ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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異端の騎士 第七話

 時の庭園。次元空間の狭間に存在するプレシア・テスタロッサの居城。フェイトに案内されて私はここに来ている。案内された広い部屋には長い灰色髪の女性がいた。彼女がプレシア・テスタロッサ。

 

「母さんリリカさんを連れてきました」

「フェイト、下がりなさい」

「はい、母さん」

 

 プレシアの言葉にフェイトは部屋から出ていく。

 

「ようこそ、歓迎しますわ。騎士リリカ」

 

 プレシアが歓迎する。ベルカ式魔法の優れた使い手を騎士と呼ぶ。だから騎士とは一種の称号の様な物。それをわざわざ言うのは、プレシアはリリカの機嫌を取っておきたいからだ。リップサービスの一種だ。お世辞だとは分かっているが、断る理由もない。受け取っておくとしましょう。

 

「前置きを省くけど、リリカ・フォン・アークライン貴女に死者蘇生をやって貰いたいの」

「やはりプロジェクトFでは無理だと気づいたわけね」

 

 記憶転写型のクローンではよく似た複製に過ぎず、魔力資質、性格などに誤差が出る。特に肝心の魂が別人の物が宿るのが問題だった。

 

「何故それを!?」

 

 プレシアが驚く。

 

「貴女の事は予め聞いている」

「……そう、なら説明は無用なのね」

 

 それで理解したのだろう一応納得したようだ。

 

「まぁ本題に入る前に……」

 

 私はプレシアに触れて魔法を発動させる。

 

「アヴァロン」

 

 私の魔法がプレシアの身体を包み込んで、ボロボロになっていた身体を癒す。

 

「こ、これは」

「身体を治して置いたわ。このままではまともに生活できないでしょう」

 

 肉体の完全回復魔法。最位の治療魔法であるが、リリカであれば行使可能であった。

 プレシアは回復した身体に驚いたのか戸惑っていた。まぁ余命幾ばくもないと思っていた身体がいきなり回復したのだから無理もない。

 

「念のために後で病院に行った方かいいわ」

 

 完全回復と言っても、また体調を崩す場合があるらしいから、ちゃんとしておいた方がいい。

 

「では代償の話になるわ。予め言っておきますが私に依頼するなら高くつくよ」

「構わないわ。アリシアが蘇るというのであれば…」

 

 プレシアの言葉には迷いがない。それほどまでにアリシアを思っているのだろう。だからこそアリシアを失った彼女は暴走した。そんなことを片隅に想いながら、私はプレシアと話し込んだ。

 

 

 

フェイトside

 

 あの人を時の庭園に連れてきた翌日。私とアルフは母さんに呼ばれてこの場に来ていた。そこには母さんとリリカさんの他に五歳ほどのわたしにそっくりな子がいた。

 

「あらフェイトいらっしゃい」

 

 母さんが笑顔だった。記憶の中の母さんと同じ笑顔。

 

「あれ私にそっくり!?」

「アリシア、あの子はフェイト。貴女の妹よ」

 

 母さんがアリシアと呼ばれた私にそっくりな少女に微笑みながら話していた。

 

 アリシア。それは私の記憶で母さんが私をそうよんだ名前。どういうこと? アリシアと呼ばれた少女は記憶の中の私そのままの姿。彼女がアリシア。それじゃ私は一体…?

 

「ほえっ、私に妹がいたの?」

「ええ、アリシアは事故にあって長い間眠っていたの。フェイトはその間に生まれたのよ」

「事故?」

「そう、貴女は26年も眠っていた」

 

 アリシアの疑問に母さんとリリカさんが答えていた。

 

「へえ、それで母さんが老けていたんだ」

 

 子供ゆえの無邪気な言葉だった。母さんの表情が一瞬固まった。

 

「ふうん、こうして見るとやっぱりそっくりね」

 

 リリカさんが私とアリシアを見比べていた。

 

 明るい空気。こんな光景などここ数年見たことがなかった。母さんが笑顔を取り戻していた。そしてその笑顔はアリシアという子に注がれていた。

 

 私がどれだけ頑張っても母さんは答えてくれなかったのに。母さんはあの子がここにいるという事で喜んでいる。それはつまり母さんにとってあの子だけが大切だという事。

 

「くっ、あんたら何へらへらしているのさ!」

 

 使い魔の精神リンクからフェイトの感情を感じたアルフは食いつく。

 

「ア、アルフ」

 

 私は慌ててアルフを抑える。

 

「あら、ごめんなさいね」

 

 母さんが笑いながら対応する。

 

「母さん、その人は私のお姉さんなんですか?」

「そうよ。アリシアは私の大切な娘だわ」

 

 母さんの言葉が私の心に突き刺さる。やっぱり母さんはこの子だけが大切なんだ。そんな考えが自分の中を占める。どうしようもないほどにアリシアに嫉妬しているのが分かる。どうして私じゃ駄目なの母さん? 私はいらない子なの?

