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でも感想は来ない……w
では3話です。どうぞ
「ん……、狭い」
何かに締め付けられるような感覚がして、愛斗は目が覚めた。
その正体は、のどかだ。
「そういえば、のどかは寝相悪いんだった」
幸せそうな寝顔ののどか。
それはいい。問題は愛斗を抱き枕の如く抱き締めていること。
しかもガッチリとホールドがキメられているのでなかなか抜け出せない。
おかげで夢の中では蛇に捕えられて食べられそうだった。
「困ったな…」
いつまでも寝ている訳にはいかないので、上手く身体をくねらせて脱出する。
朝ごはんを済ませ、愛斗とのどかはそれぞれが通う高校へと通学する。
学校の制服を持ってきたのか心配だったが、大きなキャリーケースにバッチリ入っていた。
昼休み、愛斗は佑真と咲太と一緒に理科室を訪ねることになっていた。
「君が噂の1年生?」
「おい、双葉…」
「あ、ごめん。そういうつもりで言ったんじゃない。梓川と国見から君のことを聞かされるから、ついね。気を悪くさせたなら謝るよ」
少し無神経だったと、理央は謝る。
「気にしてないので大丈夫ですよ。それで、なぜ俺なんでしょうか」
愛斗は佑真と咲太から科学部への勧誘を受けた時点から、この疑問を抱いていた。
「それは簡単だよ。君は頭がいい、しかも文理問わず。
そんな君が科学部の活動に力を貸してくれたらかなり活動の幅が広がるんじゃないかと思ったから」
「ありがたいお言葉なんですが、俺が入ると風評被害を受けると思うのでとても迷惑をかけちゃいます」
「それは気にしなくていいぞ。双葉も『変人』ってあだ名付いてるから」
いつも白衣を来ている理央は、『博士』や『変人』といった呼び方をされることがよくある。
まぁ、そう言う咲太もまた、とある噂によってクラスから浮いているわけだが…。
「梓川に言われたくはないね。でも、梓川の言う通りだよ。私はそんなこと気にしないから」
「バイトのある日は参加できないですが…」
「それでかまわない。君が暇な時に来てくれるだけでもありがたい」
どうやら、愛斗が思ってた以上に理央は勧誘に本気らしい。
「分かりました。それなら入部させていただきます」
それなら断る理由は無い。
愛斗は科学部に入部することに決めた。
☆
「可愛いの買えて良かったー!」
昨日約束していたのどかの布団の件で、買い物に来ていた2人。
気に入ったのが買えたらしく、のどかはとても上機嫌だ。
「まさか、僕のベットよりも高いとは……」
のどかとは反対に、テンションが下がっている愛斗。
最近は布団も質の高いものは、お値段がけっこうするらしい。
「これも必要経費と割り切るしかないか…」
「そうよ、そんな小さいこと気にしない気にしない!」
「人のお金だからって高い布団選んだくせに」
「そんなに言うなら、アンタも寝かせてあげるわよ」
「いや、それはいいや」
「あっそ、じゃあ絶対寝かせないから」
どの口が言えたことだろうか。
「のどか、ちょっとこれ持ってて」
「はぁ? あ、ちょっ!!」
何かを見つけたらしく、駆け足でそちらに向かう愛斗。
目線の先には、男二人と女の子が一人。
「もしかして、君一人ぃ?」
「お兄さんたちと遊ぼうよぉ」
「え、えっと……」
いかにもって感じのチャラチャラした輩に絡まれている女の子に、愛斗は見覚えがあった。
というよりか、同じクラスなので見覚えどころか名前も分かる。
「そういうお兄さんたちはナンパですか?」
「あ"?なんだお前は?」
「この子の彼氏ですよ」
「チッ、彼氏持ちかよ。……行くぞ」
捨て台詞も"いかにも"って感じだ。
絵に描いたような輩で、少しおかしく思ってしまう。
「あんなのに絡まれたら、はっきり断らないとめんどくさいよ。次からは気をつけたほうがいいかも。それじゃあ、ばいばい」
「ま、待って!桜島くん!」
彼女の静止も聞かず、その場を離れる愛斗。
「遅いっつの!いつまでこんな重いものをアタシに……って、その子は誰?」
強引に別れたはずの彼女は、愛斗に付いてきていた。
「私は、古賀朋絵です。桜島くんのクラスメイトの…」
「なんで付いてくるのさ。古賀さん」
「ちゃんと…、ちゃんとお礼が言いたいからだよ!」
