ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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貴族候補生 第四話(シドゥリ暦560年)

 覚醒者。それは覚醒の法という古代ベルカ式魔法の秘術で、脳の眠っている力を目覚めさせてなる存在。それはブリタニア人の場合は基本的にシドゥリ教会の教皇聖下に直接魔法をかけられる。

 

 私は身を清めてその儀式に望みます。身を清めると言っても大概身体を洗う位ですね。

 

 ブリタニア人の女性の多くは無駄毛が生えていない。これは文化的に女性は髪の毛・眉毛・睫毛以外の体毛は処理するのが身だしなみであるという考えがあります。

 

 これは正確にはシドゥリ様の教えから広まったものです。だから私もそういう腋毛や陰毛などの無駄毛は永久脱毛しています。こういった毛は体臭の原因になるから、衛生的にもあまり良くないというのもあります。

 

 後、貴族候補生は在学中に妊娠してはいけないという決まりがあります。これは別に異性や同性との性的な付き合いを規制しているわけではなく、学院内や教会内で風紀を乱す行為をせずに、きちんと避妊すればいい。要はいちゃつく場所を選べば良い。

 

 妊娠に関しては覚醒すると妊娠中の子供まで成長が止まってしまうので、下手に妊婦を覚醒させるのは拙いですから妊娠は駄目なんです。それ以前に学生の妊娠出産など風紀を乱すので論外でしょう。

 

 ちなみに覚醒者になると自然妊娠ができないので、自分の遺伝子を使って他の人間の遺伝子と組み合わせて人工子宮で子供を作ります。貴族が子供を欲しくなったらこの方法を使うそうです。

 

 それと、帝国では特に処女性を重視しているわけではありません。日本とかでは神に仕える巫女=処女という考えがあるようですが、帝国では信仰の対象にして主君であるシドゥリ様に仕える巫女という立場の貴族の処女性はどうでもいいというわけです。これは文化の違いというわけかな?

 

 ちなみに私は処女ですよ。男と付き合うほど暇ではありませんでしたから。別にもてないわけじゃないよ(汗)。これでも器量はいいんだから。

 

 

 

 そして私は教皇聖下の前にいます。ここは教会本部の大聖堂。覚醒の儀といわれる覚醒者の誕生させる儀式は、シドゥリ教会でも神聖な物です。だから大聖堂で聖下自ら取り仕切ります。

 

 聖下の覚醒の法が私の脳に干渉する。それは脳を基点として身体の隅々まで変えていく。

 

 のどが渇く。私は予め用意されていた家畜の血が大量に入った樽に向かい、その中身に手を突っ込んで血を飲む。覚醒直後は異様に血が欲しくなるので、最初に大量の血を飲む。これは最初に説明されていました。

 

 樽に入れられた血がどんどん無くなっていく。私は大量の血を飲むことで飢えを癒す。力が漲る。まるで生まれ変わったかのような感覚。明らかに先程とは違う。

 

 覚醒者は血を飲む事に力を上げていくので、長く生きて沢山血を飲んでいる者は能力が高い。といっても闇雲な暴飲暴食は良くないので、適量の血を取り込んで力を蓄えていくのが望ましい。だから成り立ての私では古参の覚醒者ほどの力を発揮できないですが、それでも今の私は全身から力が漲るのを感じています。これが覚醒者ですか…。

 

「おめでとうリリカ。貴女には帝国よりアークラインという家名を送られているわ。以後そう名乗りなさい」

 

 聖下からの祝福の言葉が大聖堂で厳かに聞こえた。これがブリタニアの貴族『リリカ・フォン・アークライン』の誕生の瞬間。

 

 

 

 数日後。

 

「それでは皆さんも将来の進路をよく考えましょう」

 

 ホームルームを締め括る教師の言葉。

 

「進路かあ…」

「リリカは良いよね。もう貴族になったんだし」

 

 エリスは羨ましそうだ。

 

「確かにね。私は卒業後は軍に入るけどエリスは?」

 

 貴族となった私は10年間の兵役をこなさなければならない。

 

「う~ん、貴族に選ばれたらそうするつもりだけど、無理だったら結婚して家庭に入りたいな」

 

 結婚。確かに魔法資格者は子供を出産すれば、国からの補助金が出ます。これは子供を一人出産するごとに出るもので、魔法学校卒業者でもそれなりの金額だが、聖ヒルデガルド女学院卒業者の場合補助金が優遇されています。その為、より多くの補助金を求めて学院に入学する生徒もいます。

 

 これらの制度は次世代の騎士の質を高めるために設けられています。この学院を卒業できるだけの能力を持つのならば、その血を次世代に多く残すべきという訳です。エリスもそうなのかな? エリスからは貴族になりたいという意欲があまり感じられないし。

 

 私の母ハヤテは、魔法研究所に勤務していますが、それは離婚したからです。

 

