町内鎖鎌大会で六位のお兄様に転生したおっさんのはなし   作:藤林 雅

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・みんなとの出会いから~ちょっと書いてみようかな → 今回できた作品。

・……おかしくね?

・叢ちゃん もふもふ。



えきすとらすとーりー
私が貴方のなんばー ワン!


―― 村雨 視点

 

 

「さてさて、今日はどうやって過ごそうか」

 

 先日、蛇女の定期試験期間が終了し、生徒たちのテスト採点も終わった。

 

 今日から、二日間の休日である。

 

 という訳もあり、デスクワークで固まった身体を解消するために近所の公園に散歩をしにきたのだ。

 

「録画したドラマやアニメが結構、溜まっているからそれを観ようか……いやいや、街に出てホットドックとかも食いたいなぁ」

 

 ここだけの話、俺はジャンクフードの食べ歩きが好きなのだ。

 

 鳳凰財閥に生を受けた事もあり、屋敷では専属の料理人やメイドの用意してくれた美味しい料理に舌鼓を打っていたが、前世で食べたあのチープな味が忘れられず、たまに無性に食べたくなる時がある。

 

 なので子供の頃、軽い気持ちで間食をとった。コンビニで買った肉まんである。

 

 久方ぶりの味に満足感を得た俺ではあったが、この軽率な行動が、屋敷で一波乱を起こしてしまった。

 

 料理人やメイドたちが半狂乱したのである。

 

「若に美味しい食事を作って差し上げられなかったのは、私の不徳とする所……修行に出ます」

 

「あああ、おぼっちゃまが世俗に塗れたモノをお召し上がりになるなんて、私達の作ったお菓子ではご満足頂けなかったのですね」

 

 慌てて料理長であるコックを止めて、悲しそうに泣くメイドさん達を慰め大変だった。

 

 親父から「お前は当分の間、外での間食禁止」と言われた。……解せぬ部分もあったが、屋敷の人達を蔑ろにしてしまった部分があるのも事実。こうして俺は、ジャンクフードを外で食べる事が出来なくなった。

 

 しかし今は、社会人となり鳳凰財閥からも距離を置くことが出来たので、好きなモノが食べられる。一人暮らしをはじめて一番嬉しかった事である。

 

 でも、あんまりそういった食生活ばかりしていると……どこかで聞きつけたのか、屋敷のメイドさんがデリバリーを持ってきたりする。

 

 以前、職場の蛇女でコンビニ弁当を食べていると屋敷のメイドさんが重箱を持って来て、大変な思いをした事がある。

 

 恥ずかしかったので、メイドさん達にお帰り願うように頼むも、「わ、若が私達をいらないと……」「私達は若に不要なのですか……」とか言って、うるんだ瞳で抗議しだす始末。何よりもそれを見た同僚である鈴音先生の非難するような視線が一番きつかった。

 

 屋敷の皆の気持ちは嬉しいが、二十三にもなっておんぶにだっこじゃ恥ずかしい。過保護なのもほどほどにしてもらいたいものである。

 

 ――そんな事を思い出しながら、公園内を散策していると、目の前に見覚えのある女の子が居た。

 

 月閃女学館の胴衣に身を包み、サイドテールに顔には般若の面。叢ちゃんである。

 

 そして、傍には彼女よりも大きな狼が一匹。と他にも狼が二匹。

 

 三匹とも叢ちゃんの忍犬で大きのが大五郎。後の二匹が小太郎と影郎だ。

 

 出で立ちから忍務帰りなのかなと思いながら、俺は叢ちゃんに声を掛けるのであった。

 

 

 

 

―― 叢 視点

 

 

 忍務帰りにしみる朝日が眩しい。

 

 無事に忍務を終え、大五郎達をねぎらう意味も含め、こうして我は公園へ立ち寄っているのである。

 

「――叢ちゃん。おはよ」

 

 そんな我に声をかけてくる輩――あわわっ! 村雨さんですっ!

 

 こんな朝から村雨さんに出会えるとは思っていませんでした。わ、我は思いもよらない出来事に驚きと恥ずかしさと嬉しさがとまりませんっ!

