並行世界とは無限のIfの世界。ある魔砲少女が撃墜されて重傷を負いながらも、厳しいリハビリで何とか魔導師として復帰した世界もあれば、別の可能性の世界もある。
新暦67年
「おい、なのは!?」
雪が降り積もる場所でヴィータの悲痛の声が聞こえる。
『高町なのは』が致命傷を受けて死亡していた。心臓を貫かれて、ほぼ即死だった。ヴィータはこんな事になったのを後悔した。
何故こうなったのだ? 何故こいつが死ななければならない? ヴィータは自問するももう手遅れだった。彼女には死んだ人間を蘇らせることなどできないのだ。
魔法少女リリカルなのはの主人公 高町なのは 享年11歳
(完)
というのは冗談です。(これで終わりじゃありません)
「へえ、少し辺りを探索していると、変わったことがあったみたいね」
なのはの遺体を抱き抱えながら絶望していたヴィータに、突然少女の声が聞こえた。
「だ、誰だ!?」
「ただの通りすがりよ。誰だって構わないでしょう?それよりこの少女亡くなったみたいね。心臓が動いていないもの」
覚醒者『リリカ・フォン・アークライン』は魔法で補強した聴覚で、少女の心臓音がないのを確認していた。いくら覚醒者でもある程度離れている人間の心臓の鼓動音を聞き分けるには地面に耳を付けなければならないが、リリカはそんな事をしたくないので魔法で補強したのだ。
「見たところ貴女は管理局の局員みたいね。早くその死体を回収しておきなさい。また襲撃されるかもしれないから」
「なのは!?」
親友の訃報を聞いてフェイトが駆け込んできた。彼女の他にも関係者が揃っていた。
「なのは何で…」
なのはの母親の桃子が泣き崩れているのを夫の士郎が支えていた。
「リンディさんこれはどういう事なんですか!」
「なのはさんはミッドチルダの医療でも助かりません」
リンディが沈痛な表情でその場の者に告げる。すでに運び込まれて時には死んでいたから手のうちようがなかった。
「でも一つだけなのはさんを助ける方法があります」
リンディが私を見ながら言う。何となく話の流れが読めた。
「いっておくけど、私は手を貸さないよ」
「なっ!」
いきなり話の骨を折られたリンディは絶句する。やはり私に蘇らせて貰うつもりだったか。
「どういう事なのですか?」
リリカの能力を知っている管理局組はともかく話がつかめない高町家の面々はリンディに尋ねる。
「……死者を蘇らせるのは、そこのリリカさんなら可能です」
その場の全員の視線が私に集まる。
「嫌よ」
「…何かできない理由でもあるのですか?」
「聞いていなかった私は『嫌』と言ったの。確かになのはを蘇らせることはできるわ。でも私はそれをしたくないの」
「なっ、どうしてなのはを助けてくれねえんだよ」
ヴィータが突っかかってくる。
「あのね、この次元世界は天寿を全うできる者ばかりだと本気で思っているの? 一々殺された者や病気や事故で死んだ者を助けていたらキリがないわ」
私はうんざりした表情で吐き捨てるように言う。
「第一、私は管理局が嫌いなの。だから管理局の局員を助けるつもりはない」
「そんな…。お願いします。なのはを、なのはを助けて下さい。あの子はまだ幼いんです。これからなのに…」
桃子が私にすがりつく。
「幼いね…」
呆れ気味に零す。
「何がおかしいんだ」
クロノが耐えきれずに言う。娘を失った母親が娘を助けてくれと必死で頼んでいるのに、まじめにうけとっていない私に怒りを隠せないのだろう。馬鹿め。
「じゃ聞くけど、何でその幼い娘を管理局に入局させたの? それも武装局員という危険な仕事にね」
「そ、それは…」
言葉に詰まっている。ふん、底が浅い。
「管理局はね、テロの対象になりかねないから、どの部署でも危険を伴う職業だわ。前線で戦う武装局員なら尚更よ。死んでも構わないなら兎も角、本当に死なせなくなかったのから入局などさせなければよかったのよ。なのにこうなってから今更助けてくれだなんてムシが良すぎるわ」
我ながら正論。
「それにね。貴方達もどうせ管理外世界の人間など使い捨てにしか思っていないでしょう?」
リンディ達を見ながら言う。
「そ、そんなことはないわ!」
「そうかな?だったら何で僅か三ヶ月の短期訓練でまともに魔法を学んでいない管理外世界出身者を前線送りにしたのかしら?基礎も満足に固めていない者を使えばこうなるのは当たり前じゃない。それとも所詮使い捨てだから、ちゃんと教育する手間も惜しんだの?」
