結局、あれから一進一退の攻防が続き、時間切れでなし崩しに終わった。そんなわけで訓練に一区切りつき、食事にすることになった。
ここは、訓練場所に活用されているだけあって宿泊施設や訓練施設も十分に存在している。
しかしここで出される料理は宮廷料理ではなく、キャンプ料理となる。豪華な宮廷料理も悪くないが、カレーや焼き肉などのキャンプ料理も良い物だ。
ちなみに余は料理に関しては割と質素だ。皇帝であるから御馳走などいくらでも味あえるが、毎日そうだとさすがにあきる。そんなわけで、余は普段はあきにくい料理を好んで食べるが、今回は部下が用意した焼き肉を黙々と食べている。
カーズはワインを飲んでいる。彼はワインが気に入ったのか、帝国に来てからよく飲む様になった。
元々彼等の生活は自然のままという物だったので、加工品自体が珍しいのだろう。というか水ばかり飲んでいたんじゃないの? あの人達わざわざ自分でお酒とか作りそうにないしね。
エシディシは書物などに興味を示した。たしか原作でも中国で孫子の兵法を読んでいたから、帝国の文献が興味深いのだろう。なんせ様々な下位世界の資料などがあり、あまりの数に整理に困る程だ。
勿論、帝国には本だけでなく電子書籍もある。というよりも、かさばらない電子書籍は重宝されていて、皮肉にもこれが帝国で図書館の利用者が減少してしまう原因となっている。
そしてジュラは、というと黙々と焼き肉を食っていた。
あれからジュラと模擬戦を続けたが、余が優勢だった。余の聖王の鎧が進化する前であれば、ジュラはスタンド能力で勝利を収めることができただろう。
このスタンドというものはかなり厄介で、これを使われると普通の騎士は分が悪くなる。なんせスタンドは幽霊のような物だから物質を通過することができる。シールドやバリアなどが役に立たない。
防御魔法はあくまで科学サイドにおける防御で、神秘、呪い、幽霊などのオカルト面からの攻撃では対応できない。
これは『魔法少女リリカルなのは』の世界では、魔法も科学技術の一部に過ぎず、オカルトに関して無知であったことが大きいだろう。その手の攻撃を想定自体していないのだ。おまけにスタンド使いではないとスタンドを見ることができないのが大きい。
しかし、私の場合は聖王の鎧が進化しているために、オカルト面からの攻撃まで防いでしまう。従来の聖王の鎧では防げない筈の攻撃を防げるのは、覚醒の法の副作用だと思われるが詳しいことはよく分からない。ただ覚醒者になった時に聖王の鎧の防御力が上がっただけでなく、その性質まで変化したのは間違いないが、私にとって好都合なので気にしていなかった。
反則じみた防御力をもっていた余は完全にチートと化していた。これをやぶるには力業で鎧を破るしかない。というと無理難題に思えるだろうが『ドラゴンボール』の戦士たちなら簡単に余の鎧をもぶち抜ける。あの世界の戦士は強すぎるよ(泣)。
「しかし、シドゥリに勝てないとはな」
ジュラがぼやいた。強力な力を手にしてもなお余を圧倒できないことに不満なようだが、帝国貴族がいる前で皇帝を呼び捨てにするのは良くないよ。部下達がジュラを不愉快そうに見ている。
余は監察軍の者には、特に一般的に特殊認識能力者という隠語で呼ばれているトリッパー達には、無礼講で接することは貴族の間では有名だから、余程の無礼でないと口を出さない。とはいえ貴族や臣民には面白いはずもないので、監察軍では自粛するように通達されていた。ジュラはその辺りは頓着していないけどね。でも堅苦しい者は、そのことで余に諌言してくる。
この辺りは結構面倒であったが、帝国は民主共和制ではなく、専制君主制なので部下達の言うことは正論であった。彼等にとって、身分というのは帝国にあって当たり前の物で、それをあまりにも蔑ろにする者は排除されるべきなのだ。だからといってブリタニア人でもない者、特に同じトリッパーに皇帝の権威に従えといっても反発をまねくだけだろう。この辺りのさじ加減が面倒だ。しくじると問題になるからね。
「でも、この世界ぐらいしか魔法が使えないから、余所の世界では負けていたでしょうね」
魔法というのは存外不便だ。様々な下位世界を渡り歩くようになると、そういう声が良く聞こえる。
特にミッドチルダ式魔法とベルカ式魔法は、とらいあんぐるハートシリーズと魔法少女リリカルなのはシリーズの世界でしか使えない。とらいあんぐるハートシリーズの世界でこちらの魔法が使えるのは、恐らく『魔法少女リリカルなのは』が『とらいあんぐるハート3』のスピンオフ作品だからだろう。だから二つの作品は親和性が高く、世界法則でも融通が効いていると思われる。
