ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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異端の騎士 第三話

シドゥリ暦603年

 

 玉座の前で一人の少女が跪いていた。

 

「さてシルビア、何故呼ばれたか分かっていますね?」

 

 シルビアは帝国の伯爵を務めている中堅の貴族だ。それなりに貴族としての誇りを持ち合わせているが、今回のことはその彼女をして怯えさせるに十分な事だった。

 

 よりにもよって自分の娘が、シドゥリ教会本部の宝物庫から皇帝陛下の宝物を盗み出した挙げ句に、機密の塊である並行世界への転移装置を不正利用して逃亡した。前代未聞の不祥事。

 

「わたくしの娘のことでしょうか?」

 

 シルビアの外見は長い銀色を持つ美少女。だが貴族である以上見た目通りの年齢ではない。

 

「そうよ。よく分かっているわね」

「皇帝陛下、このシルビア今回の不始末は如何なる処分も受ける覚悟はできております」

「今更お前を裁いても仕方がない。大体成人した者の罪は本人だけが負うものよ。だけどお前に不信の目を向ける者もいるのも事実。それにクロノス計画はお前が担当していたからね」

 

 クロノス計画。それは並行世界の調査を行う計画で、ブリタニア帝国の国家計画であった。

 

 これを取り仕切っていたのがシルビアであったが、よりにもよってシルビアの実の娘が要となる転送装置を不正利用したことで、その関与が疑われてしまう。実際シンシアの逃亡を手引きした人間がいたことから、尚更母親のシルビアも関与が疑われていた。

 

 帝国の調査の結果、犯行に関与した証拠は出なかったが、この手の疑いはなかなか晴れない。

 

「いずれにしてもクロノス計画から貴女を外します。これは決定事項よ」

「わかりました」

 

 シドゥリの言葉にシルビアは粛々と従う。今の自分の立場を考えれば反論などできない。下手なことを言っても立場が余計に悪くなるだけ。

 

「では、もういいわ下がりなさい」

「はっ」

 

 皇帝に下がれと言われれば速やかに去らねばならない。これ以上この場にいても余計に皇帝の不興を買うだけ。シルビアはシドゥリに一礼するとその場を去っていった。

 

「はぁ、マリーナ。計画責任者の後任人事は貴女に任せるわ」

「はい。陛下よしなにとり計らっておきます。しかしシルビアの処置はあれだけで良かったのですか?」

 

 今回の件は一般に公開されていないとはいえ、政府等の人間は知っている者も多い。普通は、爵位降格処分なども考えられる。

 

「明確な証拠がでていない以上、処罰を与えようがないでしょう?」

「確かにそうですね」

 

 シドゥリの溜息混じりの言葉にマリーナは頷いた。

 

 

 

 ある無人世界。辺り一面に広がる砂漠。ここは人間が住んでおらず、管理局の基準では無人世界に分類させている世界。

 

「どうやら、ここもハズレみたいだね」

 

 その無人世界にリリカがいた。

 

 あれから三ヶ月ほど、リリカは特定の管理外世界や無人世界を虱潰しに探していたが、ターゲットの魔力反応は感知されなかった。虚数空間に待機させている戦艦のサポートを受けているとはいえ、この作業は骨が折れる。

 

 取り敢えず魔法文明の存在しない管理外世界や無人世界を捜索していた。下手に魔法文明のある世界を探査すると、マジックユーザーたる人間の数が多すぎて時間的に無理だからだ。

 

 この世界も惑星規模の広範囲で探査しているが反応はない。

 

「次に行くか」

 

 そういうと足下に銀色に輝く三角形を展開して、リリカは次元転移した。

 

 

 

なのはside

 

 私、高町なのはは平凡な小学三年生の筈だったんですが、現在普通じゃない事態に遭遇しています。

 

『助けて』という声が聞こえて、その声に導かれるままにその場に向かったなのは。いつの間にか景色がおかしくなり、正体不明の怪物がその場にいた。状況が分からず混乱する。

 

 そこに一匹の小さな動物(フェレット)がなのはの元に逃げ込んで来た。

 

「来てくれたんだね」

「しゃ、喋ったの!?」

 

 小動物、フェレットさんがいきなり人間の言葉を言ったのでビックリしました。そんななのはの反応に構わず、フェレットさんが話します。

 

「お願い、僕に少しだけ力を貸して!君には資質がある」

「資質?」

 

 何の事だろう?