 

 あああっ! 恥ずかしくはありますが、面を取らねば村雨さんに失礼にあたりますっ! 

 

 醜悪な我の素顔を見ても嫌がらず、「可愛い」と言ってくださる村雨さん……お世辞であっても我にその言葉は、「毒」になる。彼を前にすると腑抜けになってしまいます。……でも、でも最近、斑鳩さん、両備さん、未来ちゃん、飛鳥さん達に村雨さんをめぐる好敵手として受け入れられ、淑女協定なるものに参加させて頂くことになりました。……我にとって村雨さんは大切なその、男性であり、いいい許嫁でもあります。こんな我が女の子でいられるのも村雨さんのおかげだからこの想いは―――

 

「どうしたの? ぼうっとして、頬も赤いように見えるし、ひょっとして熱でもあるの?」

 

 ――むむむむむむむむ、村雨さんが、わ、我の手を、我の手を取って心配そうに見つめてくれています。わ、わ我は――

 

「おっと、どうした大五郎?」

 

 そんな我を見かねたのか大五郎が我と村雨さんの間に割って入ってくれました。ナイスです大五郎。

 

 しかし、大五郎が我に向ける視線にはまるで「しっかりしろご主人」と、言いたげな少々あきれたような雰囲気を感じ取れました。うううぅ。

 

「おっ? もふってほしいのか。ほれほれ」

 

 我の手を離した村雨さんの手の上に顎を乗せ「もふれ」と大五郎が催促しています。

 

 そんな大五郎を嫌がる訳でもなく、村雨さんが大五郎をもふもふします――わ、我も村雨さんもふもふされた――げふんっ、げふんっ!

 

 気を取り直し、朝の早い時間から折角、村雨さんに会えた好機を我は無駄にしたくありません。

 

 思い切って立ち話もなんですからと近くにあるベンチに誘った所、村雨さんは快く了解してくれました。う、嬉しいです。

 

 お互いにベンチに腰掛けると、大五郎は我達の目の前で、伏せをして、小太郎はベンチの上で村雨さんの膝に顎を乗せて横たわり、影狼は我の足元でお座りをし、三匹ともおもいおもいに寛ぎはじめました。

 

 我はそんな中で、村雨さんに差し支えない程度に忍務での事や最近見た漫画やアニメの話をしました。

 

 夢中になり、早口で喋る我を気にするでもなく、村雨さんは時折、頷きながら笑顔を見せてくれます。

 

 嬉しさで舞い上がってついつい話し込んでしまう我でしたが、ふと、今の状況を考えてみました。

 

 休日の朝に愛犬(狼)の散歩をして公園で寛ぐ……他人から見れば、まるで、年季のある、こ、恋人同士とかそのふ、夫婦にみえちゃったりなんかりして……はっ! 我と村雨さんが恋仲とか連れ添った夫婦なんてなんとおこがましい考えなのでしょうか! でもでも、この所謂、リア充的なしゅちゅえーしょんは、まさにそうだと言っても良いハズです! 村雨さんが少しでもそう感じてくれているのであれば、わ、我は我は――

 

「あ~村雨ちゃんみっけ!」

 

 そんなあさましい妄想に耽っていた我でしたが、どこかで聞き覚えのある声を聴いて意識を正常に戻しました。

 

 声の主は、癖ッ毛のある金色の髪に垂れた瞳が愛らしい我と違ってとても可愛らしい女の子。

 

 両備さんの双子の姉である両奈ちゃんの声です。

 

 両奈さんは我達を見つけると、すごい勢いでこちらにやってきって――

 

「へぶぅ!」

 

 村雨さんの顔に身体ごとダイブしたのです。

 

「もぅ! 村雨ちゃんのワンちゃんである両奈ちゃんをほっておいて、よそのワンちゃん達に浮気はだめなのー! ほら~両奈ちゃんを構って、構って~ご主人様~」

 

 なっ! りょ、両奈さん! わ、我の村雨さんをご主人様呼びですかっ!

