新暦75年に起きたJS事件で時空管理局が崩壊して数年が過ぎた時期の地球連邦は実に微妙な立場になってしまう。反時空管理局を掲げて地球各国が大同団結して地球連邦を設立したのに、当の時空管理局が勝手に崩壊した。
一部には管理局の崩壊は帝国の裏工作の結果であるという説もあったが…。
これが地球連邦との交戦の果てに崩壊したというのならまだ良かったが、自滅に近い形であったので管理局の脅威に対抗するために国力と軍備をなりふり構わず整えていた連邦は立場を、ついでに団結の大義をも失ってしまった。異世界からの侵略者にして共通の敵という時空管理局という存在こそが地球連邦を存続させていたのだ。
これによりかつての国家、宗教、民族間の対立が再燃して、連邦空中分解の危機が起こる。拙いことにアメリカなどのかつての大国の残党が不穏な動きをしていた。
彼等は、かつては地球最大の超大国としてふるまい、好き勝手できていただけに現在の没落ぶりには不満を持っていた。とはいえ元来この手の力関係というのは流動的な物であり、今日の強者が明日の強者でいられるとはかぎらない。それはオスマントルコや大英帝国の没落からも明らかな事で、不滅の国家が存在しないように、国の興亡もあって当たり前と言えたが、そう割り切る事ができる者ばかりではなかった。
地球連邦は、この厄介な内部問題の対策として、宇宙開発の規模を拡大することになる。
実は連邦設立直後から宇宙移民自体は小規模ながら進められていた。これは資源開発や管理局に地球を滅ばされたときに地球人類を滅亡させないためであった。なにしろ管理局は艦船にアルカンシェルという大量破壊兵器だけでなく、危険なロストロギアを多数持っている。
管理局が敵に対してロストロギアを使用する事を躊躇う等という甘い考えをもつ者は、当時の地球において全くおらず、管理局の攻撃に備えるのは当然のことだった。
幸いなことにブリタニア帝国の事前調査で、この世界にも地球型惑星が多数発見されていて、帝国はこれらのデータや宇宙移民に必要とされる技術(あくまで必要最低限の物)も連邦に提供していた。
地球人同士の対立から目を逸らすための大事業。それに地球という陸続きであるからこそ対立が起こるのだ。距離が開けば問題なくなる。
「新しいフロンティアへ」
それが当時の地球で盛んに言われたスローガンだった。
元より地球の資源は枯渇状態であったし、管理局戦争で世界人口が激減したとはいえ、それでも地球の人口は多かった。将来的な事を考えるとどのみち宇宙移民は必要。かくして彼等は移民を開始していった。