ブリタニア帝国記   作:ADONIS+

75 / 80
ブリタニア神話の考察(シドゥリ暦802年)

 神話とは民族の数だけ存在するという。実際地球では多種多様な神話が存在する。それらは自然現象や過去の出来事を元に神話として構成されていることが多い。一節によると神話というものは国家を形成するにあたって重要な役割をはたすという。そして、ブリタニア帝国にも同然ながら神話は存在していた。

 

 このブリタニア神話というのは、シドゥリ教が布教と共にブリタニアで広められている。但しそれは日本神話と同じように、ときの為政者の都合の良いように造られた物であり、ブリタニア神話はシドゥリとそれに連なる貴族による統治を正当化するのが目的の極めて政治色の強い神話であった。

 

 

 

 1.世界の創造

 

 世界の初めは高位次元世界に住んでいる神々が、自分たちの世界に似せて造った一つの世界を中心に膨大な数の宇宙を内包した次元世界を作り上げた。その次元世界の中心点とも言える世界が地球であった。

 

 しかし、この時神々はあまりにも世界を造りすぎてしまい、それゆえ世界は不安定になり次元災害が起こるようになった。現在の我々の世界があまりにも容易く滅びてしまうのはその為である。

 

 そしてその不安定さから次元間の壁が薄く、容易く次元間の移動ができるようになった。

 

 神々はその後、様々な世界で動物たちが自分たちに似た生物(人間)に進化するように調整を施し、この次元世界を見守るようになった。こうして次元世界の様々な世界で人間達が現れた。

 

 それぞれ違う世界で進化した人間にも関わらず彼等が異世界人との間で子を作れるのは神々が意図的に調整したからなのだ。

 

 こうして誕生した人間であったが、彼等は次第に人間同士で醜く争いあうようになった。文明が発達して、次元世界を渡るようになると人々の争いは世界間に拡大していく。人が人を支配して、戦乱と混乱が次元世界を覆った。

 

 そんな人間のあまりの愚かさに失望した神々は次元世界を見守るのを止めて、別の世界へと旅立っていった。こうしてこの次元世界は神々に見捨てられた世界となった。

 

 

 

 2.ベルカの聖王女

 

 神々に見捨てられても尚、人々は醜い争いを繰り返していた。次元世界の一つベルカもそんな戦乱の世界だった。

 

 当時のベルカは次元世界でも有数の文明を持つ世界であったが、当時の人間の王達は争いを繰り返し、世は混沌としていた。

 

 そんな中でベルカ聖王家に一人の天才が生まれる。

 

『シドゥリ・エルデルト・フォン・ヴァーブル』

 

 彼女は時の聖王とその側室『ヒルデガルド・フォン・ヴァーブル』との間に生まれた。シドゥリは並はずれた魔力資質の持ち主であり、歴代最強を誇り、聡明であった。シドゥリは幼くして戦場で大きな武勲を立てて、騎士たちからも尊敬を集めた。だがそんなシドゥリを兄であるクリードは妬み、嫌っていった。

 

 クリードは、聖王家の一員としては能力がそれほど高くなく、優秀な妹に劣等感を抱いていた。周囲からも優秀すぎる妹と比較される事が多く、次第に彼の心はねじ曲がっていった。そんな中で、父であった当代の聖王が崩御してしまい、後継者争いが起こった。これは聖王が正式な王位継承者を決めていなかったのが大きな原因だった。

 

 当時、聖王には二人の子供がいた。王妃との間に生まれた兄と、側室との間に生まれた妹。

 

 通常であれば、ゼーゲブレヒトの性を名乗る事もない側室との間に生まれた王女ではなく、王妃の子で長男である兄が聖王になるべきだ。

 

 しかし、クリードは遺伝子操作に不具合があってか、聖王家の人間としては平均を大きく下回っていた。それでも並のベルカの騎士よりは強かったが、聖王家始まって以来の天才と呼ばれたシドゥリとはあまりにも能力に差が有りすぎてしまったのだ。聖王は最強でなくてはならないというのにこれでは大問題だった。それ故、どちらを後継者に指名すべきか判断できなかった。