 

 あああっ! Tシャツにホットパンツという肌が多く見える大胆な服装で、村雨さんにくっつかないでください!

 

 むむむっ、両備さんが「アレを先生に近づけてはダメよ」と言った言葉が我にもわかったような気がします。

 

 って、言いますかさっきからそのわ、我にも負けないおおきな胸をむ、村雨さんの顔に押し付ける行為は、いけません! 斑鳩さんの言葉で言うなら破廉恥です!

 

「りょ、両奈さん! ダメですよっ!」

 

 我は、村雨さんを救出する為、彼の腕を取って両奈さんから強引に引き離しました。

 

「あっ! 村雨先生だ! おはよーございまーすっ!」

 

 が、続いて思いもよらぬ事が起きてしまいました。

 

 両奈さんとはまた違う女の子が、村雨さんの腰にめがけてタックルをかまして飛びついてきたのです。

 

 あぅぅ。また、我の知らない可愛い女の子ですぅ――

 

 

 

―― 村雨 視点

 

 両奈ちゃんに抱き着かれて、叢ちゃんに助けられたと思ったら、今度は死角から腰にタックルを受けてしまい俺は、地面へと倒れてしまった。

 

 俺の腰に纏わりついていたのは、ロングの髪を後ろで二つに分け、両方の側頭部が動物の耳のように外にはねている髪型が特徴的な少女こと俺の勤める蛇女学園の生徒である伊吹だった。

 

 ジョギングでもしていたのだろうか、伊吹はジャージ姿であった。

 

「先生、先生っ! よかったら一緒に遊びませんか!?」

 

 俺の腰に頭をグリグリと押し付ける伊吹。何か、うん。ご主人に構ってほしくて、夢中になるあまり周りをおろそかにして、散歩中に田んぼにおちるようなシベリアンハスキーのように感じてしまう。

 

 が、伊吹は犬っぽくはあるが、現役女子高生だ。

 

「む~伊吹ちゃん! 横取りはダメだよ! 村雨ちゃんは両奈と一緒に遊ぶの!」

 

 俺の腰に抱き着いている伊吹を引き離しながら両奈ちゃんが不満の声をあげる。いや、両奈ちゃんと別に遊ぶ約束はしていないよね?

 

「でも、早い者勝ちって訳じゃないですよねっ?」

 

「「がるるるっ~」」

 

 俺の目の前で両奈ちゃんと伊吹がおでこ同志をくっつけて互いに威嚇を始めた。

 

 さっき伊吹を犬に例えてしまったせいか、彼女とやりあう両奈ちゃんの姿が、両備ちゃんとは逆に何かと俺に懐いてくれている事もあり、少し癖ッ毛のある金髪のイメージから何だかゴールデン・レトリバーのように感じてしまう。

 

「あ、あのそのケンカはだめ……」

 

 両奈ちゃんはともかく、伊吹とは初対面のせいか人見知りを発動してしまった叢ちゃん。一生懸命に二人の間を取り持とうとしているが、オドオドしてしまっている状況ではあまり効果は無い。が、そんな叢ちゃんの優しさに俺の心は和んだが――

 

「ふふん。両奈は、村雨ちゃんと昔から付き合いが長ーいご主人様とペットという信頼関係にあるんだから、最近、ポッと出の伊吹ちゃんとは違うの!」

 

 ――いや、待って。両奈ちゃん何でそんなに得意げに危険な発言をする訳?

 

 たゆんたゆんな胸の前で腕を組み余裕の笑みを浮かべる両奈ちゃん。

 

 確かに両奈ちゃんの姉である両姫と友人関係だったという事もあり、両備ちゃんも含め仲良くして貰っている。

 

 両奈ちゃんは、昔から自身のマゾヒズムを満たすためによく俺を巻き込んで両姫や両備ちゃんをワザと怒らせていたフシがある。

 

 だが、基本的には良い子なので俺もそんな両奈ちゃんを怒るに怒れず、よく両姫と両備ちゃんから甘やかしていると非難を受けていた。

 

