ホテルアグスタの一件は機動六課にとって失態となった。ライトニング分隊長フェイト・テスタロッサとシグナム、ヴィータの三人が揃って病院送りにされた上に、なのはとはやてが敵に殺されかけたところを民間の騎士に助けて貰うという醜態を晒したからだ。一応、フェイト達は一週間ほどで退院できるが、周囲に衝撃が走った。
地上本部はこれを理由に本局に攻勢をかけてきて組織内の対立が激化した。そんな中でなのは達は、フェイト達が退院するとすぐに三人揃って聖王教会に出向いた。
「死人ですか?」
「ええ、ホテルアグスタで確認された二人の騎士ですが、二人とも聖王教会の凄腕の騎士だった者ですが、すでに死んでいるのです」
聖王教会の騎士カリムがそう言った。
「まさかクローンですか」
フェイトが顔色を変える。
「そうかもしれません。二人の墓が荒らされて遺体が無くなっていたんです」
「じゃ、その死体から遺伝子を入手してクローンを作ったんか」
「はやてちゃん、それは違うかもしれない」
「どういうことやなのはちゃん?」
「リリカさんがあの二人をシンシアによって蘇ったゾンビだって言ってた」
「ゾンビって、あのゾンビかいな?」
はやてはホラー映画のゾンビを思い浮かべる。
「確かにシグナム達もあの二人が人間離れした身体能力を持っていたけど…。でもゾンビなんてあるのかいな?」
「分からない。でも死者蘇生魔法があるのならゾンビがあってもおかしくないと思うよ。それにあの二人リリカさんが倒したらすぐに身体が崩壊して灰になっていたし、どのみち人間じゃないよ。おまけにグールに関しても報告が来ていたでしょ?」
「そうやったな」
捕獲したグールの調査報告にははやても目を通していた。
「確かにとんでもないであれは…」
あれは生物兵器としかいいようがなかった。生命を冒涜する極みだ。
「そのことも聞いています。しかし俄には信じがたいのです。この二人の騎士はかなり前に埋葬された方です。既にその遺体は白骨になっていますし、墓が荒らされたのはごく最近のことです。いくら何でもそれを蘇らせることができるのでしょうか?」
カリムは疑問を口にする。
しかし、石仮面の吸血鬼や覚醒者の能力はそんなカリムの常識を超越していた。それは白骨死体でもゾンビとして蘇らせることが出来るという非常識な能力だった。
「つまりリリカの言葉を鵜呑みにするわけにもいかんが、無視もできないという事だろう」
その場に同席していたクロノ提督が発言する。
「しかしリリカさんですか。この方の噂は良く聞いていたのですが本当に凄いですね。シグナム達を圧倒した二人を呆気なく倒しています」
リリカはデータでは推定ランク計測不能となっていた。SSS+ランクを大幅に上回る力を発揮したので、測定できなくなってしまったからだ。
元々、死者蘇生という法外なレアスキルを持つ、SSS+ランクの古代ベルカ式魔法の騎士という事で聖王教会でも有名だったが、ここまで強いとは思っても見なかった。
「しかし、この人はやてにそっくりですね。髪の長さ以外は」
「そうやね、うちもよく言われるで。そういえば騎士イガルドは彼女のことを『八神りりか』と呼んでいたで」
「「「八神!!」」」
「ちょっと待って。それってリリカさんがはやてちゃんの血縁者だって事?」
「いや、うちの両親は死んでもうたし、姉妹もおらへんからそれはないとおもうで」
「でも八神だなんてミッドやベルカでは聞かない名字だよ」
そもそも名字を先に言う文化は管理世界では珍しい。だが外野がいくら考えても正確な答えなど出るわけもない。取り敢えずこの件は棚上げになった。
「でもシンシア・スカーレットは想像以上の強さやった」
推定SSS-ランクというとんでもないデータが出ていた。これではリミッターを外しても歯が立たない。実際フェイトはリミッター付きであったとはいえあっさりと撃墜されている。
「それでシンシア・スカーレットとジェイル・スカリエッティが手を組んでいるというわけですね?」
「その可能性が高いです」
「そうですか」
カリムはそこで話を切りだした。
「実は本日皆さんを招いたのは機動六課の本当の設立理由をお話しするためです」