ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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異端の騎士 第四話

シドゥリ暦603年

 

「ミコト、今回の石仮面の件はどういうことかしら?」

「それは、申し訳ごさいません陛下」

 

 シドゥリ教会の教皇を務めるミコトが玉座に向かって頭を下げていた。

 

「前回の事件の時はお前の忠義に免じて不問としたが、またしても不祥事が起こるとはね」

 

 シドゥリは溜息混じりに言います。

 

 いくらなんでも不問にするには問題があります。でもだからといってミコトを裁くのは拙い。教皇は帝国にとって重要な地位だ。だから皇帝に絶対服従で、信頼できる者でないといけない。

 

「とりあえず教会に預けていた貴重品は全てこちらに返して貰うわ。石仮面も取り返し次第こちらで管理する」

 

 これは必要な処置。正直教会の管理能力を疑問視する者もいる。まんまと宝物を盗まれたとあってはそれも当然。そうでもしないと彼等も納得しないでしょう。

 

 教会は元来帝国の傘下というか帝国の道具ですが、それでも体面上は独立した宗教組織という建前ですから形は通しておかないといけない。

 

「ミコト、それと個人的にお仕置きです。今晩の夜伽を命じます」

 

 そういえばミコトに夜伽を命じるのは久しぶりですね。お仕置きですから、ちょっと過激なプレイをしてみようかな?

 

「は、はい。陛下」

 

 シドゥリの露骨な命令にミコトは顔を赤らめつつも頷く。ふむ、こういうミコトもなかなか可愛いね。

 

 その日の夜、皇帝の寝室から女性の喘ぎ声が聞こえた。

 

 

 

 第97管理外世界 現地惑星名『地球』。そこは魔法文明が存在しない世界。

 

「…登録外の魔力反応?確かこの世界は魔法文明の無い管理外世界の筈」

 

 管理外世界に魔導師が移住する場合は管理局の許可が必要だ。そうした者の場合、管理局に登録されている。だからハッキングで管理局のデータを入手しているリリカは、それらの人物のデータを保有していた。

 

 この世界の場合はギル・グレアムとその使い魔しかマジックユーザーはいない筈だが、この魔力波長は登録しているものではない。これは当たりかな? 私はその反応を場所に向かった。

 

 私がその場に付いたとき、怪物が少女に襲いかかろうとしていた。状況がよく分からないが、取り敢えずシールドを張っておくか。

 

「……フェレットと魔法生物?いずれにしてもハズレね」

 

 魔法波長が感知されたその場にいたのは何れも標的ではない。そう簡単に見つからないとはわかっているが、それでも思わず溜息混じりにそう言いたくなる。

 

 フェレットや魔法生物などお呼びじゃありません。そこにいる少女も明らかに違いますし。

 

 あれ? あの少女はナノハ様に似ているような? でも帝国が存在しないこの世界では、あの人は普通の平凡な一般人の筈。

 

「……どういう事?この世界ではこれが流れかしら?」

 

 帝国が存在していなくても魔法に関わるという運命だったかな? まぁいいでしょう。所詮は並行世界。無限の可能性の一つに過ぎない。あの少女も私の知っているナノハ様とは別人だし。

 

 そうこうしている内に少女がデバイスを起動させた。

 

「…準備はできたようね。後は貴方達で何とかしなさい」

 

 私はシールドを解除した。元々手助けしてやる必要はないから私は観戦する事にした。

 

 戦闘が終わったが、一連の動きを見て明らかにこの少女は素人だ。

 

「あの助けてくれて有り難うございます」

 

 少女が私にお礼を言った。

 

「気にしなくて良いわ。私はただの通りすがりですから」

「あの私、高町なのはです。貴女は?」

 高町なのは。やはりそうですか。予想通りです。

 

「私はリリカ・フォン・アークラインよ」

「えっと、リリカさんですか」

 

 なのはは私の名前に戸惑っているようだ。そういえば彼女は日本人だからブリタニアの貴族の名前は馴染みがないのでしょう。

 

