ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

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究極の生命体 第三話(シドゥリ暦788年)

 柱の男。『ジョジョの奇妙な冒険』でそう呼称された種族は、地球の生物の進化の過程で誕生した。彼等は比較的人間に近い姿をしておりながらもその能力は他の種族を圧倒しており、また彼等の一族に近い能力を持つ生物が存在しない。

 

 ダーウィン進化論では「自然は跳躍しない」とされている。種の進化とは階段を一歩ずつ上り詰める物。それを考えれば彼等のあまりにも特異な生体は疑問が尽きない。本当に地球上で発生した種族なのか?と疑いたくもなる。

 

 しかし、これは下位世界の世界設定という面で見れば説明できる。そもそも下位世界は創作物が具現化した世界だ。つまり人の想像を現実にした世界とも言える。ならば上位世界の常識を覆しても不思議ではない。

 

 理論上は、人の想像できることならば何でもありというデタラメな物。故に彼等は下位世界において想像を具現化したために、常識を超えて存在している。

 

 そんな彼等は『ジョジョの奇妙な冒険』では古代人、柱の男、闇の柱の一族などと呼ばれていたが、原作ではその正式な名称は知られていない。一応、監察軍では彼等が地底に住んでいることから、暫定的に古代地底人という名称を使っていた。

 

 そして、私は彼等の住む地下にジュラと共に向かっていた。この世界は『ジョジョの奇妙な冒険』の並行世界の一つ。原作開始の数万年前の相対過去にあたる。分かりやすくいうと、原作開始から数万年前の過去に極めて似た世界。

 

 厄介な事に、この世界では『魔法少女リリカルなのは』の魔法は使用できないので私の能力は大幅に落ちる。

 

 いくら魔法皇帝と呼ばれている大魔導師でも自らの魔法形式が使用不能ならば意味がない。魔法なしで覚醒者としての能力だけだと古代地底人に対抗できないのだ。その為、この世界で古代地底人と接触するのは好ましくないが、ジュラの一件を説明するには私が来ないといけないのでやむえず同行していた。

 

「ジュラ、ここでいいの?」

「ああ」

 

 月明かりもない夜の闇の中で私とジュラは進んでいる。ここは古代地底人が住処としている地底の道で、私はジュラに案内されて彼等の住む場所を目指していた。この世界では魔法が使えないが、紫外線遮断装置で紫外線を防ぐことができる。

 

 しかし、万が一その機械が故障した状態で紫外線を浴びれば死んでしまうだろう。現在の私は通常よりも無防備な状態といえた。その為、日中での活動は控えて夜になってから活動した。

 

「……人間をここにつれてくるとは、どういうつもりだジュラ」

「エシデッシか」

 

 エシデッシ、炎の琉法を持つ男。原作ではカーズの思想に共鳴して共に一族を滅ぼした後で、究極の生命体を目指してジョセフ達と闘うことになる。

 

 エシデッシはジュラが居住区に私を連れていくのを見て不信に思っているようだ。それは当然だろう。彼等の住む地底は古代地底人しか住んでおらず、人間などいない。そして、これまで人間をわざわざ連れてきた者もいなかった筈。

 

「この女は俺の客だ。皆に話さなければならない事があってな。そのために彼女を連れてきたのだ」

「客だと! どういうことだ? それにこの女は他の人間と随分毛色と恰好が違うな」

 

 私はベルカ人で、外見は白人に似ている。だからこの辺りにいる人間とはかなり違うのだろうし、私は仮にも皇帝であるのでそれなりの服装をしている。原始人のように裸や動物の毛皮を着込んでいるわけではない。そりゃ、変わって見えるだろう。

 

「その辺りも含めて皆に説明する」

 

 ジュラは二度手間を避けるために彼等にまとめて話すつもりだ。私も二度手間は嫌だから異論はない。

 

 私とジュラは再び進む。エシデッシは黙ってついてきた。さすがに私に危害を加えてくるほど短絡的ではないようだ。

 

「なんでここに人間なんかがいる?」

 と、やはり言われた。

 

「悪いが皆を集めてくれ。大切な話があるんだ」

「……いいだろう」

 

 カーズがジュラの頼みを受け入れた。後で聞いたがジュラは、カーズとエシデッシとは同世代で割と親しいらしい。

 

