ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

22 / 80
ブリタニアのナノテクロノジー

 人類進化研究所。そこはブリタニア帝国から許可を受けた人体実験を専門とする研究所だ。ここでは帝国各地の死刑囚が送られてくる。

 

 ちなみに帝国での通常の死刑とは、絞首刑や銃殺刑ではない。この研究所で死ぬまで人体実験をするのだ。研究所は死刑囚専用の牢獄であり、研究者は死刑執行人だ。

 

 このシステムは何もブリタニア帝国オリジナルのものではない。実は古代ベルカでも似たような仕組みはあった。そもそもベルカの聖王は遺伝子調整の結果として、聖王の鎧、レリックとの融合、高度の学習能力などを身につけている。それはどうやって開発されたのかというと、やはり人体実験だ。重犯罪者や捕虜などを使って研究を重ね、数多の犠牲の果ての成果を、当時のベルカ王族達は自らに施した。

 

 戦乱の続く古代ベルカでは、王族には兵器としての能力を求められていて、当然ながらシドゥリの能力にもその成果が使われていた。

 

 さて、この研究所で得られた多くのデータは、様々な事に利用されている。その一つにナノマシンがあげられる。現在ではナノマシンは医療分野や軍事に広く利用されている。

 

 医療用ナノマシンは人体を怪我や病気を治療する。魔法などの才能に依存しない医療技術だ。

 

 そして、軍事面ではIFS(イメージ・フィードバック・システム)として使われていた。IFSの元ネタは『機動戦艦ナデシコ』で登場する技術で、体内に入れたナノマシンが補助脳を形成して、機械に人間の意志をダイレクトに伝える操作システムだ。

 帝国では戦艦等をオペレートするオペレーター用IFSと機動兵器を操縦するパイロット用IFSがある。主にこの二種のIFSを軍事利用していた。

 

 ブリタニア軍ではIFSは非常に高く評価されていた。現在の軍艦や機動兵器は複雑で扱いにくく、特に機動兵器には相当な技量を必要としたが、このIFSを採用する事で容易に運用できるようになった。

 

 現在のブリタニア軍では、IFSは兵器の性能を十分に発揮させるのに必須のものとなっていた。

 

 これらの技術は皆、この研究所の人体実験を経て実用化された。

 

 そして、ナノマシンは魔法分野でもナノマシンデバイスとして登場した。これはベルカの融合騎を参考にして、体内に入れたナノマシンが疑似リンカーコアと補助脳を形成して、騎士の体内で魔法使用をサポートするデバイスだ。

 

 元々人間の脳は、それほど情報処理能力が優れているわけではないが、補助脳でその能力を大幅に強化していた。

 

 魔法運用の効率化と威力の強化。疑似リンカーコアの魔力出力は、AA+(100万位)で最大発揮はその三倍以上だ。この疑似リンカーコアは作り物なので、訓練等による出力強化は不可能だ。

 

 

 

「主任、例の二人のナノマシンデバイスの使用データが来ました」

「そうか、確か使用者はミッドチルダ人のクローンと地球人の少女だったな」

 

 ナノマシンデバイスはブリタニア人や皇帝陛下に対しては問題がなかったが、皇帝陛下以外の異世界人に対しては使ったことがない。だから、こうしたデータが届くのはありがたい。

 

「ええ、二人とも問題はありません。使用結果は良好です」

「ナノマシンデバイスは覚醒者との相性も悪くないが、使う貴族様はあまりおられないね」

「はぁ、そうですね」

 

 研究員は苦笑いをした。

 

 体内に機械を入れることになるこのデバイスを嫌う貴族は多い。とはいえ遠距離攻撃を行う者は使う傾向があるみたいだが、ナノマシンデバイスは騎士の高速演算処理を可能とし、砲撃の合間を減らし、誘導弾の数と制御精度の飛躍的向上を可能にした。おまけに処理速度が違うので、バインドの類も効果がない。

 

 どちらかというと、騎士よりも魔導師向きのデバイス。

 

 融合騎の適正が難しく融合事故などを起こすのは、意志を持っているからだ。人間には本来一つの意識しかないのに、融合騎の意識も取り入れるのだ。これでは危険だし、調整が面倒にもなる。だから人格などなく、補助脳による演算処理能力と魔力運用効率の向上と、疑似リンカーコアによる魔力値の向上に重点を絞っていた。

 

 その結果として適正も問われないし、融合騎よりも安全に使用者を強化できるようになった。まさに優秀なデバイスだ。

 

「でも使用者が少ないですね」

「ああ」

 

 研究主任と研究者の言葉には哀愁が漂っていた。

 

 ナノマシンデバイスは、開発に使った研究費を考えると、とても採算はとれていない代物だ。当時は皇帝陛下が特別に配慮して下さったおかげで問題はなかったが、医療分野や軍事分野での圧倒的な活躍から見れば、本当に日陰者の技術だ。

 

「まっ、いいじゃねえか。それよりも研究を進めんとな」

 

 それでも彼等研究者達は研究を進めるだけだ。彼等には他にもやらなければならない研究はたくさんある。




解説

 帝国ではナノテクノロジーが発達しており、ナノマシンデバイスは帝国では結構前に開発されたもので、現在では成熟している技術です。(使う人間は少ないが)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。