 だから怒られ仲間であって、両奈ちゃんが主張するようなご主人様とペットという関係ではない。

 

 俺の中では出来の悪い兄貴分と甘え上手な妹分という関係が正しいと思うのだが。

 

「過ごした時間の長さなんて関係ありません! 私は蛇女の生徒の中でも、特に先生に目をかけて貰っているお気に入りですから!」

 

 両奈ちゃんの発言に反論する伊吹。

 

「……そうなんですか?」

 

「いや、言っていることは間違いないんだが、問題児という事で目をかけてやってくれと学年主任から頼まれているんだ……実は、両奈ちゃんについても伊吹と同様に頼まれたりしているんだけど」

 

 叢ちゃんが俺の耳元で伊吹の発言について真意を聞いてきたので、正直にそう答えた

 

 さらに伊吹に関しては、春花ちゃんからも蛇女を抜ける際に「よろしく」と頼まれた経緯もあり、それとなく目にかけていた。

 

 当初は、明るい元気で真面目な良い生徒という印象だったのだが、いつの間にか懐かれた。

 

「先生というのも大変なんですね」

 

「まあ、何だかんだで困った時は、両備ちゃんや忌夢がフォローしてくれるからそんなに面倒じゃないけどね」

 

 気を遣ってくれる優しい叢ちゃんに俺は大丈夫だと伝える。

 

「……ソウナンデスカ」

 

 あ、あれ? 何か叢ちゃんのご機嫌が急降下してしまったような気がする。

 

「それに畳と愛玩動物は新しいほうが良いっていいますし! 両奈ちゃんは先生に飽きられたかもしれませんよ!」

 

「村雨ちゃんに限ってそんな事ないよ! 両奈の事、いつも可愛がってくれるもん!」

 

「じゃあ、両奈ちゃんと私のどっちが先生のペットとして愛されているか勝負しましょう!」

 

「望むところだよ~! 両奈ちゃん負けないもんね!」

 

「という訳で村雨ちゃん!」

 

「私と両奈ちゃんのどっちが一番か先生に決めてもらいます!」

 

「えっ、あ、うん」

 

 いつもと違う両奈ちゃんと伊吹の迫力に俺はおされてしまいつい頷いてしまった。

 

「それじゃあ、さっそく私、伊吹からいきます!」

 

 伊吹がそう宣言し、身に着けていたジャージを脱ぎだす――そして、その下から胸に「いぶき」と描かれたゼッケンに太ももとヒップラインが強調された情熱の赤ブルマという姿になった。

 

「「反則なの!(です!)」」

 

 伊吹のブルマ体操服の出で立ちに両奈ちゃんと叢ちゃんまでもが抗議の声をあげた。

 

 いや、現役JKのブルマ体操服。実にいいじゃない?

 

「もー村雨ちゃん!」

 

「村雨さんっ! 鼻の下伸ばしちゃダメですっ!」

 

「? 伊吹の恰好何かおかしいですか?」

 

「いや、おかしくないぞ伊吹。ナイス――「村雨さんっ!」ハイ。スミマセン」

 

 叢ちゃんの言葉に俺は委縮する。そうだよな。知り合いが女子高生のブルマ体操服見て鼻の下伸ばしているとか、恥ずかしいもんな。

 

「それじゃあ、センセ! これお願いします!」

 

 伊吹から円盤状のものを渡された。これはフリスビー?

 

 俺が伊吹に視線を向けると彼女は目をキラキラさせながら「はやくはやく」とせがんでいるように見えた。側頭部に生えた癖ッ毛が犬耳のようにピコピコ動いている。要は、これを投げろという事だろうか?