「お礼なんていいよ。それより、俺と話してるのを他のクラスメイトにでも見られたらどうするのさ」
朋絵はクラスカーストトップのグループに所属しているため、余計に心配になってしまう。
「それは……」
「ちょっと待って、それどういうこと?」
険しい表情をしたのどかが、2人に尋ねる。
「なんでも無いよ。早く帰ろう、のどか」
「アンタは黙ってて!!」
珍しく、のどかが本気で怒っている。
「アタシ、古賀さんと話があるから。愛斗は先に帰ってて」
反論したら殺すと言わんばかりの剣幕で言うのどか。
愛斗は素直に従うしかなかった。
「ついてきて」
そう言って、のどかが朋絵を連れてきたのは近所の公園だ。
「座って」
2人でベンチに腰掛ける。
「古賀さん…だっけ?」
「は、はい。そうです」
ナンパの次は、金髪の女に絡まれるという事態に、朋絵は今日の自分の不運を呪った。
「アタシは愛斗の姉の豊浜のどか。
いきなり質問して悪いけど、もしかして、高校で愛斗の変な噂流れてる?」
「……はい。中学の時の噂が…」
「はぁ…、やっぱりね……。
それ、嘘だから。愛斗はいじめなんて今まで1回もしたことない。
むしろその逆。アイツはいじめられてる子を守ろうとしてた」
中学の頃、愛斗の仲の良かった友達が些細なことでクラスメイトから無視されるようになった。
でも愛斗はいつもと変わらず、その子に接していた。
中学生の時は特に、無視などの嫌がらせはエスカレートしやすい。
その子への嫌がらせも、無視からだんだんいじめへと変化した。
グループチャットで悪口を書かれ、机には落書きされ、終いには家の電話にもいじめっ子たちからの電話が来るようにもなった。
そんな中でも、愛斗はその子への態度を変えることはなかったのだ。
それだけではなく、担任の先生にいじめのことを相談した。
だけど、「本人が先生に直接言わないから」と取り合ってはくれなかった。
いじめが続くようになって、その子はやがて不登校になった。
だから愛斗は部活が終わると毎日、その子の家にその日の授業の内容をまとめたものや連絡物を届けに行くようにした。
その時期くらいから、愛斗は周りから避けられ始めた。
いじめられっ子を庇うということは、周りの流れに逆らうことと同じ。
"多数が正義"そんな空気を作り出している集団に逆らうのだから、それも当然の流れなのかもしれない。
そんな状態が少し続いたある日、その子が久しぶりに登校してきた。
でもその子はいつもと様子が違う。
愛斗を少し避けているようにも思えた。
そして、いじめっ子たちとも仲良く話していたのだ。
異変を感じつつも、その子が無事学校生活に帰ってきたことを嬉しく思った愛斗は、気にしなかった。
その日の昼休み、愛斗は生徒指導室に呼ばれた。
中に入ると、担任と生徒指導の先生、いじめられていた子、いじめていた子、そしてなぜか愛斗の部活の顧問がいた。
嫌な予感がした。
愛斗が椅子に座ると、担任が口を開く。
「皆さんに集まってもらったのは、ここにいる白石くんがある生徒からいじめを受けていると私に話してくれたからです。白石くん、先生に話してくれたことをそのまま、ここで話してください」
そう言われ、白石も話し始める。
「僕は、いじめを受けています。この1ヶ月本当に辛かったです」
「さぞ辛かったでしょう。先生達はあなたの味方です。怖がらずにあなたをいじめていた生徒の名前を教えてください」
芝居めいた話し方で担任はそう言った。
「はい………」
一呼吸置き、白石は続けた。
「愛斗くんです。そこにいる桜島愛斗くんです」
「え?」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
「桜島くん、それは本当ですか?」
本当なはずがない。愛斗はいじめられていた白石をずっと味方していたのだから。
「いや、違います。だって俺は……、いじめていたのは橋本たちの方です。白石くん、なにを言ってるんだ?」
「先生、そいつ嘘ついてます。僕達は白石くんを桜島のいじめから守っていました。そうだよなぁ?白石」
「う、うん…」
愛斗はこの瞬間、ハメられたのだと気づいた。
いじめっ子のリーダー、橋本の親は地方議員で、おそらく担任と白石は買収されたのだろうと。
「白石くん、ホントのことを言ってよ」
「うるさい!僕はホントのことを言ってる!