「ええっ『リリカ・フォン・アークライン』!?」

 

 なのはの反応は普通だったが、フェレットは驚いていた。そういえば管理世界では有名になっていた。このフェレットは管理世界の住民かな。それが何で管理外世界にいるのか。先程の魔法生物の件といい多少気になった。

 

 その時パトカーのサイレン音が聞こえてきた。見れば周囲の壁や道路も結構壊れている。

 

「ああ、どうしよう?」

 

 なのはが慌てている。

 

「ここにいれば面倒なことになりそうね。仕方ない」

 

 私はなのはとフェレットを抱えて、飛行魔法でその場を離れる。

 

「え、ええっ」

 

 いきなり空を飛んだのでなのはは戸惑っていた。やはり素人か飛行魔法も知らないようだし。なのはは魔法絡みの一件に巻き込まれただけかな。

 

 ある程度離れた公園で降りた。

 

「それでこれはどういうことかしら?」

 

 私はフェレットに事情を聞く。

 

 なのはは明らかに状況がよく分かっていないから、このフェレットが何か知っている筈だ。というわけで、事情を話してもらうことにした。

 

 

 

「ジュエルシード、確か次元干渉型の魔力結晶だったわね」

 

 私はユーノの説明を聞いていた。話によるとこのフェレットはユーノ・スクライアと言う名前で、ロストロギアジュエルシードを発掘したらしい。

 

 あのスクライア一族のことであろう。正直あの一族は好きではない。あちこちの世界の遺跡を勝手に発掘して、出土した遺産などを売って生計を立てている流浪の一族だが、ぶっちゃければ墓荒らしをして宝物を盗んでいるようなもの。一応、考古学の為と言っているが、荒らされる文明の人間からすれば不快だろう。

 

 ジェエルシードは、以前見た管理局のロストロギアリストにのっていた。管理局が健在だった時代に、帝国は諜報活動で管理局のデータを入手しており、それが元になってロストロギアリストが後に作られました。といってもリストだけで実物はありません。大半がJS事件で本局と一緒に消滅したらしいですから。

 

 現在では、あくまでこんなものがあったんですよという資料に過ぎない。でもこの世界ではそれなりに役に立つ情報でしょう。

 

 ジュエルシードも危険な代物だから、皇帝陛下とナノハ様が全て消滅させた。一応、画像データは残っていた。

 

 ジュエルシードは確かに現在の管理局の技術力ではロストロギア扱いだがブリタニアでは簡単に作れる。とはいえ制御が不安定で、下手をすれば次元震を起こしかねないので、わざわざ作ることはないし、そもそも使い道がない。

 

 もっと安全で使いやすいエネルギー源などいくらでもある。

 

 ちなみに帝国では、ブリタニア及びその周辺世界で次元震が起きないように防御システムがあります。さすがに次元震で文明消滅などという憂き目にあうのはいやですから、その対策をしています。

 

 今回の問題は、ジュエルシードが輸送中に事故でこの世界にばらまかれた事。

 魔法文明がないこの世界に、次元干渉型の魔力結晶が放置されているのは拙い。しかも現地の生物に取り憑いて発動する性質まであるから尚更無視できない。

 

「でも貴方一人で回収しようとするのは無謀ね。それで管理局に通報したの?」

「い、いえ。でも僕の責任ですから…」

 

 つまり通報せずに回収に回ったということか。

 

「はあ、貴方自力でそれができるほどの実力者? それともその手の経験が豊富なの?」

 私は分かっていてそれを聞く。ユーノに実力も経験もないのは分かりきっている。

 

「いえ、それは…」

 

 やはり口ごもる。

 

「あのねぇ、責任感じているのはいいけど現実を見なさい。貴方がちゃんと通報していれば、なのはを巻き込むこともなかったのよ」

 

 私が助けたから良かった物の下手をすればあの場で死んでいた。無謀なことをしたあげく他人を巻き込んだ。結果的にそうなる。図星だったのかユーノは頭を伏せる。

 