 ブリタニアでは魔法資格者と結婚することは、一種のステータスになっています。おまけに一夫多婦制が認められているから、社会的・経済的に裕福な男は複数の妻を持つことが多いです。実際、父もそうでした。

 

 逆に経済的に裕福でなかったり少々貧乏だったりすると、妻は一人だけというのが普通ですが。

 

 さて、そんな父ですが、複数の妻を持つと言うことは人間関係が複雑で、それで色々と揉めたそうです。その結果として、母は私を引き取ってシングルマザーをしています。

 

 ブリタニアではこういう事が多くて社会問題になっています。やっぱり家庭でも人が多いと問題がおこり易いですね。複数の妻を持つのは良いんですが、関係者には人間関係を円満に保つ努力も必要なんです。

 

 夫が妻達の間でもめ事が起きないように平等に愛して妻達の仲が良好でないと色々と大変ですよ。まぁその辺りは私にとってどうでもいいですが。

 

 

 

 今の私の服装は学院の制服ですか、貴族候補生とは別の種類のブレザー服です。これは貴族になった者の証というか、それを見分ける物で、実はこれは騎士甲冑なんです。

 

 覚醒者になると紫外線対策の為に日中は常に紫外線に対処しなければなりません。だからブレザー姿の騎士甲冑を纏うことで、それに対応しています。

 

 覚醒した翌日に、この恰好で登校した私をクラスの誰もが一度は見たでしょう。

 

 エリスは親友として素直に喜んでくれました。でもシンシアは忌々しそうに、「貴女が貴族になるなんて世も末ですね」などという暴言を吐いたが。まぁあの女ならばそういうのは当然ですね。

 

 正直、シンシアをぶちのめそうかと思いましたが、やはり在学中にもめ事は拙いですね。

 

 確かシンシアは17歳だけど未だに貴族になっていないので僻みもあるのでしょう。正直に言って最早どうでもいい。今の私は覚醒者となったこの能力を更に高める事に関心があります。

 

 ナノマシンデバイス。それが私の興味がある物。このデバイスは一応機密扱いですから貴族でないと入手できませんが、今の私ならば入手可能です。私のこの力を更に高めるそれは是非欲しい。

 

 メンテナンスフリーで騎士としての能力を圧倒的に高めるそれは、人体に機械を取り入れるという事に目をつぶって余りあるメリットがある。

 

 既にデバイスを発注しておいたので、手に入るのも時間の問題です。それで私は更に強くなる。高い魔法資質を持って生まれた私は自らの能力を磨くことに興味があった。

 

 軍の特殊部隊ローゼンリッターは私と同じ覚醒者ばかりだ。だから鍛錬の相手には事欠かないだろう。

 

 老いから解放されたので、時間をかけて鍛えることができる。平民のように生き急ぐ必要がない。老化による衰えがないのだから。

 

 それは女として、とても嬉しい事。いつまでも若い。いつまでも美しい。私はそれを手に入れた。

 

 美しさを引き出すのは何かと聞かれれば、平民の女性は服、化粧、宝石などと答えるでしょう。でも私は若さだと思う。いくら着飾っても肝心の中身が老いてしまっては意味がない。若さこそが究極の美。

 

 生まれ持った器量が悪ければ諦めもつくが、私は器量が良い方だ。だから尚更自分が老いるのは我慢ならない。我が儘なのは自覚しているけど、誰もが一度は願うこと。

 平民の女性の多くが貴族に羨望するのは、当たり前です。私もそうだったんですから。

 

 魔法資格を手に入れ、望めばそれになりうる立場にいた私は当然ながら貴族になることを目指した。そして私は貴族となった。勿論、貴族となれば制約は出てきます。

 

 しかしそれを度外視しても問題ないほどに貴族になることは魅力的です。

 それに貴族になれば覚醒者となることで出る問題もフォローしてくれるので、総合的に見れば私達にとっても利益になる。

 

 

 

「エリスなら大丈夫だよ。エリスならどちらにしても上手くいくと思うよ。貴族になるにしても家庭に入るのもね」

 

 これは私の本心だ。エリスは良い娘だ。同性の私が見てもそう思う。だからきっと上手くいく。私のその言葉は意外だったのだろうエリスはやや驚いた顔をする。

 

「ありがとうリリカ」

 

 でもエリスは私にそう微笑んでくれた。エリスの微笑みを私は結構気に入っている。まぁ私はそっちの趣味じゃないけどね。晴天の日差しの中で私とエリスはたわいもない話をした。




後書き

 帝国の貴族選抜に触れるために、貴族候補生を書いてみました。帝国は石仮面の秘密に気付いたリリカを貴族にして取り込むことで、手の届く所に置いて監視するという対応をしています。はやてに関しては、一夫多婦制で人間関係に問題が起こって離婚したという設定です。やっぱり、一部ではこういう問題も出て来るんじゃないかと思います。
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