久しぶりすぎて、僕のことを覚えている人はもういないかもしませんねw
おまたせして申し訳ないです。6話です
少しずつ日中の気温も高くなり始めてきた6月。
季節はもう初夏だ。
2人がくっついて、そろそろ1ヶ月が経とうとしていた。
終わりの見えなかった共生は、不意に終わりを迎えることになる。
[ねぇ、もしかして俺たちはずっとこのままなの?]
「んー、どうだろ。何をすれば元に戻るのかが全然分かんない」
[前みたいに「早く戻りたい!」って騒がないんだね]
「騒いだところで戻れないって、この1ヶ月で嫌という程感じさせられたから。それに、別に私はこのままでも困らないし」
玲奈は少し変わった。
初めの頃に比べて、愛斗との生活に肯定的になってきた。
反対に、愛斗はそろそろ自分の体に帰りたくてたまらない様子ではあるが……。
[玲奈は困らなくても、俺は困るんだけど]
「この私と共生してるんだから、文句言うなし」
[誰が相手だったとしてもだよ。早く自分の体に戻りたい]
「まぁ、戻るまで我慢しなって」
会話が一段落したところで、玲奈は気になっていたことを尋ねてみる。
「愛斗ってさ、彼女いたことあんの?」
[は?唐突だね]
「ちょっと気になったの。いいから答えてよ」
[へぇ。俺は恋人はいたことないよ]
「そーなんだ。なんか意外」
[そうかな?]
自分の噂についていろいろな人に吹聴していた玲奈がそう思うことこそが、愛斗にとっては意外だった。
「私が言うのもアレだけど、アンタさ、"あの噂"さえなければ絶対モテたと思うよ」
[んー、それはどうだろうね]
「絶対そう。顔はカッコイイし運動神経も良い。頭も良くて料理もできる。女の子の理想が詰まったような人間じゃん」
[そんなに褒められると照れるな~。まぁ、もう手遅れなんだろうけどさ]
玲奈への皮肉を込めたのが伝わったのか、玲奈は申し訳なさそうに俯く。
「それは……ほんと、ごめん」
[別に玲奈が悪いわけじゃないよ。中学の頃の俺が悪い。それに、玲奈が言わなくても誰かが同じよう広めてたかもしれないし]
「アンタは悪くない!この1ヶ月で確信した。アンタは人を虐めたりしないってね」
[そう言ってもらえると嬉しいね]
1ヶ月前の玲奈からは信じられないような発言だ。
「私が責任取って、アンタの彼女になってあげよっか?」
[随分上からだね]
「初めての彼女がクラスで1番可愛い私になるんだから、当然じゃん」
得意げに言う玲奈。
愛斗はここで、少しいじわるを思いついた。
[俺と付き合うってことは、エッチなこともするけどいいの?]
この1ヶ月で分かったのだが、玲奈はそういう方面の話に関しては初心だ。
今まで何人かの男子と付き合ってきた玲奈だが、いずれの相手とも手を繋ぐくらいにまでしか関係は進まなかった。
玲奈自信が、がっついてくる男子が苦手で、相手がキスやそれ以上の行為を求めてくると急に冷めてしまうらしい。
玲奈は愛斗に過去の恋愛話を愚痴ることが多かったため、愛斗はそのことを知っていてこの質問をしてみたのだ。
「……い、いいよ」
[……は?]
聞き間違いだろうか。
「だから、アンタとならエッチしてもいいって言ってんの!!」
[え、は!?なんで!?]
