ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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 この貴族候補生はブリタニア帝国記のおまけ編で、八神はやて(中身はチキン憑依者)の娘リリカが主人公になります。


おまけ編
貴族候補生 第一話(シドゥリ暦560年)


『ビ、ビビビビッ!?』

 

 柔らかいベッドの中で私『リリカ・ヤガミ』の意識は目覚まし時計の電子音によって、目覚めされられる。私はアラームを止めて起きる。時計の時間は5時30分を示していた。

 

 リリカの朝は割と早い。寝起きは普通なのですが、この朝の一時が少々きつい時があります。そんな私は着替えをして家に庭に出る。

 

 私のアームドデバイスによく似た練習用の薙刀を振るう。騎士である私はこうした武術の鍛錬が重要となる。アームドデバイス『ディアボルク』が常に魔力負荷を掛けているので、日常の動作だけでも魔力を使うのだ。

 一時間半ほど鍛錬するとこれが終わると、シャワーを浴びて汗を落とす。

 

 その後、母と一緒に朝食を食べる事を日課にしています。私の母は、ハヤテ・ヤガミ。元は夜天の主という称号を持つ、古代ベルカの遺産『夜天の書』の主だったのですが、現在では魔法研究所に務める平民の騎士です。

 

 魔法研究所は、貴族になれなかった又はなろうとしなかった魔法資格者が務める事が多い職場ですね。

 

帝国では、そういった魔法資格者は良妻賢母となって家庭に入ることを望まれています。これは魔法資質が遺伝する事が多いという特徴があるからです。だから出産による補助金が出るなど出産や育児に関して魔法資格者は優遇されています。そうすることで国民の魔法資質者の質を高める事が目的です。

 

 それでも結婚せずに働くという人もいるので、そういう人の受け皿として魔法研究所があるそうですね。まぁ魔法の研究もちゃんとやらせてはいるようですが…。

 

 ちなみにかつての管理局では、高ランク魔導師をかき集めて低年齢でも実戦投入されていました。そのため過酷な前線で殉職する事や、魔導師として再起不能になる事が多かったそうです。

 

 しかも成人しても、人手不足から忙しいために満足に妊娠、出産、育児などができない状態だった。つまり次世代の魔導師の育成がまともにできない。これは管理世界の魔導師の質を徐々に下げていく結果となっていた。実際、現在では旧管理世界の魔導師の質は結構落ちている。

 

 

 

 母は地球から移民してきた異世界人でおまけに魔法資格者です。なんでも皇帝陛下直々に便宜をはかって貰ったという話で、当時としてはそれなりに有名だったそうですね。

 

 ちなみにブリタニア帝国では異世界人というのは珍しい。これは帝国の国教にして唯一の宗教であるシドゥリ教が、国内限定であるが他宗教に対して排他的だからだ。だから移民を積極的に受け入れる国家ではない。

 

 勿論シドゥリ教に帰化すれば話は別だが、更にその中で魔法資格者になれるほどの娘ともなれば尚更数が少ないです。

 

 管理局崩壊以降は、次元世界からの移住の要望が来ていましたが、帝国は殆ど断っています。特に旧管理世界の住民は審査が厳しい。それは旧管理世界の住民は、質量兵器脅威論や魔法至上主義を子供の時から教えられており、そういった思想を帝国に持ち込まれると邪魔だからです。

 

「リリカ、どうかしたの?」

 

 あ、いけない食事中に考え事をし過ぎていた。

 

「ううん、なんでもないわ母さん」

「そう貴女は貴族を目指すのだから、しっかりしなさいね」

「うん、わかっているわ」

 

 私の母は貴族になる事自体は興味がありませんが、私自身は貴族になりたいと切望しています。幸い私は『魔法資格』を有しているし、貴族候補として恥ずかしくないだけの能力は持っていた。朝食を食べ終えた私はシドゥリ教会本部に向かう。

 

 

 

 首都星ヒルデガルドのシリウスシティにあるシドゥリ教会本部には、次世代の貴族を養成する聖ヒルデガルド女学院があります。

 

 学院の生徒は帝国各地から転移魔法で通学してきます。まぁ同じ世界から短距離転移しているだけですから、個人転送で十分です。その程度の事もできない者は、そもそも入学できません。

 

 ここでいう教会というのは、シドゥリ教の教会の事です。シドゥリ教というのは、この世界ブリタニアを統一しているブリタニア帝国を統治しておられる魔法皇帝シドゥリ・エルデルト・フォン・ヴァーブル様を信仰して、そのシドゥリ様の教えを伝えている、この世界で最大勢力の宗教。というよりも、このブリタニア帝国は、信教の自由は認められていないので、シドゥリ教以外は存在しない。別の世界では、聖王教とかキリスト教など色々な宗教が存在しているらしいが、この世界ブリタニアではシドゥリ教だけです。

