ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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封建貴族 プロローグ(シドゥリ暦615年)

 私はその場に頭を下げ話しかけられるのを待つ。この場の調度品は高級感を醸し出していたが、その部屋の主人の性格を表しているかのように成金的な印象を与えずに上手く調和がとれていた。

 

 皇帝に謁見できる者は少ない。そもそも謁見自体が皇帝の貴重な時間を割く物なのだ。平民では皇帝に謁見を求める事はできないし、大概の事であれば宰相が処理する。ゆえに基本的に謁見とは皇帝自らが臣下を呼ぶ時しかない。

 

 皇帝は政務では大まかな方針を決めて、後は宰相に任せるというやり方を行っていた。そのためブリタニア帝国において宰相にはかなりの権限があり、爵位では皇位継承者に与えられる大公に次ぐ公爵に任される役職であった。そして、リリカ・フォン・アークラインは、皇帝陛下と謁見を行っていた。

 

「お前を今日呼んだのはアークライン星系の統治の事よ。いつまでも代官に任せきるにするわけにはいかないから、軍を退役してアークライン星系の統治を任せたいわ」

 

 アークライン星系は有人惑星を一つ有している皇帝領星系だ。私は地方星系の領主となる封建貴族となる道を選んでいたが、私にはアークライン星系とその家名が与えられた。しかし、アークライン星系の有人惑星はお世辞にもいい領地とはいえず、そんな領地が回ってきたのは、ブリタニア至上主義者の嫌がらせなのは分かりきっていた。

 

「はっ、しかし宜しいのでしょうか?」

「ふむ、はやての事か?」

 

 陛下は私の問題を指摘する。

 

 そう、私の母は『八神はやて』地球人である。近年では地球連邦と帝国との関係がこじれてきていた。原因は、連邦の反魔導師運動が、反帝国運動にまで発展したことだった。ブリタニア大使館でのデモや嫌がらせなどが頻繁に起きており、今日では連邦との国交途絶も時間の問題と考えられていた。

 

 しかし、連邦はこれまで散々帝国の支援を受けてきた国だ。それが手の平を返して、こんな事をしたので、帝国内で地球に対する感情が加速度的に悪化していた。巷では「地球人は恩知らずだ!」と罵る者も多いから地球出身者に対する風当たりが強くなっており、地球人の血を引く私は以前よりも立場が微妙になっていた。そんな状況で私が領主になれるのか?

 

 これは皇帝にとっても無関係ではない。第一皇妃は地球人であるし、そもそも地球との交流は皇帝が決めた事なのだ。まぁ皇帝はすでに地球に関して興味を失っているらしいので、問題ないのかもしれない。

 

「構わないわ。誰が何と言おうと、貴女は既にブリタニア帝国の貴族よ。口やかましく言う者には注意しておいたから安心なさい」

「承知致しました」

「では、詳しいことは星系開拓大臣に聞きなさい。では、下がって良いわ」

 

 下がって良い。こう言われた以上、速やかに下がらなければならない。私は陛下に一礼した後、その場を退出した。

 

 

 

 ブリタニア帝国中央省庁は、内務省、法務省、財務省、軍務省、文部省、厚生労働省、運輸省、総合技術省、情報省、農林水産省、経済産業省、星系開拓省の12の省で構成されている。

 

 ちなみに帝国の治安を守る警察庁と、他国との外交を担当する外務庁は、内務省に所属している。最も帝国は地球連邦以外の国家とは関係を持っていないので、地球連邦との関係悪化により外務庁は近々廃止されるだろうというのが、帝国上層部の意見であった。

 

 星系開拓省は、惑星開発と皇帝領の管理を任されている部門だ。銀河中を探索してテラフォーミング可能な惑星や有力な資源を捜索しており、国土開発と資源開発の両方に置いて極めて重要な役所。

 

「しかし、アークライン星系か」

 

 私は思わず憂鬱になる。アークライン星系は確かにテラフォーミングなしでも人が居住することができる惑星が一つ存在するが、その惑星はプラズマが頻繁に降り注ぎ、人が居住できる場所が限られていた。

 

 その限られていた場所で都市を築いていたが、それがあくまで地上の話で、空中が危険地帯であることに変わりはないので、あの星では飛行もできない。下手に上空に上がればプラズマが襲いかかるのだ。(ぶっちゃけると『セイバーマリオネットシリーズ』で登場する惑星テラツーみたいな場所)

 

 こんな領地まともな封建貴族なら誰も欲しがらないだろう。リリカも与えられた領地のあまりの酷さに呆れて、軍を退役せずに軍人貴族を続け、領地は星系開拓省が派遣した代官にまかせっきりだった。

 

 通常、貴族は十年から二十年ぐらいで軍を退役するものだか、リリカは五十年以上も軍にいることから、どれほどアークライン星系に興味がないかがうかがえるものだ。というか平民達にしてもそんな惑星にわざわざ住みたがらない。

 

 もっと住み良い有人惑星など帝国領内にはいくらでもある。だから移民が思うように進んでおらず領民が少ないから、恐らく男爵から爵位が上がることはないだろう。ハッキリ言って帝国が保有する有人惑星の中でも最低に近い星で、こんな星系を与えられたのは、地球人の血を引く者にはこれで十分だ、と考える者が中央省庁に多いという事だ。

 

 憂鬱な話で考えるだけでうんざりするが、皇帝陛下から領地を統治しろと命じられている以上、嫌でもやるしかないだろう。

 

「まぁいいわ。ぼちぼちやるとしましょう」

 

 私は、気持ちを切り替えて星系開拓省に向かった。

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