ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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異端の騎士 第五話

「ガアアアア!!!」

 

 犬に取り憑いた暴走体が私に襲いかかる。生物に寄生しているだけあってなかなかの力だか、私を相手にするには力不足。私はそれを容易く避ける。遅い。覚醒者である私を捕らえるには余りにも遅い。

 

「はあっ!!」

 

 私のディアボルクの一振りで、暴走体はあっさりと倒されて宝石に戻った。

 

「ジュエルシード封印!」

 

 リリカはジュエルシードに封印処置をほどこして、ディアボルクの中に収納した。

 

「暴走体か。やはりたいしたことはないわね」

 

 力を抑えた今の状態でも苦もなく倒せる程度の存在。本来ならば私が一々相手にするまでもない。だが物が物なだけに無視もできない。

 

 あれからヴェサリウスの探査能力を活かして次々とジュエルシードを回収していた。既に四つ回収している。

 

 なのは達も回収に回っているらしいから全ての回収もそれほど時間は掛からないだろう。

 

 そこで魔力反応が二つ私に接近しているのに気付く。これはユーノやなのはではない。誰かな?

 

 

 

「貴女の持っているジュエルシードを渡して貰います」

 

 私が少し待つと、その場に現れた二人の片方がいきなりそういった。長い金髪をツインテールに纏めており、美しい顔立ちの八歳ほどの少女。でも恰好は黒のレオタードの様な者に短いスカートの様な物を付けて黒いマントを羽織っている。ちょっと恰好がきわどいね。

 

 あれこの子フェイト様にそっくり。確かフェイト様はミッドチルダ出身で人造魔導師だったはず。それが何でここに?

 

 もう一人はオレンジ色の髪をしたスタイルのいい女だ。耳が犬耳だし尻尾もあるから、少女の守護獣いや使い魔かな?

 

「あら、追い剥ぎはよくないわね」

 

 私の見立てではこの少女はAAAランク。あの年頃の魔導師としては優秀だが、この私に挑むのは無謀。

 

 使い魔の方はAランク程度で問題外。

 

 覚醒者に本気で対抗するつもりならば、SSランク以上の魔導師や騎士が複数で掛かるのが常識だ。彼女たちでは力量が足りない。

 

 これは管理局崩壊後にナノマシンデバイスの評価が高まり、貴族達の間で普及したことで常識となったこと。

 

 ナノマシンデバイスを使う者とそうでない者との間に差が出るので皆が使いだしだ。それにともない貴族の平均的な能力が高まり、ますます平民では対抗できなくなった。

 

 

 

「うるさい、とっとと渡せば良いんだよ!」

 

 私に言葉に苛立ったのか使い魔がわめく。

 

「礼儀を知らない使い魔だね。使い魔の質が低いと主人の能力まで疑われるよ」

「なんだと!!」

 

 雌犬が獣のように喚く。

 

「アルフ、少し黙って」

 

 少女は使い魔に黙るように言う。流石にあの態度は拙いからかな?

 

「でもフェイト」

 

 使い魔は少女の言葉に不満そうで、反論しようとしているが、堂々と名前を呼ぶとは不用心だね。それとも知られても構わないのかな?

 

「いいから」

 

 少女は使い魔を宥める。

 

「私は貴女の持つジュエルシードが必要だから、奪ってでも手に入れなければならない」

 

 感情が少ない少女がそういう。

 

「仕方ないわね。ディアボルク、リミッター解放」

 

 交渉の余地無しようだ。私はそれまでAAA-ランク程度まで抑えていた魔力を、一気に定格まで解放する。ナノマシンデバイスを起動していないが、それでもSSS+ランクの魔力だ。ついでに結界を張っておく。

 

「「!!!」」

 

 二人の顔が驚愕に染まる。自分よりもやや低い魔力と思っていた相手の魔力が、一気に上昇したのだから無理もない。だがもう遅い。

 

「追い剥ぎをするような悪い子はお仕置きです」

 

 急速接近してディアボルクを打ち下ろす。少女も気付いてデバイスを構えて防ごうとするが無駄。バリアをあっさりと破壊してデバイスをも切り裂く。

 

「きゃあああ!!」

 

 少女はその衝撃で吹っ飛ばされる。

 

「フェイト! おのれ!」

 

 使い魔が襲いかかろうとする。でも遅い。

 

「バインド!? こんな一瞬で」

 

 私はリングバインドで使い魔の四肢を拘束した。魔力差が大きいからそう簡単には敗れない。私は拘束した使い魔を無視して少女の方に向かう。

 

「う、うう」

 

 少女は地面に叩き付けられて倒れ込んでいた。幸いバリアジャケットがあるので怪我をしていないようだ。私はその少女をチェーンバインドで縛り、ディアボルクの矛先を突き付ける。

 

「私の勝ちね。さて貴女には色々と聞きたい事があるわ」

 