 

「よ、よし。それっ!」

 

 意を決して、俺は渡されたフリスビーを投げた――

 

 

 

 

―― 叢 視点

 

 

 伊吹さんから渡されたフリスビーを村雨さんが投げました。

 

 それと同時に伊吹さんが四つん這いになり、フリスビーを追いかけようとしたその時です。

 

 宙に舞うフリスビーを小太郎と影郎が見事な動きではしッと口でジャンピングキャッチしてしまいました。

 

 二匹は呆然とする我達をよそに村雨さんの傍に駆け寄り、まるで遊んで遊んでと言わんばかりに尻尾をぶんぶんと振っています。

 

「お、よーし、よーしすごいぞ小太郎に影郎」

 

 気を取り直した村雨さんが、小太郎と影郎の頭を撫でてねぎらってくれました。

 

「……う~ズルい! ズルい! 本当は伊吹が村雨先生に褒めて貰うハズだったのに! ワンちゃん達に邪魔されました~!」

 

 伊吹さんが地面に寝転がって手足をジタバタさせながら駄々をこねはじめてしまいました。

 

 へそを曲げてしまった伊吹さんに対して村雨さんもどうしたものかと悩んでいるようです。

 

 そんな様子の村雨さんに対して伊吹さんは地面に寝転がったまま目に涙を浮かべます。

 

「……先生」

 

「な、何だ? 伊吹」

 

 我には出来そうもない可愛らしいうるんだ瞳で伊吹さんは――

 

「そっちのワンちゃん達だけじゃなくて伊吹も撫でて!」

 

 言うが早いか伊吹さんは体操服の上着をめくってお腹を露わにし、村雨さんへお腹を撫でろと強要したのです。

 

「先生が撫でてくれないなら……私、――大きな声でわんわんと泣いちゃいますよっ!」

 

 なななっ、何という脅迫めいた発言でしょうか。村雨さんに乙女の柔肌を触らせるように強要するとはっ! いけません! ソレを村雨さんにやって頂くのは、許嫁である我だけですっ! ――ハッ!? そうではなくてですね!

 

「むむむっ伊吹ちゃんやり手なのっ! 唐突なアクシデントに対しても冷静にご主人様に対して、お腹を撫でさせるという服従の姿勢を見せつつ忠犬ぶりをアピールをするなんて!」

 

 両奈さんは、悔しそうな表情を浮かべています。仰っている内容は我には理解できませんが、乙女の直感と言いましょうか、見た事もない方法で村雨さんにアプローチする伊吹さんに対して、今まで感じた事の無い脅威を感じてしまいます。

 

 そんな我をよそに村雨さんは、何やら苦行に耐える修行僧のような様子を見せながらも、おそるおそると伊吹さんのお腹に手で触れてまさぐ――コホンっ! 優しく撫でます。

 

「きゅう~ん」

 

 伊吹さんは、側頭部の癖ッ毛をパタパタと動かしながら、頬を朱に染めて恍惚の表情を浮かべています。彼女に尻尾があれば、きっとぶんぶん振っているに違いありません。

 

 ――我も、大五郎達のようにこうワンちゃんぽくすれば、村雨さんに甘えられるかも? お、男の方はこすぷれというのが好きだと聞きますし……一考の価値はあるかもしれませんね。

 

「はいはい~次は両奈の番だよ~」

 

 ほどなくして、両奈さんが手をあげてそう宣言しました。

 

 村雨さんはほっと溜息を吐いて伊吹さんから離れてベンチに座ります。 ――何だかものすごく疲れた表情をされています。

 

「じゃあ二番手の両奈いっきま~す」

 

 両奈さんは素早くベンチに座った村雨さんの膝の上に対面で跨って抱き着きます。

 

 そして、我や伊吹さんが止める間もなく――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ぺろんっ と、村雨さんの頬を舌で舐めたのです。

 

「「「は?」」」

 

 村雨さん、伊吹さん。そして、我の三人の声が重なりました。そんな我達を気にせず両奈さんは、ぺろぺろと村雨さんの頬を舐めます。 わ、わわわわわわ我の村雨さんに対してなんてうらやまけしからんことをしているんですかっ!

