか、報告書に正確な情報を記載した所為で周りからの視線が痛い。
時々「アイツ応援しかしてなくね?」とか「ヒモか何か?」みたいな呟きが聞こえる。
ち、違うんだ…。
あの場は何か手を出しちゃいけない雰囲気があったんだ…。
だが辞退する俺に対し、嬢ちゃんは非常にドヤっとした顔で酒場の壁をさし示した。
「ヒューゴさん、あそこに書いてあるの、読めます?」
「あの掲示か?ちゃんと嬢ちゃん個人名で報告しといたぞ?」
「違うっす!もっと上っす!」
「…迷宮パーティの鉄則?」
「そうっす!鉄則第四条!迷宮の、探索成果は、等分に!リピートアフタミー!」
「むむ…。」
「リピート!アフター!!ミー!!!」
「…迷宮の、探索成果は、等分に…。」
「声が小さいっす!」
「…分かった、分かったよ!受けとりゃ良いんだろ!」
「はい!…昨日のアレ、ちょっと感動したんすから。
俺にだって、少しは格好つけさせてくださいっす。」
「出世払いでいいっつたろうによ…。」
「まぁまぁ、受け取ってくださいっす。今出しますね。」
ごしゃり。
ざわ…。ざわ…。ひそ…。ひそ…。
テーブルに置かれた硬貨袋の重量感に、酒場がざわつく。
「…多くね?」
「実は俺たちが入手した赤と青のキノコも、ポルチーニ男爵っていう流浪のキノコ学者が買い取ってくれたっす。
装備品云々というより、未知の菌類としてとても価値があったのだそうっす。良くわからないっすけど!」
金額を聞くと、正直引くほど高値だった。
大丈夫?それ本当はヤバイ金だったりしない?
というか流浪のキノコ学者とは一体。
「何?あの学者先生が、ボス宝物を買い取ってくれるって?」
「聞いたか!貴重さについて、あの男爵がお墨付き出したってよ!」
「こうしちゃいられねぇ!今すぐ一夜茸迷宮の探索準備だ!」
ええ…。(困惑)
酒場がまた騒がしくなり、メイファの下に報告書の複製閲覧を求める人が群がる。
ポルチーニ男爵は意外と有名人だった。
聞き耳を立てた結果、菌類への研究功績が認められて爵位を賜ったガチめの偉人らしい。
しかも未だ権威や功績に奢ることなく、フィールドワークを欠かさない学者の鑑なんだとか。
その関係でギルドにも採取系等依頼を出しており、探索者にも名が知られていたようだ。
…にしたって、この金額はビビる。
「おいおいおい、マジかよ…。」
「いやぁ、うっはうはっすね!」
「むしろビビるわ…。というか、嬢ちゃんも悩まず欲しいもの買っちゃって大丈夫なんじゃないか?」
「いや~でも高い買い物なもんでね~。」
「これだけあって足りないってことはないだろ…。というかこんな大金怖いんで是非使ってください…。」
「うーん、それじゃあ買っちゃいますかね!次のパーティメンバー!」
ざわ…。ざわ…。ざわ…!ざわ…!
嬢ちゃんの爆弾発言に、酒場がまた一段と騒がしくなる!
こんな注目されてる中で、何言い出してるのお前!?
「やはり人身売買か。」「弱みにつけこんだんだろうな。」
「あのお嬢さんの探索者登録に、便利屋が一枚噛んでるってそれマジ?」
「らしいぞ。」「俺、お嬢さんをかどわかして外に連れてくの見たわ。」
「うわあ…、これは有罪ですね。」
「あんな記号的な偽名つけられる幼女可哀想…。」
「その上、さっきの聞いたか?探索成果は等分らしいぞ。」
「マジか。」「報告書見ても、アイツ只応援してるだけだわ。」
「ろくに仕事もせず、上前はねてるのか…。」
「人としてマズイですよ!」「そんな情けない真似恥ずかしくないの?」
「人間の屑…。」「ヒモ…。」「女衒…。」「ロリコン…。」
「やめろ!冤罪だ!風評被害だ!」
誰が女衒だ!
特にロリコンは何の関係もない言いがかりだ!!
…でも仕事せず応援しかしてなかったのは事実なんだよなぁ!!!