しかし、『魔法少女リリカルなのは』の魔法が使用可能である下位世界があまりに少なすぎる。監察軍ではこのあまりの使えなさにこちらの魔法の評価が低い。
そもそも下位世界を渡り歩く者達にとっては、できるだけ多くの世界で使うことができる力が重宝される。時空管理局が危険だと唱えて禁止した質量兵器はその筆頭である。というかあれほど便利な力を禁止するなんてどうかしている。
帝国と地球が管理局と敵対することになった理由はいろいろあるが、その最たる物が質量兵器の禁止であることは間違いない。多くの下位世界で問題なく使えて、戦力を揃えることも容易。帝国軍が質量兵器を主力とするのも当然である。
貴族達が、別の下位世界に行きたがらないのも、リスクが高いからだ。さすがに太陽を克服していない身で、魔法が使えなくなる下位世界に行くのはごめんなのだろう。
食事を取り、暫く休んで腹ごなしを終えると、宿泊施設に入り就寝する。そろそろ現地では日の出になる。覚醒者となってからはすっかり夜型生活となった余と貴族達は睡眠に入ることになる。ただ今日は余の寝室にジュラを伴っていた。
これは極めて珍しいことだ。シドゥリは同性愛者なので寝室に男性を入れるなど普通はない。それだけ聞かれたくない話があるからだが。
「それで、シドゥリ。お前はカーズ達に関してはどうするつもりだ?」
それはカーズ達を覚醒させるのか、という質問だろう。
「そうね。原作のカーズの暴走ぶりを見ると危険でしょうね。まぁあいつはプライドが高いから、人間風情に協力を求めることはできないと思うし、それなら放っておけばいいわ」
適当にあしらって、カーズ達を元の世界に返す。後はあの世界には関わらず放置すればいい。
「うむ、それが無難かもな。だがそれだと原作と同じように一族内で抗争が起きるかもしれないな」
やはり、その可能性に気付くか。ジュラという成功例を見たから原作以上に究極の生命体に執着する可能性があり、将来的に一族間で内部対立が起こるのは否定できない。
「そうね。でもそれは仕方がないわ。それよりジュラはあの世界の地球から離れるつもりかしら?」
原作で究極の生命体となったカーズは宇宙空間へと追放された。それはまるで地球が自らの意志によって、カーズを追放したかのようにも思えた。
『ジョジョの奇妙な冒険』の地球に、型月世界のガイアのような防衛意識があるのかは不明であるが、あるかもしれないと考えておく方がいいかもしれない。その場合、地球がジュラを危険視して、ジュラを排除しようと動く可能性は否定できない。それを避けるには、あの世界の地球から離れるというのが一番確実な方法だ。
「ああ、そのつもりだ。いい加減文明がない世界にはウンザリしているからな」
ジュラが吐き捨てるように言う。現代日本人にとっては、あの世界はつまらないだろうね。原作開始から数万年は時間があるわけだし。
「なら監察軍で、いろいろな下位世界を旅してみるといいでしょう」
「そうだな」
これで話は終わり、ジュラは余の寝室から出ていった。一人になった余はベッドの上で休む。
ジュラが監察軍で活動するか。ジュラの能力は余の魔法と違って、下位世界の世界法則の影響を受けないので、多くの下位世界で問題なく活動できるだろう。本当に羨ましいかぎりだ。
数多く存在する創作物を具現化した下位世界は面白い。余の好奇心を満たしてくれる。余も下位世界を気ままに旅してみたくなるが、太陽を克服しておらず、魔法も使えない余の場合はリスクが大きい。それ以前に、ブリタニア帝国の魔法皇帝という立場上、簡単に旅に出ることはできない。地位と権力を手に入れたが、それが余を縛っている。
「ままならぬものね」
余は皮肉下に笑いつつもベッドで眠りについた。
解説
■ジュラ
『ジョジョの奇妙な冒険』の世界に転生したトリッパー。外見は20代前半の男性で、額の角は一本。雷の琉法を持ち、潜在能力を引きだした事でパワーアップしている。転生特典としてスタンド能力を貰っている。その能力は本体を鎧のように多い、雷の増幅と防御力の向上という攻防一体の物。強力な力を持つが、それだけにより多くのカロリーを必要としているので食事が大変である。出身世界では原作開始の数万年前であり、文明自体が存在しないヒマな世界であるので、監察軍に入り様々な下位世界を旅するようになる。
後書き
今回は『ジョジョの奇妙な冒険』のトリッパー、ジュラを登場させました。実はジュラは超戦士伝説でゲスト出演させる予定のキャラだったので、先にブリタニア帝国記外伝に出演させました。とりあえずブリタニア帝国記の話を進めてから他の作品を書くつもりなので、その話は結構後になるかもしれません(笑)