 

 そうそう、シドゥリ教はあくまでこの世界限定の宗教であり、異世界での布教活動も禁止されているので、誰も異世界人に布教活動をするものはいない。シドゥリ教は、この世界では別の宗教を受け入れないが、異世界では布教活動は一切しないという特徴がある。

 

 そうこうしている内に教会に付いた。いつ見ても思うが此処の施設は凄い。まぁシドゥリ教会の本部だから当然かも知れないけど。

 

 聖ヒルデガルド女学院の修業年限は三年で、生徒数は割と多い。一年生、二年生、三年生がそれぞれ400人位で、学生全体で1200人程度。各地の魔法科の存在する魔法学校から推薦された生徒が入学している。

 

 魔法学校とは魔法科が存在する学院の通称です。最も魔法資格者の数が圧倒的に少ないので、魔法学校でも普通科の方が一般的です。

 

 この学校の推薦というのがかなり厳しい。数よりも質を最優先しているために、生半可な者では推薦されないのだ。

 

 人格、容姿、実力など総合的に評価されるが、誰も基準を満たせずに推薦者が一人もいないという学校も多い。まぁ中途半端な人間を推薦すると、魔法学校の評価が下がるので自然と審査が厳しくなるのだろう。

 

 文字通り帝国中の魔法資格者の精鋭が集めれれた貴族候補生を集めた学院で、その分生徒数が少ない。

 

 この学院の制服はブレザーとなっていて、私はこのブレザーを結構気に入っています。帝国でも貴族候補の少女達を引き立てるようにデザインされているらしいですね。生徒は私を含めて器量は良い人ばかりですから。

 

 メイクなどは基本的に禁止されています。何でも若い内からメイクをしていると、肌に良くないそうです。だから禁止されていなくてもする生徒はほとんどいません。

 

 

 

「おはよう、リリカ」

「うん、おはようエリス」

 

 エリスは紅い髪を腰の辺りまで伸ばした少女で私の親友だ。学校でも特に仲がいい。

 

「あら、リリカ貴女も来ていたの?」

 

 その声を聞いて私は眉を顰める。

 

「何よシンシア、私は貴女には用はないわ」

 

 シンシアは銀色の髪を尻の辺りまで伸ばして、鋭い目つきが特徴的な少女だ。私はこの女が嫌いだ。

 

「まったく、この栄光ある聖ヒルデガルド女学院に貴女みたいに蛮族の血を引く娘なんか相応しくないというのに…」

 

 シンシアの言葉に私が眉を顰める。シンシアはブリタニア至上主義者だ。現在のブリタニアは次元世界一の文明と勢力を誇る。だからブリタニアこそが次元世界一の世界であり、その他の世界を後進世界と見下している。シンシアは地球を見下し、地球の人間を蛮族と言う。

 

 皇帝陛下はそういった思想は好んでいない。そんな思想が蔓延すれば他世界との交流に支障が出るのは当然だし、そもそも皇帝陛下自身がブリタニア人ではなくベルカ人だ。その為、ブリタニア至上主義は余計な弊害しか生まないので好ましくないと教えられています。

 

 私から言わせれば、シンシアの様な極端なブリタニア至上主義者がこの学院に入学できた方が驚きだ。余程魔法学校の教師達がボンクラだったのか?

 

 この女の母親が帝国の伯爵だという話を聞いたことがあるから、母親が魔法学校に手を回したのかもしれない。

 

 いや、それはないか。貴族の選抜は、血筋や家柄に関係なく公平であるべきというのが決まり。いくら貴族の令嬢だからといっても、そんなことをすればその伯爵自身が皇帝陛下の叱責を受けることは間違いない。

 

 陛下から叱責を受けるということは貴族としては大変不名誉なこと。少しでも貴族としての誇りを持つならば誰もが嫌がる。

 

 おまけに下手をすれば貴族に相応しくないとして粛正されかねない。だからそんな危険な事をするとは思えない。となると単に魔法学校の教師達の目が節穴だったのだろう。

 

 シンシアは貴族の令嬢であることをいいことに傲慢に振る舞うから、周りからも反感を買っている。

 

「エリス行きましょう」

 

 私はエリスを連れて教室に向かう。シンシアに関わりたくない。どうしてもあの女とは馬が合わない。

 

 しかし、ここで下手に喧嘩沙汰になれば困ります。そんなことになれば総大司教様や教官達の耳に入るだろうし、私の評価も下がる。貴族選抜を控えた大切なこの時期にそれは致命的だ。

