ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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ブリタニア帝国記 第三話(シドゥリ暦521年~522年)

 前回治療した士郎さんが、なのはの魔法の事をいろいろ聞いてきた。そういえば、高町家でこの人にだけは直接話してなかったね。丁度良いので、なのはの近接戦闘の鍛錬を頼みますか。余が教えても良いけど、流派が違うからね。一族に伝わる流派があるなら、それを覚えさせた方が良いだろう。

 

 これは予想ですが、多分なのはちゃんは御神流に適正があるんじゃないかな? 血筋から考えるとね。それに魔法に関わっている以上、いざという時に身を守る手段がないといけません。

 

 なのはちゃんはやはり砲撃魔法に適正があったので、其方を教えていますが、せっかく古代ベルカ式を教えるのですから、近接戦闘技能もあった方がいいでしょう。本編みたいに近接戦闘が苦手では、不具合がでるかもしれないし。というか対リィンフォース戦や対ヴィヴィオ戦で苦戦していたのって、その所為じゃないかな。やっぱり仕込んでおくか。

 

 その辺りの考えを話し、士郎さんになのはのトレーニングを依頼する。士郎さんは渋ったけど、流派の違う余に教わるよりはと、自分が教えるのを渋々了承した。

 

 どうも士郎さんはなのはちゃんが魔法に関わるのをよく思っていないようです。でも遅いですよ。なのはちゃんは余が目を付けましたし、それに余が干渉せずに放置していたとしても、管理局に入局する事になっていたからね。だったら余の物にするまでです。

 

 ちなみにその指導では余も見学しています。何故って? ちゃんと訓練を把握しておかないと、本人の技量とベルカ式魔法の適応がうまくいかない可能性があるからですよ。教導というのは結構大変なんです。手抜きはできないよ。

 

 御神流は一族継承型の武術ですから、フェイトちゃんには教えてくれないが、まぁいいです。フェイトちゃんには、余が自ら仕込めば良いですから。

 

 

 

 そういえば、先月イギリスで通り魔殺人事件がありました。死者が一名出たそうですね。何故そんなことわざわざ言うか? 余にとって、目障りな人間が消えたからですよ。

 

 現地人が白昼堂々と殺人を犯して、その場で現行犯逮捕されました。逮捕された犯人は、事件の事を何も覚えていないと証言しているようですね。まぁ警察は真に受けていないようですが。ありきたりで、ごく自然な事ですね。部下の手際の良さには、思わず笑みを隠せません。

 

 

 

 それはともかく、八神はやてに関してはかなり計算外な事がありましたが、闇の書の修復イベントは無事に終了したことですし、ここはなのはちゃんの攻略に集中するべきでしょう。

 

「シドゥリお姉ちゃん、今日の鍛錬が終わりました」

 

 早速なのはちゃんが話しかけてきました。

 

「なのはちゃんそれじゃ、少し休憩してからフェイトちゃんと一緒に魔法の練習をしようか」

「うん、シドゥリお姉ちゃん」

 

 

 

なのはside

 

 魔法の練習をするようになって分かったんですが、シドゥリお姉ちゃんは本当に桁違いの強さです。お姉ちゃん曰く、才能と努力と経験だそうです。

 

 以前、お姉ちゃんが覚醒者であるという事を教えて貰いました。何でも17歳の頃に覚醒の法という魔法で覚醒者になり、それから年を取らずに520年以上も、全盛期の身体を更に大幅に強化した状態で生きてきたそうです。

 

 普通の人間は20年もたてば、体力も落ち身体能力も衰えます。リンカーコアも臓器の一種ですから、老化と共に衰えていまい、若い頃の様に強力な力を発揮できなくなるそうです。不老不死。それこそがそれを可能とするのです。

 

 例え、私が後30年鍛錬してもお姉ちゃんには到底届かないでしょうし、その頃には私は衰え始めています。才能だけならば、あるいはお姉ちゃんに近づけるものはあったかもしれません。でも、覚醒者の超人的な身体能力、様々な生体特異能力、不老不死による圧倒的な経験がないんです。

 

 お姉ちゃんの本国、ブリタニア帝国では高ランクの騎士にして覚醒者たちがお姉ちゃんに仕えています。私がお姉ちゃんの役に立ちたいと思っても、これでは足手まといにしかならないかもしれません。

 

 だから、フェイトちゃんは成長したら、覚醒者になるつもりのようです。なのはは、どうしたらいいんでしょうか?