「リリカさんユーノくんを責めないで下さい。ユーノくんだって大変だったと思いますから」

 

 そんなユーノを見かねたのかなのはがそういう。

 

「まぁいいわ。こちらでもジュエルシードの回収にまわるとしましょう。さすがに野放しにはできないわ」

 

 並行世界とはいえ地球は同盟国の世界だ。それに母の出身世界でもある。私の知っている母とは違うが、それでも見殺しにするのは後味が悪い。

 

 私は転移魔法を使いその場から転移した。

 

 

 

ユーノside

 

 ジェルシードを追ってこの世界に来たけど、まさかあの彼女に会うとは思わなかった。

 

『魔導師殺し』、『死者蘇生者』などの異名を持ち、特に不可能とさせる死者蘇生という偉業をなした唯一の人物。また魔導師ランクも推定SSS+ランクらしい。規格外にもほどがある人物。それが彼女『リリカ・フォン・アークライン』だ。

 

 雑誌などでも彼女のことはのっていた。その圧倒的な能力は凄まじいとしかいえない。最も管理局ではあまり評判が良くないらしい。

 

 彼女の側にいるだけで桁違いの凄まじい魔力を感じる。でも彼女ほどの人物が、何でこんな管理外世界にいるんだろう。

 

 彼女はジュエルシードを独自に回収するつもりのようだ。本来なら彼女の手助けを借りたいところです。

 

 彼女に不手際を指摘されたとき、僕は言葉に詰まった。彼女の言うとおりだったからだ。でも僕一人じゃ回収できない。

 

 この時なのはにも手伝って貰おうとユーノは心の何処かで思ってしまった。二年後、ユーノはその事を心底後悔することになる。

 

 

 

リリカside

 

 ジュエルシードの回収のため、一端母艦に戻りました。

 

『アークライン男爵、宜しいのですか?』

 

 私の母艦であるアストロメリア級虚数空間航行用戦艦『ヴァサリウス』の管制AIが私に問いかけてくる。

 

 この管制AIは古代ベルカ時代に開発された画期的なAIを発展進化させたもので現在では戦艦の無人制御などに重宝しています。これのおかげで私は一人で活動できているわけです。

 

 アストロメリア級は既に旧式で、管理局崩壊後の軍縮で軒並み指定宙域に凍結されています。この艦もそんな凍結艦隊の一隻。今回は危険度の高い極秘任務とのことで、目立たず失っても惜しくない艦を選んだ。

 

 凍結されていたこの艦を解凍して、私ごと並行世界に来ていた。

 

「まぁ問題がないわけじゃないけど、地球でロストロギアの回収をして置いた方がいいでしょうね」

 

 地球はこの時代では珍しくある程度の文明を持ちつつも、魔法至上主義ではない世界です。

 

 管理世界のように余計な思想がないだけ付き合いやすい。帝国もそれ故に地球と交流を持つことにしたほどです。

 

「地球が滅びるのは忍びないですからね。それに管理外世界ならばうるさい奴らも干渉しにくいでしょう?」

 

 ほとぼりが冷めるまで管理世界にいるのも良いかもしれません。

 

 確かにシンシアを誘き出すには管理世界で活動している方がいいのですが、そうすると不法の輩と争わないといけない。

 

 シンシアがどう動くのか確かめるためにも、邪魔な奴らをどうにかしないと。

 

 とりあえずこの海鳴で活動する事にしたので、先立つものを用意しておくか、取り敢えず活動資金として金などのレアメタルや宝石類は持ち込んでいた。

 

 惑星開発が進んでいる私達の世界の地球側ではそういったレアメタルや宝石などは価値が低下しているが、ここの地球では未だにかなりの価値があるから売ればそれなりの金になるだろう。




解説

 この話で軽く出ていますが、リリカはブリタニアの技術を駆使して管理局のシステムをハッキングして情報を入手しています。帝国の技術は突出しており、管理局のシステムでは対応できないという訳です。管理局はハッキングされたことにも気づいていません。こうして手に入れた情報を元に、リリカは色々調査しています。
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