戦闘機人事件。そもそも戦闘機人とは旧暦時代の人型兵器にその起源があるとされていた。とはいえ人型兵器は実用化が難しかったので、結局まともに実用化された例は皆無だった。
しかし、人間と機械の融合という新しいコンセプトによって、驚異的な性能を発揮するようになる。これが戦闘機人の始まり。勿論、それは管理局法に違反する違法研究であるので、摘発の対象となっていたのだが…。
ゼストside(新暦67年)
「お前にはもっと重要な案件があるはずだ。明日には指示する。そっちに移れ」
「ああ」
親友であるレジアスの言葉に俺はそう返した。俺は現在戦闘機人事件の捜査を行っている。だが、親友によって事件から外されそうになった。だから焦っていたのだろう。
「ナカジマ、アルピーノ、スターゲイザー。例の地点、突入捜査の予定を早めるぞ。今夜立つ準備をしろ」
「「了解」」
ナカジマとアルピーノが答える。しかし…。
「隊長、それは拙いのでは?上の指示に反することになります」
スターゲイザーだけは反対していた。
ルビア・スターゲイザー 一等空尉。空戦SSランクの騎士。俺の部下であるが、その戦闘能力は俺よりも遥かに高い。以前模擬戦をやったが圧倒された。
局員歴20年で、既に四十歳間近にも関わらず、見た目は17歳程度にしか見えない若作りの女だ。
どんな事件でも圧倒的な戦闘能力で片づけ、管理局ミッド地上部隊で最強といわれる彼女が、そんな言葉を言うのは初めてだった。
「スターゲイザー、これは命令だ」
「……わかりました」
スターゲイザーは了承した。だからその時のスターゲイザーの表情に、一瞬だけ嫌な予感を感じたのに注意を向けなかった。気のせいだと思ったのだ。
その日の夜。こうして俺達は施設に突入した。そこは今までの施設とは違い機械兵器が出てきた。どうやら当たりのようだ。今までの施設は突入したときには既に廃棄されていた。しかし、ここは違う。
俺達は機械兵器を倒しつつも施設の奧に進んでいく。心なしかスターゲイザーの動きが悪いようだ。どういう事だ? あいつならば、こんなもの相手にもならぬだろうに…。
そう思いながらも先に進み、そこで一人の少女と遭遇する。この状況からすると明らかに戦闘機人だ。
「くっ、もう実用化されていたのか?」
俺はその戦闘機人に切り掛かろうとしたが、(ドブッ)と後ろから胸を貫かれていた。後ろだと、後ろには…。
「ス、スターゲイザー、何故っ!?」
そう、スターゲイザーのアームドデバイスに俺の胸は貫かれていた。
「隊長、貴方が悪いんですよ。私の忠告を無視したから」
スターゲイザーが感情を抑えた顔で言った。
「最後に一つ教えておきます。私はこの施設の者達と関係があるんです」
その言葉に俺は愕然とする。ミッド地上部隊で最強の局員が、よりにもよって自分か担当している事件の犯人と内通していたからだ。
「お前も酷いヤツだな」
銀髪の少女も、スターゲイザーのやり口に呆れている。
「……ゼストはそれなりに強いから、私でもまともに戦うと倒すのに手間がかかる。できるだけ汗をかかずに、危険を犯さずに目的を達成しただけ」
スターゲイザーのその言葉を最後に、俺の意識は消えていった。
ルビアside
「やれやれ、君も酷い女だね」
スカリエッティも呆れている。仮にも仲間であったゼストを騙し討ちにした事を皮肉っているのだろう。
「別に管理局員がどうなろうと構わない。元々敵だしね。それよりも研究の方はどうなっているの?」
だが、そんな事は私にはどうでもいい事だ。目的を達成する事こそが至上なのだ。
「ああ、そっちは順調だよ、陛下にもよい報告ができるだろうさ」
「ならいいわ。それと私の事は貴方達が殺して、死体は始末したというシナリオで通してね」
「ああ、最高評議会にはそう報告しておくよ。しかし良かったのかい?」
「かまわないわ。そろそろ限界だしね」
管理局に潜入して20年。容姿があまりにも変わらないから不信に思われ始めている。もう頃合いだろう。帝国でも管理局に直接手の者を送るのではなく、管理局の外で活動することに切り替える事にしたらしい。『ルビア・スターゲイザー』は、ゼスト隊と共に殉職するという訳だ。
「私は引き上げるから、貴方は別の者が担当する事になるわ」
「ああ、わかったよ」
ならば、もう用はない。私は施設を後にした。
解説
■ルビア・スターゲイザー(本名不明)
偽名で管理局に潜り込んでいたブリタニア貴族。管理局内の工作活動の他、スカリエッティとの取引も担当していた。
後書き
本編では味方を庇って受けた負傷とAMFの効果もあって、チンクとの戦いで死亡したゼスト・グランガイツですが、この話では管理局に潜入していた覚醒者によって騙し討ちにされます。