 

 シンシアもそれは分かっているのだろう。私に嫌みを言っても、それ以上は突っかかってこない。

 

 教室に入り、私はクラスメートと無難な挨拶を済ませると席について、今日の授業の最初の科目を思い出す。たしか貴族の心構えだったね。

 

 

 

 ブリタニアの貴族はいくつかの特権もあるが、義務も存在しています。覚醒者の能力と貴族の特権と義務がセットになっています。これはシステム上そうなっているだよね。

 

 強い力にはそれなりの責任が生じる。覚醒の法はブリタニア帝国の秘術であるから、その恩恵を受けるには帝国への奉仕が必要だ。皇帝陛下に忠誠を誓い、帝国のために働く。

 

 やりようによっては社会を崩壊できる覚醒者の能力は危険なので、帝国では貴族には幾つもの掟が存在しています。軽い物であれば多少の罰則で済みますが、酷い場合は問答無用で粛正されます。でも、これは多数の覚醒者が秩序を持って国家に所属するには必要な事です。そうしないと纏めようがないですから。

 

 ちなみに貴族の掟は普通にやっていれば抵触しない物ばかりです。

 

 この学院ではそうした掟も学び、これを受け入れた上で貴族になることを志願する者が貴族に選ばれます。勿論心変わりして、学院の生徒でも志願しないというのも自由です。その場合もペナルティはありません。あくまで志願する者達が貴族に選ばれる訳ですから。

 

 

 

 また覚醒者になると色々と問題が付きます。

 

 何の対処もせずに紫外線を浴びると身体が崩壊してしまう。それに動物の血液がそれなりの量必要になるなど。

 

 一般には大量の血液を必要とする事は知られていますが、紫外線に関しては秘匿されています。これは貴族達が自らの弱点を一般に知られるのを嫌ったためですね。

 

 この弱点に関しては、私も聖ヒルデガルド女学院に入学してから知りました。私達生徒はこの事に関しては守秘義務があり、これを破ると罰則を受けます。これは卒業してからもそうで、生涯秘密にしなければなりません。

 

 血液に関しては、大量の血液を平民に用意させるのですからどうせ隠しきれないという事情もあり、一般に公表されている訳ですね。

 

 

 

 貴族の心構えの授業が終わると、軍の士官教育の授業。貴族に選ばれた者は、学校を卒業後に軍に十年間の兵役義務が課せられています。これは国家への奉仕でもありますが、新人の覚醒者に実戦と訓練の場を与えるという意味もある。

 

 いくら覚醒者でも、ちゃんと訓練しないと能力を最大限に発揮できない。その点、軍では先輩の貴族達が多くいますので、彼女たちから教導を受けて訓練していくという訳です。

 

 学院ではこの兵役に備えて仕官教育も受けている。勿論、貴族にならない者やなれなかった者には兵役義務はない。

 

 今日の授業が終わると、部活に向かうために私は席を立った。

 

「リリカ、一緒に部活に行きましょう」

「そうだね」

 

 エリスの誘いに私は答える。私とエリスは同じ部に所属していた。この学院では部活動はあるが基本的に武術関連の部活動が盛んです。

 

 自らの武器と共に戦うのが騎士ですが、薙刀を使う者もいれば剣を使う者もいます。それぞれ使う武器がバラバラですよ。これは自分の使いやすい武器を徹底的に鍛えるという帝国の方針からそうなっています。

 

 そうなると自然と同じ武器を使う者達が集まって鍛錬をするようになり、武術関連の部活動が盛んになる。私が所属している薙刀部もその一つです。やはり同じ得物を使う者と練習した方が良いですからね。とはいえ全く他の武器を使う者と訓練する事は無いわけではなく、たまに剣術部だの槍術部だのと合同練習をしますね。他の武器との戦いもある程度経験しておくと実戦で役に立ちますから。

 

 私は今日もエリスと共に部活に向かった。




解説

■リリカ・ヤガミ(16歳)
 貴族候補生のオリジナル主人公。膝の辺りまで伸ばした茶色の髪で、顔付きは母親のハヤテにそっくりです。リリカは移民二世という立場であり、その為ブリタニア至上主義者には受けが悪い。母親譲りの強力な魔力資質から貴族候補としても有力で、将来を有望視されている。騎士ランクは空戦SSで魔力光は銀色。

■ディアボルク
 薙刀型のアームドデバイス。変形しないし、人工知能も搭載されていないが、その分強度と処理速度に優れている。カートリッジシステムは搭載していない。



後書き

 主人公をリリカに変更してブリタニア帝国記のおまけ編を書いてみました。このおまけ編では貴族候補生リリカの学生生活となる予定です。
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