優しさにたどり着くために   作:トップハムハット卿

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先に言っておきます。
超展開の4話です!


#4. くっついたんですけど…

ある日の昼休み、教室の一角でクラスのカーストトップに君臨する女子たちの恋バナが行われていた。

 

「クラスで1番カッコイイのって、ぶっちゃけ誰だと思う?」

「んー、サッカー部の北山くんとか?」

「あ〜、分からなくもない。朋絵は?」

 

話を振られ、少し戸惑う朋絵。

都会の学校に慣れるのに精一杯で、男子のことなんて今まで意識する余裕は無かった。

 

それでも、なんとかクラスの男子を思い出しながら答える。

 

「えーっと、顔だけなら桜島くん…かな」

「たしかに顔はめっちゃイケメンだけど、いじめっ子はダメでしょ〜」

「顔だけは良いのにねー」

 

リーダーの玲奈の言葉に他のふたりも同調する。

 

「その噂のことなんだけどさ、実は何かの勘違いだった……って可能性は無いかな?」

 

少し口に出すのは勇気がいったが、先日のどかの話を聞いた手前、朋絵の中の正義感が言わないことを良しとはしない。

 

「どゆこと?」

「え、えっと、なんというか、普段私たちが見てる桜島くんって凄く大人しいから、ほんとにいじめなんてしてたのかなぁって」

 

玲奈は愛斗の噂を聞いたときから、愛斗を毛嫌いしている。

だから余計に言いづらかった。

でも、言ってしまったのだから後はもう機嫌が悪くならないことを祈るだけ。

 

 

「んー、言われてみればそうかも」

 

意外にも、玲奈は納得してくれた。

 

玲奈がそういえば、もちろん他のふたりも同じだ。

そして、日奈子がニヤニヤしながら朋絵を見る。

 

「もしかして朋絵、桜島のこと好きなの?」

「そ、そんなんじゃないよ!」

「照れなくてもいいって〜!」

 

いつの間にか、あらぬ誤解が生まれていた。

 

「ここは、朋絵のために一肌脱ぎますか〜」

「そうだね。応援する。でも、まずは桜島の噂のことからね。もし事実だったら、ウチらの朋絵をそんな怖いやつと付き合わせるわけにはいかないし」

「みんな、ありがと…。あはは」

 

心配しすぎな気もするし、そもそも朋絵は愛斗のことを好きなんて一言も言っていないのに、そういう流れになってしまった。

 

みんなが愛斗の噂について疑い始めたのは嬉しいが、困ったことに新たな誤解を産んでしまったために、なんとも言えない心境の朋絵であった。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ〜、どうしよ〜!!」

 

先日の愛斗の件とは別に、また新たな問題が増えた朋絵。

 

その問題というのは……

 

「前沢先輩は玲奈ちゃんが狙ってるのに…!

なのに告られるとか空気読めてなさすぎ!」

 

この学校のバスケ部で1番上手い、そしてカッコイイと評判の3年生、前沢先輩に今日の昼休みに告白されてしまったのだ。

 

というのも、玲奈の誘いで最近はバスケ部の練習を見に行くことが多くなり、先輩に顔を覚えられた。そうしたら告白されてしまったのだ。

 

「どげんすればいいとね!わからん!いっちょんわからん!」

 

枕に向かって叫ぶ朋絵。

取り乱すあまり、出身である博多の言葉が出てしまっている。

 

付き合うのはもちろん論外だが、振るのもダメ。

そもそも、告白されてしまった時点でアウトなのだ。

 

でも告白されてしまったものは仕方ない。

時間を戻すことなんて朋絵には出来ない。

 

悩んでいると、1つの名案が浮かんだ。

 

「そうだ!!

玲奈ちゃんが前沢先輩以外の人を好きになれば、私が前沢先輩を振っても問題無いよね!?」

 

ほとんどヤケクソだが、今はそれくらいしか思いつかない。

 

「それしかないよ!

お願いします!玲奈ちゃんが前沢先輩以外の男子を好きになりますように!

前沢先輩以外の男子とくっつきます(・・・・・・)ように!!!」

 

前沢先輩からの告白が発覚する前にそうなってくれと、今はそう願うしかなかった。

 

 

 

【朋絵side】

 

 

 

次の日の朝。

 

 

 

 

朋絵は昨日の告白の話が玲奈の耳に届いていないか、気が気で無いため、朝からソワソワしている。

 

 

「あ、朋絵。おはよー」

「お、おはよー玲奈ちゃん」

「朋絵、なんか調子悪い?」

 

いつもと朋絵の雰囲気が違うことに気づき、少し心配する玲奈。

 

「そんなことないよ!元気元気!」

「そ、ならいいけど」

 

そんなことを話しながら、教室へ向かう。

 

 

教室へ入ろうとしたその時、玲奈が誰かとぶつかった。

 

 

「きゃっ!」

 

その瞬間、朋絵の目の前が一瞬だけ眩んだ。

 

 

 

【愛斗side】

 

最近になってものどかの寝相は相変わらずで、愛斗は今朝も蛇に食べられそうになる夢を見ることになった。

 

そろそろ蛇とは顔馴染みの仲良しさんになれそうだ。

 

そんないつもと変わらない朝を過ごし、学校へ通学する。

 

教室も1日学校なのかと少し憂鬱な気分ではあるが、避けられるものではない。

 