「カクカクジカジカ。……というわけでシドゥリによって俺は太陽を克服する事ができた」

 

 異世界の存在、ブリタニア帝国、そして脳の眠っている能力の覚醒、太陽の克服。衝撃的な内容の連続にその場はざわめく。彼等は皆驚いていた。特にカーズとエシデッシは反応が大きかった。ジュラは皆に大切な話があるといって集めて説明したのだった。

 

 古代地底人はこれが全てとは限らない、中には休眠期に入っている者もいるかもしれないが、それを含めても彼等の数は少なかった。元々、カーズとエシデッシの二人だけで、一族を滅ぼしたから、それほど数はいなかったのは間違いないだろう。

 

「俺は太陽を克服した。だから太陽を恐れて地底に暮らす必要がなくなった」

 

 ジュラが淡々という。それは地底から離れるという意味だ。

 

「そうか、ここから出ていくのか?」

 

 古代地底人の中でもかなりの年輩なのだろうと思われる男。恐らく、彼等の長老の様な存在なのだろう。

 

「ああ、いろんな世界を見て回って見たい。何しろずっと地底暮らしだったからな」

「そうか。ところでシドゥリとか申したな。異世界の人間よ。そなたに尋ねたい事がある」

 

 男が俺に視線を向ける。なんだろう?

 

「そなた達が開発した覚醒の法とやらは本当に大丈夫なのか? 聞けば覚醒者となった者はより多くのエネルギーを必要としているらしいが?」

 

 覚醒者は、脳の眠っている力を引き出す事によって不死身の力を得ているが、より多くのエネルギーを必要とした。つまり、それだけ多くの動物を殺さないといけない。それでは大地の動物たちを殺し尽くしてしまうのでは?

 

 これは原作でも彼等がカーズを危険視して敵対することになった原因。

 

「……確かに、余を含めた覚醒者はより多くのエネルギーを必要としているので動物を殺す必要があります。しかし、殺す以上に動物を増やしているので問題ありません」

「動物を増やす?」

 

 彼等は私の言葉に不思議そうにしていたが、それも無理はない。今は原作の十万年近く前で、四大文明よりも遥か昔だ。文明という概念自体がなく、原始人しかいない。つまり、この時期は畜産業の原型となる物自体が存在しない。

 

 当時の人類にとって動物は狩猟する対象でしかない。だから動物を増やすという発想がなかったのだろう。仕方ないので、私は彼等に畜産業の仕組みを細かく説明していく。存在しないから一から説明しないといけないのだ。

 

「……なるほど、だから問題ないという訳か」

 

 呆れた顔だ。どうやらわざわざ手間暇をかけて動物を養殖するというやり方に呆れているのだろう。だが、これは必要な業種だ。これがないと肉や卵にも事欠く事になってしまう。もちろん農業や漁業などもあるが、畜産業があるのと、ないのとでは雲泥の差がある。

 

「ええ帝国は国家としての規模が大きい。その為畜産業を営む者も多くおり、エネルギーの補充には事欠きませんし、動物の数も安定しています」

 

 増え過ぎもせず、減り過ぎもしない。そうなるようにちゃんと調整している。

 

「なんなら何人か帝国を直接見に行かないか?」

 

 不意にジュラが口を出してきた。……余計なことを! こいつ等は原作ではカーズの石仮面を恐れてカーズを殺そうとしたのだ。余を危険視する可能性は十分にあるだろう。彼等はジュラの意見を一理あるなどと言って検討している。そうくるか。ならば……。

 

「それもそうですね。ならカーズ殿とエシデッシ殿は如何ですか?」

「俺達か?」

 

 余に指名されたカーズとエシデッシは顔を見合わせる。

 

「ええ、お二人は帝国を直接見ませんか、我々が招待いたしますわ」

 

 この二人ならば覚醒者を危険視しないだろう。なんせ原作では石仮面の吸血鬼をバンバン作っていたし。

 

「ふむ、いいだろう」

 

 カーズが乗ってきた。やはり興味を持ったか。同族であるジュラが太陽を克服して更なる能力を手に入れたのだ。自分もと内心では思っているのだろう。これはこれで危険かもしれないね。

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