 

「わんわん! ご主人様っ!」

 

 そして、村雨さんを押し倒して発情したように再び村雨さんの頬を首をぺろぺろと舐める両奈さん。

 

「両奈ちゃん! 反則っ! 反則です!」

 

「もぅ! 何をするの伊吹ちゃんっ!」

 

 伊吹さんが両奈さんを背中から羽交い絞めにして村雨さんから引き剥がそうとしています。

 

 三人がベンチから転がり落ちようとしているのを見て我も思わず飛び出しました。

 

 そして、みんなでくんずほぐれつになりながら、我の視界が暗転しました。

 

「いたたっ……はっ! 皆さん大丈夫ですかっ!」

 

 我が視界を取り戻して目の前に映ったのは目をまわしながら「きゅ~ん」とないて、互い違いにうつぶせで重なっている両奈さんと伊吹さんでした。

 

「む、村雨さんっ! 村雨さんどこですか!?」

 

 村雨さんが見当たらず、我は思わず声をあげました。

 

 その刹那、我の着ている胴衣の腰帯を誰かが、ガシッと握ったのです。思わず、そちらに目を向けると村雨さんの手が伸びていました。

 

 安堵と共に我が、そのまま下に視線を向けると――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――我は、村雨さんの顔に座り込んだ状態である事に気付いたのです。

 

 

 

 

 

 わ、我のお尻が、臀部が村雨さんのお顔にこうどっしりと乗っています。

 

 女性である我が、男性である村雨さんのお顔に――

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャーーー!!」

 

 

 

 

 

 我は羞恥心のあまり、自分でも驚くほど甲高い声をあげてしましました。

 

「お嬢さんこちらへ!」

 

 何が何だか混乱している時に我の腕を引っ張り上げる方が現れました。

 

 それが、婦警さんのものだと気付くのに我は驚きます。

 

「もう大丈夫ですから。市民の方からの通報で、この公園で男性が女性に対して何やら卑猥な行為をしていると連絡を受けましたので急いで駆けつけてきました」

 

「えっ? えっ?」

 

 我は、その言葉に村雨さんにいわれのない容疑がかけられていると理解しました。

 

「大人しくしろっ!」

 

「青空の下で女子高生にわんわんプレイで、パンツルックの金髪美女と後輩妹系美少女とあまつでさえ体操服――しかも、ブルマプレイだとっ! お前、どんだけよっ!」

 

 目の前で村雨さんが男性警官二人に取り押さえられていました。

 

「こら大人しくしなさい!」

 

 大五郎、小太郎と影郎が村雨さんを助けようとしているのが見えましたが、取り押さえている人達と違う男性警官に警棒で牽制されています。

 

 両奈さんも伊吹さんもまだ目をまわしている状態で倒れています。

 

 ここは――ここは、我が、村雨さんを助けなければ。

 

 我は、人見知りではありますが、勇気を出して村雨さんの無実を証明するために声をあげます。

 

「ま、待ってください!」

 

 我の言葉に警官の方々が動きを止めて視線をこちらに向けてくれました。

 

「む、村雨さんは何も悪い事をしていませんっ! ――(忍務で)朝帰りの我に気を遣ってくださったり、そこのベンチで(大五郎達を)可愛がってくれました! そこに両奈さんと伊吹さんが来まして、二人が村雨さんにとってどっちがペットとしてふさわしいかと(いう困った主張をする争いに巻き込まれたと)いう事だけなんです」

 

 し、知らない人達に説明するという我にとっての苦行であり、言葉足らずだとは思いますが、何とか村雨さんの無実は伝わったはずです。

 

「「「「逮捕だっ!」」」」

 

 ですが、わ、我の言葉は通じず、村雨さんは身柄を確保され、警察官の人達に連れていかれました――

 

 

 

 

 

 

 

――春花 視点

 

 

「――もう二度とここに来るんじゃないぞ」

 

「お世話になりました」

 

 未来に頼まれてかけつけた警察署の前で、中年の男性警官と村雨さんが何やら会話をしているのを発見し、私は足を止めた。

 

「まあこちらの誤解があったとはいえ、公衆の場で疑われるような事をしたんだ反省するように」

 

「はい」

 

 警官の言葉に村雨さんは深々と頭を下げる。

 

 

 

 

 村雨さんが警察に逮捕されたと未来から連絡があった時、私はそんなまさかと思った。

 