教室で自分の机に座り、読書をしていたが、トイレに行きたくなって愛斗は席を立った。

 

 

教室から出た直後、誰かとぶつかってしまった。

 

「きゃっ!」

 

その瞬間、目の前が一瞬だけ眩んだ。

 

 

 

 

 

 

眩しさから目を閉じたが、目を開けるとそこには朋絵がいた。

ぶつかった相手は朋絵だったのかと気づく。

 

「ごめんね、古賀さん」

「え、古賀さん?」

 

不思議そうな顔で聞き返す朋絵。

 

「急に苗字で呼ぶなんてどうちゃったの?玲奈ちゃん」

 

さすがに人違いにもほどがある。

クラスのリーダーともいえる香芝玲奈と自分を間違えるなんて。

そもそも、愛斗は男で玲奈は女、間違えるわけがない。

 

「それにしても、さっきぶつかったのって桜島くんだったのかな?どこに行っちゃったんだろうね」

 

理解が追いついていない愛斗の頭の中から、声が聞こえてきた。

 

「痛いなー、まったくどこ見て歩いてんのよ……ってあれ?いない?」

 

その声を聞いた瞬間、愛斗は1つの可能性に行き着いた。

そして手洗い場の鏡の前へと走る。

 

「え、あ、ちょっと身体が勝手に!!

これどうなってんの!?」

 

頭の中からそんな超えが聞こえてくるが、今は無視だ。

この目で何が起きたのかを確認するしかない。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

鏡の前で自分の姿を見ると……、

 

「嘘……だろ……」

 

そこには香芝玲奈の姿が映っているのだ。

 

「なんで俺が香芝さんになってるんだ!?」

「はぁ?アンタどこから喋ってんの?」

 

周りを見ても愛斗の姿は無い。

でも愛斗の声は聞こえる。

そんな奇妙な事態に、玲奈の理解も追いついていない。

 

「香芝さんこそ、どこから喋ってるのさ」

「アタシはもちろん……」

 

そう言いかけて、玲奈は一つ気がついた。

 

 

「私は動いてるつもりは無いのに、身体が勝手に……」

 

玲奈は意図していないはずなのに、なぜか腕が、指が、そして口が動いている。

 

起こっていることを理解した途端、強烈な寒気に襲われる。

それと同時に、全てが繋がった。

いや、繋がってしまった。

 

「あたしの中に……、桜島がいる!!!???」

「……そういうことだね。香芝さん……」

 

なんと、香芝玲奈と桜島愛斗が物理的に、いや、これを物理的と言っていいのかは置いておいて、とにかくくっついて(・・・・・)しまったのだ。

 

そこへ、遅れて朋絵が合流する。

 

「急に走っていくから、驚いたよ。はぁ、はぁ」

「朋絵、どうしよう」

 

深刻そうな顔で言われ、朋絵も少し身構える。

 

「アタシ、桜島とくっついちゃった」

「………へ?」

 

 

自分たちでも完全に理解できている訳では無いが、事の次第を朋絵に伝える愛斗と玲奈。

 

 

「てことは、玲奈ちゃんの中に桜島くんがいるってこと!?」

「「そう」」

嘘のようなホントのことに、3人は頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

玲奈と愛斗の2人は、第三者から見て消えてしまった愛斗はどういう扱いになっているのかを知るために、ただ今いろいろと探索中だ。

 

[名前はおそらく、"香芝玲奈"から"香芝愛奈(まな)"に変わってる。そして桜島愛斗は元々存在していないという扱いになっている。ただし古賀さんだけは俺の事を覚えてる。そんな感じっぽいね]

「そうね……って、なんでアンタはそんなに冷静なのよ」

[慌てたところで、解決するわけじゃないからね]

「それはそうだけど……、まぁいいわ」

 

他に分かったことと言えば、口に出さなくても会話が出来ること。

意識は2つあるが身体は1つしかないため、脳内で会話ができる。

アニメやマンガで見かける、自分の中の天使と悪魔みたいな感じだ。

 

それと、喋るのは基本的に玲奈だ。

だけど愛斗も喋れないわけではない。

お互いの意思で、交代できるのだ。

 

今のところはそれくらいしかまだ分からない。

 

[俺と香芝さんが離れる日は来るのかな…]

[来てもらわないと困るわよ。アンタとこのまま一緒なんて絶対嫌]

 

「よし、授業始めるぞ〜」

 

先生の号令と共に授業が始まる。

 

「今日は、抜き打ちで小テストをやるぞ~。点数悪かったやつは補習な」

 

[補習なんて冗談じゃないわ。放課後は朋絵たちと買い物に行く約束なんだから]

 

意気込む玲奈だが、中間テスト前のこの時期なので、問題作成者側にも気合いが入る。

ざっと目を通してもなかなか難しい問題が並んでいる。

 

[ちょっと貸して]

 

悩んでいる玲奈を見兼ねて、愛斗が代わりに腕を動かす。

 

[す、凄い…]

 

自分の腕が勝手に動き、みるみる解答欄を埋めていく。

 

 

 

あっという間に解き終えてしまった。

 

「これ……便利かも」

 

すっかり忘れていたが、愛斗は入試の成績はクラスで1番良い。

自分の中にクラスで1番成績がいい愛斗を宿しているメリットを見つけた玲奈だった。

 

 

 




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