 

「僕はある探し物の為に、ここではない別の世界から来ました。でも、僕一人の力では想いを遂げられないかも知れない。だ、だから迷惑だとは分かっているのですが、資質を持った人に協力して欲しくて、お願いです、御礼はします。魔法の力を君に使って欲しいんです」

 

「魔法?それは…」

 

 どういう事か、聞こうとしたんですが、怪物が私を襲ってきました。とっさに私はフェレットさんを持って電柱の陰に隠れます。

 

「お、御礼は必ずしますから!」

「御礼とか、そんな事言っている場合じゃないの!」

 

 御礼以前に大ピンチです。何ですか、この状況は? 後ろを見ると、怪物がこちらを見ている。何かすぐにも襲いかかって来そうです。

 

「ど、どうすればいいの?」

「これを!」

 

 そう言って、フェレットさんが渡してくれたのは自分が持っていた宝石でした。

 

「それを手に、目を閉じて、心を澄まして!僕の言うとおりに繰り返して!」

「う、うん、ってきゃあ!」

 

 あの子がくれた宝石を手に、目を瞑り心を澄ませようとしたら、さっきまで動いていなかった怪物が動き私を襲ってきました。私はそれを辛うじて避けましたが、地面に倒れてしまった。そして怪物が追い打ちを駆けるかのように私に襲いかかってきます。

 

「!!!」

 

 私は恐怖のあまり目をつぶり、身を固くした。

 

 いつまで経っても何もおきなかったので、なのはは恐る恐る目を開ける。なのはの目の前の空間に、銀色に輝く三角形の魔法陣が展開されていて、怪物は魔法陣に阻まれていました。何ですか?これは。

 

「なっ、シールド魔法の遠隔展開!?」

 

 フェレットさんが驚いています。凄いことなんでしょうか?

 

「……フェレットと魔法生物?いずれにしてもハズレね」

 

 後ろから溜息混じりの声が聞こえました。

 

 その声になのはは思わず後ろを振り返った。そこには綺麗なお姉さんがいました。年の頃は17歳ほど、茶色の髪を膝の辺りまで伸ばしたブレザー姿の少女。

 

「魔導師、いやベルカ式魔法?何故こんな所に?」

 

 フェレットさんも驚いているようです。先程から異常な事になのはは混乱しています。

 

「彼女は何者なんだ。いや、それよりもこれは好期だ。君準備はいい?」

 

 その言葉に私は頷く。

 

「我、使命を受けし者なり」

「わ、我、使命を受けし者なり」

「契約の元、その力を解き放て」

「えっと、契約の元、その力を解き放て」

「風は空に、星は天に」

「風は空に、星は天に」

「そして、不屈の心は…」

「そして、不屈の心は…」

「「この胸に!」」

「「この手に魔法を!レイジングハート、セットアップ!」」

『スタンバイ、レディ、セットアップ』

 

 宝石から、光りが溢れ天に昇る。

 

「凄い魔力だ。はっ、落ち着いてイメージして!君の魔法を制御する、魔法の杖の姿を!そして君の身を護る強い服のイメージを!」

「そんな急に言われても、えっと~」

 

 私の体が桜色の光に包まれ、姿が変わる。再生が終わり、お姉さんを見ていた怪物はなのはの光に怯んでいた。

 

「やった!成功だ!」

 

 フェレットさんが喜びの声をあげている。

 

 気が付けば私は、先端に金の部品とそれに守られた赤い玉それに桃色の柄の杖を持っていました。そして服装も聖祥小学校の制服に似た服に変わっています。

 

「…準備はできたようね。後は貴方達で何とかしなさい」

 

 お姉さんがそういうと遠隔展開されていたシールドが消えました。邪魔なシールドが消えたので怪物が私に突進してきます。

 

 私は思わずインテリジェンスデバイス『レイジングハート』を前に出して目をつぶります。

 

『プロテクション』

 

 桃色のバリアが展開されて、怪物の突進を防ぎました。怪物は後ろの大きく跳ね飛ばされて倒れた。

 

「僕らの魔法は、発動体に組み込んだプログラムと呼ばれる方式です。そしてあれは忌まわしき力の元に生み出された思念体で、止めるには封印して元の姿に戻さなきゃいけません」

「よくわからないけどどうすれば」

「さっきみたいに攻撃や防御などの基本魔法は心に願うだけで発動しますが、より大きな力を必要とする魔法には呪文が必要なんです。」

「呪文?」

「そう、心を澄ませて。心の中にあなたの呪文が浮かぶはずです。」

 

 私はその言葉に従って、再びレイジングハートを怪物に向ける。

 

「リリカル、マジカル…封印すべきは忌まわしき器!ジュエルシード封印!」

『シーリングモード、セットアップ』

 レイジングハートの先端が変わり、放たれた攻撃が怪物に直撃した。

 

『スタンバイ、レディ』

「ジュエルシード!シリアル21、封印!」

 

 レイジングハートから放たれた攻撃は怪物を包み込んで、消してしまいました。その場には青い宝石があります。

 

「これが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れてみてください」

「う、うん」

 

 私はフェレットさんの言うとおりにすると、レイジングハートの中に青い宝石が入った。

 

「お、終わったの?」

「はい。君のおかげで無事に終わりです」

 

 私の言葉にフェレットさんが頷きました。




解説

■シールド魔法の遠隔展開。
 シールド魔法は通常本人のすぐ正面に展開される防御魔法です。リリカは自分の側ではなくある程度離れたなのはの前にシールドを遠隔展開しましたが、これは本来高等技術でなかなか真似できるのもではない。リリカの場合は、騎士としての鍛錬によって磨かれた高い能力があるので簡単に行使できる。
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