 

 

 

シドゥリside

 

 魔力値を高くする方法としては、普通に鍛錬するというのもありますが、効率があまりよくなく時間がかかり過ぎます。そこでなのはちゃんとフェイトちゃんには魔力負荷をかけています。まずは魔力総量を上げつつ、基礎を一通り覚えてもらう為です。魔導師養成ギブスですね。

 

 魔力に負荷をかけて、日常での一挙手一投足に魔力を消費して、一日を終えて回復。これを繰り返す事で魔力を増大させて全体の底上げから始める。一気にパワーアップはしませんが、長期的に見ると良いと思うんだ。

 

 目の前にはフェイトちゃんとなのはちゃんがデバイスを持って魔法を使っています。

 ちなみに二人とも使用しているデバイスは訓練用のアームドデバイスで、カートリッジは搭載されていません。

 

 フルドライブは勿論、カートリッジは身体が出来上がっていない子供が使うには負担が大きすぎるんです。そもそも、子供を実戦に出す事を禁止している帝国では搭載しないのは当たり前です。というか本編のなのは撃墜も、カートリッジが原因の一つです。

 

 実は、帝国では就労条件として年齢制限があり、普通の職種では満15歳以上、軍隊や警察など危険を伴う職種では満17歳以上が原則です。これは法律でもそうなっています。

 管理局の様に極端に先天的な才能に依存している訳ではないので、能力があるからと精神的にも身体的にも未熟な子供を危険な職業に付けたり、実戦に出したりなどする必要がありません。というよりも、帝国では才能のある子供(魔法資格者)は、心身ともに健やかに育つようにちゃんと守ります。

 

 それは覚醒者になるにあたっては、身体だけでなく精神的な健全さも大切だからです。チャイルドソルジャーでもあるまいし、幼少期から実戦に出していれば、精神に負担がかかり心を病んでしまいかねない。管理局はこの問題をどう考えているのか、正直かなり疑問です。本編ではそういう事は出てこなかったしね。

 

 余談ですが、ブリタニアではカートリッジはあまり普及していません。元々、古代ベルカ式はカートリッジ搭載を前提であるアームドデバイスを使いますが、騎士が覚醒したときにある問題が発生したんです。それがデバイスの強度不足です。

 

 覚醒者の身体能力に、武器と身体能力の強化に特化したベルカ式による発揮される力は、魔法で強化したデバイスの強度をも上回り、破損の危険が発生したんです。元々、ベルカの騎士は、よほどの使い手でないと魔力による強化に頼って戦っていたんですが、覚醒したことでその前提が変わった。そのためカートリッジシステムの搭載を見送り、その分デバイスの強度を高める事が選択されました。まぁ貴族になれなかった魔法資格者たちが、デバイスにカートリッジを搭載することもありますので、完全に廃れたわけではないですが。

 

 

 

 なのはちゃんとフェイトちゃんは二人掛かりで、余の放つ中距離誘導射撃魔法『アクセルシューター』を迎撃しています。今回の練習は、アクセルシューターを同じ誘導射撃魔法で迎撃するものです。

 

 うむ、威力や速度を抑えているとはいえ、30発も撃っているのですが、なかなかやりますね。といっても余がちゃんと手加減しているわけです。

 

 しかし、想定以上に二人は才能がありました。デバイス無しでの基礎的な魔力制御は勿論ながら、基礎の魔法を使う所まであっさりとこなしましたよ。現在では魔力負荷を掛けて魔力総量の増強を行いつつも、訓練用デバイスで魔法の練習をする段階まできています。

 

 なのはは当初は感覚に頼りすぎる所がありましたが、知識移植によってきちんと基礎を理解するようになりました。魔法は物理や数学で術式を組むので、その知識は必須です。

 

「はい、ここまで!」

 

 余が頃合いを見計らって、訓練を終わらせる。なのはちゃんとフェイトちゃんはまだ幼い。無理をさせるとよくない。あまり疲れさせないように練習しないとね。余の考えに二人は大人しく従います。

 

 二人には自己練習はしないようにいっています。流石に勝手に練習されては、教える方として体調管理がやりにくいですから。二人には魔法の知識だけでなく、体調管理に関する知識も移植しているので、その辺りの説明は不要ですね。

 

 ビバッ! 知識移植! 凄く楽ですよ。必要な事を一々言わなくて良いですから。指導にしても説明が楽で良いんです。

 

 うむ、こうしてみると余の先生ぶりも結構板についてきたね。魔法の指導なんて、ここ百年ほどしていなかったから、結構不安でしたよ。だから、フェイトちゃんとなのはちゃんの指導するのに備えて、前もって魔法学校の教師や特殊戦技教導隊の意見も聞いて、彼等のやり方を調べましたよ。やっぱり専門家は参考になるよ。備えあれば憂い無し。余の準備の良さが身を結んだ結果ですね。