予想外過ぎる返事に、愛斗は動揺が隠せない。
「1ヶ月も裸を見られたんだから、エッチなんていまさらでしょ。体が戻ったら、アンタの童貞を貰ってあげてもいいけど」
愛斗の動揺っぷりを見て、玲奈は少し勝ち誇ったような表情をしながらからかう。
[処女のくせに、偉そうだなぁ]
「な……!!?アンタこそ童貞のくせにうるさい!」
愛斗からの強烈なカウンターパンチで、玲奈は顔が真っ赤だ。
[まぁ、責任なんか感じなくていいからさ。玲奈は好きな相手とちゃんと付き合いなよ]
「あ、私は……やっぱ、なんでもない」
何かを言いかけて黙ってしまった。
「いや!やっぱり言う!私は………アンタが、愛斗が好き!」
玲奈がそう叫んだ瞬間、辺りが突然眩しくなり視界が奪われた。
ようやく見えるようになり、玲奈は目の前の光景に驚く。
「え、愛斗…?」
「あれ?玲奈?」
「もしかして、戻ったの!?」
「たぶんそうみたい!!」
「「やったー!!!」」
嬉しさのあまり、抱き合う2人。
「あ、そう言えば。元に戻る前、何か言ってなかった?」
「え……もしかして、聞こえてなかったの?」
「うん」
「じゃあ言わない」
そう言って少し悪そうな笑みを浮かべる玲奈。
「えー、ケチ」
「ケチで結構」
「性悪」
「なんとでも言いなさい」
「処女」
「な!?うるさい童貞!!」
「あははっ!それは怒るんだ」
真っ赤な顔で言い返す玲奈見てケタケタと笑う愛斗。
「それじゃあ、僕は家に帰るよ」
「うん。また明日ね」
「僕がいない間、のどかはちゃんとした生活が送れてたのかな……」
愛斗と玲奈がくっついていた期間は約1ヶ月。
つまり、その間はのどかが一人暮らしをしていたことになる。
家事が壊滅的にできないのどかを1ヶ月も一人暮らしさせていたのかと思うと……。
帰って家の惨状を見るのが少し怖くなった。
「ふぅ……」
玄関の扉の前で深呼吸をして覚悟を決める。
ガチャリ
「ただいま……」
リビングへ行くと、のどかがポツリとソファーの上で膝を抱えながらテレビを見つめている。
「のどか、ただいま」
「え、愛斗……?」
愛斗が帰ってきたのが信じられないとでも言うような表情を浮かべるのどか。
「うん。僕だよ」
ここで、1つの疑問が愛斗の中で生じた。
(のどかの中で、僕は何が理由で1ヶ月も家を空けてたことになってるんだろう)
存在を確かめるように、ゆっくりと愛斗の方に近づいていくのどか。
「愛斗…、ほんとに愛斗なのね……」
そして愛斗の目の前まで来ると
バチィィン!
強烈なビンタが愛斗の頬に炸裂した。
「今までどこ行ってたのよ!!」
「え、ちょ、のどか!?」
「この1ヶ月、アタシがどれだけ心配したと思ってんの!?
なかなか帰ってこないと思って学校に電話したら、「そんな生徒はいません」って言われて、喧嘩中だったお母さんに聞いたら「麻衣ちゃんに弟なんていない」って………。
そんなはずないと思って、麻衣さんに聞いたら……………「妹のアタシ以外に弟妹はいない」って……!!」
「のどか……」
「アタシは信じたくなかった! だって愛斗がこの世界から急に消えるわけないじゃん!でも、誰に聞いても「桜島愛斗」は存在しないことになってた…。悪夢を見ているのかと思ったわ。でも全然覚めてくれないの……。何回寝ても、何回朝を迎えても愛斗は帰ってこない。
愛斗、アンタがいないと、アタシはダメなの!
アンタは……アンタは私の心の支えなのよ…。
だから、いなくなったりしないでよ………」
そう言って、力いっぱいに愛斗を抱きしめる。
「ごめん、ホントにごめん」
「謝ったって許さない………。でも、晩ご飯作ってくれたら許してあげる」
「分かったよ、ありがと。何が食べたい?」
「ハンバーグ」
「冷蔵庫に何か入ってる?」
「ううん、空っぽ」
「じゃあ買い出しに行こうか」
「うん」
買い出しから帰って、晩ご飯を食べた後、家の大掃除が始まったのはまた別の話…。
どうだったでしょうか!
僕は玲奈ちゃんと離れるのが個人的には、少し寂しいなぁと思ってます。
高評価や感想をくださった方々、ありがとうございます!
感想や評価を頂けるとモチベが上がるので、良ければお願いします!