 本来なら敵対する者は見せしめにリンカーコアを破壊するところですが、この少女にはそれは止めた方が良いでしょう。別人とはいえフェイト様にそれをする気にはなれません。

 

「私はリリカ・フォン・アークラインと申しますわ。貴女は?」

「……フェイト・テスタロッサ」

 

 フェイトは一瞬躊躇ったようだが、状況を考えて答えた。

 

 フェイト・テスタロッサですか。やはり間違いないようですね。確かシドゥリ様がアリシアを蘇らせたために、彼女を作ったプレシアに捨てられて、シドゥリ様に拾われる筈だった少女。

 

「何故ジュエルシードを奪おうとしたの?プレシアの命令かしら?」

「!?」

 

 フェイトの表情に驚愕が浮かんだ。カマかけてみたのだけど、この子素直すぎ。簡単にわかってしまう。

 

「私は貴女の母プレシアの事を少しは知っているんですよ」

 

 追い打ちをかけるように言っておく。予想ではプレシアはアリシアの蘇生を求めていたはず。ここは発破をかけておくか。

 

「そうそう、直ぐにプレシアの元に行って『リリカ・フォン・アークライン』が会いたがっていたと伝えてくれるかしら」

「……わかった」

 

 フェイトは頷く。言葉を伝えるだけなら母の害にはならないと思ったのでしょう。

 

「じゃ、よろしくね」

 

 ここでフェイトと使い魔のバインドを解除する。

 

「フェイト」

 

 先程の使い魔が駆け付けてきた。

 

「アルフ、帰るよ」

「えっ、でも」

「私達ではあの人には勝てない」

 

 フェイトは淡々と言う。

 

 これだけ魔力差があると二人掛かりでも全く歯が立たない。そう判断したのだろう。それは正しい。最も私の力は魔力だけではないけどね。魔法を除いた基礎能力に差がある。それにフェイトがどこまで気付いたが分からないが、戦って勝てる相手ではないと理解はできたようだ。

 

 フェイト達がその場を離れる。私も結界を解除してその場を離れた。

 

 

 

プレシアside

 

 新型魔力炉ヒュードラの実験の時に暴走を起こして、愛娘のアリシアを失ってから、26年が過ぎていた。

 

 私は全てを失った。娘のアリシアは私にとって全てだった。アリシアを失った私は絶望した。そしてなんとしてもアリシアを取り戻す。こんな筈じゃなかった。だから私は全てを取り戻す。

 

 そう考えた私はプロジェクトFに参加して、それを完成させた。だけど長年の苦労の果てに作り出したあの子はとんだ出来損ないだった。

 

 プロジョクトFで作れるのは記憶を転写したクローンにすぎず、性格、魔力資質、利き手などは同じようにできない。結果としてできあがったのは、アリシアとは似ても似つかぬ偽物。折角与えたアリシアの記憶もフェイトでは駄目だった。

 

 その結果に失望した私はあの人形にプロジョクト名であった『フェイト』という名を与えた。正直まともな名前を与えるのも面倒だった。

 

 その後、私は伝説のアルハザードへの道を探すようになった。アルハザードならば不可能とされる死者蘇生もできるかもしれないと思ったのだ。

 

 所詮クローンでは駄目だ。やはりアリシア自身を蘇らせないといけない。そんな考えを持っていた私に驚愕すべき情報が飛び込んできた。

 

 死者蘇生者『リリカ・フォン・アークライン』 不可能とされた死者蘇生を安々と行うことができる古代ベルカ式魔法の騎士。アルハザードという不確かなものではなく、私の求めていた死者蘇生の能力の持ち主。

 

 しかし、プレシアがそれを知りリリカと接触しようとしたときには、彼女は管理世界を去り各地を放浪するようになっていた。そのためリリカを見つけることができなかった。

 

 ここでプレシアに時間があれば、時間をかけてでもリリカを探すという選択もあったが、長年の無茶の代償により彼女は不治の病に冒されていた。彼女には最早時間がない。そのためアルハザードに到着する可能性のあるロストロギアの情報を入手するとフェイトにそれの捜索を命じた。

 

 そのフェイトが一旦帰ってきた。フェイトがジュエルシードを持ち帰ってこなかった事に苛立つ。取り敢えずお仕置きでもしておこうかと想っていたが、フェイトから伝えられた伝言に狂喜した。

 

 探し求めていた人間が向こうから接触してきた。プレシアはこの好期を逃すつもりはない。私はフェイトにリリカをここに招待するように命じた。




後書き

 フェイトそん、地球に来て早々リリカに返り討ちにあう(笑)。フェイトがジェエルシードの捜索を開始するタイミングが本編とずれています。これは並行世界である事とリリカの干渉の結果です。リリカはなのはとフェイトの過去を部分的に教えられています。その為プレシアの事も少しは知っています。
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