「春花様っ! お兄ちゃんを助けて!」と焦る未来を私は落ち着くように諭した。

 

 幸いにも未来は斑鳩ちゃん達と行動を共にしていたので、彼女に代わってもらい経緯を説明して貰った。

 

 私は村雨さんのアパートに集まっているみんなの所へと向かい、そこで叢ちゃんに詳しい話を聞く事が出来た。

 

 何にせよ村雨さんが警官に連れていかれたという非常事態に本来、グループのまとめ役であるはずの斑鳩ちゃんや普段、冷静な両備ちゃんさえも落ち着かない様子であった。

 

 村雨さんに迷惑をかけた両奈ちゃんと伊吹ちゃんは、自分たちの仕出かした事にわんわんと泣きごめんなさいと謝っている。そんな二人を飛鳥ちゃんと未来が慰めていた。

 

 私に説明してくれた叢ちゃんも自分の言葉足らずの説明の所為で、村雨さんが大変な目にあっていると涙目ながらに後悔している。

 

 ――ほんと先生は、みんなに愛されている男性なんだなと私は思った。

 

 とりあえず、この場で一番落ち着いている私が、警察に連絡を取り、忍務で伝手のある上役(私のおもちゃ)に話を通して、村雨さんの即時釈放を求めた。

 

 おもちゃのくせに世間体からか、釈放に難色を示したので斑鳩ちゃんと叢ちゃんにの確認をとってから鳳凰財閥と大狼財閥の名をちらつかせると、素直に取引に応じてくれたわ。

 

 そして、今、私が代表して警察署に村雨さんを迎えに来たのである。

 

 警官に挨拶をすませた村雨さんが、私がいることに気付いて、こちらに来る。

 

「春花ちゃん。迷惑をかけてゴメン」

 

 村雨さんの言葉に私は彼が無事であった事に顔をほころばせる。

 

「お疲れ様。村雨さん」

 

 私の言葉に村雨さんは苦笑を浮かべた。

 

「……えっとみんなはどうしているかな」

 

「ふふふ。みんな村雨さんのアパートで帰りを待っているわよ」

 

 私がそう伝えると何故か村雨さんは遠い目をする。「……あの天国で地獄のような日々が再び」とか呟いているけど何の事かしら。

 

「……春花ちゃん。ちょっと喫茶店に寄っていこうか……このまま真っすぐ帰る勇気が俺にはない」

 

 確かにこのままアパートに戻ったら村雨さんは、みんなに心配かけた事で、きっともみくちゃにされるのは確実ね。

 

「村雨さんからのお誘いだもの喜んでお付き合いするわよ」

 

 だから私は、村雨さんを労わることも含めて彼と腕を組む。

 

「は、春花ちゃん!?」

 

 私は胸を彼の腕にわざと優しく押しあてる。男の人はこういうの好きなんでしょ?

 

 まあ、卑猥な視線で下心満載の男性よりもこうして顔を真っ赤にさせて初心な反応を見せてくれる村雨さんの方が私も心やすい。

 

「……ところで村雨さん。私、ひとつだけ聞きたい事があるのだけれどいいかしら?」

 

「聞きたい事って?」

 

「結局のところ村雨さんの好みのワンちゃんはだれになるのかしら?」

 

 私の問いかけに村雨さんは少し考えてから答えてくれた。

 

「ん~ゴールデンやハスキーも可愛いと思うけど。やっぱり素直な柴犬かなぁ」

 

 ――要するに村雨さんのナンバーわんちゃんは、飛鳥ちゃんって事ね。

 

 はぁ。大好きなご主人様の一番じゃなくて、両奈ちゃんも伊吹ちゃんもむくわれないわね。

 

「……過ぎたるは及ばざるが如し。何事もやりすぎずほどほどにって事かしらね」

 

「えっ? 春花ちゃん。突然どうしたの?」

 

「――えいっ♡」

 

「しゅらいむのようにたわわっ!」

 

 罪作りな村雨さんに私は自分の胸をより押し当てることで彼を黙らせたのだった。

 

 

 

おしまい。

 

 

 

 

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