いじめられるのはもう嫌なんだよ!」
「やっぱりそうなんですね」
違う。
「俺たちに罪を擦り付けようとするなんて、最低だな。桜島」
違う。違う。
いじめてなんていない。
守ろうとしただけなのに。
「違う……! 違います監督!僕はやってません!」
部活動で信頼してくれていた監督なら、信じてくれるだろうと愛斗は願った。
「この状況で、まだそんなことを言うのか」
蔑むような目で顧問は愛斗に言った。
「桜島。お前はもう明日から部活に来なくていい。
お前みたいなやつは、チームの輪を乱すだけだ」
「そんな……」
なにがいけなかったのか。
自分は間違ったことをしていたのだろうか。
自分のやってきたことは正しいと信じてたのに…。
いじめられている彼を救うために尽くしてきたのに。
愛斗は、裏切られたのだ。
そして何よりショックだったのは、信頼していた顧問にさえも裏切られたこと。
そう思った瞬間、愛斗の心の中で大事な何かが崩れた音がした。
「──愛斗はその後、高校への推薦状の取り消し、所属していた野球連盟からは追放。
プロ野球選手を目指して愛斗にとってはきっと、それが1番辛かったと思う。
それ以来、愛斗は誰にも心を開かなくなった。誰も信頼しなくなったの。
友達だけじゃなく、家族であるアタシやお姉ちゃんにも。
心を開いているように見えるかもしれないけど、あの子は昔から人付き合いが得意だったからそう見えるだけ。
心の奥の扉は、あの日から1度も開いたことはないの」
一通り話し終え、一呼吸置く。
「これがことの真相。まぁ、信じるか信じないかは古賀さん次第……って、何で泣いてんの!?」
のどかの話を聞いている朋絵の頬には、いつの間にか涙が伝っていた。
「すみません…、だって、だって!
こんなのってあんまりにも……
みんなにも伝えなきゃ」
「それはダメ」
「なんでですか!?」
みんなの誤解を一刻も早く解きたい朋絵は、のどかが止める理由が分からない。
「アンタがみんなにそのことを伝えて、信じてもらえなかったらどうすんの?浮いてるやつの味方をする人は、今度はその人も輪から外されるのよ。愛斗を庇ったせいで古賀さんが孤立することになったら、1番責任を感じるのは愛斗。だから古賀さんは、ホントのことを分かってくれただけで十分」
のどかの言葉にぐうの音も出ない。
「この話はこれくらいでお終い。長話に付き合わせてごめん。気をつけて帰んなよ?」
「は、はい」
そうは言われたが、朋絵はこれからの学校生活でどうするべきかを帰り道であれこれ悩みながら帰っていった。
☆
「ん……、狭い」
目が覚めると、身体がまた動かなくなっている。
「またか」
またものどかにホールドされている愛斗。
きっとのどかは寝ぼけて愛斗のベットに入り込んだのだろう。
「せっかく買ったのに使わないのはどうなんだ…」
のどかの寝相の悪さに、やれやれとため息をこぼす。
わがままお嬢様との同棲は、まだまだ問題は山積みだ。
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