ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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ある少女の引きこもり生活

 各地の次元世界にグールを撒き散らされてから五日。私は自宅に引きこもっていた。といっても登校拒否の学生ではない。ただ迂闊に外に出れば命が無いからだ。何せ外にはグールがうろうろしている。

 

 自宅の二階から双眼鏡で外を見ると正視に耐えない光景が広がっている。あちらこちらに血が撒き散らされ人体の一部が転がっている。そしてフラフラと血塗れのグールが蠢いていた。腕が欠けていたり、はらわたぶちまけていたりと正直吐きそうになる。まるで地獄だね。

 

 少女には外に出てグールと戦うという考えはない。少女は魔法が使えない一般人だ。質量兵器が禁止されてまともな武器が存在しない管理世界では果てしなく無力な存在。

 

 事の始まりは聖王のゆりかごが浮上する一日前の午前10時頃。各地の次元世界に一斉に大量のグールが転送された。それらのグールは各地で人を襲い、一気にその数を増やしていった。

 

 特にこのミッドチルダは念入りに送られていたらしく、他の世界よりも被害が大きい。魔法文明を持つ管理世界といっても実際に戦える魔導師の数が少なく、更に質量兵器を禁止していた為にグールに対抗できずにあっという間にグールが蔓延してしまった。

 

 少女は避難所に行かずに自宅に籠城した。季節外れの風邪を引いていたので家にいたが、ニュースで異変を知り即座に家を厳重に戸締まりした。家が防犯対策にシャッターや雨戸などがあるので容易に侵入できないし、風邪で身体が怠いから避難所まで行けないという現実的な理由もあった。

 

 そして管理局艦隊の全滅と本局の消滅をニュースで聞いた。

 

 ジェイル・スカリエッティ。世界中にグールをばらまき管理世界を混乱に陥れた張本人。だが彼自身の情報公開で、彼の出生と管理局自体が彼の裏にいたことが暴露された。中でも衝撃だったのが、グールを作るのに必要なロストロギアを管理局の最高評議会が彼に横流しした事だった。私は管理局の不祥事に悪態をつくが、それで自体が解決するわけではない。

 

 私はグールに襲われないように可能な限りの対策はしていた。まず音を出さない。グールがどうやって人間のいる場所を把握しているか分からないが、音を出さないにこした事はない。ついでに夜でも明かりは付けていない。そんな物をつけるとばれる恐れがあるからだ。

 

 辛うじてインフラは生きているので最初の内に水を溜められるだけ溜めて置いた。水が無くなると致命的だからだ。幸い食料は日持ちする物が沢山あるから一人なら一月程度は持つ。現在は食料を節約して食いつないでいる生活をしている。

 

 ニュースでは管理局と民間の魔導師が手を組んでグールの掃討を開始したそうだからグールが駆逐されるのも時間の問題だろう。だからそれまで生き残ればいい。

 

 JS事件。次元世界を揺るがしたこの一連の事件は、各管理世界に甚大な被害を与えることになった。しかも、その原因が管理局にあったために、管理局は責任を追及されて解体されることになる。




後書き

 管理局から提供された石仮面で吸血鬼になったスカリエッティが、陽動のために自分で作ったグールを各管理世界にばらまいています。グールを投入したことでこの並行世界でのJS事件の被害は桁違いに大きくなっていて、それに比例して管理局への不平不満も凄いことになっています。
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