そう、なまじ才能があったから気付きにくかったが、なのはは魔法学校に行ったりしておらず、魔法の基礎も満足に固めていない。知識もろくになく無茶を繰り返せば自滅するのは当然です。
「違う!そうじゃないんだ!」
クロノが否定する。
「ああ、そうよね。管理局は才能に依存しない質量兵器を禁止したため万年人手不足で、魔力があるなら経験や年齢など気にせずに戦わせているのだったね。忘れていたわ。でもそれならなのはがこうなるのは当たり前ね」
私は皮肉る。自分たちで子供を率先して戦わせておいてなにいってんだ?この馬鹿共は。
「私は色々と忙しいからね。そんなくだらないことをしていられないわ。それじゃさようなら」
こんな事につきあっていられないわ。
「待ってくれ。お願いだ。なのはを助けてくれ!」
その場を去ろうとする私にクロノがしがみついてくる。
「放しなさい。邪魔よ」
「君が管理局を嫌っているのはわかった。だけどそこを曲げてなのはを助けてくれ。お願いだ!」
「……本当になのはを助けたいの?」
「ああ」
私は少し考え込む、これは丁度いいかもしれない。
「実はね、私は捜し物があるのよ」
「捜し物?」
空間モニターに一つの仮面が表示される。
「これは『石仮面』。私の国の国宝でね、ある犯罪者に盗まれたこれを取り戻すためにあちこち探し回っているのよ。私の手を借りたかったらこれを探してくる事ね」
「これを…」
その場の者はモニターに映る仮面を見る。
「わかりました。これを持ってくればいいんですね?」
「そうよ。ちゃんと石仮面を持ってくれば、なのはを助けてあげるわ」
石仮面が手にはいるならば死者蘇生ぐらいはやっても構わない。あまり期待していないけどね。万が一という事もあるやるだけやっておくか。
管理局の奥深く。そこには人の形を捨てて脳髄だけとなった者達がいた。時空管理局最高評議会。かれらは旧暦より管理世界を纏め上げてきた。
『あの小娘が探している仮面か…』
『たしかジェイルもそれを求めていたな』
『ではどうしましょう』
『なに本物はジェイルに渡して、小娘には似せて作った偽物を渡せばいい。』
『ではハラオウンにはそう伝えておくとしましょう』
石仮面は元々シンシアがこの世界に持ち込んだ物だが、シンシアはそれを使って吸血鬼になった後はその仮面を放置していた。吸血鬼になった後は仮面には用が無かったためだ。その仮面をたまたま管理局が回収していた。
その後、シンシアから仮面のことを知ったスカリエッティは最高評議会にそれを求めて、管理局によって石仮面はジェイルの元に流れ込んでいった。
これが後の流れを決定付けた。
「なっ、偽物を作って渡せですか?」
リンディとクロノは本局に石仮面のデータを持ち込んでそれを探した。結果として幸運にも見つけたものの引き渡し許可が下りなかった。
元々ただの仮面と思われていたので簡単な事だと思われていたが、あのリリカが探し求めているという事でロストロギア疑惑が浮上したからだ。こうなると引き渡し要請など許可されなくなる。それでは困ると文句を言うと思わぬ指示が来た。
「幸いにも画像データがあるからそっくりの偽物は作れるけど…」
取引なのに偽物を作って渡すなど、卑劣以外の何者でもない。
「母さん仕方ないよ。なのはを助けるためには手段を選んでいられない」
確かに許可が下りない以上、そうするしかない。だがその動きはリリカに筒抜けだった。
「ふん、馬鹿な奴ら…」
リリカは呆れる。管理局のザルなシステムでは情報は簡単に手に入る。だがどうしたものか。この事を指摘するのも良いが、そうすると私が管理局の情報を入手している事が気付かれる。
偽物なら血を付着させても起動しないから、偽物だと指摘するのもいいが、そうすると石仮面の使い方をわざわざ管理局に教えることになる。
それになのはが死んだままだと正史との開きが出てくる。いくら外史でも正史との差は少ない方が未来を予測しやすい。となると騙されたフリをしておくか。まぁスカリエッティの元に流れる事がわかっただけでも良いでしょう。
しかし、スカリエッティが石仮面に興味を持ったのが気になる。もしかするとシンシアと関係があるのかもしれない。少し探っておいた方がいいでしょうね。
その後、無表情で(感情を抑えていた)石仮面を受け取り、なのはの蘇生を行った。リンディ達管理局組は私を見事騙しきったと思っているようですが甘いね。こんな巫山戯た真似をした報いはいずれ与えるよ。