「があああっ!!」
断末魔の叫びがその場に響く。余のアームドデバイスの一振りが人間を切り裂く。
「ちっ、蛮族共が……」
忌々しい。この余に従おうともせぬ、愚か者め。シドゥリは敵対する部族の者にデバイスを向けていた。
この当時のブリタニア帝国は、各地の集落を取り込んで勢力を拡大していた。
しかし、全ての者がそれを受け入れた訳ではない。特に話し合いなど無用と、接触するなり襲撃してくる野蛮な集落も存在している。そういう部族は邪魔だ。故にシドゥリは、話し合いも通じぬ彼等を蛮族と認定して一掃していた。
この星の人間は、この魔法皇帝の支配下でなければならない。話し合いの結果として、それまでの生活を続ける事を望んで帝国への参加を断るのならばまだ許せるが、話し合いもせずに問答無用で攻撃してくる野蛮な奴らは排除あるのみ。
「邪魔よ!」
いきなりシドゥリの姿が掻き消え、その場の蛮族達が次々に切り裂かれる。神速。御神の剣士が使う歩行法。その原理は脳の意図的なリミッター外しだ。
普通はそう易々とできる物ではないが、人間よりも肉体の制御に長けた覚醒者ならば簡単にできる。また通常の人間だと身体に負担が強いので短時間しかできないが、覚醒者ならば負担など問題にならない。
その場に蛮族達の死体が転がっている。
「これより、この蛮族共の集落を掃討する」
「「「はっ!」」」
敵対する部族は族滅だ。女も子供も関係ない。余に敵対することそれ自体が罪だ。
「陛下、蛮族の集落の掃討が終了致しました」
「うむ、良くやったわテリー大佐」
まぁ当然の結果だ。ブリタニア帝国軍は自動小銃や拳銃で武装している職業軍人であるのに対して、蛮族共は所詮はただの一般人で武装も石器の槍程度だ。これで遅れをとるようならば、軍の実力を疑わねばならない。余が手塩にかけて育てた軍が、そんな無様を晒すなど許されるものではない。
「これでこのエリアも終了ね」
「はい、帝国へ参加する者も移住は済んでいます」
帝国は、各地に進出して各集落を取り込んでいったが、たまにこういう問題も起こる。
「しかし、話し合いもできぬ馬鹿がいるとはな…」
シドゥリとしては頭の痛い話だ。できれば原住民を穏便に帝国に取り込みたい。むやみの人を殺してしまうのは拙い。なるべく人死には避けたいが、そうも言ってられない。帝国に取り込むことができなくとも、せめて敵対勢力の排除はしておかないといけない。帝国の発展のためには、惑星ヒルデガルド全土を支配下に置く必要がある。
既にこの中央大陸にはかなり進出できている。ここ数年は大規模サーチャーを飛ばして集落を探している。これで大概の集落は見つかる。見つけた集落には虱潰しに接触を取ると大概上手くいく。私が直接動いているのだから当然であるが。まぁ軍がある程度成熟してくれば彼等にこの仕事を全て任せておきたいのだが、今はまだ早いか。
集落との接触はうまくいけば帝国に取り込めるが、今回のように上手くいかない場合も勿論ある。そういった場合は、武力行使も当然起こる。
帝国の建国から2年、そして私が覚醒して3年が過ぎた。覚醒者の能力の実験もかなり進んでいる。覚醒者はやはり身体の制御に長けている。それがシドゥリの感想だった。
皇帝としての公務の他に、覚醒者として色々と鍛錬をしていた。自分の戦闘能力というのは使える手札の一つだ疎かにはできない。
以前冗談半分で『ドラゴンボール』の鍛錬を真似して重力も用いた鍛錬をしたが、あれは普通の人間では身体を壊すだけだった。覚醒者になって初めてアレに適応できたからね。最初は結構苦労したけど、今では10Gでも日常生活ができます。
覚醒者は覚醒した時が能力の上限という訳でなく、その後の鍛錬でも鍛える事ができる。それと血液を取り込むとそれだけ力がアップした。とはいえ一度に取り込める量には限度があるし、暴飲暴食をすると今後の成長に悪影響を与える事が予想させるから程々にしている。
ただ覚醒すると身体データは固定され変化しないようだ。身長や体重だけでなく、3サイズもこの三年一切変化なしです。
覚醒者のデータを取るために、覚醒直前に念入りに身体検査をして、そのデータと覚醒後のデータとの変化を色々と検証してはいるが、まあそれは参考程度にしかならないかな。余も一応とっているデータにすぎないしね。
しかし、能力の限界を知ることは決してマイナスではないはずだ。己を知り、その能力を活かせれば、それだけ有利になる。
テリーside
俺があの御方にあってから、もう三年が過ぎた。あの方は偉大だ。俺達はあの御方に導かれて新しい国を作り、そこの一員として暮らしている。
国家という概念は元々俺達には存在せず、それぞれ集落で暮らすだけの生活をしていた。それが今では国家として民衆を束ね社会を構成することで、俺達は様々な物を手に入れてきた。
あの御方は神だ。だが俺はあの御方に初めて会った時から心奪われてしまった。当時俺は既に結婚して子供もいたのだが、それでも懸想してしまった。しかし、俺ではあの御方に釣り合わない。だから、この想いは墓場まで持っていくだろう。
解説
■テリー
惑星ヒルデガルド開拓記にて登場するキャラクター。後にブリタニア国防省大臣となる。帝国初期には貴族は勿論、騎士の育成も行われていなかった。その為、当時の帝国の重臣は平民で構成されていた。シドゥリに一目惚れしており、思いを寄せていたが、それを表に出すことはなく、老いて退役するまでシドゥリに仕え続けた。
■惑星ヒルデガルドの少数部族
帝国は原住民の取り込みを行っていたが、それでも先祖代々の生活を続けるのを望む部族もそれなりに存在していた。帝国では話し合いの結果として、彼等との友好条約を結び、彼等の生活にできるだけ干渉しない政策を取ることにした。これはシドゥリが都市の生活に適合できない、もしくは嫌がる者を無理やり取り込むのを避けたため。ちなみに彼等は帝国の臣民として扱われておらず、戸籍も存在しない。建国500年が過ぎても各地に少数部族保護区があるのはその名残。
後書き
全ての集落が問題なく帝国の傘下に入ったとは考えにくいので、こういう話を加えました。余所者を見ると話し合いをするのではなく敵と見なして攻撃してくる物騒な集落や、他の集落を襲撃して略奪する盗賊の集団のような集落も当時はあったという設定です。シドゥリは獅子身中の虫を帝国国内に飼うつもりはないので、こうした見込みのない者は始末しています。