 

 そうこうする内に聖王が死んでしまい、この事態を招いてしまったのだ。

 

 望めば次元世界有数の国家の王として君臨できる状況であったが、シドゥリは聖王の地位には興味を持ってはいなかった。彼女は人を人間以上の存在にする技術を開発しており、これを用いて理想国家の建国を目指していた。

 

 かねてよりシドゥリは現在の次元世界の現状に嫌気が差しており、それを変えたいと願っていた。その方法として現在の人が人を支配するという体制から、人を超えた者が人を管理して秩序を構築するという構想を持っていて、その為に手段を確保して、更にその計画の為に念入りに準備を整えた。

 

 その時に起きた出来事であったので、後継者争いで国内が混乱して内乱に発展するのを嫌ったシドゥリは王籍離脱を行い、ベルカを去っていった。

 

 こうして彼女は未開世界であったブリタニアにたどり着くこととなる。

 

 

 

 

 

 シドゥリ暦802年10月2日 ブリタニア帝国 首都星ヒルデガルド

「ブリタニア神話の前半においては、このように次元世界を創造した神々の創世と、神々が去った事による神代の時代の終わり、そして人間同士の争いによる混乱が主に占められています」

 

「現在でもブリタニア帝国以外では人間国家の争いが絶えていません。これは人間による統治の限界を示しているといえましょう」

 

「このブリタニア帝国は、魔法皇帝シドゥリ様の試みの結果として、人を超えた覚醒者による秩序の構築という他に類を見ない方法で世界の安定に成功しました。現在我々が秩序を保った社会を作れているのも全てシドゥリ陛下の功績の賜物なのです」

 

「かの地球とて有史以来数千年にも渡り、紛争と混乱が絶え間なく続いていた事を考えると正に未曽有の偉業といえます」

 

「このシドゥリ陛下の功績により、私達の先祖は原始的な生活から解放され、近代化を果たすことができたのです。私達はその御恩を決して忘れてはいけません」

 

「そしてブリタニア神話の後半では、この惑星ヒルデガルドに降臨なされたシドゥリ陛下のブリタニア建国と発展の話となります」

 

「またブリタニア神話では、神々はこの次元世界だけでなく他にも様々な世界を創造していますが、その際神々は自らの世界に似せて世界を創造することが多かったのです」

 

「つまり神々が存在している『地球』は、現在私達の知っている地球と地理、歴史、文化と様々な点で共通点があり、地球人は神の似姿ともいえます」

 

「このブリタニアを含めて次元世界に存在する全ての世界は地球のバリエーションであり、その世界で進化した人類も地球人を元にした亜種に過ぎません」

 

「地球とその他の世界との違い、そして地球人と他の世界の人間の違いなどは現在でも明確になっていませんが、少なくとも次元世界を創造した神々にとって地球や地球人は他とは一線をかくす存在であった事は間違いないでしょう」

 

「一説によるとシドゥリ陛下が地球を優遇していたのは、これが原因ではといわれています」

 

「つまりシドゥリ陛下が地球人のナノハ陛下を第一皇妃に選んだのは、皇室に神々により近い地球人の血を取り入れるのが目的だったのではという物です」

 

「しかし、地球がブリタニアよりも格上だとも取れるため、この事はブリタニア至上主義者の一部で異論が有ったそうですが、監察軍による三千世界の調査が進んで多くの『地球』が発見されて、三千世界における地球の特異性が証明されました」

 

「さて時間もきましたし、今日の授業はここまでです。続きは次の授業で行います。それと、この辺りは重要なのでしっかり復習しましょう」




後書き

 この話ではブリタニア帝国記独自の設定を盛り込んでいます。ブリタニア帝国では、次元世界の成り立ち、第97管理外世界『地球』の定義などは、この話のようになっていて、ブリタニア帝国では地球というのはある意味特別な物になっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。