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「ヒューゴさん、召喚獣ってご存知です?」
「ああ。…それならそうと早く言え!誤解を招くだろうが!ついでに買うって言うな!」
「いやぁ、それがあながち誤解でもないんすよねぇ…。とりあえず場所変えましょう。」
なんだなんだ、何を企んでるんだコイツ。
というか、パーティメンバーが欲しいなら普通に酒場で誘えよ。
実績を挙げた今なら、普通にパーティ組めるだろうに…。
「もう、鈍いっすね。それじゃあヒューゴさんと二人旅じゃなくなっちゃうじゃないっすか。」
「なんで俺と一緒の前提なんだよ…独立しろよ…。」
「それじゃダメなんすよねぇ…。」
「はぁ、まぁいい。召喚契約用の魔法用品でも買いに行くのか?」
召喚獣というのは、人間と契約を結んだ魔物の総称だ。
迷宮の魔物は迷宮製の幻影であり敵だが、あれは複製品だからだ。
地上にいる魔物は獣と区別され、人間種と普通に交易やら何やらを行っている。
まぁ知性があるなら交渉も商売も出来るからな。
召喚獣もそうした交渉の一巻であり、傭兵契約みたいなものだ。
契約魔法用の魔法用品、マスターカードを通して魔物を呼び出し働いてもらい、報酬を渡す。
マスターカードとは言っても、魔物側への強制力は薄く、呼び出し拒否も自由な帰還も可能だ。
魔力を使うのは召喚もしくは送還の瞬間なので、迷宮探索中手伝い続けてもらうこともできる。
ちなみにマスターカードは中々の高級かつ貴重品。買うのを躊躇するのも分かる。
「ええ。そうっす。実は売ってる場所に目星がついてましてね…っす。」
「そうか。だが、契約してくれる魔物に心当たりはあるのか?」
「そこは金を積んで、首を縦に振らせるっす。」
「言い方!」
「…っと、そこ曲がってください。目的地っす。」
「ん?小さいが、工房か?」
「ああ。俺の仕事場だ。渡した名刺に書いてあっただろう。」
「お前…!」
「どうもっす、帽子の旦那。」
そこには、例のピアスと腕輪を買った帽子野郎が居た。
あれ、お前が作ってたのか?
お前その見た目で職人かよ!
「…お前も他の客と同じことを言うんだな。」
「まぁ帽子の旦那、見た目は一流の戦士って感じっすからね。」
「ふん、まぁいい。腕輪の修理は終わってるぞ。」
「腕輪の修理?嬢ちゃん、いつの間に…。」
「昨日の夜っす。ヒューゴさんは戻ってすぐ寝ちゃったっすけど、その後男爵と交渉してました。
そこでお金が出来たんで、腕輪を修理して貰おうと持ち込んだっす。」
「お前からのプレゼントだから大切にしたいんだとよ。まったく、お熱いねぇ。」
「それで旦那。例の情報は?」
「あるよ。」
「…?」
例の情報?
マスターカード売ってる店の話か?
高級品とは言っても、魔法用品店行けば普通に売ってると思うんだが。
「いや。アングラ市場にはな、まことしやかにある噂が流れてた。」
「『召喚獣を売ってくれる店がある』って噂っす。」
「曰く、金さえ払えば、どんな召喚獣とも必ず契約できる店。」
「曰く、そこの召喚獣は従順で購入者の言うことに良く従う。」
「特殊マスターカードの力らしいっすけど。」
「もちろん、そんな手法聞いたことがない。」
「誰もが、与太話の類だと思っていたっす。」
「だが最近、獅子心騎士団が召喚契約を扱う店にガサ入れに入るって話が出てきた。」
「おかしいっすよね。あの騎士団が出張るなんて、相当な案件っす。
本来契約を仲介するだけの店で、言ってしまえば見合いをセッティングするだけっすよ?」
「そこで皆、あの噂を思い出した。」
「俺は、その調査を頼んでたっす。」
「そして見つけた。手品のタネは分からんが、実在するぞ。」
地図を渡される。
中央市場の外れ。移転前は行政施設が集中していた辺りに赤丸。
「…嬢ちゃん、まさかとは思うが…。」
「ヒューゴさん!召喚獣買いに行きましょう!!」
「どう考えても非合法だろ!いい加減にしろ!
