私はトラックに引かれた。それはよくある憑依物の死因としてはオーソドックスなものだった。
「と、いうわけで貴方は死にました。」と目の前のドクロ面の死神にいわれるのも、二次小説ではよくある話。
「はぁそれでは私はあの世行き何ですか?」
「いえ、実は貴方は本当なら死ぬはずではなかったワケです。こちらの手違いでして…」
「じゃ、生き返れるの?」
「いえ、それができるなら、とっくにしています」
「はあ」
まぁ確かにそうだよね。
「そこで貴方には、別の並行世界で別人に憑依して第二の人生を送るか、それともこのまま死ぬかを選んで頂きます」
「並行世界ですか?」
「貴方の感覚では『魔法少女リリカルなのは』の世界とよく似た世界ですね」
「あのなのはちゃん達がいる世界と、よく似た世界ですか?」
「まあ、貴方が憑依した時点で厳密にいうと本編の世界ではなくなりますし、その世界には既に転生者が存在します」
「つまり転生者のオリ主がいるリリカルなのはの二次小説の世界ですか?」
「まあ、そんな感じですね。その人は以前私が暇つぶ…、いえある目的で転生させた人何ですよ」
……今、暇つぶしって言わなかった? でも怖いから、突っ込むのはよそう。恐るべし、死神。
「まあ、その人には何も説明せずに転生させたんですが、いろいろと仕掛けをしていた所為で予想以上に活躍していましてね。彼女が本格的に動くと、本編の流れが思いっきり変わります」
「その人は、そんなに凄いんですか?」
「ええ、今では不完全ながらも不老不死を手に入れて、最強のベルカの騎士になっています。おまけに管理世界を圧倒する技術力を持った大帝国の皇帝ですよ」
おい、何だよそのチートオリ主は!! いくら何でもチート過ぎるだろ!
「ちなみに憑依した後で、その人が接触してくるかもしれません。その時は対応には気を付けた方がいいですよ。下手をすると殺されかねませんから」
チートオリ主に注意か。覚えておこう。死亡フラグは回避しないとね。
「では、選択して下さい」
「……では憑依するということでお願いします」
私は、このまま死ぬつもりはない。リリカルなのはの世界で、第二の人生を生きてやる。そして、私の意識はその場から消えていった。
「……さて貴方は、どういう風に私を楽しませてくれるんでしょうね」
誰もいなくなった場所で死神が一人そう呟いた。
それで気が付いたら「八神はやて」になっていました。って、おい思いっきり死亡フラグの人物じゃねえか! 闇の書に殺されるか、グレアムに永久凍結されるか。どっちもごめんだ!
第一、何で『女の子』に憑依しているんだ。私は男だぞ! まぁ憑依先の性別は指定していなかったけどね。
八神はやては現在5歳。すでに両親は亡くなっていて、足が不自由になってしまい、車椅子生活をしている。現在はギル・グレアム氏からの仕送りで生活していると。すでにグレアムの監視付きかよ! やばい、死亡フラグだ。どうしようと考えても、この身体ではどうしようもない。
そもそも5歳児だし、足が不自由だよ。本編通りなら魔法の才能はあるが、そもそも使い方が分からない。これでは才能の持ち腐れだよ。結果、どうにもならない。そんな風に三日ほど頭を抱えている内に、八神家に一人の客人が来た。
「こんにちは、八神はやてちゃん。余はシドゥリ。シドゥリ・エルデルト・フォン・ヴァーブルと申します。実はギル・グレアム氏の事でお話があります」
尋ねてきたのは、17歳ぐらいの金色の髪にオッドアイの美少女でした。
んっ、オッドアイ? よく見ると聖王モードのヴィヴィオに、どことなく似ているような。というかリリカルなのはの世界に、ヴィヴィオ以外にオッドアイはいないよね。
「先日グレアムさんが殺害されてしまいました。それで以前グレアム氏に頼まれていたので、私がはやてちゃんの生活の援助をすることになりました」
「グレアムさんが!」
おいおい、どういう事だよ。この時期にグレアムが死んだなんて、完全に本編無視か?
