管理世界とは、時空管理局の傘下の世界のこと。一言で管理世界といっても管理世界になった経緯はそれぞれ異なる。旧暦時代に現在の最高評議会よって平定された世界もあれば、自ら進んで管理世界になった世界もある。
しかし、その中で管理局に砲戦外交で嫌々ながら加入させられた世界や、それを突っぱねたが故に管理局に武力征服されてしまった世界もある。
第246管理世界『ヴェルティゴ』は20年程前に管理局に征服された世界だ。
そのヴェルティゴは、元々は魔法至上主義の世界だ。魔法を使える王侯貴族が魔法を使えない平民を支配していた。
当時の文明レベルは低く、平民は長きに渡って魔法使いである貴族の奴隷扱いを受けていた。(某虚無の使い魔のハ○ケギニアに似ている社会)
しかし、文明の発達によって、科学技術が魔法を圧倒しだした。質量兵器と呼ばれるそれは魔法を破り、ついに魔法使いの圧政から平民を解放したのだった。市民の時代の到来。民主主義が成立して、魔法による身分のない世界。
更なる科学の発達は、既に旧時代の遺物と化していた魔法に新たな可能性を与えた。次元航行技術。それが誕生した。
当時、ヴェルティゴでは魔法技術は科学技術の補助として使われていた。魔法には厳しい規制が課せられていた。それはかつて魔法という力を持つ貴族たちが、魔法の力を持たない人々を見下し虐げた過去の教訓からだった。
しかし、次元航行技術の開発は、ヴェルティゴに外敵を呼ぶことになった。時空管理局の干渉。管理局は次元航行技術を持つに至ったヴェルティゴに、管理世界に入る事と質量兵器の廃絶を要求してきた。ヴェルティゴはそれを拒んだ。
彼等にとって質量兵器は、魔法という持つ者が持たざる者を虐げるという時代を終わらせた重要な力だった。また、安定した戦力を確保するためにも欠かせない物だ。それ故に管理局の侵略を受けて、ヴェルティゴは征服された。
敗戦後、管理世界となったヴェルティゴは、管理局の魔法至上主義と質量兵器廃絶の弊害に悩まされることとなった。
まともな規制もせずに、才能があれば誰もが魔法を学ぶという状況は、魔法犯罪を頻発させる事となった。彼等が懸念していたように、魔法の才を持つ者達は増長して、持たざる者を見下し始める。バインドを使った強姦、強盗など魔法犯罪は後を絶たない。
しかし、これらの魔法犯罪は大きく取り上げられる事はなかった。それは魔法の安全性を主張する管理局にとって邪魔な情報でしかない。そして彼等は自分たちにとって都合の良い、質量兵器の危険性ばかりを強調する。
おまけに質量兵器を廃棄させられたものだから、治安維持の人材すらまともに確保できずに、治安の急速な悪化を招いた。それは経済の停滞を招き、社会全体に暗い影を落としていく。
更に技術の停滞も発生していた。というのも管理局は質量兵器に繋がるからと、魔力以外の動力も禁止してしまい、(核エネルギー関係や内燃機関等)基礎物理学の研究にも厳しい規制をかけたのだ。
科学者たちは手枷足枷を付けられてしまい、思うように研究できないでした。かといって下手なことをすれば、管理局法という一方的な法律で犯罪者として裁かれるだけだ。
管理世界にさせられてから、科学者の数が激減している。管理世界ではまともに食っていけないから、それも当然だろう。次世代の科学者が育たない状況では、技術の発展が停滞して当たり前だ。
そのヴェルティゴの政治家である彼は、管理局に怒りを感じていた。
管理局は質量兵器の危険性を誇張している。『一度作ってしまえばスイッチ一つで使えて、子供でも簡単に都市や世界を滅ぼせる』と言うが、普通に考えればその様な大量破壊兵器の運用には高度な技術が必要だ。つまり高度の訓練を施された軍人たちが必要なのだ。拳銃ならばともなく、そんな大量破壊兵器を子供が使えるか!
大体そういう兵器は幾重にも人的・物的の安全装置が働く。高ランク魔導師が、本人の気まぐれで都市一つ壊滅できるのとは訳が違う。
おまけに『生物・建造物・環境を無差別に破壊する』とも言うが、なら管理局が使っているアルカンシェルや魔導砲は何だ? 管理局に都合の良い物だけ良くて、悪い物は駄目だという身勝手さが、彼には不満だった。
「所詮は魔法も質量兵器もただの力に過ぎない。要はそれを使う人間が肝心なのだ」
かつて魔法によって虐げられた我等の先祖が、質量兵器で圧政を終わらせて、人々を救ったように。彼は管理局の魔法至上主義には嫌気がさしていた。
そういえば、彼は先日面白い話を聞いた。かつてのヴェルティゴのように、管理局の武力侵攻を受けた管理外世界が、管理局の艦隊を返り討ちにしたという情報だ。久々に聞いた愉快な話。
「あの魔法馬鹿どもには良い薬だよ」
彼は管理局の敗北をそう嘲笑した。