 

「フェイト悪いけど、貴女にはやってもらいたい事があるの」

「何でしょう」

「この子は知っているわね」

 

 母さんが空間モニターを展開する。そこには昨日見た白い服の魔導師の子。

 

「はい、昨日見ました」

「そう、この子に協力してジェエルシードを回収しておいて欲しいのよ」

「協力ですか?」

「そう、流石に危険なロストロギアを魔法文明がない管理外世界に放置するのは拙いわ。危険だからさっさと蒐集しておいたほうがいいわ」

 

 そうなんだ。だから母さんはジュエルシードを回収しようとしていたんだ。

 

「丁度この子のそばにはジュエルシードを発掘したスクライア一族に者がいるからその人に回収したジュエルシードを渡しておけばいいわ」

「そうですか」

「そうね。この子はフェイトとは歳も近いし仲良くして置きなさい」

 

 母さんにまた地球にいくように言われた。今はそれが有り難かった。正直この場に居たくない。自分が場違いなのだと思うから。

 

「では、行ってきます」

 

 そういってその場を出た。

 

「フェイト大丈夫かい?」

「大丈夫だよアルフ」

 

 精神の繋がりからこの子には分かってしまう。だから無理をしてでもアルフを安心させないと。

 

 

 

アルフside

 

 一体どうなっているんだい。いきなり豹変したプレシアにアルフは戸惑っていた。

 

 アルフは自分の娘に愛情を与える所か虐待するプレシアを嫌っていた。フェイトはプレシアに認められようと頑張っていた。それは認められなかった。でもあの少女が現れてからプレシアは変わった。

 

 プレシアがあの少女を大切にしている事はアルフにも分かる。でもあのアリシアという少女は何者だろう。フェイトそっくりだが、フェイトの姉だという。明らかにフェイトよりも年下なのに。

 

 プレシアがフェイトを虐待しなくなった。それはいい。使い魔である自分にとってフェイトが虐待されるのは嫌だ。だがこれは何だ?

 

 フェイトは自分は無用の存在だと思い知れされている。プレシアにとって、アリシアだけが大切なのだと。

 

 プレシアは少なくともこれまでは虐待されていてもフェイトを見ていたのに今ではアリシアしか見ておらず、フェイトはどうでもいい存在となっている。状況が変わった。だからといって前に戻れと言う訳にもいかない。

 

 それでフェイトが悲しんでいるのがアルフには分かる。でもその苛立ちをフェイトにそっくりなアリシアに向けるわけにもいかない。行き場のない苛立ちが渦巻いていた。

 

 

 

リリカside

 

「はあ」

 

 不意にプレシアが溜息を零す。

 

「どうかしたの?」

「……私って老けたかしら?」

「ま、まあ60歳にもなれば仕方ないわ」

 

 プレシアは私と同じ歳だ。人間なら老い衰えるのは当たり前。アリシアに老けたと言われたのがショックだったのだろう。同じ女性であるだけに分からなくもない。

 

「でも貴女は私と同い年なのでしょう?」

 

 私を意味ありげに見ている。

 

「それは仕方ないわ。覚醒者と人間が違うのは当たり前」

 

 そうでなければ、あれほど覚醒者になりたいと思わなかっただろう。

 

 年を取らない。若い姿を保つ。これらは覚醒者の特権。

 

 アリシアははしゃぎ疲れたのか昼寝をしていた。フェイトとアルフが出掛けているから二人で話している。

 

「フェイトの件はこれでいいの?」

「ええ、これでいいわ」

 

 正史の流れを知っているというアドバンテージを活かすためには、可能な限り変化を抑えるべきだ。

 

 この世界にはブリタニア帝国は存在しない以上、正史に近い流れになるはずだから。その為にもフェイトには色々と動いて貰わないといけない。




解説

■アヴァロン
 古代ベルカ式魔法の治療魔法。どんな怪我や病気でも高確立で治すという出鱈目な回復魔法で、その分魔力の消費がでかい。SS+ランクの魔法。ちなみに覚醒者達は皆不完全ながらも不老不死なので病気や怪我とかは無縁です。そもそも病気にはならないし、どんな怪我も即座に修復するから、覚醒者となると治療魔法は無意味になります。その為、覚醒者でこの魔法を修得している者は割と少ない。



後書き

 今回リリカはプレシアと取引をしました。リリカは正史とのズレを小さくするためにフェイトを動かす必要があります。フェイトとなのはが友達になるというイベントの為だとか、A'sでのイベントもありますから。それと任務のためにプレシアの持つ情報ルートも欲しいという理由です。アリシア復活でフェイトそん涙目です。ちなみにこの世界ではプレシアとリリカは同じ歳という設定です。
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