リビングでいろいろと話し込んでいると、シドゥリさんに自宅に鎖の付いた本がありませんか?と尋ねられた。
「えっ、闇の書の事ですか?」
「っ!!何故あの本の名前を知っているのです!」
シドゥリさんが表情を変えて、私に聞いてきます。
し、しまった! この時期の『八神はやて』は、闇の書のことを知らない筈だ。これでは、怪しまれて当たり前だ。
でもそうすると、シドゥリさんも闇の書を知っているわけだよね。ってことは、まさか。
「あ、貴女はチートオリ主か!?」と思わず叫んでしまいました。
結果、シドゥリさんにいろいろ吐かされました。
「……つまり、貴女も『魔法少女リリカルなのは』が創作物として存在する世界から来た人間である訳ね」
「はい、信じられないかもしれませんが。」
私はおそるおそるシドゥリさんの顔を見る。
「しかし、死神の暇つぶしですか…。」
眉を顰めています。まぁ当然でしょう。軽く話を聞いた限りでは彼女は540年位前に転生して、それから必死でこの次元世界で生きていたそうです。というか540年とは随分長生きですね。まぁそれだけの人生の切欠が他人(死神)の暇つぶしでは、不愉快にもなるでしょう。
「まぁいいわ。その事を何時までも考えても仕方ない。はやて、リリカルなのはの知識があるというなら話は早い。貴女は自分の状況が分かっているよね。」
「はい、闇の書にリンカーコアを蝕まれて足が麻痺しており、このままでは命に関わります。」
「そう、ならはっきりいいましょう。余は貴女が条件さえ飲めば、闇の書の修復を行っても良いわ」
「条件ですか?」
「簡単な事よ。時空管理局並びに管理世界に協力しない事。勿論技術協力も含めてね」
「どうしてですか?」
「ブリタニア帝国が、管理局と敵対関係になるからよ」
シドゥリさんの説明によると、未だブリタニア帝国と管理局は接触していないが、ブリタニアにとって、管理局が外敵とも言える存在になっているとの事です。何でも覚醒の法を初めとするブリタニアの先進的な技術は、傲慢な管理局の干渉を招くとのことです。
そういえば、本編での管理局もそう言うところがあるよね。いろいろな世界の遺産を、自分たちで勝手に作った法律でロストロギアと定義して奪って行くし、それに逆らう者は犯罪者扱いだよ。
あれって泥棒博物館とか、強盗博物館とかいわれている大英博物館(※1)よりもひどいよね。
(※1)大英博物館の収蔵品は大英帝国時代の植民地から持ち込まれた品物が多々あり、今日では文化財保護の観点や宗教的理由から国外持ち出しが到底許可されないような貴重な遺物が沢山あります。
「……分かりました。可能な限り管理局には協力しません」
少し悩んだが、私はここで了承しておくことにした。
「うん、いい返事だわ。断られたらいろいろと面倒なことになっていたしね」
シドゥリさんが言うには、リリカルなのはの知識を持つ人間が、管理局に協力するなど見逃せないとの事です。そこまで言われると断っていたらどうなっていたのか想像はできます。了承して正解でした。
そういえば、グレアムさん本当に死んだのかな?
シドゥリさんに改めて確かめると本当に死んでいるそうです。ただその目が怖かったですね。もしかして、グレアムさんこの人の干渉で殺されたのかな。確かにシドゥリさんにとってはグレアムさん邪魔そうだしね。
……まぁいいです。何か怖いから深く聞けません。
かくして、チキンな私はシドゥリさんに闇の書を夜天の書に修復して貰い、平穏な生活を送ることになり、夜天の書の四人の守護騎士と管制人格(後で本編と同じくリィンフォースと名付けました。)と共に生活しています。
死亡フラグ回避。結果的にシドゥリさんにはお世話になりました。あの後、生活援助金を援助してもらいました。守護騎士達とこれで生活しなさいとの事です。本当に頭が上がりません。
余談ですが、守護騎士たちとリィンフォースは、シドゥリさんの存在にとても驚いていました。何でも彼女たちベルカの騎士からすると、シドゥリさんは失われたはずの聖王家の最後の生き残りの方らしいです。