新暦75年5月13日。ガジェットドローンが出現して聖王教会から機動六課に出動要請が出た。機動六課にとって初の出動だ。
新人達の初出動、新デバイスを初機動させた。戦いは危ないところがあったが何とかガジェットを全て破壊してレリックを確保した。これで任務が終わったと思われていたが…。
ロングアーチのアルト二等陸士から通信が入る。
『みんな気を付けて何者かが近づいてきている。数はおよそ50!』
「ガジェットですか」
『いえ違います。魔力反応もない』
新人達の前にそれが現れる。
「なにあれ!」
迫り来る人の集団。いやそれは血塗れであったり手や足が欠けていたり臓物を垂らしている者まであった。そして全員普通ではなかった。
「こちらに来ないで下さい!」
本能的な危機感からティアナがデバイスを向けて警告するが、そんな物はソレには通用しない。
「くっ!」
非殺傷設定に魔力弾を打ち込んで命中させる。魔法が当たったソレは一瞬体勢を崩すがそれだけだった。それは魔法が直撃しているにも関わらず全く効いた様子が無く襲いかかって来た。拙いと思った新人達は逃げる。
「アルトさんアレなんですか?」
『ちょっと待って、アレ生命反応がない。全部死体だよ』
「死体!?なんで死体が動いているんですか!」
『わからないわよ。今隊長達が救援に向かっているわ』
そこに殺傷設定の誘導射撃魔法が数十発打ち込まれる。それらは全てソレの頭部を打ち抜いた。
「屍人鬼(グール)か、こんな物が出てくるということは、やはりあいつスカリエッティとつるんでいるわね」
「あ、貴女は誰ですか!」
ティアナはいきなり現れて殺傷設定の魔法でアレを一掃した少女に警戒していた。
「あら助けてあげたのに失礼ね」
「それはわかりますが、殺傷設定を使うことはなかったではないですか!」
「…そうね。貴女は知らないのよね。あれは死体なの。だから非殺傷設定なんて最初から意味がないわ」
「アレをご存じなのですか?」
「まぁ色々とね」
「では話を聞かせて欲しいのですが」
「……まぁいいでしょう。あれと遭遇した以上話ぐらいはしておくわ。でも今はそれどころではないでしょう?」
グールはまだ数体残っている。
『ちょっと待って、あれ何体か捕獲しておいて』
「分かりました」
指示に従いティアナ達はバインドでグールを捕獲していく。
「確かティアナだったかしら。一つ忠告しておくけど、アレに噛まれないようにしなさい。噛まれれば短時間で死んでアレと同じになるから」
「……そうですか」
ティアナがグールを見ながら表情を歪める。初見でグールを見るのは精神的にくるものがあるから無理もない。
「屍人鬼(グール)ですか?」
「そう貴女達も見たでしょうアレを」
「ええ、全て死体でしたね」
回収した死体や捕獲したグールを調べても全部とっくに死んでいる者ばかりだった。
機動六課の隊舎にリリカはいた。話をするために。
「グールは元々死者蘇生魔法の開発過程の失敗作だったんだけどね。まあ生物兵器としても使えるのよ。あれは死兵傀儡という魔法で死体を操っている訳ね。でも実際に魔法をかけているのは最初の一体だけよ」
「どういうことですか?」
「グールに噛まれた者は直ぐに死んでしまいグールになってしまう。つまり一体でもグールがいればネズミ算式にグールがどんどん増える訳ね。本来は敵国に送り込んで甚大な被害を与える為の魔法よ」
「そんな!魔法をそんなことに使うなんて!」
なのはが憤る。彼女にとって魔法は特別な力、だからこそ魔法を悪用する者は許せない。第一あまりに酷い魔法の使い方だ。
「魔法も所詮は力にすぎない。私は綺麗事を言う気はないわ」
なのはの考えはリリカには偽善にしか見えない。
「なんでそんなことをいうんですか!」
「あのね。私は魔法を特別視していない。そもそも力にクリーンやら安全やら付加価値を付けて過剰評価する気はないわ。そんなことはどうでもいいの。問題はグールが出てきたという事ね。あの女が干渉しているはず」
「あの女?」
「シンシア・スカーレット。私の国の国宝の『石仮面』を盗み出した国家反逆者よ。私はこの女を追っているの。まあ石仮面の捜索もしているけどね」
「ちょっと待って、石仮面は以前管理局が提供したはずやで」
はやてが突っ込む。
「いえ、管理局は私に石仮面を渡すのを嫌がり偽物を作って渡したのよ。つまりあの契約を違反していたという訳ね」
私はなのはを見ながらいう。
「そんな!」
なのはが蘇った経緯を知っている者達はショックを受ける。
「まぁだから私は管理局にむかついている訳ね。そもそも約束を守らないなら嫌われて当然ね」
もう話すことはないのでその場を後にする。
機動六課side
リリカが立ち去ってから隊長陣が集まって会議をしていた。
「さっきいってた話しやけどホンマやった。ホンマに偽物作って渡していた」
はやては先程クロノに聞いて確認した事を話す。
「なんでそんなことを…」
「仮面の引き渡し許可が上層部から下りずに、偽物を渡すように命じられたらしいんや」
はやてはクロノの苦々しそうな顔を思い出しながら話す。
「でもグールか、ガジェットだけでも面倒なのに」
「あれは死体とはいえ人であった者や。あれはけっこうくるで」
「でも許せないよ。生命を冒涜するなんて」
フェイトは怒りを露わにしている。フェイトは自らの生い立ちから人一倍生命の倫理にを拘っていた。
「拙いのはシンシア・スカーレットや。グールを無尽蔵に作れるらしいから物量で来られたらことやで」
「リリカさん事情に詳しそうだったから、もっとお話を聞かせて欲しかったんだけど…」
なのはは言葉を詰まらせる。
「現状では聞けへんな」
管理局に協力してくれるとは思えない。元々彼女は管理局嫌いで有名なのにあんな事をすれば当然だった。
スカリエッティside
「ふふふ、興味深いね」
薄暗い研究所のモニターに機動六課の映像が映っていた。そこにはなのは達の姿があった。
「追加の戦力を送りますかドクター」
如何にも美人秘書という感じの女性が白衣を纏った男性に尋ねる。
「いや、今回は諦めるとしよう。だが面白いね」
スカリエッティはモニターを切り替え、フェイト、エリオ、スバルの映像を出す。
「いいね。いい素材が揃っている。特にFの遺産にタイプゼロ」
「確かに色々と揃っているわね」
シンシアが話す。人造魔導師に戦闘機人。おまけに人間ロストロギアに魔法プログラム生命体。まともじゃない者ばかりだ。最も私の敵ではない。だがモニターに映るあの女は別。
「ああ、君は彼女に興味があるんだったね」
モニターに映るリリカの姿。
「……」
覚醒者であるが為にあの時の姿のままのリリカ。それを見ていると怒りで我を忘れてしまいそうになる。
「彼女は相当な強さらしいね。もしかして君より強いのかね?」
「そんなはずはないわ!ナノマシンデバイスを手に入れて更に吸血鬼になった今の私があんな女に劣るわけがない。いずれ私が叩き潰してあげる」
そうだ。私があんな女に劣る訳がないのよ。
「そうかい、期待しているよ。さすがに彼女が相手では私の娘達も分が悪いからね」
「確かに覚醒者が相手では、今の戦闘機人では荷が重いね」
最も可能でも任せるつもりはない。あの女を始末するのは私なのだから。