獅子心騎士団が動いてるんだろ!?どうしてそう危ない橋を渡らにゃならん!」
「おいおい、落ち着けよ。」
「そうっすよ。俺たちはただ、金を払って契約の仲介を依頼するだけっす。何の違法性があると言うんす?」
「ちなみにその店には常時、十数体の魔物が居るんだとよ?」
「選り取り見取りっすよ、ヒューゴさん!」
「なんてことを…!どう考えても監禁だろうが!んな奴隷商売やってるような店に…!」
「いや。」
「そこが奇妙なとこっす。」
「喋れる魔物であっても、その店への不満を漏らすことはないんだとさ。」
「魔物達は自分から契約を持ち掛け、店の客に従う道を選ぶらしいっす。」
「建前上は、召喚獣になりたい魔物のために宿泊場所を貸してる店、らしいぞ。」
「これもう分かんねぇな…っす。いやぁ、不思議な話っすね…。」
「建前って言ってんじゃん…。お前らも分かってんだろ?」
「そうだよ。だが客に法的な問題があるわけじゃないことは事実だ。」
「ヒューゴさん、逆に考えるんす。俺たちが買わなかった場合、魔物さんはどうなると思うっす?」
「そりゃ、その内獅子心騎士団のガサ入れで…。」
「救出されて解放されるかもな?」
「でも、その前に悪い商人たちに何処かに運ばれちゃうかもしれないっす。」
「だが。今、客が金を払えば?」
「少なくとも一体の魔物さんが救われるっす!」
「…ええい、分かった!
だが、そういうことなら俺の金も持ってけ!一体でも多くの魔物を買ってこい!」
「おいおい、そんなことして面倒みきれるのか?」
「ヒューゴさん、優しさは美徳っすけど限度がありますっす。」
「召喚獣として需要がある魔物なんだろ!?なら自分で食い扶持稼いでもらえばいいだろ!」
「!」
「!」
その瞬間、嬢ちゃんに電流が走る!
カッと目を見開き、こちらを凝視!
ついでに帽子野郎も、驚きに身を固くしている!
「な、なんだよ…!」
「ヒューゴさん…そういうことでしたか…っす。旦那、追加で資金調達頼めるっすか?」
「ああ。そういうことなら、恐らく話に乗るヤツもいる…!周りに声をかけてみるぜ。」
「…そういうこと?」
「またまた、とぼけちゃってぇ…。
買った魔物に働かせて、自分で稼がせるんでしょう?
つまり、投資っす。自分で自分を買い戻させるなんて、中々思いつけることじゃないっす。」
「商人は在庫がはけて嬉しい、魔物は解放のチャンスが生まれて嬉しい。
そして俺たちは騎士団のおかげで買い叩ける上、利子のリターンが見込める…!
三方得する、絶妙な一手…!」
「流石ヒューゴさんっす!臨時収入に満足せず、それを増やそうと言うんすね!やりますねぇ!」
「圧倒的商才…!発想のスケールが違う…!
流石お嬢さんを使って大量の不労収益を稼ぎだした男!
これが敏腕女衒の実力…!」
「…おう。」
慌ただしく動き出す二人を見送る。
色々と言いたいことはあるが、魔物たちのために飲み込むほかない。
…女衒。女衒かぁ。
女衒とは、若い女性をヤバイ職業に斡旋する人買の一種だ。人身売買の仲介である。
今回は魔物相手だが、正直否定できる要素がない。
どうして…どうしてこんなことに…。
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食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。
あらゆる悪徳、欺瞞、外道と無法が跋扈する迷宮街の暗黒面。
混沌の中、一人の男が、ちゃちな信義とちっぽけな良心で、昏い牢獄に金を蒔く。
鬼と出るか蛇と出るか、一天地六の賽の目に、今いくつもの命が賭けられる。
次回、「一攫千金不労収益:テイク・ァ・リスク・フォー・メガコイン」
ヒューゴ、敢えて火中の栗を拾うか。
どうしてこんなことに…(賢者モード)
俺はただ、金のために危ない橋を渡ってもらいたかったんです。
でもヒューゴさんが無駄に堅実な常識人だったから…しょうがなかった!
あとせっかく異世界ファンタジーだから、奴隷的な話を挟みたかった(†悔い改めて†)
ちなみに投資黙示録編は四話くらいで終わります。週末にももう一話投稿するのでよろしくっす。
今回はあんま語録使えなかったのが悔しいですが、次回は悪徳ポケモントレーダーさんが出るので色々使えそうです。