 

 でも、こうなると来年辺りに二人にちゃんとしたデバイスを与えておいた方が良いかもしれないね。身贔屓かもしれないけど、フェイトちゃんとなのはちゃんの実力からすると、何時までも訓練用デバイスでは無理だろうしね。

 

 レイジング・ハートとバルディシュはいらないのって? ぶっちゃけいりません。二人が覚えている魔法形式は古代ベルカ式です。ミッドチルダ式ではないんだよ。だから無理。大体、バルディシュはリニスが製作するフラグを潰したし、レイジング・ハートもPT事件が起きないから入手できません。

 

 えっ、はやてはどうしたかって? はやては私が夜天の者を修復したから、割とすぐにリハビリで歩けるようになりました。どうも麻痺が続いていた期間が、本編よりも短かったのが良かったようですね。それとも闇の書に、リンカーコアを浸食されている期間が短かったのが原因かな?

 

 それで、現在彼女はリィンフォースたちに魔法を教わっているよ。はやては現実世界からの憑依者だから魔法には興味があるみたいだね。まぁ自分が優れた才能を持っているとなれば尚更でしょう。

 

 そういえば、はやては憑依前は成人した男性だったそうです。その点では余と一緒のようだね。まぁその程度の共通点などいくらでもあるでしょうか。

 

 そんなこんなで、月日が過ぎて年が変わりました。

 

 

 

 新暦62年 1月。本編の無印開始の三年前です。本国で依頼しておいたなのはとフェイトのデバイスが届きました。早速フェイトと一緒に届けに行きます。というわけで高町家に付きました。

 

 ちなみになのはは今でも私の家に入り浸る事が多いです。というよりも士郎さんの鍛錬がないときは、大概私の家にいますね。私の家で食事を取り、寝ることが多い。何故かって? いや、実は高町家は翠屋がまだ安定していなくて、なのはの面倒を見切れていないんですよね。

 

 昨年、魔法を家族に伝えて以来、開き直ったなのはが私の家で寝泊まりするようになったんです。もうすっかりなつかれています。まぁ余も面倒なので、まったくフォローしていません。

 

 今でも、なのはは母と父、兄と姉が仲良し過ぎて、家族の中で疎外感を感じています。余はそれを知ってはいますが、高町家の面々に一々指摘していないんです。そんな事は自分で気付きなさい。

 

 今は士郎さんと鍛錬をしているので、高町家にいるようですね。そう言えば、士郎さんは原作では死亡して、本編ではあの大怪我が原因で、ボディーガードの引退を余儀なくされていたんですが、私が治療した所為でリハビリして全快してしまいました。さすがにリハビリには、それなりに時間がかかったようですが。その所為で、なのはに余計目が届かなくなってしまっていました。

 

「なのはちゃん、こんにちわ」

「あっ、シドゥリお姉ちゃん」

 

 余を見たなのはちゃんは、てくてくと近づいてきます。う~ん、やっぱりかわいいねぇ。頭をなでなでしてあげます。

 

「えへへ~」

 

 なのはちゃんにっこり笑ってくれます。本当に癒されますね。

 

「それでね今日はなのはちゃんに、ちゃんとしたデバイスを渡す事にしたんだ」

「ほんとですか?」

 

 なのはちゃんが目を輝かせながら聞いてきました。

 

「というわけで、これはグローブ型統括アームドデバイス『ストライク』よ」

 

 小さな赤い玉をなのはに手渡します。これがストライクの待機状態です。

 

「それと、フェイトには刀型アームドデバイス『ヴァジュラ』」

 

 ヴァジュラの待機状態は金色の三角形のデバイスである。私はそのヴァジュラをフェイトに手渡す。

 

 この二つの待機状態は、本編のレイジング・ハートとバルディシュを参考にしているんだ。でも性能は別物。

 

「後でこのデバイスの説明をするけど、ちゃんと聞いてね」

「「はいっ!!」」

 

 うん、いい返事だ! 素直でいいね。いろいろと苦労した甲斐があったよ。この二つのデバイスは、余がいろいろとネタ弄りをして完成させたものだから。

 

「じゃ、明日からは新デバイスを使った練習になるからね」




解説

 帝国では、低年齢者のカートリッジ使用は控えられています。確かにカートリッジは魔力を一時的に高めますが、騎士本人の能力を高めるわけではない上、身体への負担がかなりかかり、特に身体が出来上がっていない子供では問題になります。元々、実戦で使うわけではありませんし、カートリッジの需要がないわけです。そんなわけで、なのはとフェイトの新デバイスもカートリッジはありません。
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